ひとしきり温泉を堪能した後、コホウ・スカイに連れられてラー達はとある人気のない広場に来ていた。無論スーラもしっかり連れてきた。三人がちゃんといるのを確認するとコホウ・スカイは口を開く。
「まず君達は知らないかもしれないから一応説明しておこう。我々魔術師が使う魔術と獣宿しは非常に相性が悪い。よって獣宿しが使える魔術は余程簡単な魔術か、自分の波長に合う魔術だけだ。」
「つまり俺の場合はラージャンとして波長が合う雷系統の魔術は使えると?」
「そうとも限らないんだよね、波長が合う魔術でも使えない物はある。」
ラーの問にスカイは少し気まずそうに答えた。
「随分とめんどくせぇ物なんだな魔術って。」
「ははっ…普通の人間ならここまで面倒くさくないんだけどね。」
ジョーの愚痴にコホウは苦笑いしながら答える。
「異世界の獣達…君達のもといた世界ではモンスターと呼称されている存在はその悉くがこの世界の常識を簡単に覆す奴らさ。特に龍属性とかいうものは僕らの世界の魔術属性には無いものだ、自分達が見たことも聞いたこともない未知の属性を扱う生物…人々に恐がるなと言う方が無理な話さ。」
「それに「いやその話はいいからよ、いい加減魔術教えてくんねぇか?」
まだまだ続きそうなコホウの話しをジョーが強引に遮る
「そうだね、すまない。じゃあ魔術の説明に入ろう。僕が波長が合う魔術でも使えないかもしれないと言ったのは君達の肉体の問題、君達が乗っ取っているその二人の青年の魔術への適性の有無と、有る場合どの系統の魔術に一番適性があるのかという点、魔術を放つ奴だけが魔術師ではないんだ。肉体強化を得意とする魔術師もいるし様々な物に新しい属性をエンチャントするのが得意な魔術師もいるしね。」
「ほぉ~それで俺達の肉体がどの系統に特化しているのか調べるってことか?」
コホウの説明にさっさと魔術を覚えたいジョーが食い気味に口を挟む
「うん、そういうことだね。その前に魔術そのものへの適性の有無を調べるけどね。」
「しかし魔術そのものへの適性なんてどうやって調べるんだ?魔術でそういう事が出来るのか?」
「出来るよ。しかもかなり簡単な部類の魔術だから今すぐにでも調べられるよ。」
「それは凄いな、魔術ってそんな便利な物だったのか知らなかった。」
ラーの言葉にコホウは(眼の魔術は彼にとって便利に入らないのかな)とか思いながら魔術適性を調べる魔術を使うため手を二人の方へ向ける。そうしたら二人のいる場所に淡い光が降り注ぎ二人を包み込む。二人は黙って立っていたがジョーがスーラが光の中にいないことに気付き、光の外側にいるスーラな
「スーラお前は調べないのか?」
と質問した
「私は奴隷商の所にいた頃にもう適性は低いって判定されてるから…」
ジョーの質問にスーラは自嘲が混じった声で答えた
「…まぁお前がそれで良いというなら俺達も特に何も言わないが…」
ジョーはすこし眉を潜めラーはなんともいえない様な顔になったがすぐに切り替え、コホウへ向き直る
「それで?これでもう分かったのか?」
ラーの質問にコホウは
「ワァオ…」
という何とも不安にある呟きを溢した。