「実は、学校説明会が一週間延期になるだって」
鞠莉さんに届いた電話、それは昨日の雨の影響で学校に向かう道の復旧に時間がかかるので説明会を一週間延期するとの内容だった。仕方のないことかもしれないが、よりにもよって一週間後という言葉に僕たちは頭を悩ませられた。たった一人を除いて、
「どうしたのみんな?その分いいパフォーマンスになるよう頑張ればいいじゃん!」
「千歌ちゃん?学校説明会が一週間延びたということはだよ。これがどういう意味を表してるか分かってる?」
「練習時間が増えるということでしょ?」
千歌ちゃんはまだこの状況を理解していないようだ。
「どうやら状況がわかってないようですわね」
「まぁ千歌ちゃんらしいというか…」
「問題です。ラブライブの予選が行われるのは?」
「学校説明会の次の日曜でしょ?」
「ですがそんな時、説明会が一週延びるとの知らせが届きました。ラブライブ予備予選の日程は変わりません」
「二つが開催される日はさていつでしょう!?」
「そんなの簡単だよ…うん!?」
ここで千歌ちゃんがようやくことの重大さに気づいた。
「やっと分かった?二つの開催日は?」
「同じ日曜だ~!」
斯くしてAqoursはラブライブ予備予選と学校説明会、この両方が同日で開催されることとなった。ひとまず僕たちは学校の体育館に集まって今後の作戦を練ることにした。
「さてと、とりあえずは場所の確認をしようか。今回のラブライブ予備予選が行われる場所はここ」
「うわっ、山の中じゃない」
「そう、そこで特設ステージを作って開催することになった訳だけどこの辺りは電車は通ってないしバスは数時間に一本だけ」
「到底間に合いまセーン…」
「空でも飛ばなきゃ無理ずらね…」
「フッフッフッ。ならば、この堕天使の翼で!」
「アー…。ソノテガアッタカ」
「ダテンシヨハネノツバサデオオゾラカラカイジョウイリズラー」
「噓よ噓!常識で考えなさい!」
すると1年生の案が起点になったのか、千歌ちゃんが閃いたような顔になった。
「そうだよ!空だよ!ヘリで会場まで飛んでいけば間に合うかも!」
「ヘリで移動…!」
「未来ずら…!」
「カッコいい…!」
「スーパースターですわ…!」
「…現実的に無理だよ。あと4人も夢から覚めてください」
「大丈夫だよ!というわけで鞠莉ちゃん!」
何故大丈夫なのか分からないが、千歌ちゃんは早速鞠莉さんに手配を頼もうとしたが当然、
「Oh、流石千歌っち!その手がありました!直ぐにヘリを手配して…といえると思う?」
「駄目なの…?」
「Ofcourse!パパは自力で入学希望者100人集めろと言ってたのよ!いまさら力貸してなんて言えまセーン!All or nothingだとお考え下さい!」
鞠莉さんの否定によってようやく千歌ちゃんも諦めた。だがこれでまた振り出しに戻ってしまい何か案はないか模索を再開していると、ダイヤさんが案を上げた。
「現実的に考えて説明会とラブライブ予備予選、二つのステージを間に合わせる方法が一つだけありますわ」
「一つ?」
「あるの?」
「えぇ。予備予選出場番号の1番で歌った後、すぐであればバスがありますわ。それに乗ることが出来ればギリギリですが、説明会に間に合います」
「ホント!?」
「ただし、そのバスに乗れないと次は3時間後。つまり、予備予選で歌うのは1番でなければなりません」
「それってどうやって決めるの?」
「それは、明日行われる抽選会でルーレットを回してそこで出た数字が歌う順番になります」
「神頼みになりますね…」
「ですが、これ以外に方法はもうありません」
「よし。とりあえずは両方の曲を練習して、明日の結果でまた考え直す。それでいってみようか」
姉さんがひとまずの行動をまとめて今回の作戦会議は終了した。皆が練習のため屋上に向かうなか、僕は一人生徒会室に向かっていた。そして机に着いて目の前の白紙の紙を見つめていた。事の発端は数日前、学校説明会の内容を企画している時に提案されたダイヤさんからの一言が始まりだった。
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「祐さんはスピーチとかはお得意ですか?」
「スピーチですか?そういえば一度もやった事ないですね」
「では一度やってみませんか?祐さんは共学化テスト生ですから、貴方の視点から学校の事を伝えてほしいのです」
「僕から見た学校の良さですか…」
ダイヤさんの提案に僕は少しだけ悩んだ。初めてのスピーチで、もしうまくいかなかったら、せっかく説明会に来てくれた生徒たちが学校に対して興味を失ってしまうかもしれない。そんな不安が頭をよぎった。でも、Aqoursの皆だって学校を廃校から救うために頑張っている。だったら近くで見ている僕も学校のために頑張らなければそれこそ後悔してしまうかもしれない。そう考えた時にはもう答えは出ていた。
「もちろん強制は致しません。どうしますか?」
「…やります。僕の言葉で説明会に来てくれた方が興味を持ってくれるよう頑張ってみます」
「ありがとうございます。では、当日よろしくお願いします」
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「とは言ったものの…。どうすれば来てくれた人たちに言葉で学校の良さが伝わるかな…」
スピーチの内容が浮かばず、生徒会室で無言の時間が続く一方だった。在学している皆から意見を聞いて作るのもいいかもしれないが、ダイヤさんは「共学化テスト生の視点から見た学校の良さ」と言っていたので、それはすなわち僕個人から見たこの学校の良さということなのだろう。どうしたらそれが伝わるか、まだ僕にはその答えが見つからずいつの間にか下校の時間になってしまい、練習が終わった皆と合流して帰路についた。
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