ここは王国セオン
その国の城下町にたっている旅館の入口にいるラーとジョーの表情は沈んでいた。
ラー「出禁くらったな…」
あまり温泉に入れていないラーはかなり雰囲気が暗かった。
ジョー「俺らの喧嘩で露天風呂全域が吹き飛んだからな。」
ジョーは特に気にしている様子は無かった。明らかにラーよりもジョーの方が悪いのだが自分が悪いなどこれっぽっちも思っていないのだ。ラーはジョーの性格を知っているので反省してないんだろうなぁと思っています。
ジョー「次何処行こうか?」
早速ジョーがラーに問い掛ける。もうジョーにとっては旅館出禁などとっくに過ぎ去った出来事になっているのだろう。
ラー「お前…ハァ、分かったよ次のを探すよ。勝手に行くのはもうやめろよ。」
ジョー「分かってるって。」
ラーの問いにジョーが笑いながら答える。それをみたラーはまた溜め息を吐き、次の温泉施設を探し始めた。ラーはこの国にどういう温泉があるのかを全く調べずに来ているので、適当に目にはいった温泉施設に入ろうという結構行き当たりばったりな感じでこの国に観光に来ている。
ラー「俺らも随分丸くなったもんだよな。昔(ラージャン本来の肉体があった頃のこと)は自分以外の生物が視界に入った次の瞬間には襲いかかってたからな。」
昔(モンスターだった頃)の自分と今の自分を重ね合わせ、遠い目をしながらそう呟く。昔は金獅子やら、破壊と滅亡の申し子やら呼ばれてた頃は、まさか人間の肉体を得て(正確には人間の肉体を乗っ取って)魔術が存在する世界で親友と共に温泉に入るなんて絶対に予想できないだろう。
ジョー「そうだな。それによ、俺はよく大食いって言われるけど昔(イビルジョー本来の肉体があった頃)に比べたらありえねぇくらい少食になってるんだぜ。」
ジョーも昔を思い出しながら言う。こいつもモンスターだった頃は健啖の悪魔だの貪食の恐王だの呼ばれていた筋金入りの化物である。
ラー「俺らが初めてあったときの事覚えてるか?」
地図を見ながらラーが問い掛ける。
ジョー「そりゃあ覚えてるだろ。あの時のはさっきのちょっとした喧嘩とは違ってマジの殺し合いだったからな。命の奪い合いをしていた相手とまさか親友になるなんてな。」
ジョーはそう懐かしそうに言う。
ラー「何度も会っているうちにいつの間にか意気投合してたしな。でも俺はお前の事を親友でありライバルだと思っているからな。」
行き先を決めたのか地図を閉じながらラーはそう言う。
ジョー「そういえば結局決着は着いていなかったな。いずれやるか、続きを。」
ジョーはそう呟く。それを聞きながらラーは顔に少し笑みを浮かべながら
ラー「あぁ。いずれな。」
といった。
そんなこんなで次の温泉施設に着いた。ラーが選んだのは先程の旅館のような大きな施設ではなく、質素な雰囲気の小さな温泉宿だった。
ラー「この宿の温泉は完全露天だ。そのせいで客は少ないみたいだがな。」
ジョー「露天のよさを分からないとは、温泉巡りの九割は損してるな。」
ラー「え?そんなレベルで損してんの?」
そんな会話をしながら受付を済ませ、二人は脱衣を済ませ、浴場に出た。この宿の温泉は大きな温泉一種類のみなので、それも客が少ない原因の一つだろうと宿に入る前にラーは言っていたが、誰かが温泉に入っていた。先客のようだ。
ジョー「なんだ、貸しきりのような状態かと思っていたんだがな。」
ラー「文句言うな。いいから入るぞ。」
そう言いながら湯に入ると先客がこちらに気づき、話しかけてきた。
先客「君たちもこの湯に浸かりに来たんだね。いや~本当にいい湯だよこの温泉は。」
ラー「そうっすねぇ~」
ジョー「あ~気持ちいい。疲れが取れるぜ~」
ラー「お前疲れるほど動いてないだろうが。」
どそんなことを喋っていると、先客が再び話しかけてきた。
先客「突然の質問だけどいいかな?」
ラー「あぁいいっすよ。」
先客「君たちも獣宿しだね?」
その言葉に二人は驚いたような表情をみせる。ラーはすぐさま先客に眼の魔術を使う。
ラー「コホウ・スカイ、魔術師であり飛竜種型の獣宿しか。」
コホウ「眼の魔術かい。まさか君も魔術師だったとは。」
ラー「この眼の魔術以外使えない(使わない)がな。」
コホウは落ち着きながら言う。
コホウ「別に敵対しようって訳じゃないよ。君達も僕と同じように獣を宿しているから、ちょっと話を聞こうと思っただけだよ。」
ラー「まぁ獣宿しには獣宿しにしか分からない独特な気配をしているから一発でわかっても特におかしくはないか。すまないな、敵対するような姿勢をとってしまって。」
コホウ「何、気にすることはないさ。多分僕が君と同じ立場だったら君と同じ事をしているだろうからね。」
そう言いながらコホウは湯から上がる。
コホウ「ふう、入りすぎた。さて、僕はもう上がろうかな。あ、そうだ君達も分かってると思うけど、この世界では獣宿しは基本的にはあまり世間には好かれていない。だから獣宿しって事を隠してたり、それが原因で様々な差別を受けている子がいるらしいからさ。君らがその子達を探して保護してくれないかな。」
ラー「…それは依頼か?」
コホウ「いや、お願いだ。だから別にハッキリ嫌だと言ってくれて構わない。」
ラー「…見つけたらなるべく保護してやるよ。そして家の雑用係にでもしようかな。」
コホウ「…素直じゃないね。ありがとう感謝するよ。それじゃあ僕はこれで。」
そう言いながらコホウは出口へ向かっていった。
ラー「…ふん…変な野郎だ。」
続く