「起きなさい、デイダラ」
母さんの声がする。
「今日から学校だろ。遅れたら恥かくぞ。まあ、一発目の印象としては中々だがな」
父さんの声がする。
「お父さんも馬鹿な事言ってないで……ほら!お友達も来たわよ!」
「デイダラ!学校行こうぜー!」
なんでも無い1日。
なんて……幸せなんだろう。
全部俺の欲しかったものだ。
里にある家。
母さんが生きている。
父さんが壊れていない。
普通の友達。
人柱力でも何でもない自分。
全部、自分が欲しかったものだ。
けれど、あくまで過去の話だ。
それを認識した瞬間、目の前の景色はどろどろと溶け、ドス黒く視界を埋めていく。
それが晴れると元いた場所に戻っていた。
いや、場所は移動していない。
ただ、意識だけ切り離されていただけだ。
しかし、これでハッキリした。
この森全体に幻術をかけていた張本人が。
ミヤビの母親ではなく、ミヤビ自身だ。
森全体を幻術にかけるなどどんな幻術使いかと思えば万華鏡写輪眼なら納得だ。
かかった俺としてはどういう能力か分かるが、使い勝手が良いのか悪いのか。
ミヤビを見ると驚いた表情をしてこちらを見ている。
「なんで…!?なんで解けるの!私の目は
……
「お前の力はあくまでも幸せの再生だ。既に決別して生きている俺には効かない」
実際効かない訳でも無い。
人間、決別したと言っても心の奥底では残っているものがあるものだ。
普通の人間ならそうだろう。
しかし、俺は普通じゃない。
身体も精神も。
違うものが混ざり混ざっている俺は身体にかける幻術というものが聞き辛い。
万華鏡写輪眼なら効くだろう。
実際、ミヤビの目には簡単に掛かってしまった。
更にミヤビの能力は幸せの体現に力が行っている。
本人の深層心理まで潜り込むなど厄介極まりない。
だが、それだけだ。
飲まれなければ…その幸せを捨てればこの術は解ける。
それがどれだけ酷なことか。
それを1番理解しているのがこの少女だろう。
「なんで貴方は……そうやって普通でいられるの?」
どうして、と呟いていた少女が聞いてくる。
「貴方は幸せを強く願っていた。私以上に……それを!どうしてそんな簡単に!!」
「簡単じゃないさ。酷く辛かったよ。けど、後ろばかりも見ていられなかっただけさ」
それに俺は普通じゃない。
「全く厄介な幻術もあったものです…」
先程まで黙っていた鬼鮫が話しかけてくる。
「なんだ、起きれたのか?お前はてっきり…」
「てっきり…なんです?……まあ、いい夢でした。確かに私が望んだ幸せなんでしょう。しかし、生憎今手に入れている最中でしてね。古びたカスはお呼びじゃないんですよ」
鬼鮫は割と嵌るタイプだと思っていたが。
理解して譲受するタチの悪い。
「……なんです?」
「いや、なんにも」
俺の反応に目ざとく反応した鬼鮫に適当に対応する。
「それでこの娘どうします?ここで殺しますか?」
「っ!?」
「いや、必要無いだろう。見たところアレ以外何も出来なさそうだし、既に解いている俺らには通用しないだろう」
「……それもそうですね。では、どうしますか?」
「………ミヤビはどうしたい?」
「私?」
俺は頷き、返す。
「私は……生きたい」
「お母さんは死んじゃって、ずっとここにいるのは寂しい。けど、どうすればいいか分からなくて……」
「じゃあ、一緒に行くか!」
「……へ?」
「とりあえず何するか?」
「お墓でも作ったらどうです?」
「ナイスアイデアだ、鬼鮫!その後は街に行って買い物だな」
「湯の国につければいいですね」
「……それは言うなよ…」
「へ?えっ?……行って…いいの?」
混乱しているミヤビを置いて鬼鮫と話していた俺は鬼鮫を1度見て、ミヤビに向き直る。
「いいさ!一緒に行こう!!」
その後は森に墓を作った。
それから湯の国に向かった。
旅仲間が一人増え、俺たちはまた歩き出す。
「さぁ!行くぞ!」
「だからそっちじゃないって言ってるでしょ!」
「やっぱり貴方は方向音痴だったんですね…」
現在、少しずつ進行中…