「実は私、好きな人がいるの」
姉さんが話した内容に僕は一瞬だけ頭が真っ白になった。今まで一度もそういった会話をしたことがなかったからというのもあるが、いちばんは姉さんに好きな人がいるという急な告白に思わず動揺していたからだろう。
「…それは、鞠莉さんやダイヤさんの友達という意味じゃなくて?」
「うん。男の子で」
「なんか意外だね。てっきり姉さんは恋愛とかまだ気にしていないと僕は思ってたから」
「私だって女の子だから気になる人はいるよ。でも少し悩んでいてね。だから祐に相談に乗ってもらおうと思ったの。同じ男の子の意見として」
そう言って姉さんは僕の向かいにある椅子に座る。恋愛に関する相談とは言ったものの、当然ながら僕は相談を受けた事もした事もないから力になれるかどうか不安だが、とりあえずは詳細を聞いてみる。
「ちなみに相談というのは?」
「それはね、どうしたら想いが伝わるか。学校を卒業するまでにその人に告白したいんだけど、どうすればいいか分からなくてね」
「姉さんの好きな人の名前は教えてもらうことは出来るの?」
「それは秘密//」
「じゃあ相談にならないじゃないか。なにかその人のことを教えてくれなきゃ。例えばこういうところが好きとか…」
そう言いつつ手元の携帯で恋愛話の話題などを調べて話を進めていきながら、姉さんには僕の質問を応えてもらうことにした。これで少しでも姉さんの悩みが解決すると良いのだが。
「好きなところは…安心できるところかな。一緒にいる時間がずっと続けばいいのにって思っちゃうよ」
「姉さんがそう思える人がいるなんて知らなかったな…。出会ってからもう長かったりするの?」
「最初に会ったのが小学生の頃だから結構長いのかな。初めはちょっと抜けている子なのかなと思っていたけど、本当は誰よりも周りを見ていて、困ってる人がいたら相談に乗ったり、不安な人の背中を後押ししてくれる優しい人。私がスクールアイドルを辞めて辛かった時期もその人がいつも近くにいてくれたから、私は私自身を責めずにいられたのかなって今は思ってる」
「…恩人なんだね。姉さんにとっては。だったら今話してたことをそのまま伝えたら姉さんの気持ちは相手に伝わると思うけど…」
僕が思いついた案を伝えるが、姉さんは難しい顔をしながら項垂れていた。
「う~ん、どうかな…。ちょっと鈍感なところがあるから、私が好きって言っても告白としては受け取ってもらえなさそうな気がするんだよね」
「鈍感?」
「そう。周りの事には敏感なのに自分のことになると全然気づかないんだよ。だからさ、祐も一緒に告白の言葉を考えて欲しいなって」
「考えて欲しいと言われても…。僕だって告白なんてした事もされた事も無いから分からないよ」
「例えばでいいからさ。もし祐が告白されるならどんな言葉がいいか教えてよ」
姉さんからの相談に僕は告白の言葉を考える。恋愛としての好きを知らない僕にはどんな言葉を貰ったら嬉しくなるのか、伝えてくれた相手を恋としての好きになるのか全く想像がつかない。それでも姉さんの告白に少しでも力になれるようにと思って言葉を伝えた。
「「好きです」の一言で僕は十分嬉しいよ」
「本当に一言だね。寧ろその方がいいのかな…」
「ちなみに姉さんはどんな風に告白しようと今は考えているの?」
「う~ん、ちょっと待ってね…」
それを聞いた姉さんは腕を組みながら考え込んでいた。ここまで真剣に悩んでいる姉さんを見たのは初めてかもしれない。それほどその人のことが好きなのだろう。姉さんの気持ちが届くことを願いつつ答えが返って来るのを待つ。
「「ずっと前からあなたのことが好きでした。私と付き合って下さい」っていうのはどう?」
「なんか固いような、姉さんっぽくないというか、むしろダイヤさんに近いような気が…」
「え~!良いと思ったんだけどな~…」
僕の指摘に姉さんは更に頭を悩ます。
「僕はその人のことが分からないから、それでも伝わるんじゃないかな?」
「祐が納得してないようじゃ絶対伝わらない。はぁ~、やっぱり告白の言葉を考えるって難しいよ…」
「姉さんはどちらかというと考えるより先に動くタイプだからね……あっ、それだったら告白する時に言葉だけじゃなく身振りで伝えたら?それだったら姉さん大丈夫じゃないかな」
ふと浮かんだ案を僕は姉さんに提案した。言葉が駄目なら好きという想いを身振りで伝える方が相手も告白だと気づくと思うし、その方が姉さんは得意だから出来るかもしれない。
「身振りって言われても何すればいいの?」
「それはまぁ、姉さん自身で…」
案を出したのは良かったが、具体的なことは考えていなかった。でもこれは姉さんの告白だから本人が考えるべきだと思い、僕はそれ以上何も言わなかった。
「分かった。とりあえずは参考にしてみるよ。ありがとうね祐。それじゃあもう遅いから、私は部屋に戻るよ」
「告白、成功すると良いね。僕も応援してるから」
「…うん♪。じゃあお休み」
姉さんはそう言って自室に戻っていった。リビングで1人残ってる僕はさっきまで話していたことを振り返っていた。
「姉さんの好きな人って誰なんだろう…。Aqoursの皆は知ってたりするのかな?小学生の頃から一緒だったことは僕も会ってるような気がするけど…」
そう呟きながら姉さんの好きな人を考えてみたが、思い当たる人が全然見つからない。そうしているうちに時間はもうすぐ次の日を回ろうとしていた。
「駄目だ、全然思いつかない。もう寝よう」
考えるのを切り上げた僕は、部屋に戻ってすぐベッドに入って目を閉じた。
~~~~~~
祐より先に自室に戻った私は机にあるノート開いた。そこには私がずっと考えていた告白の言葉が書き並べられている。前に歌詞を書いていた時と同じように、いい言葉が浮かんだらノートに書き写す。それを続けていたらいつの間にかノートの1ページが告白の言葉で埋められてた。これでどうしたら貴方に想いが届くかを考えていたけど、今日の相談で貴方は私の好きな人が自分だと気づいていなかった。あの時はずっと貴方の話をしていたのに。でもこれで私の恋も終わる。そう思っていたのに何故か心のモヤモヤが晴れない。
どうして…?
貴方がまだ私の想いに気づいていないから?
言葉で伝えられていないから?
それとも私がまだ諦めきれていないから?
でも…、
「やっぱり私じゃ駄目なんだよ…」
そう言いながら開いたノートを閉じた。
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