9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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こんばんは、黒雨です。
週一の投稿を目標として頑張っています。
それではどうぞ!


それぞれの思惑

やがて千歌ちゃん達の帰って行く姿が見えなくなった時、姉さんが僕に尋ねてきた。

 

 

「・・・・・・祐は知ってたの?千歌がスクールアイドルを始めようとしてた事」

 

 

「いや。僕も生徒会室に千歌ちゃんが来るまでは知らなかったよ。もちろん部の申請に必要な人数が足りないからまだ部は設立してないけど」

 

 

「もし人数を揃えたらダイヤは部の申請を許可するつもりなの?」

 

 

「千歌ちゃんの前では人数を揃えても認めないって言ってたよ。・・・・・・あの件の事もあるし」

 

 

「やっぱりダイヤもあの時と同じ考えなんだね」

 

 

「姉さんは千歌ちゃんを止めないの?」

 

 

「私に止める権利なんて無いよ。どうせ私が言ったって千歌は止めないからね。私は千歌が危険な道に進まないように見守るしかないんだよ」

 

 

と言って姉さんは家の中に戻って行った。僕もそれに続くように家に入った。

 

その日の夜、明日も早いからもう寝ようとしていたら、携帯の着信音が鳴った。こんな時間に電話かメールを送って来るのは誰なのかと思ったけど、考えてみたら1人しか思い浮かばなかった。携帯を開くと案の定、善子ちゃんからだった。話を聞くと、どうやら自己紹介の時に堕天使ヨハネが出てしまったらしく、明日から学校に行かないらしい。

 

 

「入学2日目で不登校なんて聞いたことないよ」

 

 

「だって、あんな自己紹介してしまったらもう学校行けないじゃない!とにかく!私は当分学校へは行かないわよ」

 

 

「リア充になる目標はどうするの?」

 

 

「それは・・・・・・まだ考えてる」

 

 

「勉強とかはどうするの?」

 

 

「この堕天使ヨハネにかかれば人間の知力を得ることなど造作もないわ」

 

 

「本音は?」

 

 

「それもその時に考えるわ」

 

 

こうなってしまったら善子ちゃんは意地でも学校へ行かないだろうなと思った僕は説得するのを諦めた。

 

 

「・・・・・・分かったよ。学校来る気になったら来るんだよ。僕は待ってるから」

 

 

「・・・・・・ありがとう。祐だけよ。私が堕天使の時でも普通に話してくれるのは。・・・・・・お休み」

 

 

と言って善子ちゃんは電話を切って会話が終了した。

 

次の日、学校に行くために船着き場で降りて学校行きのバスを待っていたら、

 

 

「次のバスを待ってるよりこっちの方が早いわよ」

 

 

と後ろから声が聞こえた。誰かと思い確認をしようと後ろを振り向いた瞬間、後ろにいた人が急に僕の手を掴んで走り出した。走り出した先には車が止まっていて、僕は何故かそれの車内に押し込まれる形で乗ることになった。

 

 

「出発して」

 

 

その人が運転手に指示すると車が走り出した。僕はどんな人なのか顔を覗こうとすると、その人は急に僕に抱き着いてきた。

 

 

「ニネンブゥリデスネー!元気だったユウ?」

 

 

「鞠莉さん!?」

 

 

「YES♪正真正銘のマリーよ」

 

 

小原鞠莉。オハラグループの御令嬢であり、姉さんとダイヤさんの幼馴染だ。だが鞠莉さんはあの件以降、海外へ留学していたはずだが何故ここに。

 

 

「鞠莉さん留学していたはずじゃ?」

 

 

「留学なら飛び級してもう卒業したわ」

 

 

「え?飛び級?」

 

 

「YES♪」

 

 

これ以上留学について聞くと、驚き過ぎてキリがないので話を変えた。

 

 

「じゃあどうしてまた内浦に戻ってきたんですか?」

 

 

「それは、マリーが浦の星女学院の理事長になったからデース!」

 

 

「・・・はい!?鞠莉さんが理事長!?」

 

 

「YES!」

 

 

と驚いている間に車は浦女前に着いた。

 

 

「わざわざ送ってくれてありがとう鞠莉さん」

 

 

「どういたしまして。後、車の中の話は誰にも言っちゃダメよ。もちろん果南とダイヤにもね」

 

 

と言って鞠莉さんを乗せた車は走り去って行った。

 

鞠莉さんと別れた僕は教室に入ると、音楽の教科書を読んでる千歌ちゃんとそれを横で苦笑いしながら見てる曜ちゃんの姿があった。

 

 

「曜ちゃん。千歌ちゃんは何をしてるの?」

 

 

「作曲する人が見つからなかった時には、自分で作曲するって」

 

 

「流石にそれは無理でしょ」

 

 

「私も衣装作りや踊りを見る事は出来るけど、作詞や作曲は出来ないからね」

 

 

「そういえば曜ちゃんは水泳部とスクールアイドル部を兼任するの?」

 

 

「うん!私もやってみたいと思ったし、それに・・・・・・」

 

 

「それに?」

 

 

「千歌ちゃんと一緒に何かをやってみたかったんだ」

 

 

「そうなんだ」

 

 

「うん?何?曜ちゃんや祐君私の事呼んだ?」

 

 

「何でもな~い」

 

 

疑問を浮かべる千歌ちゃんに、僕と曜ちゃんは小さく笑った。

 

その時、先生が教室に入って来て朝礼が始まった。

 

 

「今日からこのクラスに転校生が来るからみんな仲良くしてあげてね。それじゃ入って来て~」

 

 

先生がそう言うと、1人の生徒が教室に入って来た。

 

 

「初めまして。東京から引っ越してきた桜内梨子です。よろしくお願いします」

 

 

桜内さんが自己紹介を終えると周りから拍手の音が聞こえる中、

 

 

「奇跡だよー!!」

 

 

と言いながら千歌ちゃんが立ち上がった。

 

 

「あっ貴方は!?」

 

 

桜内さんは凄く動揺していた。

 

そして、千歌ちゃんは桜内さんの前へ行き、

 

 

「一緒にスクールアイドル始めませんか?」

 

 

と桜内さんに勧誘を始めた。

 

 

桜内さんが笑みを浮かべたので、勧誘成功かと思いきや、

 

 

「ごめんなさい」

 

 

と頭を下げたので千歌ちゃんの勧誘は失敗に終わった。

 

 

 

 

 

 




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