正義の味方が着任しました。   作:碧の旅人

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今月中にもう一話 ←自分に対して圧力


第15話 片鱗 Ⅱ

 300メートル弱の距離を隔てて、無数の砲弾が殺到する。

 

 私は、ほとんど無意識に展開できる魔術障壁でそれらを防ぎつつ、障壁越しに金剛の様子を窺う。

 

(私のガンドの呪いはほとんど効果無し、か)

 

 概ね予想通りだ。

 彼女たち艦娘は人間ではない。見た目は人間にしか見えなくとも、存在の根幹に『艦艇』という要素が関わっているはずだ。その精神の在り方を人間と捉えるか、兵器と捉えるかは今は考慮しない。純粋な生物ではないと考えるなら、体調を悪化させる『呪い』であるガンドの効き目が薄いのは、十分納得できる。

 

 だからこそ、最初の攻撃にガンドを選択した。私のガンドはちょっとだけ普通より凶悪で、物理的な破壊力を備えている。だから生物・物質を問わず、当たれば多少はダメージが入るはず……だった。

 

(向こうも障壁があるのね。これは深海棲艦相手でも、ガンド主体じゃ厳しいか……)

 

 そう考えていた時、私の魔術障壁が砲撃で一気に削られた。思わず前進を止めてしまう。

 明らかに最初より威力が上がっている。このままでは護りを突破されるだろう。

 

(アルジズ)……!(トゥール)……!」

 

 ライトの灯火で続けざまに中空に軌跡を刻む。霊的な護りを表すルーンで障壁を敷き、勝利のルーンで強化したのだ。艦娘の砲弾が本物の鋼鉄ではなく、エーテルから造られた物であるならば、この護りを貫くのは容易ではないはずだ。

 次に反撃手段。

 一工程のガンドが駄目なら、こちらも威力を上げる必要がある。

 彼方から、金剛による追撃が休む間もなく着弾する。強力な銃火器、いや、もはや砲と言うべき迫力の攻撃が、視認すら難しい速さで飛んでくるのは中々に恐ろしい。だがその全ては強化された障壁の表面で無力化される。

 

 よし、大丈夫。

 身の安全を確保した私は、瞬間的に自己の内に没入した。

 

「――――Anfang」

 

 魔術刻印を励起させつつ金剛に照準を合わせる。自立して詠唱を紡ぎ出す刻印は、まるで皮下に大量の蟲が這っているかのような不快感をもたらす。しかし、こんな苦痛は慣れたものだ。

 青い光は単純な魔方陣を描き、加工された架空の熱量が照準に合わせて収束し、高速で撃ち出される。

 一小節を用いた魔弾。十分な魔力を込めたそれは、狙い違わず金剛の纏った障壁に突き刺さった。

 

 今のは手応えがあった。

 貫通こそしなかったが、何十と撃ち込み続ければあの障壁を飽和させることは出来る。

 

 私は自分に有利な距離を目指して前進しつつ、魔弾を再装填する。

 

「Anfang!」

 

 瞬時に展開される魔方陣(ほうもん)の数は六。金剛をめがけて一斉に撃ち放つ。

 それらはまばゆい閃光と共に連続して着弾した。やはり不規則に揺れる海上では、術式に照準を組み込まないとやっていられない。或いは士郎なら、素のエイムだけでもなんとかなるかもしれないが。

 

 ともかくこのまま魔弾で押し切りつつ、100メートル以内に近づく。

 いや、確実に仕留めるなら更に50メートルは近づきたいところだ。

 

 そんな事を考えていた時、魔術障壁の内部が爆発した。

 

「……っ!」

 

 咄嗟に腕で顔を覆うが、鋭い痛みが手や頬に走る。恐らく出血もあるだろう。だがそれは放っておいていい。身体強化のおかげで大した怪我ではなかった。

 

(何をされた……?)

 

 軽傷なら片手間で治癒できるし、重傷でも刻印が私を無理矢理生かす。今考慮すべきは、どうやって魔術障壁を突破されたのかだ。

 今のは爆発で障壁を吹き飛ばしたのではない。爆発は障壁の内側で起こった。故に私の障壁は未だ健在だ。

 

(冷静に。次は注意深く観察する。さっきの攻撃の正体を感じ取れ)

 

 時計塔で出会った講師を思い出す。あの先生の観察眼ならば、たった一度でも攻撃の正体を看破するかもしれない。もっとも爆発自体は防げずにやられてしまいそうではあるが。

 

 更に身体強化を重ねつつ、金剛を注視する。

 やや間を開けて、砲身から火焔が上がった。

 

 私は五感全てを、神秘の組成を感じ取るために費やす。時間の流れが緩やかになり、自身の血流さえ静止したような感覚の中、放たれた砲弾が飛来する。そして、私はそれを――――視た。

 

「つうっ……!」

 

 再び爆発に晒される。

 無防備だった分、先ほどより痛い。辛うじて頭部を守った腕が、火傷したように熱い。額を負傷したのか、垂れてきた血が目に入って不快だ。

 

「でも、捉えた……!」

 

 我慢した甲斐あって、障壁を貫通するロジックはきっちり把握出来た。

 先ほどの砲弾はかなり特殊な構造をしている。前方は砲弾としては異様に長い紡錘形で、比較的高密度の魔力で出来ている。その後方に炸裂する部分がくっついているようだった。

 

 こいつは高速で障壁にぶつかると、長い先端部分が潰れて圧縮される。結果、障壁表面で超高密度になった魔力によって、着弾部の障壁が一瞬だけ飽和してしまい、砲弾後部の炸裂部位はそこを素通りして中で爆発するのだ。

 厚い装甲を貫くための徹甲弾。その魔術版と言ったところだろうか?普通の徹甲弾の仕組みなんて私には分からないが、役割としては同じだろう。

 

 そして。

 魔術師同士の戦いにおいて、ネタの割れた魔術は瞬く間に値崩れする。

 次からは、あの徹甲弾が私に触れることはない。

 

 ……とは言っても、それは先ほどの二発が手加減されていたからだ。

 金剛が最初から全力で攻撃していれば、私は先ほどの徹甲弾でかなり危うくなっていたと思う。二発目の徹甲弾も、こちらを窺うように間を開けて放たれている。

 これは殺し合いではない。私と金剛の思惑は共通しているはずだ。

 恐らく彼女も、私と同じように少しずつ相手を測っている。お互いが現状の全力を出し切れるように。

 

「……」

 

 口元が自然と綻ぶのが分かった。

 彼女らには、なんとしてもこちらの実力を認めて貰わないといけない。だからそろそろ本気で追い込みに行く。

 次は私が測る番だ。

 相手は遠距離戦の申し子のような存在。この距離でさえ、今の私では分が悪い。

 私はライトを一振りすると、金剛との距離を詰めるべく、一気に駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 突然、リンが歩みを加速させた。

 水面をまるで地面のように踏みつけて疾走してくる。離れたままの撃ち合いではなく、近距離戦に勝機があるとみたのだろうか。

 

「させると思いますカ!」

 

 引き続き徹甲弾で攻め続けようと狙いを定めたところで、唐突にリンの姿が消失した。

 

「な……!?」

 

 だけど混乱したのは一秒未満。

 少し意識を集中するだけで、ワタシに備わった電波探信儀(レーダー)はリンを補足した。瞬間移動したわけではなく、姿が見えなくなっただけらしい。彼女はその状態のままで、やや射線をずらすようにこちらへ突っ込んでくる。

 そこへピタリと狙いを定め、撃つ。

 当然の如く全弾直撃する。

 この距離でワタシが外す確率はゼロだ。残念だがあの『姿眩まし』は電探を備えた深海棲艦に対してもあまり有効ではないだろう。

 それよりもリンが大怪我をしないように力加減だけは気をつけないといけない。そう思っていたのだが。

 

「――――――Folge.Mischen.」

「!」

 

 立ち篭める砲煙を切り裂いて、『姿眩まし』の解けたリンが飛び出してきた。

 

 

「Verbindung herstellen.Ändern.」

「あの砲撃をどうやって……!?それに――――」

 

 一体どういう仕組みか、先ほどまでの負傷が綺麗さっぱり無くなっている。

 ワタシが戸惑っている間も、彼我の距離は縮まっていた。既に100メートルを切っている。

 

「Seien Sie sanft.Schnappt sie!」

 

 疾走するリンの足元。彼女が踏みつけた海面から、透明な紐のような物が幾条も飛び出してきた。放物線を描きながら次々とこちらへ殺到してくるそれは、よく見れば海水で出来た鎖のように見える。

 

「ああもう!次から次へとワケが分からないコトを!」

 

 正体不明の攻撃はそれだけで警戒心を煽ってくる。

 つまり、アレに当たりたくない。

 

 ワタシは、水の鎖から逃れるために急速に横へ航行しつつ、避けられない軌道の鎖を艤装の機銃群で砕いてゆく。

 同時に、主砲をリンに向けて徹甲弾で反撃する。

 しかし、

 

「効かない……!?」

 

 徹甲弾は、彼女の『装甲』に阻まれた。

 こちらを追いかけて、次々と海面に突き刺さる水の鎖を回避しながら、尚も徹甲弾で追撃する。

 しかし、一撃たりとも装甲を突破することは適わなかった。

 よく見ると、瞬間的に装甲を抜くための弾芯部分は効果を発揮している。だがその後、爆発自体はその奥にある別の装甲に遮られてリンに届いていないのだ。

 

(つまり装甲を二重に展開してるワケデスネー。……にしても対処が的確で早すぎる。威力を上げたところで抜けるもんデスカね、アレ?)

 

 器用なことをする、と感心しているばかりではいられない。徹甲弾も防がれたとなると、このまま普通に砲撃していても埒があかないからだ。

 秋津洲が作ってくれるような、ちゃんとした金属も含んでいる徹甲弾なら間違いなく貫通するだろうが、こんな模擬戦に持ち込んでいるわけがなかった。

 だが幸いにも、水鎖の速度は砲弾に比べてかなり遅い。狙いもこちらの周囲にばらけている。

 だから、こうして避け続けることが出来ている。

 

(……折角だし()()()()()?ここは限界までリンの実力を引き出すべきだとは思いますケド……)

 

「って、ひやぁ!?」

 

 思わず情け無い声が出てしまったのは、水鎖が突然軌道を九十度曲げて襲い掛かってきたからだ。

 それはほとんど抵抗無くワタシの装甲をすり抜けて、ジャラジャラと、腕に纏わり付いてきた。

 

(そうか……!霊力だけじゃ無くて水を使った攻撃だから、装甲で干渉されにくい……!)

 

 慌てて水鎖を引きちぎる。触れてしまっても今のところ影響は無い。どうやら拘束を目的としているようだが、鋼鉄の鎖を蜘蛛糸の如く振り払えるワタシには、脅威になりそうにない。

次々と絡み付いてくる水の鎖を、全て力任せに引きちぎる。しかし対処が難しくないとはいえ、ある程度足止めされているのも事実。艦隊戦だったら当てやすい的になる。リンの方を見ると、ペンライトを指揮棒のように扱っている。ああして水鎖を変幻自在に動かしているのだろう。

彼我の距離は、最早50メートルを切っていた。

こうなると、ワタシにとっても接近は望むところだ。金属混じりの砲弾が無くとも、リンの装甲を越える手段には心当たりがあった。

だが。

 

「!?」

 

 突然足首が何かに引っ張られ、海面を勢いよく引きずられる。幸い自前のバランサーのお陰で転倒だけは免れて、引き回されながらも自分の足元を確認する。そこにはやはり水の鎖が巻き付いている。

 鎖はワタシを引きずりながら大きくたわみ、抵抗する間もなくワタシは上空に投げ上げられた。ぶわりとした風と浮遊感の中で、なんとか体勢を立て直してリンと着地点を確認する。

 

(アレは――――)

 

 眼下では大量の水鎖が蠢き、巨大なサークルを形作ろうとしていた。恐らくリンは勝負を決めに来ている。そう感じさせるだけの力が集まりつつある。

 

 当然だが、艦娘に飛行能力は無い。このままサークルの中心に落下するしか道はない。せめてもの抵抗として、着水の直前で海面の鎖への斉射を行った。

 そして、ワタシはリンの声を聞いた。

 

「開け!『世界蛇の口(ミドガルズオルム)』――――!」

 

「――――!?――――ぐ……ぁ」

 

 まるで身体や艤装の重量が何十倍にもなったかのような圧力が襲う。海中に沈み込みそうになり、咄嗟に主機――――足に装着した推進機――――をフル回転させて浮力を最大化させる。そのあまりの回転量に、海面はまるでヘリが下降した時のように激しく波立つが、それでも足が徐々に沈んでゆく。

 

「呆れた。この捕縛陣に抗えるなんて、一体どんな出力してるんだか」 

 

 完全に足止めされたワタシにリンが声を掛ける。

 見れば、今や彼女は30メートルにまで近づいていた。肩で軽く息をしながら、ペンライトをこちらに向けている。

 無駄と分かりつつも主砲を撃ち込んでみる。

 当然のようにリンの手前で霧散した。彼女はそれに一瞥すら向けずに言った。

 

「……こんな感じでどうかしら?私なりに頑張ってみたつもりだけど」

 

 話しながら、ペンライトの先の空間に精緻な紋様――――魔方陣が浮かび上がっていく。更にその手前に一つ、二つと、合計三層の魔方陣が敷かれた。

 

「とどめを刺すだけの余力も何とか確保してある。この島は貴女たちの管理下にあるから、大源(マナ)が使いにくくて苦労するわ」

 

 よく分からないが、この島の結界は部外者であるリンにとってマイナスに働いているらしい。

 まあ今はそれはいい。

 

「そう……デスネ……。リンの力は充分じゃないかと思いマス。……あまり戦闘向きの力ではないとは感じましたケド」

「それじゃあ」

「ワタシは貴女たちの方針を支持してもいいと思いマス……ヨ。但し、最後にこれを受けてもらってからの話……デスガ」

 

 主機の回転数が限界を超えて上昇する。発生する音が、まるでジェットエンジンのように甲高くなっていく。そして遂に、沈み込む力と完全に拮抗した。

 

 リンからは驚いたような雰囲気が伝わってくる。

 

「これを凌げたのなら敵地でも幾分かは安心出来マス!全力で防御してください!リン!」

 

 背中が弾けるような感覚。

 空気を裂いて、爆音が轟く。

 

 

 

 

 

 

 危機感を覚え、金剛を狙っていた魔術を解放した。太いレーザーのような赤い光が駆け抜け――――

 瞬間、金剛の姿が消失した。

 爆発のような衝撃と共に、『世界蛇の口』の拘束範囲から消え失せたのだ。狙いを外れたレーザーは、海面に吸い込まれて爆発を引き起こす。

 

「……!」

 

 その刹那、今度は背後から強烈な殺気がのしかかった。

 有り得ない。

 そう思いつつも振り返ろうとする。時間の流れが酷く緩慢だ。巡る思考の速度に身体の動きが付いてこない。それは命の危機に際して起こる、所謂走馬灯のようなものだったのかもしれない。

 

 スローモーションのような時間の中、視界の端で捉えたのは、0.1秒前まで捕縛していたはずの金剛が、肩口から黄金の光を噴出させながら私の背後に回り込み、ガシャガシャと艤装を変形させながら、私の障壁を素手でこじ開けようとしている姿だった。

 徹甲弾を防ぎきった二重障壁が、腕力だけで強引にこじ開けられていくのは悪夢のような光景だった。そうして開いた隙間に、組み替え終わった艤装から砲口が向けられる。

 全ての砲門を統合したかのように長大な、金剛の身の丈を超える一門の『主砲』が。

 

「……っ」

 

 全ての音が消えた。

 暴力の嵐が駆け抜け、爆圧がクレーターのように海面を圧し下げて。

 

 後には無傷の私だけが残った。

 

「……っはあっ、はあっ、はぁっ……」

 

 まるで炎天下に放置された犬のように喘ぎながら、膝に手をついて崩れ落ちそうになる身体を支える。

 無傷ではあるが、勿論無事ではない。後先考えずに全霊で守りを固めたため、魔力はほとんど底をついている。海面に沈まぬよう立っているのが精一杯の有様だった。

 

「むー、無傷とはやってくれますネー。一体何をしたらそんな防ぎ方になるの?」

 

 砲撃のノックバックで数メートル後退した金剛が、頬を膨らませている。その様子からはまだまだ継戦可能である事が分かった。

 私は息を整えつつ、金剛に降伏の意を伝える。

 

「ギブアップよ、降参。もう正直歩くのもしんどい」

「OK!お疲れさまデース。けど、あんまり勝った気もしません……」

 

 そう言うと手を差し伸べてくれる。

 

「掴まって。曳航しますカラ」

「ありがとう」

 

 大人しく金剛に手を引かれながら、今の模擬戦について思いを巡らせる。

 負けてしまった。

 即席の魔術だったとはいえ、『世界蛇の口』から抜け出されるのは予想出来なかった。一瞬で背後に回り込むほどの速度もそうだが、あれではまるで……。

 

「……金剛?」

 

 手を引いてくれていた金剛が沖を振り返っている。

 

「どうかしたの?」

「深海棲艦が……結界内に侵入しまシタ。軽巡1、駆逐2。」

 

 それは私にとって、眉を顰めずにはいられない内容だった。金剛と同じ方向を探すが、視力を強化していても何も見当たらない。

 結界の起点を調べた際に知ったことだが、結界の範囲は起点を中心に半径3海里程度。まだ敵が境界付近にいるならば、水平線の向こうにあたるので目視できなくても不思議ではない。

 

「また?一昨日も侵入があったばかりじゃない。っていうか私が結界を修復した効果は無かったってこと?」

「いえ、こんな事はチョット珍しいですネー。ハイ叢雲?聞こえますか……え?」

 

 耳に指を当てて連絡を取っているらしい金剛が、訝しげな声を上げる。

 

「……ええ。シロウは何と?……ハイ。……わかりました、では。以上」 

 

 通信を終えた彼女は、困ったようにこちらを見る。

 

「えっと。丁度良い機会だから、戦力の確認も兼ねてシロウに迎撃させる、って叢雲が……」

「ああ、なるほど」

「大丈夫でショウカ?確かシロウは剣で戦うんですよネ」

「基本はね。でも流石に今回は弓を使うでしょう……ああ、やっぱりそうみたい」

 

 見ると、特徴的な赤毛の長身が鎮守府本館の屋根の上にいるのが見えた。既に黒い洋弓を投影し、矢をつがえている。

 あの高さからなら、恐らく敵の姿が目視できているはずだ。

 

「ゆ、弓?それって効くの?せめて銃とか、剣とかの方がまだ強そうな気がしマース……」

「いや、士郎の場合は被害さえ考えなければ、多分弓が一番……」

 

 全て言い終える前に、チカッと青白い光が瞬いた。

 そして放たれた矢が、光弾のように尾を引いて視界から飛び去っていくのを、意識の端で微かに確認する。

 さっきまでの金剛の砲撃で速さに目が慣れていたはずだったが、それでも反応できなかった。

 

 金剛とふたり、慌てて水平線の彼方に目を向ける。

 すると水平線上では、爆発が巨大なドーム状に膨張していた。海上での爆発だったため、その衝撃派が拡散していく様子が、水面をつついて広がっていく波紋を見ているかのようにはっきりと確認できた。

 そして更に数秒遅れて、身体の芯に響くような鳴動が私たちを突き抜けていった。

 

 剣を、宝具を投影し、矢に加工して放ち、爆散させて使い捨てる。

 『壊れた幻想』と呼ばれる使用方法だった。

 

「……」

 

 そうだ。

 かつての聖杯戦争に於いて、衛宮士郎の力はお世辞にも盤石とは言えなかった。最大の脅威である存在に対しては、相性と油断から勝利を収めることが出来たが、それ以外のサーヴァント――――魔術師ならば境界記録帯(ゴーストライナー)と呼ぶべきか?――――には条件が良ければ善戦出来るかも、という程度の能力だった。

 

 しかし、その力が聖杯戦争という枠を外れて振るわれたとしたら、それはただの魔術師には手が付けられないほどに凶悪なものだ。勿論、日々の鍛錬により、かつてより上達しているという理由もあるだろう。

 本来なら、魔術世界に於いてもこれほど大っぴらに使える力では無い。それ故に久しく見ていなかったが、改めて目にすると、やはりこれは反則だ。

 

「……とりあえず上陸しましょうか」

「わっ、分かりマシタ!」

 

 今の攻撃の成否を確認するのは勿論のこと、深海棲艦の侵入を許した経緯についても解明する必要があるだろう。

 

 

 

 




何の準備もしない状態だと、凛の戦闘力はこれくらいが限度
金剛が組み替えたのは、普通の改二艤装 → 列車砲 みたいな形状。
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