説明会とラブライブ予備予選が終わって早くも1週間が経とうとしていた。Aqoursの皆は部室に集まって目の前のパソコンを睨んでいる。開かれている画面には「結果発表までお待ちください」と書かれていた。今日はラブライブ予備予選の予選通過のグループが発表される日。正午に結果が分かることらしく、現在は11時57分なので後3分後だからなのか、皆がそわそわしているのが横から感じ取れた。
「前の予選の時もこんな感じだったの?」
「まあね。この時間がやっぱり落ち着かないんだよ皆」
「…でも1人だけ余裕みたいな感じだけど」
僕はそう言いながら部室の入り口に目を向ける。目線の先には練習着で窓の掃除をする元気なリーダーの姿があった。予選を突破してるのを確信しているのか、それとも単純に忘れているのか。千歌ちゃんを見て皆が思ってる疑念を晴らそうと曜ちゃんが尋ねてみると、
「千歌ちゃーん、今日が何の日か覚えてる?」
「ラブライブの予備予選の結果が出る日でしょ?」
と、千歌ちゃんがすぐに応えたのでどうやら忘れてはいなかったようだ。
「緊張しないの?」
「全然!だって、あんなにう上手くいって、あんなに素敵な歌が歌えたんだもん。絶対突破してる!。昨日、聖良さんにも言われたんだよ、「トップ通過してる」って」
「聖良さん?確かSaintSnowのグループ名だったっけ…千歌ちゃんの知り合いだったんだ」
「うん、あれ?祐君はSaintSnowさんと会っていないはずだけど…」
「実は東京に行った時に神社で偶然会ったんだよ。その時は妹さんいなかったけどね」
そう会話しているうちに時刻は12時になり、パソコンの画面には予選を突破したグループが表示された。確認をすると、予選1位通過にAqoursの名前があった。
「もしかしてこれ、トップってこと!?」
「そうみたいだね。予選突破おめでとう!」
「やったずら!」
「うむ。良きに計らえ!」
その結果に皆からは喜びの声があがった。しかし喜んだのも束の間、Aqoursにはとある危機が迫っていた。それは、
「実は、説明会とラブライブが同時にあったから部のお金が無くなりました…」
「この前千円ずつ入れたのに…」
「もう無くなっちゃったの?」
金銭問題。説明会とラブライブに使ったステージや衣装によってスクールアイドル部の部費は既に底をつきかけていた。幸い、次の地区予選まではまだ余裕があるから対策する時間はあるが、
「このままだと予算がなくなって、仮に決勝に行くことになっても東京までアヒルボートで行くことになるずら…」
「流石に交通費は運営側が出してくれるよ…」
「いくら残ってるの?」
そう言って梨子ちゃんが貯金箱を揺らすと中から落ちてきたのは5円玉のたった1枚だけだった。
「Oh!綺麗な5円デース!」
「5円!?」
「ご縁がありますように」
「So Happy!」
「言ってる場合か!」
皆が冗談を言い合う中、1人どこか浮かない顔をする人がいた
「ダイヤさん?どうかされました?」
「いえ。果南さんも鞠莉さんも随分打ち解けたと思いまして」
ダイヤさんの言うように曲作りの合宿以降、姉さん達3年生と花丸ちゃん達1年生の距離が近くなって、今は花丸ちゃんに勧められて姉さんが本に興味を持つようになったり、善子ちゃんと鞠莉さんで一緒に会話したりとお互いに仲良くなっている場面が多くなった。
「そうですね。こう見てると曲作りで仲良くなれて良かったです」
「…えぇ」
納得してるように返答するも、浮かない顔なのは変わらないままだった。そんなダイヤさんをよそに、皆は淡島で5円をザルに入れて神頼みをしてからそれぞれ帰路について今日の活動は終わった。
淡島から出る連絡船を見送った後、鞠莉さんと別れた僕と姉さんは家に帰って一息ついていた。すると姉さんが僕にある疑問を投げかけてきた。
「ねぇ祐。今日のダイヤ、どこか変じゃなかった?」
「そう?僕はあまり気にならなかったけど…」
「何か私達に隠してるみたいなんだよ。鞠莉はしばらく様子見って言ってたけどね」
「じゃあ当分の間はそのままにしておくってこと?」
「うん。「ダイヤは自分のことになるとヘッポコピーになる」みたいだから」
「へっぽこぴー…?」
鞠莉さんの例えはよく分からないが、これから地区予選に向けての練習があるから、その時にダイヤさんを観察するという形になった。翌日、練習の休憩時間にダイヤさんがスタジオの屋上で2年生達と会話していた所を僕と姉さんと鞠莉さんが遠くから見てたが、やはり普段のダイヤさんと変わらず、何かを隠しているようには見えなかった。結局その日は何も掴めずに観察は終わった。
「今のところは特に変わったところはないけど」
「今日は何も分からなかったね…」
「大丈夫よ。ダイヤの事だから絶対に尻尾を出すから」
すると後日、金銭問題を解決するために参加したフリーマーケットでダイヤさんが遂に尻尾を出した。店番中に自分の世界に入って急に笑い出したり、勢いのあまりお客さんに指をさしたりなど、明らかに何かあったと確信するような場面が多く見られた。その変化は流石に観察していた僕達以外にも気付く人はいた。
「ねぇ。ダイヤさん何かあったの?」
千歌ちゃんが僕と姉さんに訊ねてきた。千歌ちゃんはこういった事に敏感で、毎日接している人の変化にはすぐに気付いて一緒に悩んだり助けたりしていた。
「心配しないで千歌。ダイヤの事は私達がやっておくから」
姉さんはそう言って千歌ちゃん達を先に帰らせた。6人が帰るのを見送った後、僕達は鞠莉さんに呼び止められていたダイヤさんと合流した。これから僕と姉さん、そして鞠莉さんの3人でダイヤさんが隠していることについて追究を始める。
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