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間桐慎二の共犯者である衛宮士郎と遠坂凛から、宝石剣の運用テストを行うと知らされていた海域で、詳細不明な爆発が発生したという。
ニュースではメタンハイドレートだとか言われているが、原因なんてどうでもいい。
あれ以来二人と連絡が取れないということが最大の問題だった。
今日は12月26日。
「くそっ……!死んでないだろうな、衛宮……」
大学のキャンパスの中庭で、携帯端末の画面を見ながら独りごちる。
衛宮士郎の端末には依然として繋がらない。
「間桐くーん!」
「お、慎二じゃねーか。この後俺らカラオケ行くんだけど、お前もどーよ?」
向こうからやってくるのは、比較的一緒に過ごすことの多い友人たちのものだ。
冬休み期間ではあるが、サークルやゼミの活動、卒業論文の作業などで大学にいる学生は、決して少なくなかった。でもまあ、あいつらは特に目的も無くつるんでいるだけだろう。
端末をパチリと折り畳むと、笑顔で立ち上がる。
「悪いね、今日は外せない用事があってさ」
「えー、またぁ?……あ!もしかして妹さんでしょ!?」
「おいおいまたかよ、シスコン慎二」
引きつりそうになる表情を上手く塗り隠して笑う。
「バーカ、そんなわけ無いだろ。だいたいあんな奴嫌いなんですけど。……それより康平、今度の学期末は大丈夫なんだろうな?統計学が酷い点数だったけど」
「うげ……。ま、まあいざとなればお前に教えてもらうし」
「はあ……まあ考えておくよ。それじゃ、また」
今日の用事は午前中で済んだため、慎二は大学を後にし、冬木市の屋敷へと帰る。
昼食もそこそこに、衛宮と遠坂の行方を考える。
正直、あの二人が爆発程度でくたばるとは思えない。世界が滅びてもしぶとく生き残っているのではないだろうか。
では、二人が生き延びたとして、連絡が繋がらないのは何故か。これはその『爆発』とやらで携帯端末が壊れたと考えれば納得は出来る。
あいつらが負傷したにせよ、無事にせよ、冬木市に戻ってくるとすれば遠坂邸以外は有り得ないだろう。衛宮邸には魔術と関わりの無い藤村が現れる可能性がある。要らぬ心配を掛けることになるだろうから。
そう考えて、遠坂邸へ向かうことにする。
友人の身を案じて訪問するだけだ。臓硯も警戒する理由など無いだろう。
「よし、行くか……」
その時、扉を開けて崩れ落ちるように入ってくる人物がいた。
「桜!?どうした!」
「あ……にいさん……」
血の繋がらない妹である間桐桜は、見たところ貧血と発熱の合わさったような症状だった。よく、とてもよく知っている症状だ。
「……刻印虫か」
慎二は急いで自室へ戻り、必要な機材を取ってくる。
注射器で自分の腕から血を抜き取り、間桐の魔道書から見様見真似で調合した血と魔力を増幅させる薬品――――最初に自分の身体で試したので一応は成功品といえる――――に混ぜ込んで、桜の口元に近づける。
「血だ。ゴミみたいな魔力量で悪いな」
桜は、大人しくそれを飲み干した。
本当は、こんなやり方以外にも
しばらくすると、桜の容態も落ち着いたようだった。
「兄さん……すみません……」
思わず苛立ちが募る。
「煩い。謝るな」
何故こいつはいつも他人に謝るのか。桜には何の責任も無い問題なのに。
……分かっている。僕や臓硯の今までの所業が桜を卑屈にしたのだ。責任があるとすれば、間桐にある。
そんな慎二の内心など知らないだろう桜は、ほんの僅かに微笑んだ。
「はい、ありがとうございます。兄さん……」
「……別に感謝しろとも言ってない」
素っ気なく言い捨てて、遠坂邸へ向かおうとする。
昔から慎二は、桜のこういう所が苦手で、嫌いだった。絵に描いたような『優しい子』を演じているようで、その裏でこちらを見下しているような気がして。
「待って、兄さん」
「何?」
慎二を呼び止めた桜の表情は、いつになく真剣で、何処か魔術師然としているようだった。
「先ほど、冬木市内に何か、途轍もない存在が侵入したみたいです」
「……何だよ。途轍もない存在って」
「分かりません……。多分、ただの魔術師とかそういうのではないと思います」
「分かった。気を付けるよ、まあこんな魔術師未満が目を付けられるとも思わないけどね」
桜の刻印虫が活性化したのも、その侵入者と関係があるのだろうか。
遠坂が帰っていたら相談するべきだろう。
そう思いつつ、遠坂邸へと脚を進める。
そして。
遠坂邸の呼び鈴を押すと、返事が返ってきて。
「あら、慎二。もしかして心配掛けたかしら?」
必要ないかもしれませんが慎二パート
なんか慎二視点は凄く書きやすいぞなんだこれ……
※別に無くてもいい話なので、「ほーん?」くらいの感じで見てください