正義の味方が着任しました。   作:碧の旅人

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あけおめっす


第45話 嵐の中で輝くもの

 士郎は僅かに感じた揺れに、目を覚ました。

 

「……っ」

 

 強烈な痛みと倦怠感に襲われ、身を折り曲げようとしたが、動かせない。どうやらベルトのような物で身体を固定されているらしい。

 目に映った天井と壁は、無骨な設備に覆われている。恐らく二式大艇の内部だろう。

 

「衛宮さん!目が覚めたのですね……!」

「ほうしょう、さん……」

「いえ、それ以上喋らないで。怪我に障ります」

 

 それを聞いて、自分がレ級の自爆で脇腹を貫かれた事を思い出した。

 

「シロウ?」

「衛宮さん!」

 

 金剛や榛名の声も聞こえる。

 鳳翔は士郎の顔を見て説明した。

 

「ここは二式大艇の中。私たちは脱出に成功し、荒天の中をオロルク環礁へ向かっています。衛宮さんの負傷は重篤で、失血死の恐れもありましたが、貴方の言った丸薬を飲ませたところ、輸血と似た効果が出て状態が良くなりました。しかし傷を癒やす効果は見られず、出血は未だ続いています。このままでは……」

 

 言われて、口の中に丸薬の苦みがあることに気付いた。味覚が上手く機能していないのか、曖昧な味ではあったが。

 士郎は聞かされた言葉をよく整理し、しばらく考えて聞いた。

 

「皆は無事なのか……?遠坂は……」

 

 弱々しくて掠れた声が出たことに少し驚いた。思った以上に自分は死にかけらしい。

 

「遠坂提督ら、かぜなみ改のメンバーは不明ですが、こちらと同様上手く脱出したと信じています。叢雲もあちらへ合流しました。その他の皆は全員無事で、ここにいます」

「……そう、か」

 

 そこで士郎の視界に、栗色の髪が映った。

 

「今はそんなことより!シロウ自身が問題デス……何か血を止める手段は」

「そう、だな。……やってみるよ。鳳翔さん、傷から手を離してくれ」

 

 士郎は脱力し、浅い呼吸を繰り返した。

 

「……同調、開始」

 

 目を閉じる。

 比較的得意だと、自分でも自信を持って言える魔術、構造解析を始める。

 但し解析するのは、物ではなく自分の肉体だ。

 

 他者の肉体に、直接魔術で干渉することはとても難易度が高い。

 念じるだけで相手を宙に浮かせたり、内側から壊したりすることは、余程熟達した使い手が抵抗力のない対象を相手取る場合にしか成立しない。例えばキャスターとかつての士郎のような。

 

 だが、自分自身の肉体は別だ。未熟者の士郎でも、さほど苦も無く可能となった。

 

(――基本骨子、解明)

 

 体内を奔る魔術回路を起点に、脇腹の傷の周囲を解析していく。神経、筋肉、血管、内臓、骨と、順を追って確かめていった。

 

(……右の腎臓と十二指腸が、酷く裂けてるな。砕けた肋骨は一つだけ……。断裂してる太い血管は……いち、に、さん……腸骨動脈が破れて、出血の勢いで裂け目が広がったか)

 

 他の内臓も無事ではない。たった一発の被弾がもたらした余りの惨状に、再び気を失いそうになるが、歯を食いしばって耐えた。

 

「はぁっ……はぁっ……。ぐ……投影(トレース)開始(オン)――」

 

 脇腹付近の魔術回路が発光する。治癒魔術ではない。士郎にそんな物は殆ど使えない。

 故に、処置に使うのは投影魔術だ。

 これしかまともに使える手段などなかった。だから、投影に使えそうな器具は調べてあった。

 

(裂けた血管を覆うように、巻き付けた状態のシリコンテープを……投影。……完全には止血出来んな……用途が違うし)

 

 息を吐いて、次に移る。

 

(血管を一時的に結紮するクリップで、切れた血管を挟み込んで止血)

 

 投影した瞬間。

 

「――がああアァ……っ!!」

「衛宮さん!?」

 

 想像を絶する痛みに身を捩らせた。しかしベルトで固定されているため、ほとんど動けない。

 士郎は目に涙を溜めながら、息を整える。

 

「だい、じょうぶ……だ。体内に、クリップを出現させて、血管を閉じた、だけ」

 

 敏感な内臓や筋肉を押しのけて、金属製のクリップが現れたのだ。これくらいの痛みは予想しておくべきだった。

 

「なんて無茶を……」

「……っ、デモこれで出血は」

「っ……。ああ……大まかには、止まったらしい」

 

 士郎はぐったりと簡易ベッドに沈み込んだ。

 あとは、オロルク環礁で凛と合流するまでの辛抱だ。

 気が緩んだためか、意識が朦朧としてくる。

 

「悪い……一旦……落ちるかも」

 

 士郎は薄れゆく意識の中で思う。

 

(――――。なんとか……自分で応急処置の真似事が出来た。……遠坂がいなくても)

 

 今まで何度も怪我をして、その度に遠坂の世話になった。怪我をした士郎を叱りながら、毎回親身に治療してくれた。これを言うと彼女が怒りそうだから言わないが、こんなに幸せな身分はないだろうと、いつも思う。

 

 けれど。

 もしかしたら。

 

 この先いつか、自分と彼女の道が分かたれる日が来ることも、無いとは言い切れない。それは自分や彼女の意思とは、関係なく訪れるかもしれない。

 

 だから、一応念のため。怪我をしても自分一人で生きていけるように。

 そんな思いで士郎は、投影による応急処置を考えていたのだ。

 

(……遠坂、頼む……無事で)

 

 再び意識は闇に落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 どれほど経ったか。

 強烈な揺れが士郎の意識を引き戻した。続いて襲ったのは落下するような浮遊感。

 

「……っ」

「……! ……、……っ!」

 

 混乱状態の中、秋津洲たちの叫ぶ声が朧気に聞こえる。

 そして再び機体全体に衝撃。

 今度は先ほどの比ではなく、絶叫系のアトラクション以上の衝撃が士郎の身体を揺さぶった。

 

「……っ」

 

 機内に様々な物が打ち付けられる音と、外からの波の音が響いた。

 傷口に響く激痛にも、脳が揺れたからか呻き声を出すことすら出来なかった。そのまま目を閉じ歯を食いしばって、じっと痛みが落ち着くのを待つ。

 

 皆が何か話している声が聞こえたが、士郎にはそれを聞き取るだけの余裕は無かった。

 やがて意識を周囲の状況把握に向けるだけの余裕が出てきた士郎は、自分の周りが透明な膜のような物に包まれていることに気付いた。

 

「……平気、シロウ?」

 

 金剛が、彼女らが『装甲』と呼んでいる障壁を、士郎やベッドを含める形で展開していた。

 床には様々な機材が散乱していたが、士郎にぶつからなかったのはこのお陰らしい。

 

「なにが、起きた……?」

『最悪!こんな時にダウンバーストかも!』

 

 秋津洲の声が、伝声管を伝ってこちらまで響いた。

 

『士郎君生きてるよね!?』

「ハイ、意識はあるみたいネ」

『よかった……。それで状況だけど、突発的な下降気流を掠めちゃって。ウインドシアの影響で機体制御が間に合わずに、ほとんど墜落みたいな感じで硬着水したの』

 

 どうやら先ほどの衝撃は、海面に叩き付けられるように着水した結果らしい。

 

「機体の損傷は?……離水は可能デスカ?」

『察してはいると思うけど無理だね。片翼がフロートごと折れちゃって、見ての通り機体が傾いてるかも。音を敵潜に拾われるのが怖くて発動機も止めてる』

 

 目線を壁の半透明な小窓に向けると、朧気に大波がうねる夜の海の輪郭が見える。機体が傾斜していなければベッドの高さからでは見えなかっただろう。士郎の平衡感覚がおかしくなったような感じがしているのも、機体が波に揺られながら傾斜していたからだった。

 

「機体を再形成するのは……まだ無理デスネ」

『うん。これを作るのにかなり頑張っちゃったし、半日は無理、かも』

「……」

 

 金剛は唇を噛んだ。

 流石に、これほどイレギュラーな状況の中で皆を運んできた秋津洲に責は無い。嵐の中をここまで飛行して、ダウンバーストに遭遇しても完全な墜落を回避したのだから、勲章物の奮闘だろう。

 

 だが、このままでは凛たちの『かぜなみ改』と合流することができない。

 それはつまり、士郎の治療ができないということ。

 

「……私たちで海に出て、かぜなみ改を捜索しましょうか」

 

 加賀が提案するが、金剛としては安易に頷けなかった。

 龍驤も同意見らしい。

 

「いや、やめといた方がええ。捜索に出た結果、ウチらだけじゃなく二式大艇まで敵に見つかったら……」

「砲雷撃を回避できるだけの機動力は現状ありませんね。……軽率でした」

「普段なら選択肢として有りなんやけどな……」

 

 そう、普段なら賭けに出てもいい状況だが、今は士郎が動けない。

 この大艇が狙われたり破壊されたりした場合、誰かが重傷の士郎を背負って嵐の海を漂流しなければならなくなる。

 

 今は動けない。

 

 漂流する二式大艇に乗った艦娘たちに出来るのは、ただ待つことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 怪我の影響か、士郎の全身は風邪を引いた時のように熱を持っていた。

 ふと、額にひんやりと心地良い冷たさを感じて、薄く目を開ける。

 

「電……」

 

 この少女が絞ったタオルを用意してくれたらしい。

 電の目は涙こそなかったが、泣き腫らした後のように赤く腫れていた。

 

「ごめんなさい」

 

 士郎には電がそんな事を言う理由が分からない。表情からそれを読み取ったのか、彼女は言葉を続ける。

 

「電が勝手に砲撃したから、衛宮さんが、こんな……」

 

 とうとう電の目に、涙が滲み始めた。

 彼女は、島の上で自分がレ級に砲撃した時の事を言っているらしい。

 

「……馬鹿だな、あれは自分の判断で突っ込んだ、俺の自業自得だ」

「でもっ、きっかけを作ったのは電なのです。電が自分の感情に流されて、勝手な事をしたせいで……」

 

 士郎は溜息を飲み込んだ。

 そのまま手を電の方へ伸ばそうとしたが、ベルトで腕ごと拘束されているため動かせない。

 仕方ないので手元にナイフを投影し、ベルトを切断した。

 近くにいた鳳翔が、ぎょっとして声を上げる。

 

「な……何をして」

 

 使い終わったナイフを霧散させ、士郎は空いた手を電の頭の上に乗せた。そのままぎこちない動作で撫でる。

 

「俺はさ、安心したんだよあの時……」

 

 電は、意味を理解しかねているようだった。

 士郎は掠れがちな小さな声で、言葉を続ける。

 

「艦娘って基本、俺たち人間を最優先に……って感じでさ。その事に全然不満とか言わないだろ?あの島を放棄するのだって、俺たちよりずっと耐えがたいだろうに」

 

 恐らく今頃、アリマゴ島の施設群は全て破壊されているだろう。

 一月足らずしか居なかった士郎でさえ名残惜しく難じるのだから、最低でも八年以上過ごしてきた電たちはその比ではないはずだ。

 なのに、誰も不満を零さずに凛の言葉を信頼し、従った。

 

「それは、だって艦娘はかつての兵器を、艦艇を甦らせた存在で。人間の為に戦うことが存在理由なのです」

「違う」

 

 士郎の手が頭から離れ、電の肩を意外なほど強く掴んだ。

 電は驚いて目を見開く。

 

「ずっとお前らと一緒に過ごしていて、分かった。確かに艦娘の身体には、昔の船に関する記憶……いや記録が存在するだろう」

 

 全ての物質には情報が付随する。それは知性を持つ生命に限らず、心を持たぬ鋼にも記録情報として存在する。

 

「だけどその記録を参照している艦娘の心は別だ。軍艦としての記録とか概念を、効率的に運用するには人格が必要だから、新しく産み出す必要があったんだ」

 

 以前艦娘という存在について、凛に見解を求めた際、彼女は士郎に言った。「魔術を用いて古い艦艇の概念を甦らせたとしても、そこに心は発生しない」と。艦娘のような存在を作るためには、艦艇の概念の憑依・降霊だけではなく、人工的に魂や人格を植え付ける必要があるのだ。――例えばアインツベルンのホムンクルスのように。

 

 艦娘たちが自分を、過去の艦艇の生まれ変わりのように感じているのは、恐らく艦娘を開発した魔術師の狙い通りの誤認だろう。まるで詐欺師のやり方だ。

 過去の記憶は本物。船の概念として扱う力も本物。だがそれらを統合する意識だけは、真っさらな別物。これに自力で気付くのは、通常では困難だろう。

 

「……艦娘としての人格は、過去の艦艇とは関係なく、後発で産み出された物だ。だから電も、一個の人間と同じように自由意志があるし、軍艦の代わりとして人間の為に戦う義務なんてないんだ」

 

 嫌なら放り捨てていい。もっと自分の心のままに生きていい。

 そんな想いを込めた言葉だった。

 

 ただ、平常な状態の士郎であったなら、この事をそのまま伝える真似はしなかっただろう。彼女たちのアイデンティティを根幹から崩しかねない、と推測できる情報だからだ。痛みと失血で意識が朦朧とした状態だったからこそ、士郎は劇薬のようなこの事実を零してしまった。

 幸いにも士郎の声が小さく、雷鳴や風雨の音が邪魔になった為、それを聞き取れたのは、電の他には鳳翔と金剛の二人だけだった。

 

「電は……電、は……それでも、艦娘……なのです」

 

 動揺している電を見かねて、鳳翔と金剛が口を開こうとした直前で、電は言った。

 

「い、いや、だから艦娘としての義務なんて……」

「衛宮さんや遠坂さんの役に立ちたいし、深海棲艦に脅かされる人だって助けたい。この思いは、今の話を聞いても変わらなかったのです。……だから、電の中にある過去の記憶とは関係なく、艦娘として戦うと()()()()()()」 

 

 電は肩に置かれた士郎の手を外すと、祈るように両手でぎゅっと包んだ。

 

「できれば、今度は電が衛宮さんたちを守れるように、頑張るのです……」

 

 できれば、という言い方が何とも彼女らしい。

 士郎はそんな電の姿から目が離せなかった。大切な、何かとても大切な誓約を目にしているような、そんな気がしたのだ。

 

――ぺちり

 

()っ……」

 

 細い指が士郎の額を弾いた。

 

「なーにをいきなり言い出してるんデスカ、このシロウは。今にも死にそうな顔して……」

「金剛……」

「電を()めすぎ、というか艦娘を嘗めすぎネー。ワタシたちが義務感だけで戦ってると思いマス?そんな半端な覚悟で、これまで身を削ってこれたと?」

「……いや、悪かった。そう、だったか……」

「分かればよろしい。……全く、叢雲が聞いてたら多分あの変な槍で串刺しにされてるヨ」

 

 腕を組んでぶつぶつ呟く金剛。

 そこで鳳翔がぼそりと零した。

 

「まあ金剛さんは、()()()()()衛宮さんの為に戦うのは、やぶさかでは無さそうですが」

「――――っ!」

 

 ばっ、と。

 反射的に金剛が、士郎の傍から飛び退る。まるで戦闘中のような表情だった。

 

「ホウショー!?いきなり何言い出してんデスカ!」

「あらあら。そういう存外に表情を取り繕うのが上手なところ、私としては余り面白くないです……」

 

 困ったように口元を手で隠す鳳翔。その姿は、いつもと少し雰囲気が違うように感じる。

 対する金剛は珍しく、本当に珍しく、鳳翔に怒気を向けていた。

 

「ワタシにどうしろと?敗戦が確定してる所に突っ込んで行けとでも!?」

「どうこう言う権利は私にはありませんが……憧れの女性が、勝負の場にすら上がらない負け犬になるのを見るのは、何か嫌だったので」

「こ、この……」

 

 何の話をしているのか皆目見当が付かない士郎だったが、金剛がガチ切れ寸前だというのは何となく分かった。あと視界の端で榛名がこっそりと、鳳翔に向けて親指をぐっと立てているが、これは一体……

 

「――――あっ!」

 

 不意にそんな陽炎の声が、機体後方から聞こえてきた。

 続いて慌てたように駆けてくる足音。

 

「ねえ聞いて!尾部の窓から警戒してたんだけど……?」

 

 異様な雰囲気を察して言葉尻が小さくなっていく陽炎。

 

「えっと、邪魔だった?」

「いいえ、割といいタイミングだったかもしれません」

 

 そう答えたのは榛名だった。

 

「それで?」

「はい、外を警戒してたら、右後方、方位150の水平線付近に微かに青白い発光を確認して……」

 

 金剛や鳳翔を含め全員が、警戒態勢に入った。

 

「落雷ではないのデスネ?」

「波間に隠れがちだけど、継続して光ってるので多分……。深海棲艦とも違う感じなので、かぜなみ改かもしれません」

 

 にわかに現れた希望に、全員の心が沸き立つ。だが――

 

「……でも、なんで灯火してるんだ?敵に見つかる確率も、上がるだろうに。罠じゃないのか……」

 

 艦娘たちは揃って意外そうな顔をして、士郎を振り向いた。

 

「……あ。そうか、士郎さんはまだ知らないのか」

「そういえばまだ見たことなかったですね」

 

 勝手に納得する陽炎と鳳翔。

 頭の上に疑問符を浮かべる士郎に、陽炎は人差し指を立てて説明する。

 

「あのね、こういう嵐の時には――――」

 

 

 

 

 

 

 その後の観察によって、謎の発光は巡視艇サイズの船――つまり『かぜなみ改』からの物だと判明した。

 互いに会敵を恐れて電探も索敵機も飛ばしていない為、向こうはこちらに気付いていない可能性が高かった。

 

 艦娘たちは、大艇のドアから聴音機(ソナー)を海中に垂らして、敵潜が潜んでいないかを出来る限り調べた。結果、スクリュー音などは感知されたかった為、一隻が『かぜなみ改』に隠密で接触に向かう事となった*1

 なお、『かぜなみ改』自体のスクリュー音も感知できなかったが、何らかの隠蔽魔術だろうと推測された。

 

 士郎から程近くに位置する搭乗口が、ガバッと開け放たれ、風雨が入り込んでくる。

 

「誰が行きます?」

「ワタシが。この中じゃ排水量多いし凌波性は悪くないデショ」

「(えー、衛宮さんと同じ空間に居づらくなりました?)」

「(……ホウショー。一度きつめにオシオキが必要みたいネー)」

「(きゃー)」

 

 金剛は鳳翔に向けてべ、と舌を出すと、そのまま荒れた海へと飛び出していった。

 

 彼女が向かう先には、嵐の中で輝く光。

 

 

――――あれが、セントエルモの火……

 

 

 ベッドに伏したまま、小さく呟く。

 時計塔の講義で、名前を耳にしたことはあった気がするが、実際に目にするのは初めてだった。

 激しい嵐の中で、船のマストの先端が発光する現象。

 原理的には、静電気によるコロナ放電ということらしいが、古の船乗りたちにとっては特別な意味を持っていた。

 

 聖エルモによる加護。

 

 嵐の終わりを告げる、導きの光。

 

 或いはアルゴー船の一員たる双子神の顕現とも。

 

 

 ようやく、凛のいる『かぜなみ改』と合流できるという安堵が、脱力と眠気をもたらす中、ぼんやりと思う。

 

(丁度、ふたつ光ってるな……)

 

 『かぜなみ改』だけではない。

 嵐の海を行く金剛の髪先や艤装にも、セントエルモの火が灯り、輝いている。 

 

 今まで何度も彼女には助けられてきたが、この光景はまるで、彼女の存在そのものが自分たちを導く『セントエルモの火』のようだと、士郎には思えた。

 

 

 

 

 

*1
この距離ならば最悪、電探や無線を使った結果敵に発見され大艇が攻撃されたとしても、士郎を背負って『かぜなみ改』まで到達することは可能とはいえ、アリマゴ島から持ち出した物資を失う愚を避ける為にも、隠密行動が理に適っていると判断された




千子村正(士郎の疑似鯖)ついに来たー!

即Lv100宝具4スキルマにしました。
敢えて宝具4に留めておくことで、いつかすり抜けで来た時にもがっかり感を抱かないようにできるのです。
そこそこお手頃価格で来てくれました(■万)。昨年末、Sタル用に溜めた石で盛大にヴリトラ爆死したのは、この時を見越した乱数調整だったんだよなぁ…(静思黙考の裡大悟へ至りながら




それから『ロード・エルメロイ二世の冒険』読みました!
詳しい感想はネタバレになるので活動報告の方に書きます。
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