吹き付ける風に白波立つ海を臨む、鎮守府本館前。
加賀は打ちのめされていた。
「私は一体……何をしているの」
先ほど榛名から、アリマゴ島に残された全艦娘に向けて指示が出された。――その中に加賀の名は無かった。一応『かぜなみ改』に向けて連絡用に彩雲を飛ばしてはいるが、戦力としては全く勘定に入れられていないのだ。
いや榛名のことだから、気遣いでもあり、不確定要素である加賀を頭数に入れる余裕は無いとの割り切りでもあるのだろう。
八年前のあの日、加賀の擁する航空隊は、その大部分を喪失した。
今と状況は似ているかもしれない。唐突に押し寄せる深海棲艦の大群。
艦娘の艦載機は、一度撃墜されただけでは喪われない。例え破壊されても各機体に搭乗する妖精は無事であり、空母艦娘の艤装へと還るからだ。そして熟練度の高い空母だと、ボーキサイト、と例えられる組成に変化した霊力を生み出して機体を再形成すれば、それに妖精たちを搭乗させ再び発艦させることが出来る。
だがあの日はそのせいで地獄が具現した。
通常の戦闘と違い、潤沢な霊力を有した鎮守府での防衛戦。そしてアリマゴ島における最大の航空戦力は加賀だった。
喪失した機体もボーキサイトも、すぐさま補充して再出撃出来る。――出来てしまった。
際限なく押し寄せる敵。
熟練の艦載機妖精であっても、やがて撃墜されてしまう。
それでも彼らは鎮守府を、みんなを守る為に再び戦場へ舞い戻る。
戦う。撃墜。補充。戦う。撃墜。補充。戦う。撃墜。補充。戦う。撃墜。補充。戦う。撃墜。補充。戦う。撃墜。補充。
幾度
送り出す加賀のほうが狂いそうになっても、妖精たちは何も言わず再び機体に乗り込んだ。
そして、気付く。
撃墜された回数が多い子から順に、存在の気配とも言うべき物が薄れてゆく事に。
加賀にとって初めての経験だった。
それも当然だ。通常の戦闘では、こんな頭のおかしい戦術を取る前に霊力が底を突く。
空恐ろしさを感じ、戦うことから逃げ出したくなる。しかし逃げ場など無かった。この島を守り切る以外に道は無い。何よりも、彼女の物言わぬ妖精たちが、その背中が、前を向けと彼女を叱咤した。
遠くでは榛名が限界を迎えていた。両足を集中的に破壊された彼女は、やがて正常な艤体を再生できなくなったのだ。
砂地の浅瀬に座礁したまま、それでも彼女の砲口は、敵を狙って炎を吐き出し続ける。
そうしてどれくらい続いたか。やがて波が引くように、深海棲艦の数が減っていく。
艦載機の妖精たちはまるで、力尽きるように消滅していった。最後に流れ込んできた感情は安堵。
それは或いは、無事に守り切れた、勝利できた、という理由だったのかもしれない。
だが加賀にはこう思えた。
“やっと楽になれる”
“ようやく苦痛から解放される”
――嗚呼。
私が呼び出しさえしなければ、彼らは靖き国で眠っていられたのに。
◇
アリマゴ島中央部高台にて。
榛名は監視棟から離れた、広場の中央部に腰を据えていた。
彼女の背面に光が集まり、金剛型の艤装を象ってゆく。と、途中で艤装が音を立てて組み替えられ、車椅子を覆うような形状に変化していった。
それはまるで玉座のような。奇しくも、彼女の姉の故郷の、とある艦娘と類似した形だった。
榛名は高台の周囲を見回し、繁茂する木々に小さく詫びた。
「……申し訳ありません」
彼女の艤装が連続して火を噴き、視界を遮る木々を纏めて破砕してゆく。
僅か十秒ほどで、周囲の海域へ向けて彼女の射線を遮る物は、監視棟以外には無くなった。物見櫓に昇らずとも、ほぼ全周囲を見渡せるようになる。
この緊急事態、弾道を僅かでも邪魔する物を放置しておくわけにはいかなかった。
もとより戦争も兵器も、環境保護の概念とは正反対の存在なのである。
全ての砲口は北北西へと向けられる。
最も距離が近い“深海N”から、戦艦水鬼、空母棲姫を含む数十隻が侵攻してきていた。その敵艦隊の頭上を追い越してゆく、爆撃機の群れ。形状・色合いからして、深海地獄艦爆系*1の後継機だろうか。総数は50機程度。最初に会敵する事になるのは鳳翔の航空隊、そして陽炎。
(あの二人なら、大部分は落とせるでしょう。……撃ち漏らしは榛名が)
ガチリ、と玉座型の艤装から三式弾を装填する音が聞こえる。
だが“深海N”だけに集中することは出来ない。既に残りの“深海S”、“深海E”からも多数の敵が溢れ出してきている事を、観測機を通じて確認していた。
(……)
ちらりと加賀のことを考えた。現状、彼女が参戦しないのは大きな痛手だ。しかし榛名は彼女に何も言わなかった。空母の事は空母にしか分からないだろうから仕方ない、と割り切っていた。
(それに、いざとなれば否応なしに戦うことになります。その時に恐れながら巻き込まれるのか、それとも自分から向かってゆくのかは……彼女次第ですが。はぁ……榛名は多分あんまり優しくないのでしょうね。)
◇
陽炎の視線の先では、鳳翔から発艦した艦戦隊が、白い敵艦爆の群れと格闘している。その様子は魚の群れに肉食魚が突っ込んでいくのと似ていた。数では劣りながらも、各機がまるで一つの意思によって統率されているかのように、連携して動く。
否。ようにでは無く実際に鳳翔は、30機ほぼ全ての自機体の動きを把握して操っていた。限定的に己の思考を五つに分割し、そのうちの四つを四機の戦闘機にそれぞれ充てている。その四機から得た視界によって、残りの全ての自機の位置、敵機の状況を把握し、その情報を航空隊全てに還元していた。
簡単に言えば、発艦している全艦載機は全て、鳳翔の完全制御下にあった。
これだけの数を一度に管制するのは、未だ彼女だけにしか出来なかった。その性質上、練度の高くない妖精であっても、熟練妖精と同じような結果を出すことが可能である。
「……十数機、抜けてきます」
だがこの技術の最たる特徴は、損耗率の低さ。各機が敵を撃墜する技術まで向上するわけでは無い。
現に数機が障壁を失った程度で、未だ全鳳翔隊が健在ではあったが、撃ち漏らしは少なくない。
「鳳翔さん、もうちょっと下がってて!」
「大丈夫ですよ、信頼しています」
「うう、プレッシャーが」
陽炎は苦笑して空を見やる。
鳳翔の航空隊をやり過ごした15機が、やがて結界の境界を示す
「……いけっ!」
その瞬間、陽炎の艤装から大量のロケット弾が連続して発射された。対空用に増設した、二基の12cm30連装噴進砲改二からの物だった。発射されたのは一基あたり30発のロケット式焼霰弾。ミサイルと違い誘導性能は無いが、一発につき数十の焼夷弾子が空に撒き散らされる。
敵の深海地獄艦爆にしてみれば、青天の霹靂だった。認識外から突如として襲いかかる大量の弾子に、回避行動に移る間もなく撃墜されてゆく。運良く生き延びた機体も、陽炎の40mm四連装機関砲の掃射によって空の藻屑と消えた。
構造が複雑であるため、霊力の消費が大きくなるロケット弾だったが、結界内では今のように撃ち放題だった。
これが結界の内部で戦う最も大きな利点の一つ。さらに、敵は内部に侵入する瞬間までは、例え電探を使ってもこちらの正確な位置を特定できない。
息を付く陽炎に、鳳翔が声を掛けた。
「位置を変えましょうか」
「ですね」
そのまま二人は100mほど西へと動く。しばらくして先ほどまで二人が居た位置に、次々と水柱が上がった。深海地獄艦爆からの情報か、戦艦水鬼は陽炎たちがあの位置にいると思い込んでいる。直撃すれば、大破は確実だろう。
その戦艦水鬼と、やや離れて来る空母棲姫も、やがて結界へと近づいてくる。空母棲姫だけは途中で停止し、更なる艦載機を発艦させる。
『榛名です。こちらは空母棲姫を優先します』
「了解。戦艦水鬼は私に任せて」
そう返すと陽炎は一人、静かに戦艦水鬼へと忍び寄る。
巨大な霊長類型を背後に従えるようにして、女性型の黒衣の本体が悠然と進む。
陽炎は艤装を対空用から砲雷用に組み替えた。こちらの攻撃手段は魚雷。狙いは本体。
巨大な威容が結界に侵入するまで、あと僅か20m。
両手に一本ずつ魚雷を握りしめ、二基の六連装酸素魚雷の発射管を開く。
緊張で喉が鳴る。
そして遂に、最初の姫/水鬼級がアリマゴ島の領域内に侵入する。
――その瞬間。
陽炎から放たれた12本の魚雷が、黒衣の水鬼の足元で一斉に爆発した。巨大な水柱が上がる。
「ガ■■■ッ■――!?」
一瞬でその身を守る『装甲』を消し飛ばされた彼女は、驚きながらもすぐさま背後の艤装に命令を下そうとして――水飛沫の帳を切り裂いて飛び込んできた陽炎が、その顔面に取り付いた。
そのまま陽炎は、彼女の口に二本の魚雷を思い切り突き入れると、彼女を蹴り飛ばすように飛び退いた。自らの着水を待たず、敵が『装甲』を取り戻すより前に、魚雷をくわえ込んだ顔面を狙い撃つ。
爆発。煙越しに、頭部を吹き飛ばされた凄惨な姿が見える。
陽炎は戦果を悠長に確かめるような真似はしなかった。無言で主砲を連射しながら、魚雷を放ち続ける。ようやく配下の霊長類型がこちらを狙って攻撃を始めるが、爆炎に包まれ続ける本体を盾にするように高速航行で回り込み続ける。
結局、戦艦水鬼は最初に叫び声を上げて以降、一言も発せずに消滅した。それに伴って配下の巨大な艤装も霧散する。たとえ水鬼級の戦艦であっても、棒立ちの相手を一方的に攻撃できるのであれば、駆逐艦の魚雷は敵を破壊するだけの十分な威力があるのだ。
『海域浸透型』クラスの再生力が相手の場合は、こう簡単にはいかないかもしれないが。
「はああぁ怖かった!」
陽炎は肩で息をしながら叫ぶ。
「っと、空母棲姫は――」
『大破させました』
無線で榛名が答える。
『しかし仕留めきれず、撤退を許しました。不甲斐ないです』
榛名の場合は、5km以上離れた位置から砲撃しているのだ。破格の条件である陽炎たちよりも、仕留めきる難易度は当然高い。
「仕方ないですよ。……でもそうか、『深海』まで後退したら損傷が回復して……」
『ええ。いずれこちらの射程外から、空襲だけ繰り返してくるようになるかもしれません』
「それはマズいわ……」
『その時は耐えるしかありませんね。天然の霊地であるこの島と、急造の霊地である『深海』の地力比べです。……陽炎、鳳翔両名は引き続き戦闘を』
視線を上げれば、小舟サイズの駆逐艦や巡洋艦が群れを成して近づいてくる。
陽炎と鳳翔は再び迎撃位置を変えるために移動を開始した。
『榛名は“深海E”からの空襲に対応します。……武運を』
「お互いにね!」
今はまだ、多くの艦娘に余裕があった。
◇
電の射出した鎖付きの錨が、結界に侵入した戦艦棲姫の本体を縛り付けて拘束した。
隣では響が、配下の巨人型艤装の口内に魚雷を放り込み、鎖を把持したままの電が主砲の一撃で起爆する。巨人型艤装の頭部から爆炎が噴き出し、胸部は爆発の圧力によりベキリと膨張し、巨影が崩れ落ちる。
その瞬間、侵入してきたもう一隻の戦艦棲姫が、電へ向けて砲撃した。
「――っ!」
その砲撃を暁が自らの防盾で防ぐ。
数メートル吹き飛ばされ防盾は破壊されたが、腕は軽傷で収まった。暁は危なげなく着水すると、魚雷で反撃する。
「榛名さん!!」
電の叫びに答えるように、鎖で拘束された本体へと、彼方から榛名の砲撃が集中した。ほぼ全ての徹甲弾があっさりと『装甲』を貫いて戦艦棲姫の身体を打ち砕く。タイミングを計って電が発射した魚雷が、『装甲』を飽和させていたのだ。
いつもの戦闘ではあまり活躍することが無い魚雷という兵器。速度が遅く、数千メートル離れた位置からは命中させるのが困難であるからだ。さらに艦娘も深海棲艦も、本物の船舶と違い素早い回避行動が可能だ。よって基本的には、実用的な距離に近づく前に戦闘が終わることが多い。
だが今は違う。敵が結界に足を踏み入れるのを、数十メートル、或いは数メートルの距離まで待ち構えての不意打ちが可能な迎撃戦だ。駆逐艦でも戦艦並みの火力を叩き出せる魚雷は、十分に主戦力たりえた。
暁、響、電の三人は連携して残りの戦艦棲姫を狩りにいく。暁と響は適宜噴進砲で弾幕を張って空襲を迎撃し、電は防盾を構えて至近距離で巨人型艤装の砲撃を回避しながら、隙を見て魚雷を放つ。
……と、電の周囲に何かがバラけて落ちてきた。その一つが防盾に接触して音を立てる。直後、盛大に爆発した。
「ふぎゃ!」
撃ち漏らした深海地獄艦爆が落とした爆弾だった。
電を見れば、防盾を左腕ごと喪失している。中破相当の被害。
戦艦棲姫の自律艤装はその隙を逃さず、巨大な主砲の狙いを間近でピタリと定め――
榛名の砲撃がその鋼の身体を貫いた。
「■■■■■……!」
鉄が軋む音を立てながら、巨人型の艤装は絶命する。
「すまない電、撃ち漏らした」
「ありがとう榛名さん!」
姉二人が礼を述べる。無線越しに、榛名が僅かに微笑んだ気配を彼女らは感じた。
『後は任せます。榛名は雷の支援を』
残った戦艦棲姫の本体は、新たな配下を生み出した。しかし『深海』とは勝手が違うのか、幾分かスケールダウンしている。
「勿論だとも。いけるね、電」
「なのです」
◇
「……マズい、わね」
結界の東側。
大破した雷は呟く。南方棲戦姫を含む20隻あまりの艦隊を、急遽駆けつけた暁と、榛名の支援を受けて撃滅したところだった。今は暁は南部へと舞い戻っている。
第二波の到来までに損傷は回復するが、水雷戦隊の後方に控えた空母棲姫やヲ級が、近寄ってくる気配が無い。
「こっちの射程外からの空襲に徹するつもりかしら」
『恐らくは。あの“深海E”の霊力が底を突くのを待つしかないかもしれません』
困ったように言う榛名。
「それってあとどれくらい?」
『……頑張りましょう』
「あ、はい」
『三式弾撃ちますね』
雷の頭上に向けて、監視棟から三式弾が放たれた。接近していた深海地獄艦爆系の群れが、次々と落ちてゆく。一部の弾子は雷にも降り注ぎ、彼女が頭の上に掲げた防盾に当たってパラパラと音を立てた。
盾で頭をガードしたまま、機銃掃射で撃ち漏らしを潰す。
別に三式弾の弾子くらいなら当たっても大したことはないが、一応だ。
先ほどは鳳翔と陽炎が無線で中破報告を出していた。その前は電が。
今はまだ無事凌いでいるとはいえ、徐々に対応できなくなっていくだろうという予感が、雷にはあった。
(金剛さん、遠坂司令官、士郎さん。早く帰ってきて……)
◇
『こちら暁!響が大破したわ、榛名さん……!』
『陽炎、大破……。修復まであと……5秒』
『“深海S”に新種の……巨大な浮遊要塞らしき姿を確認!……アレ?消えました……』
加賀は抜錨し海上に出ていた。
断続的に流れてくる被害報告に、遂に耐えられなくなったのだ。未知の敵が出現し、陽炎は既に、奥の手の星幽体駆動形態を使用しているらしい。
海へと飛び降り、とある島影に向けて急ぐ。そこはかつて、多くの艦載機妖精たちを喪った場所だった。
(でも今更、どんな顔をしてあの子たちに、戦ってくれだなんて言えば……!)
拒絶されるに決まっている。対話さえ出来ないかもしれない。そう思った。
空母艦娘以外にはほとんど知られていないことだが、喪われた妖精たちを再び呼び戻す方法は存在する。妖精喪失の可能性が比較的高い――それでもほとんど起こり得ないとされるが――艦種である空母たちは、最初にその方法を指導されていた。
加賀は手首に爪を立てて傷を作ると、流れ出す血液を海面に垂らした。
必要なのは、自分を見つけて貰うための
彼女は自らの『装甲』を利用して海面に膝立ちになると、目を閉じて、ただ祈る。戻ってきて欲しいと。力を貸して欲しいと。
だがその内心は焦燥感や罪悪感、さらには劣等感が入り交じり、とてもすぐに戦闘に向かえるようなものでは無かった。それは榛名が危惧していた通り、巻き込まれる形での最悪の参戦になってしまいそうな。
もし榛名が読み違えていることがあったとすれば、加賀という艦娘の意思だけを見ていた点。そもそも艦娘は単体では不完全な存在であり、自身の意思だけで完結してしまえる事の方が不安定なのだから。
熱を感じた。
とてもよく知っている、優しい暖かさだった。
目を開けると、彼女の周りには小さな光が幾つも浮かんでいた。まるで沢山の蛍が飛び立ったかのような、とても綺麗な光。
周囲を飛ぶ光の一つに、震える手を近づける。
触れた。瞬間、指先から全身に伝わってきたのは、恐怖でも怨嗟でも糾弾でもなく、まして嫌悪でもなく。
意思が声となって流れ込んでくる。
『――――行こう』
多くを語ること無く。
その声は、ただ優しく加賀の背中を押してくれた。
「……っあ、ああぁ……!」
次々と、光が身体へ、艤装へと吸い込まれていく。あるべき場所に戻っていく。
感情の奔流が涙となって溢れだした。
「わかっ、分かってたのに……」
なんて莫迦だったのだろう。この子たちの事を慮っているつもりで、自分が逃げていただけ。逃避の理由に使っていただけだったと。
なんて醜いんだろう。この子たちはずっと、私のことを待っていてくれたのに。
涙は長くは続かない。その身に宿った熱が、妖精たちの声が、彼女を支えた。
艦娘個人が強く在る必要は無かった。その身に宿る多くの声を識り、束ねる事ができれば、それでよかった。それが、物言わぬ鉄の船だったかつてとの違い。
加賀は静かに立ち上がり、呟く。
「……また共に、戦ってくれますか」
返答はさざ波のように。
艤装の一部に光が集う。
航空母艦加賀の矢筒には、八年ぶりに正しい数の矢が収まっていた。