ラーにゆっくりと近づく角竜の獣宿し。それを見ているボロボロのラーは一つ大きな溜め息をついた。
ラー「人間の社会で働いたりしてしているからかな…体が思っている以上に鈍っている。本来の肉体があった頃と違って仕事の時以外は家でダラダラしていたからな…帰ったら筋トレでも始めるかな。」
そう落ち着いた口調で言ったラーにディアブロスの獣宿しは突進を仕掛けようと足に力を入れる。そして突進をはじめとした瞬間、
ラー「ガァァァァァァァ!!!!!」
ラーはとてつもない音量の怒号を発し次の瞬間ラーの体がまるで爆散したかのようにラーの体から雷が発せられた。
ディアブロスの獣宿し「…!?」
突然そのような事が起こったので思わず突進を中止し何が起こっているのか調べているのか雷の発生源を注視する。
雷がおさまり、砂煙も晴れた時そこには頭から角を生やし、髪を先程よりも激しく逆立て体からスパークを放ち、ボロボロだがしっかりと人間の二本足で立っているラーがそこにはいた。ディアブロスの獣宿しはあの角を生やしている生物がラーであることに気づき再び口から黒煙を吐きながら咆哮を発した。咆哮を聞いたラーはディアブロスの獣宿しの方に振り向く。そして自分に敵意と殺意を向けているディアブロスの獣宿しに笑みを浮かべた。しかし、それは親が子にするような優しい微笑みではなく、狂気と殺意に満ちた残忍な笑みだった。笑うと言う行為は本来は牙を剥くという行為である。つまりラーはディアブロスの獣宿しに笑みを浮かべた訳ではなく本気でディアブロスの獣宿しを殺そうと牙を剥いていたのだ。
歩きながらラーはディアブロスの獣宿しに近づいていく。ディアブロスの獣宿しは黒煙を撒き散らしながらラーに突進を仕掛けた。とてつもない速度でラーに突進をするディアブロスの獣宿し。しかし、その突進がラーをぶっ飛ばす事はなかった。ラーの闘気硬化した腕一本でディアブロスの獣宿しの突進は受け止められていた。ラーはもう一本の腕でディアブロスの獣宿しにアッパーを喰らわせる。ディアブロスの獣宿しの体が遥か上空へぶっ飛ぶ…と思いきやラーはアッパーを喰らいぶっ飛ぶディアブロスの獣宿しの尻尾を掴み地面に叩き着ける。そして間髪入れずに上から闘気硬化した両腕で猛ラッシュを喰らわせる。甲殻が砕け血をはくディアブロスの獣宿し、ラーは狂気の笑みを浮かべたままラッシュの勢いを弱める事もせずむしろ強くしていた。
血を吐いて動かなくなったディアブロスの獣宿しに止めを刺そうと頭蓋骨を砕くために再び闘気硬化した拳を振り上げる。
しかし、その腕は別の腕に掴まれ、振り下ろせなくなる。ラーが自分の腕を掴んでいる者に視線を向けると、そこには少し悲しそうな表情のジョーと、この光景を見て顔を青くしているスーラの姿だった。
ジョー「もういい。それ以上はやるな。顔ヤバイぞお前。」
ラー「…ジョー、スーラ…」
ラーは瞳に理性の色を戻らせそう呟く。
ラー「悪い…」
ジョー「お前はその状態の時理性がほぼ無くなるんだろう?何故その状態に…激昂状態になったんだ。」
いつも通りの声色で問いかけるジョー。
ラー「体が鈍っていたのもあって激昂状態にならなきゃ負けていたんだ。」
ジョー「おいおい…ディアブロス程度に負けちまうレベルに鈍ってんのかよ。」
呆れ顔のジョーが嘲笑混じりにそう言う。
ラー「本気の命のやり取りなんて何年ぶりかってくらいだったからな。本来の肉体があった頃は毎日命のやり取りしてたから鈍ることは無かったけど、最近闘いの相手も格下ばかりだし、何もない日は家でダラダラしていたからな。そりゃあ鈍るわ。」
地面に仰向けに寝転がりながらラーはそう言う。
ジョー「だらしねぇなぁ…筋トレでも始めたらどうだ?」
ラー「そうするつもりだ…つうかお前俺に偉そうに言ってるけどお前も何もない日は何かを食ってるか家でダラダラしているじゃねぇか!」
ジョー「俺は食ってるだけでもパワーアップするからな。肉体の構造が根本から違うのだよラージャン。」
ラー「腹立つな…とりあえず肩貸してくれマトモに歩けん。」
ジョーはラーを起き上がらせて肩を貸す。スーラはラーが転ばないように腰の辺りを支えた。二人はラーを持ってきていた荷車に乗せ、ディアブロスの獣宿しの死体も荷車に放り込んだ。
ジョー「本当は暴走した獣宿しのためだけに持ってきた物なんだがな…この荷車。」
ラー「悪かったって。ところでここから依頼人のいる町までどれくらいかかりそうだ?」
ジョー「スーラの事も考慮すると二時間…ラー、もっとかかることになりそうだ。」
ラー「あぁ?」
スーラ「あそこにいる人達、私たちの事じっと見つめてない?」
ジョー「あぁ、それによく見ると口が少し動いている。恐らく、というより100%詠唱魔術だな。」
ラー「くそ…こんな状態に限って…」
ジョー「お前はそこでじっとしていろ。俺一人で充分だ。全員片付けてやるぜ。」
数十メートル離れたところにいる魔術師達から強力な魔術が放たれる。炎、氷、風、といったものが飛んできたがジョーは龍属性ブレスを放ちその全てを消し飛ばした。魔術師達は一瞬驚いたような顔をするが、直ぐに魔術を唱え始める。ジョーは魔術師達に笑みを浮かべながら猛ダッシュで接近していった。
続く