遊戯王 徒然決闘集   作:紅緋

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ソリティアの時間だオラァ!


VRAINS:先攻???VS後攻??????(前半)

 

「…………暇だ…」

 

 リンクヴレインズのスラム街でブラストは1人そう呟いた。

 先日、ハノイの騎士とデュエルし、両者納得の上でアンティカードを得たのは良い。その後にハノイのリーダーであるリボルバーからカードを追加でもらったのも良い。あれからデッキを組み直し、デッキが火力増し増しのビートバーンになったのも良い。しかし――

 

「何であれから誰も来ないんだよ……ハノイでも誰でも良いから来いよぉ…」

 

 ――対戦相手がいないため、ブラストは孤独(ぼっち)だった。デュエルジャンキーなブラストは1日最低でも10デュエルはしないと満足できない。以前は何だかんだで挑戦者なりハノイが来たので良いが、今はスラムの風景通りに人っ子1人居ない。ブラストを除いて。兎は寂しいと死ぬんだぞオラァ、と内心で思いつつも、親戚の家で半ば放置飼育されていた兎は5年くらい生きていたから存外タフな生物かもしれないとセルフツッコミで時間を無為に使う。

 

「ちくしょう、折角ワンターンスリィクラッキングゥ…できるコンボを考えたのに試せる相手が居ねぇ。他のデッキも使いたい。融合したい。シンクロしたい。エクシーズしたい。ペンデュラムしたい。リンクしたい――あぁあああぁっ!! もう、何で俺はこんなところ拠点にしちゃったかなぁ!? 全然人が来ないじゃんちくしょう!」

 

 周りに誰も居ないことを良いことに、ブラストは仰向けに寝転び、駄々っ子のように両手足をジタバタと動かす。一般人が見れば『何なのあのA・ジェネクス・ドゥルダーク…』とドン引きものだ。機械族のカッコ良さの欠片も感じない。

 

「――っ!? いっっ痛ぁ……!」

 

 うがぁあああっ、と振るっていた両手が竜を模したオブジェクトの角にぶつかる。右手小指の強打だ。仮想空間であるが、多少の感覚は共有されるリンクヴレインズでもこの痛みは辛い。タンスの角に足の小指でだけなかっただけマシだが、それでも痛いものは痛いのだ。

 

「――っ、このクソオブジェクトがぁっ!!」

 

 そして八つ当たりのようにブラストはそのオブジェクトに思いっきりラリアットを食らわせる。内心で『アルティメット・パウンド』と叫びながら繰り出すラリアットは虚しい。しかし、仮想空間と言えどデュエリスト。その身体能力は高く、虚しさ全開のラリアットでも問題なく竜のオブジェクトは綺麗に真っ二つに折れる。

 

「ハッハァー! この俺様に楯突いた報いだ! ざまぁみろ!」

 

 清々しいほど浅く器が小さい。たかがオブジェクトを破壊しただけで歓喜できるブラストは、悪の親玉というよりも戦闘員Aといった立ち位置の方が近いだろう。まるで某世紀末なモヒカンの如くハイテンションで浮かれている。

 

「フハハハハ! 所詮はデータの物体よ! この俺様に勝てる訳が――」

《隠しコードの起動を確認しました。ただ今よりアバター:ブラストの強制転移を開始致します》

「――うぇ?」

 

 瞬間、ブラストは物理的にも浮かされた。

 

「え、ちょ、待って! 隠しコードって何!? 俺ここに半年くらい居るけど、そんなの知らないんだけどぉ!? 半年経ってから明かされる衝撃の真実やめて! てか強制転移って何!? コントロール交換!? 相手誰だよ!? ――って、うわっ浮いてる! 浮いてるよ俺! ちょ――ヘルプ! ヘルプミー! 助けて! GO鬼塚でもブルーエンジェルでもハノイでも良いから誰か助けて!」

 

 慌てふためくブラストを余所に、その体は段々と宙に浮く。飛行能力のあるアバターでは多少なりとも抵抗できたかもしれないが、飛行能力など一切なく、宙に浮く経験もしたことがないブラストはただジタバタと泳ぐように手足を動かすだけ。あたふたと今度は本気で焦るが、強制執行されたプログラムにブラストが逃れる術はない。

 

「オイ、マジかよ…! 夢なら覚め――」

 

 三下、あるいはある種の大物のような台詞を最後にブラストの体が蒼光に包まれる。一瞬、強く発光したが、瞬く間にブラストはその場から忽然と姿を消していた。

 

 

 

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 

 

 

「アイター!」

 

 蒼光と共にブラストは姿を現すも、無様に顔面から地面へと熱烈な(マスク越しの)口づけを交わす。一瞬、パキンと金属製のナニカが割れるような音がしたが、そんなことよりも顔面の痛みの方が気になるブラストはそんな些細なことには構っていられない。

 

「イタタタ――ん? どこ、ここ?」

 

 表面が僅かに剥げたマスクをさすりながらブラストはゆっくりと立ち上がった。先ほどまで自分が居たスラムとは違い、さながら古代の神殿のような場所にグポォンと謎のSEを出しながら目をパチクリと点滅させる。床・壁・天井と順に見渡すとそこには至るところにドラゴン・竜・龍の壁画が一面に描かれていた。しかもそのドラゴンはデュエルモンスターズでよく見るメジャーなものから、こんなのも居たなぁと懐かしいもの、マイナー過ぎてこんなの居たっけ、というぐらいありとあらゆる種類の、狂気的(・・・)な数のドラゴンが所狭しと神殿を飾っている。

 

(えっ――何このドラゴン厨空間。超怖いんだけど)

 

 ゾッと背筋を強張らせるブラスト。その反応は例えるならヤンデレストーカーの部屋に意中の相手の写真が床・壁・天井に所狭しと埋め尽くされている様を見せられたに等しい。ここは自分が拠点にしていたスラムの何十倍も恐ろしいと直感する。身を震えさせながら、ゆっくりと立ち上がり、周囲を確認。こんな危険なところから一刻も早く去りたいと、やや小走りで奥へと進む。

 

「――出口。先ずは出口を探す」

「何故出口を探す必要がある?」

「バッカお前、こんな気味が悪いところから速攻で出たいからに決まってんだろ」

「気味が悪いとは随分と無礼な者だ。ここは多くの竜に囲まれた究極の空間だろうに」

「窮屈の間違いだろ」

 

 小走りで進む中、不思議とブラストは孤独を感じなかった。独り言のつもりで呟いた言葉に返答する声が聞こえるが、例え幻聴だとしても今のブラストにとっては精神的支柱の如き存在感だ。やはりこういう時のためにある程度の親交を持った仲間が必要だろうかと、自分のぼっち具合を本気で心配し始める。

 とにかく出口だ。イマジナリー会話相手は不幸にもヤンデレ系ドラゴン厨だが、それでも居ないよりはマシだと考える――

 

「――取り消せ、今の言葉…!」

「――あぁん?」

 

 ――が、突然イマジナリー会話相手に腕を掴まれる。おかしい、自分は1人でこの薄気味悪くてドラゴン至上主義な神殿の通路を歩いていたハズだ。イマジナリー会話相手と物理的に接触できるなんて、とうとう自分も気が触れてしまったかと、背後を振り返る。

 

「聞こえなかったか? ――今の言葉を取り消せ…!」

(…………ひぇっ…!)

 

 するとそこには美少女が居た。長い蒼髪をポニーテールでまとめ、ファンタジーなへそ出しルックで女魔術師感のある衣装を身に纏い、本来であれば愛らしいであろう顔が憤怒の色に染められている。

 その表情を見てブラストは思った。超怖ぇ、と。思わず悲鳴を上げかけたが何とか小声に留めた。伊達に何年も悪役ロールやってねぇんだぞこっちは、とでも言うように機械的なアイカメラを再びツィマッド社感溢れるグポォンと、謎SEで威嚇しながら少女を睨みつける。

 

「誰なんだアンタ一体。味方なのか? 俺様と一緒にこの神殿から脱出――イダ、イダダダダダダっ!?」

「3度目はないぞ。先ほどの言葉を取り消せ」

「分かった! すまなかった! 取り消す! 取り消すからそのアームロックを解除してくれ! このままじゃ俺の右腕が白い悪魔に切られた赤いゲ○ググみたいになっちまう!」

「よかろう」

 

 ミシミシピキピキと甲高い金属音が響き、関節部から火花が出始めて焦ったブラストは悪の親玉ロールのことなど半分忘れ、素直に少女に謝った。少女は傲慢な態度でそれを許し、ブラストの右腕を解放する。

 ブラストはすぐに右腕部に異常がないか軽く肩を回したり、グーパーを繰り返してマニュピレーターにも問題がないことを確認して安堵の息を零す。

 

「ふむ……余の無礼千万コードにどんな奴が引っ掛かったと思ったが、ただの俗物だったか」

「(何だその変なネーミングセンスのコードは)……あの強制転移はアンタの仕業か」

「如何にも。余がリンクヴレインズの至る所に竜の石造を配置し、それに危害を加えた者をこの場所へ強制エリア移動。その者にドラゴンの荘厳さと強靭さと可憐さと愛らしさとふつくしさとを強制的に叩き込ませるためだけに仕組んだのだ」

「何コイツヤバイ(強制移動のプログラムってスゲーなアンタ)」

「汝、言動と本音が逆だぞ。まぁ良いだろう。余は寛大故に、今の発言も余を褒め称える一句として受け取っておこう」

 

 何なのこの人、とドン引きするブラスト。世の中には色んな人間が居ることはわかるが、それでも目の前の少女は群を抜いておかしい。また、良く見て気づいたが少女の姿は完全に≪ドラゴン・ウィッチ‐ドラゴンの守護者‐≫の色違いアバターだ。それだけでこの少女がどれだけドラゴンに魅入られ、入れ込んで、溺愛しているかが分かる。これはハノイの騎士よりもヤバイ奴に絡まれてしまったと、ブラストはため息をついた。

 

「さて本題に入ろう。汝は余が設置した竜の石造を破壊した。これに相違はないな?」

「あー……うっかりやってしまったかもしれねぇ。決して故意じゃあねぇんだが……修理費用は持つから勘弁しちゃあくれねぇか?」

「その愚直なまでの素直さには感心する。まぁ余も逆鱗を触れられた竜ではないので、眠れる龍を起こすこともないだろう」

(何で例えが一々ドラゴンなんだ…)

「修理費用を出すなら余も無碍にはせん。そこまでするのであれば、余としても汝に修理費用に見合う分だけのことを申せ。何でも聞いてやろう」

「よし、じゃあデュエルだ」

「即断即決か。余好みの答えだ」

 

 何だ、この少女良い奴じゃん! とブラストは機械式の掌をクルリと540°回転させる。

 最初はおぞましいところに連れて来られたと内心ビクビクしていたが、デュエルができるのなら何の問題もない。それに新たに調整した闇機械デッキを試すことができる、と新デッキの準備をする。

 

(――って、ちょっと待て俺。ここでハノイが使っていたカードなんて使ったら俺がハノイ疑惑持たれるじゃねぇか! くっ、折角新デッキを試せると思ったのに…!)

 

 しかし、生憎と目の前の少女は(色々と特異的な言動と行動が過ぎるが)一般人だ。巷を騒がせているハノイのカードが入ったデッキを試せるハズがない。仕方ないか、と呟きながらブラストはもう1つのデッキを選択する。これは普段の自分のイメージとはかけ離れているので使用頻度はほとんどないが、この少女相手ならば問題ないと感じた。良くも悪くも、この少女は自分のことを知らない(・・・・)。ならば先入観のないまっさらな状態なのだ。ならば例え初見殺し気味なこのデッキでも良いだろうと、ブラストは(ない)口端を吊り上げる。

 

「――言っておくが、余は強いぞ?」

「その言葉、そのまま返すぜ。せめて1ターンは生き残ってくれよ? あー…」

「あぁ、そうう言えば名乗りを上げていなかったな。そうさな、余のことは''エンプレス''とでも呼ぶが良い」

「オーケー、俺様はブラストだ。よろしく頼むぜ、女帝(エンプレス)さん。精々足掻いてみせろや」

「その言葉、そのままお釣り付で返却してやろう、爆風(ブラスト)よ」

 

 共に一定の距離のままデュエルディスクを構える。中空に互いの手札・ライフポイント・アバター名がソリッドビジョンで表示され、先攻・後攻を決定するランプもデュエルディスクに点いた。

 相手がどんなデッキを使うかはブラストでも大まかに予想できる。相手に合わせて某種族を装備する機械族デッキも考えたが、それだと文字通り相手の逆鱗に触れそうなので今回は割愛。純粋に使う機会のなかったこのデッキを大活躍させてやろうと、三下らしく(ない口と舌で)舌なめずりしながら相手を見据える。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 

 

 

「余の先攻だ。先ずは魔法カード≪竜の霊廟≫を発動。デッキからドラゴン1体を墓地に送る。さらに墓地に送ったモンスターが通常モンスターだった場合、もう1体ドラゴンをデッキから墓地に送ることができる。余は≪ダークストーム・ドラゴン≫を墓地に。こやつは場・墓地に存在する時は通常モンスターとして扱うデュアルモンスター。よって≪竜の霊廟≫の効果でもう1体のドラゴン――≪エクリプス・ワイバーン≫を墓地に送る。 墓地に送られた≪エクリプス・ワイバーン≫のモンスター効果を発動。このカードが墓地に送られた場合、デッキからレベル7以上の光か闇のドラゴンをゲームから除外する。余はデッキから≪亡龍の戦慄-デストルドー≫をゲームから除外」

(やっぱりドラゴンだよなぁ…)

 

 この場所、この相手、この言動でドラゴン使いでなければとんだ詐欺だ、と思うブラスト。予想通りと言えば聞こえは良いのだが、どうも相手から――というよりも、相手のデッキから不穏な空気を感じる。初手で魔法カードを使い、墓地肥やしと間接的なサーチ除外を行った。ただそれだけ形容しがたい畏怖を感じるのだ。今まで対峙してきたどんな相手と違う、異質な雰囲気をブラストはマシンアバターの肌で感じ――微笑む。

 

(イイじゃねぇか…さながら自称で強いって言うだけのことはある。楽しいデュエルになりそうじゃねぇの…!)

「ふむ、中々狂喜的な顔をするのだな汝は――」

 

 そんな自分の表情を見透かされてか、対峙するエンプレスが感心したような顔になる。しまった、つい頬が緩んでしまったとブラストは反省した。まだ相手の手の内を見てもいないのに、期待が強く顔に出過ぎたことへ若干の気恥ずかしさを感じる。

 

「――まぁ、余の最終的な布陣を前にして、その表情を絶望一色に塗り潰すのも一興か」

 

 しかし、そんなブラストの気恥ずかしさなど歯牙にもかけぬ、といった表情でエンプレスは手札のカードを風を切るようにデュエルディスクへ挿し込む。

 

「余は墓地の闇属性≪ダークストーム・ドラゴン≫と光属性≪エクリプス・ワイバーン≫をゲームから除外し、手札から≪輝白竜ワイバースター≫と≪暗黒竜コラプサーペント≫をそれぞれ特殊召喚。除外された≪エクリプス・ワイバーン≫の効果発動。このカードがゲームから除外された時、自身の効果で除外したモンスター、≪デストルドー≫を手札に加える。そして手札に加えた≪デストルドー≫を捨て、≪調和の宝札≫を発動。手札の攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーを捨てることでデッキからカードを2枚ドローする。次いで手札から≪聖刻龍-ドラゴンヌート≫を召喚し、墓地の≪デストルドー≫の効果発動する。自分フィールドのレベル6以下のモンスター1体を対象にライフを半分払い、対象にしたモンスターのレベル分だけ自身のレベルを下げて特殊召喚する。さらにカード効果の対象になった≪ドラゴンヌート≫のモンスター効果発動。自身がカード効果の対象になった時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族・通常モンスター1体を攻守0にして特殊召喚する。余はデッキから≪竜核の呪霊者≫を攻守0にして特殊召喚」

「……は?」

 

 つい呆けた声が出たブラスト。30秒と経たず、いつの間にか相手の場には5体ものモンスターが揃っている事実、並びにその自身の手札とライフを豪快に消費するプレイングは青天の霹靂のようなものだ。自分もモンスターの大量展開こそするが、ここまで早くモンスターを5体並べたことなどない。もしや自分はとんでもない相手にデュエルを仕掛けてしまったのかと、ブラストはここで初めて冷や汗を感じた。

 

「≪竜核の呪霊者≫をリリースし、魔法カード≪アドバンスドロー≫を発動。自分場のレベル8以上のモンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする――ふぅむ、ではそろそろ回していくとするか。現れよ、至高の龍道よ! 召喚条件はトークン以外のレベル4以下のドラゴン族2体! 余は≪ワイバースター≫と≪ドラゴンヌート≫をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 現出せよ、リンク2! ≪ツイン・トライアングル・ドラゴン≫!」

 

 2体のドラゴンが光となり、天上のサーキットへ吸い込まれる。一瞬、紫黒色の強い光が溢れ、サーキットから1体のドラゴンが姿を現す。

 

「≪ツイン・トライアングル≫のモンスター効果。こやつがリンク召喚に成功した時、500ライフを支払うことで墓地よりレベル5以上のモンスター1体を効果無効・そのターンの攻撃宣言不可で蘇生させる。地より出でよ、≪竜核の呪霊者≫。さらにフィールドから墓地に送られた≪ワイバースター≫の効果発動。デッキから≪コラプサーペント≫を手札に加える。手札から魔法カード≪闇の誘惑≫を発動。デッキからカードを2枚ドローし、その後闇属性1体を手札から除外。余は2枚ドローしてから≪コラプサーペント≫を除外する」

(この(アマ)、サーチだけじゃなく、ハンドアドの確保と情報アドの処理まできっちりしてやがる…!)

 

 場のモンスターの数が減っては増え、手札にサーチしたカードがいつの間にかコストにされて増え、という(自分も相手の事を言えないのだが)プレイングに感心と焦燥を感じるブラスト。未だ相手の場には4体のモンスターと4枚の手札。通常召喚権こそ使っているが、ドラゴン族は豊富な特殊召喚方法が強みだ。ここからさらにリンク召喚を重ねられる可能性もあると、ブラストは気を引き締める。

 

「続けて行くぞ――再び現れよ、至高の龍道よ! 召喚条件は同属性・同種族の効果モンスター2体以上! 余は闇属性・リンク2の≪ツイン・トライアングル≫、≪コラプサーペント≫、≪デストルドー≫をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 現出せよ、リンク4! ≪闇鋼龍ダークネスメタル≫!」

 

 続けて――というよりは到達点の1つ(・・)としてエンプレスの場に黒龍が姿を現す。古に伝えられし伝説の黒竜に酷似した彼の龍は、その名に違わず鈍く輝いた龍鱗を煌めかせ、妖しくも艶やかな存在感を放っていた。

 初動から全力全開でデッキを回していくエンプレスにブラストは乾いた笑いさえ出て来る。

 

「初っ端からリンク4かよ…!」

「この程度で驚かれても困るな。まだ序の口であるぞ? 自身の効果で特殊召喚した≪デストルドー≫はデッキの一番下に戻り、墓地に送られた≪コラプサーペント≫のモンスター効果発動する。こやつが場から墓地に送られた場合、デッキより≪ワイバースター≫を手札に加える。余はここで(・・・)リバースカードを2枚セット。そして≪竜核の呪霊者≫をリリースし、手札から2枚目の≪アドバンスドロー≫を発動――それにチェーンして手札を全て捨て、速攻魔法≪連続魔法≫を発動する。これにより余は≪アドバンスドロー≫の効果のみを2回適用する」

「おい馬鹿やめろ」

「やめる訳がなかろう阿呆め。余は手札の≪ワイバースター≫を捨て、≪アドバンスドロー≫2回分の計4枚をドローする。ふむ、こう来たか、結構結構――では≪闇鋼龍≫のモンスター効果発動する。墓地か除外されている自分モンスター1体を効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する。帰還せよ、≪ダークストーム≫」

 

 ≪連続魔法≫はブラストも愛用しているから分かる。手札が3枚の時に2枚ドロー系の通常魔法と組み合わせれば墓地にモンスターを送りたい時や、現状では不要なカードを処理するには最適なカードだ。しかもサーチした≪ワイバースター≫をそのコストに充てることでまたも情報アドバンテージを帳消しにしている。相手のことを言える立場ではないが、エンプレスの厭らしいプレイングにブラストは顔を顰めた。

 

「≪闇鋼龍≫の効果で特殊召喚したモンスターは場を離れる時デッキの一番下に戻り、この効果の発動後、余はリンク召喚できない――尤も、するつもりもないがな。余はセットしていた魔法カード≪儀式の下準備≫と≪ダークストーム≫をリリースし、セットしていた3枚目の≪アドバンスドロー≫を発動する。≪儀式の下準備≫はデッキから儀式魔法カードとそのカードに記されたモンスターを手札に加え、≪アドバンスドロー≫でさらにデッキからカードを2枚ドローする。余は≪祝祷の聖歌≫と≪竜姫神サフィラ≫を手札に加えた後、デッキからカードを2枚ドローする」

「何だあの手札の暴力」

 

 顰めっ面から吐き捨てるような口調でブラストは愚痴る。4枚だったエンプレスの手札がセットしていた2枚の魔法カードを使っただけで倍の8枚になった。ただそれだけのことだが、場にはリンク先を3箇所も確保している≪闇鋼龍≫が存在しているし、あれだけ潤沢な手札ならば如何様にもモンスターを展開できるだろう。壁でも相手にしていろ、と内心で特大ブーメランを放りつつブラストは冷めた眼差しをフィールドに向ける。

 

「ではここからは全力全速前進全開と行くとしよう――余は儀式魔法≪祝祷の聖歌≫を発動! 手札のレベル5≪聖刻龍-アセトドラゴン≫と同じくレベル5≪聖刻龍-ネフテドラゴン≫をリリースし、レベル6の≪竜姫神サフィラ≫を降臨させる! 祝いの祷りに応え、聖ずる歌に導かれし竜姫の姿をその眼に焼き付けよ! 儀式召喚! 光臨せよ、レベル6! ≪竜姫神サフィラ≫!」

 

 天上より幾本もの蒼い光柱がエンプレスの場に降り注ぐ。どこからともなく聞こえる無駄に壮大なコーラスをBGMに、光柱が1本の巨大な光となる。一瞬だけ蒼光が強く輝き、光は竜とも人とも言える姿を形成していく。段々と光が弱まり、その全貌が明らかとなる。

 天使の如き至上の翼、蒼玉の如き煌めきの龍鱗、貴さと美麗さを合わせ持った、まさしく''姫''と言う他ない姿にエンプレスは恍惚とした表情を見せ、ブラストはそんな彼女を白い目で見ていた。

 

「ふぅむ、流石は余の究極至高絢爛華美にして神聖珠玉高貴可憐なドラゴンだ。いつ見ても最上最高最良な御姿よ…」

「……お、おう…」

「だが、しかし、まるで全然、姫を守るに、この場は些か不十分。案ずるな、すぐに手練れを配置する故、何も問題はない」

「こっちは問題大アリだこの野郎!」

「知らぬ、そんなことは余の管轄外だ」

「てめぇ!」

「余はリリースされた≪アセトドラゴン≫と≪ネフテドラゴン≫のモンスター効果発動! こやつらがリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族・通常モンスター1体を攻守0にして特殊召喚する! 現れよ、ドラゴン族・通常・ペンデュラムモンスターの≪竜剣士マスターP≫! 同じく≪竜魔王ベクターP≫!」

 

 若干――というよりも大分イッタトリップをかましているエンプレスにブラストは声を荒げるが、アウト・オブ・眼中とでも言うように展開が続く。

 続けて現れたのは竜の剣士と竜の魔王。一昔前であればどこぞの人型機械をファンタジー世界にしたアレかな、と感じざるを得ない。

 

「ここからもノンストップでゆくぞ! 余は≪マスターP≫と≪ベクターP≫をリリースすることで、エクストラデッキよりこの融合モンスターを特殊召喚する! 瀑流を剛進せよ! 融合召喚! 降臨せよ、レベル8! ≪剛竜剣士ダイナスターP≫! さらに手札よりスケール2の≪魔装戦士ドラゴディウス≫とスケール7の≪魔装戦士ドラゴノックス(ノックス!)≫でペンデュラムスケールをセッティング! 揺れよ龍魂の振り子! 星振に応じ、その眠りから目覚めよ! ペンデュラム召喚! 現れよ、竜姫の精竜達よ! エクストラデッキより≪マスターP≫と≪ベクターP≫! 手札より≪竜剣士ラスターP≫!」

「今度はモンスター6体かよ…」

 

 手札8枚からの儀式召喚、特異な融合召喚に、ペンデュラム召喚の流れで残りの手札は1枚になったものの、エンプレスの場には6体もの竜が並ぶ。内1体はリンクモンスター、内1体は儀式モンスター、内1体は融合モンスター、他3体はペンデュラムモンスターと、傍から見ればおぞましい光景だ。さしものブラストも半ば辟易した顔でフィールドを見る。流石にこれ以上はないだろうと、ため息を吐きつつフィールドを見て――その中にレベル4のモンスターが3体、その内1体にチューナーが存在していることに気付く。

 

(――おい。まさか――まさか、こいつ――っ!)

「余はレベル4の≪ベクターP≫にレベル4の≪ラスターP≫をチューニング! 劫火を猛爆(たけは)ぜさせよ! シンクロ召喚! 招来せよ、レベル8! ≪爆竜剣士イグニスターP≫! ≪イグニスターP≫のモンスター効果発動! デッキより『竜剣士』1体を守備表示で特殊召喚する! 余は2体目の≪マスターP≫を特殊召喚! さらにレベル4・ペンデュラムモンスターの≪マスターP≫2体でオーバーレイ! 暴風を昇撃させよ! エクシーズ召喚! 顕現せよ、ランク4! ≪昇竜剣士マジェスターP≫!」

 

 ブラストの想定した最悪の上を行く展開に、当人たるエンプレスは満足気な表情を浮かべる。場には計5体、しかも全てがエクストラデッキから特殊召喚されたドラゴンなのだ。例え病的なまでのドラゴン好きでなかろうと、この光景には言葉を失う。内心でブラストは『加減しろ莫迦!』と悪態をつくが、ここは素直にこの盤面を作り上げたエンプレスを称賛すべきなのだろうかと、複雑な感情を抱いた。

 

「ふぅむ、これは中々の場だな。余もそれなりに満足したぞ」

「じゃあさっさと俺様にターンをくれ。俺様は我慢弱くて落ち着きがなくて短気で粗暴な男なんだ」

「それは汝の行動と発言から容易に察せられる。まぁ待て。余はリバースカードを1枚セットし、ターン終了――」

「よし、俺様のターン」

「――待てと言っておろうが。ターン終了時に≪マジェスターP≫の効果でデッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加える。余はデッキから≪アモルファージ・イリテュム≫を手札に加える。そしてここで我が愛する≪サフィラ≫の尊き効果を発動。デッキからカードを2枚ドローし、1枚捨てる。ここで捨てた≪コドモドラゴン≫のモンスター効果を発動する。こやつが墓地に送られた時、バトルを放棄して手札のドラゴン1体を特殊召喚する。余は先程手札に加えた≪アモルファージ・イリテュム≫を特殊召喚」

「……俺様のタ――」

「最後に速攻魔法≪超再生能力≫を発動する。このターン、余が手札から捨てたドラゴン、及びリリースしたドラゴンの数だけデッキからカードをドローする。これにより余は7枚ドローする。手札枚数制限で1枚だけ捨てる――うむ、これで余のターンは終了だっ!」

 

 傲岸不遜そうでありながら、愛らしい、やりきったと顔に描いたような表情でエンプレスはブラストへターンを譲渡する。

 一方、やっとターンが回ってきたブラストは――

 

「…………」

 

 ――若干、いや、かなり冷めた、それも白い目か。否、すっかりと生気を無くしかけた、虚ろな眼差しをエンプレスの方へ向ける。

 

   リンクモンスター、攻撃力2800の≪闇鋼龍ダークネスメタル≫

    儀式モンスター、攻撃力2500の≪竜姫神サフィラ≫

    融合モンスター、守備力2950の≪剛竜剣士ダイナスターP≫

  シンクロモンスター、攻撃力2950の≪爆竜剣士イグニスターP≫

 エクシーズモンスター、守備力2200の≪昇竜剣士マジェスターP≫

ペンデュラムモンスター、攻撃力2750の≪アモルファージ・イリテュム≫

 

 エンプレスは度重なるライフコストにより、今のライフポイントは半分以下の1500だが、それだけのライフを犠牲にした甲斐あって、盤面は美しくも凶悪だ。

 フィールドには6属性全てのドラゴンが勢揃いしている上、リバースカードも1枚。ペンデュラムゾーンにはバトル時に手札を捨てて攻撃モンスターの攻撃力を半減させる≪ドラゴディウス≫と、バトル強制終了効果を持つ≪ドラゴノックス(ノックス!)≫が居る。さらに場に居る≪イリテュム≫の所為で自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。その≪イリテュム≫も、≪ダイナスターP≫の戦闘・効果破壊耐性によって守られている。

 しかも手札は6枚あるので、返しのターンの反撃も充分。

 思わず『詰めデュエルかな?』とブラストは現況にただただ渇いた叫び――ではなく、笑いが出てくる。

 

「――まぁ、なるようになるだろ」

 

 しかし、何もできない訳ではない。今の手札であれば自分のターンで返せる可能性がある。ドローによっては返せるどころか、倒せる(・・・)可能性もあるのだ。悲観するにはまだ早い。むしろ倒し甲斐さえある。

 

「さて――そんじゃいっちょ、ドラゴン退治といこうじゃねぇの!」

 

 先攻こそ譲ったが、今回の自分のデッキはどちらかと言えば後攻の方が良い。相手の綺麗な盤面を吹っ飛ばし、そのドヤ顔を絶望顔に変えてやる、とでも言うように、ブラストは昂揚したままデッキからカードを引いた。

 




先攻???VS後攻??????
      ↓
先攻全召喚VS後攻??????



スカルデッドが来た辺りで出来ましたけど、6属性揃えるために闇鋼龍採用。なお、しょご――守護竜を絡ませると対象耐性+戦闘耐性+効果破壊耐性+魔法カード(ほぼ)無効化のドラゴン盤面出来ました。
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