「デルタが、何か最近私に隠し事をしてる気がするの。サーリは何か知らない?」
「・・・・・・先ずはドアを閉めてくれないかい、キャス。お茶位は出すから」
知り合いの中で色々な意味で一番質問をし易い友人の元を訪れ、ノックもそこそこに主が居る事は分かっていた家に飛び込んだ私の目に最初に映ったのは、呆れ顔でカップをテーブルに置いた友人の姿だった。
私達、元ラシェーラの住人――大半はソレイルで生まれ育った人々だけれど――がソレイルから新生ラシェーラに移り住み、デルタと私ことキャスティ・リアノイトが同棲なんてするようになってしばらく過ぎた頃。
デルタに対してのその違和感は、やって来た。
初めの頃は、机に向かって何かしている時間が多くなった。大きめの紙やノートを広げ、何かを書いているらしいのは分かったので、何かの設計でもしているのかと声を掛けながら覗き込もうとしたら慌てて隠された。何かの絵のような、模様のような物がちらりと見えた気がするけれど、気がする、程度にしか見えなかったので、理解出来そうなサーリやイオンに詳しく訊こうにも訊けないし。まぁ、その時は別にそこまで気にかけてもいなかったのだけれど。
サーリにドアを開け放しのままにしている事を注意され、大人しくドアを閉めてからリビングに通してもらった私は、ドアに一度戻った間に用意してくれていたらしい私の分のお茶を飲みながら取り敢えずそこまで説明してサーリの顔を見ると、設計と聞いて科学者として気になったのか興味深そうな表情をしていた。
「ふぅん・・・・・・?ちなみに、描いてあったものはどんな感じだったかは覚えているのかい?」
「何というか、丸っぽかったような気がするんだけどよく覚えて無いのよね」
「ふむ・・・・・・流石にそれだけだと何とも判断のしようが無いな。で、他には何かあったのかい?」
「そうね、次は・・・・・・」
設計?が終わったらしいデルタは、今度は家を空けるようになった。元々外に出るのは好きな方ではあったし、それに関しては特に何も考えてはいなかった。まぁ、最近話す時間や一緒に居る時間が減った気がするとは感じてはいたけど、机に齧りついているよりはいいか、と思っていたくらい。汚れ方や音、鞄の膨らみ方を見るに、どうやら鉱石を掘りに行っていたらしいのは何となく分かった。何に使うのか聞いても何故か教えてくれなかったのが少し気になってはいるところではあるのだけど。
「鉱石、か。機械、と言うか金属製品を作ろうとしているといった所かな?」
「多分、そうなんじゃないかしら。どんな鉱石かとか、何を作るのか聞いても教えてくれないから何とも言えないのよね」
「そこまで頑なに教えてくれないのかい?」
「そうなのよねぇ・・・・・・ここまで隠されるのも珍しいから、途中からあまり深くは聞かないようにしたんだけど、やっぱり気にはなるのも事実っていうか」
「確かに、昔から頭はいいけど考えるより突っ走るタイプだったからね、デルタは。そこまで隠すとなると確かに珍しいかも知れない」
今までのデルタの行動を軽く思い返し、口元に手を添える様にしながら思い出しつつそう言うと、軽く笑みを浮かべながらサーリがそう返した。
実際、デルタは小さい頃からとても行動力があった。その行動力に困らされた事もあったけれど、そのおかげで救われた事もある。そう、例えばチューブ・カンパニーで――――
「――――!!」
「?なにやら顔が少し赤くなっているけれど、どうかしたかい?」
「何でもない、何でもないから!! 気にしないで!!」
んん?と首を傾げるサーリに手を振りながら慌てて何でもないと繰り返すと、訝し気にしながらも納得してくれたのを見て内心胸を撫で下ろす。聞かれて困る話では無いにしても、積極的に話すような話では無いから。・・・・・・と言うか、
――――相手がサーリとは言え、流石に恥ずかしいわよ!!
・・・・・・まぁ、それ以外にも理由は無くも無い。チューブ・カンパニーでの一連の話はどちらかと言えば愉快な話では無いし、サーリにとってもあまり聞きたい話では無いだろうし。態々蒸し返すような話でも無い。
「で、その後はどんな様子なんだい?材料を集めた訳だし、また籠りっ放しなのかな」
「・・・・・・それが、違うのよ」
「と言うと?」
「・・・・・・ネイさんの所と、イオンの家に行ってるみたいなのよね」
「イオナサルの家?ちゅちゅ屋じゃないのかい?」
「そ、イオンの家」
「成程、つまりはデルタが浮気でもしてやしないかと疑っているって訳だね?」
そんな事はしないと思うけどね、と言ってお茶を飲むサーリ。
「私だって流石に無いとは思うわよ、あのイオンだし、デルタがそんな事するなんて」
「でも気になるんだろう?」
「そりゃこうも隠されると、流石にね・・・・・・年上とは言え、昔から付き合いのある二人の所に行ってる、って言うのも少し気になるし」
「イオナサルの所は、まぁ加工関係の相談なりしているって考えるのが妥当じゃないかい?デルタは部品の組み立てはしても、金属製品を材料から作る経験は少ないんじゃないかな?」
「・・・・・・なるほど、確かに」
「ネイさんの所に行く理由はパッとは思い当たらないけどね。まぁ、あそこならレナルルさんも付いているんだ、変な事は起こらないだろうさ」
何より、ネイさんに何かあったら白鷹が気付くしね、と遠い目をするサーリを見て、私は思わずあー・・・・・・と声を漏らす。サーリと再会し、ソレイルでのあれこれが終わり、改めて良い仲になった今でも、相も変わらず白鷹はネイさん・・・・・・いや、『プリティベリーちゃん』の熱烈なファンであり、それに関してはラシェーラの頃からという事もあってサーリも認めて――諦めて、とも言う――いるらしい。
ソレイルから新生ラシェーラに移り住み、PLASMAの本部もラシェーラに移した今、現状のトップクラスの技士の一人という事もあり、白鷹は本部の警備周りにも一枚噛んでいる。もしデルタが何かしていると分かった瞬間に、本部や私達の家に飛び込んでくるのはまず間違いないだろう。
「しかし、ネイさんの所に、ね。いっそ、ネイさんやイオナサル本人に訊いてみたらどうだい?」
「それも考えたんだけど、そこまではしなくても、って感じもするのよね・・・・・・デルタだし」
「まぁ、気持ちは分かるけどね。白鷹みたいな分かりやすいタイプも良し悪しって所なのかな」
「そうね・・・・・・」
そう会話に一区切りついたところで、家中に響き渡るような足音が奥の方から近付いて来て、『ネイちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!』という叫びを上げながら蹴破るような勢いで家のドアを開け、飛び出して行く音が聞こえた。この家から飛び出して行くような人物は一人しか居ない。ついさっき話題に上がった、金髪の男性。サーリと同居しているラシェーラ有数の技士、白鷹ことレオルム・セオジウムだ。
「・・・・・・え?」
「・・・・・・はぁ」
ネイさんが居るであろう本部の方向に走っていく白鷹の姿が窓越しに見えて軽く唖然としていると、サーリが片手で顔を隠すようにしながら溜め息をつく。
「・・・・・・すまない、キャス。偶にあるんだよ、こういう事。大抵ネイさんがちょっと指を切ったり足をぶつけたりしたみたいな軽い怪我をした時だから気にしなくていいよ」
「そ、そう・・・・・・」
なんだかなぁ、と言うか、いつも通りだなぁ、と言うか。そんな事を考えながらカップを口に運び、白鷹のせいで何だかあんまり考え込んでいるのも少し馬鹿らしく感じてしまったのもあって、その後はサーリと白鷹の関係について切り込んでみる事にした。
「ただいまー」
「キャス、帰ったの?」
「ん、ネロ。ただいま、何かあった?」
あの後はしばらくの間ぐだぐだと話をして、そろそろお昼になるか、という時間になったので家に戻ると、パタパタとネロが出迎えて来たので訊ねる。
「何もなにも、デルタがいつも通り「ちょっと出かけて来る」って家を出た途端に貴女も同じこと言って出かけて行ったんじゃない」
せめてどこに行くのか言って欲しかったわ、と呆れ顔で続けるネロ。
言われて今朝の事を思い返すと、確かにどこに行くか言っていなかった気がする。
「ちょっとサーリの所に行ってたのよ、少し話したくて」
「行く場所も言わないで出て行ったくらいなのに、少し?」
「・・・・・・まぁ、ネロに隠す事でもないか。デルタについて少し相談してたのよ」
「デルタの?あぁ、そういえば貴女に最近隠し事をしているみたいね」
「そ。色々と、サーリに相談するのが一番都合が良さそうだったのよね」
「彼氏持ちだから?」
正直それもある。設計のような物の話であればイオンや白鷹も候補には上がるのだけれど、男女関係の話になると異性の白鷹には話し辛いし、イオンには、デルタがイオンの家に行っている事やアーシェスの事もあって何となく訊き辛い。そうなると、サーリくらいしか相手が居なくなるのだ。
「まぁ、いいわ。プリムもそろそろお腹空いたって言い出すでしょうし、お昼ご飯をお願いしていいかしら」
ネロがそう言うと、奥の部屋の方からおなかすいたー!という元気な声と足音が聞こえて来る。
「ね?」
「そうね、お昼にしちゃいましょうか」
「っはー、ビックリしたぁ・・・・・・まさか白鷹が飛び込んでくるとは思わなかったぜ・・・・・・」
「アイツ、優秀なんだけどこういう時に面倒なのよね・・・・・・」
『しょぉぉぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんんん!!!!』と目を血走らせ、叫びながら本部の執務室へ飛び込んできた白鷹の対処を済ませた俺とネイさんは、二人揃って来客時に使用する机に突っ伏すようにしながら軽くぼやく。俺が今日ここに来た理由は最終確認の為だったんだが、それを監視カメラ越しに見た白鷹――何も知らなければ誰でもそう思うだろうが――の対処で、こうも時間を取られるとは思っていなかった。
「まぁ、アンタもアンタよデルタ。いくらあたしがキャスと同じくらいだからって、他の女にこんな事頼むのってどうなのよ?」
まぁ気持ちは分かるけどさ、と体を起こして頬杖を突きながら言うネイさん。
「俺も分かっては居るんだけどな・・・・・・これに関しては、失敗したくないんだ」
「そーねぇ・・・・・・まぁ、困ってる時に頼られる事自体は別に悪い気分じゃないけどさ」
「・・・・・・ありがとな、ネイさん」
「いーのよ別に、ラシェーラの頃から面倒見てんだからこのくらい。ねぇ、ター坊?」
「ター坊は勘弁してくれよ・・・・・・」
にやにやと笑いながらラシェーラに住んでいた頃の呼び方をするネイさんに、思わず脱力する。なまじ小さい頃から世話になっている分、こういう時からかわれやすいのが少し困りどころだ。
「で、何時渡すのよ?」
「今夜あたりにでもとは思ってるんだけどな。何か良い案とかあるのか?」
「あっても言わないわよ。こういう事は自分で何とかしなさい」
「まぁ、一応聞いてみただけで俺も本気ではないけどさ」
「よろしい」
満足げにそう言ったネイさんが、そういえば、と声を上げる。
「コレの裏側に彫ってあるやたら丸っこい文字?みたいなの、これ何なの?」
契絆想界詩・・・・・・じゃないものねぇ、と興味深げにしげしげと光をあてて眺めるネイさん。
「ほら、前にネイさんの詩であの星、アル=シエルに行っただろ?あそこで使われてる、俺達で言う契絆想界詩みたいな言葉らしくてな。折角の思い出だし、と思ってさ」
「ふぅん・・・・・・まぁ、いいんじゃない?所でだけどさ、デルタ。これ、誰に教わったの?」
「向こうで会った、アヤタネって奴に――何だよ、ネイさん」
「んーん、べっつにぃ?ただ、あのシュレリアって子に教わったって言ったらどうしてやろうか、と思っただけー」
「・・・・・・まぁ、アヤタネは同性って事もあって訊きやすかったからな」
・・・・・・シュレリアにも一応教わっている事は言わなくて良かった、と内心胸を撫で下ろす。実際、嘘は言っていないのだ。シュレリアには文字レベルの本当に初歩の事は教えて貰ったが、これの文面を考える時にアドバイスを受けたのは基本的にアヤタネだった訳だし。
「で、これはなんて読むの?」
これに彫ってるんだから、そういう内容なんだろうけどさ、と続けるネイさんに、どう答えたものか、と少し考える。
ネイさんはなんだかんだで、面白がるにしてもキャスには伏せてくれ、と言えばきちんと本人には伏せてくれるだろうとは思うけど、やっぱり気恥ずかしいと言うのが大きい。何が悲しくて、小さい頃から世話になっている近所のお姉さんのような存在の人に、恋人へ伝える為のメッセージを教えなければいけないのか。
「教えないなら、コレの事キャスに教えちゃおうかしら」
「はぁ!?」
なんか質の悪い事言い出しやがったぞこの人!?
「まぁ、流石に冗談だけどね。いくらなんでもそこまでの事はしないわよ」
「冗談キツいぜ・・・・・・」
項垂れながらそう言うと、ネイさんは楽しそうに笑って、
「あの子が喜ぶように頑張んなさいよ、デルタ」
「・・・・・・おう」
正直未だに全く浮かんでいないものの何とか返すと、ネイさんは俺の答えを聞き、よろしい!と言いながら俺の背中をバンバン叩く。痛いって、と抗議の声を上げたタイミングでドアが開き、部屋に入って来たレナルルさんに怪訝な顔をされたのは余談である。
夕食を食べ終えて一息ついた頃、ちょっと外に出ないか、とデルタに呼ばれた私は、自分から片付けを申し出てくれたプリムと、楽しそうな薄い笑みを浮かべたネロに見送られながら、お茶を入れたマグカップを持ってデルタが先に行ったらしい外へと向かう。
ネロが面白がっているのが気にはなるけれど、まぁ私とデルタが仲良くしているのを見ている時は大体面白がっているか、ごちそうさまと言って立ち去るかの二つなので何時もの事と言えば何時もの事だし。
「っと。デルタ?来たわよー?」
「っ、お、おう、来たのか、キャス」
「・・・・・・どうかした?なんかやたらと声上ずってない?」
「い、いやぁ?何でもないぞ?」
「まぁ、いいけど。はい、お茶。夜になれば外は少し冷えるし・・・・・・何か、話があるんでしょ?」
「・・・・・・あぁ、ありがとな」
そう言って私からカップを受け取ったデルタは、一口お茶を飲んで小さく息を吐く。
「温かいなぁ・・・・・・」
「そう、ね」
デルタはもう一口飲んで、続ける。
「思い返せば、ラシェーラの頃と言いソレイルでの事と言い、本当に色んな事があったよな」
「イオンがやって来てからは、特にね」
「はは、そうだな。救星イオン応援団!なんて言ったりしてな」
「イオンに会うまでは、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったわよね・・・・・・万寿沙羅で私達とプラムの三人で一緒に毎日過ごして、お父様とも喧嘩したりして、そうやって大きくなって行くものだと、ずっと思ってた」
「俺もだ。三人で集まって遊んだり、ああでもない、こうでもない、って話し合いながら自作のシェルノトロンを作ったりしながらあの町で大人になって、店を継いだりするんだろうな、と思ってたよ」
まさか万寿沙羅どころかラシェーラを出るとは思わなかったけどな、と軽く笑いながら言うデルタに同意して、お茶を一口。
ソレイルに移り住み、コールドスリープから目覚めてPLASMAに二人で所属してからも、何かと騒動には事欠かなかった。
ラシェーラの頃からの因縁の相手、ジル率いるジェノミライ教団から送られるシャールの襲撃や、アメノミライでの騒動、教団に拉致され、帰って来たデルタがフェリオンの門を開けてからのあの日々、イオンとの再会、そして・・・・・・
インターディメンドの処置をデルタが受けていた事、それによる副作用で、身体の感覚や記憶を失っていっていると知った事。
誰とも知らない相手――今では、それがアーシェスだった事は分かるけれど――に、デルタの身体を好きにさせるようなもののインターディメンド。それを知っていて、私に何も言わずにそれを利用していたサーリやネイさんには散々怒って、喚き散らして。
なんでデルタが。なんで教えてくれなかったのか、なんで、なんで、なんで・・・・・・!!
そんな思いは、完全に無くなる、という事はなかったけれど。それでも、あの一日を通して、私の前にいるデルタは、デルタなんだって思えるようになって。デルタを愛し続けると、心から言えるようになって。
アーシェスにデルタを、私達の世界を託すために、インターディメンドをもう一度実行した。
デルタと二人で、アーシェス達に攻撃した事だってあった。それでも、アーシェスはデルタを操って悪い事をさせて意趣返しをすることも無く、ただただ私達を救う為に行動してくれていた。もう、あの優しい彼はこの世界を訪れる事は無いけれど、いくら感謝してもし足りない。
「なぁ、キャス」
「なに?」
「俺を支えてくれて、ありがとな」
カップを置き、いつになく真剣な表情で私の方を向き直しながらそう言うデルタに、思わず体が固まってしまう。
「ど、どうしたの、突然?」
「小さい頃も、ソレイルでの時も、キャスが居たから頑張れた。キャスが居たから、ここまで来れたんだ。
ラシェーラではイオンやネイさんが、ソレイルではアーシェスも手伝ってくれたお蔭でキャスと一緒に居られたけど・・・・・・それは、もうお終いだ。もうこれ以上、誰かのお蔭で、なんて言いたくない」
違う。
私こそ、デルタが居たから頑張れた。あなたが私の手を引いてくれるから、私は今まで頑張って来れた。ここまで来ることが出来た。
そう言葉にしようとして、デルタが一歩近付きながら続けた言葉に遮られる。
「今まで、散々手伝ってもらって来た。だから、これから先くらいは俺だけの力でお前を守れるようになりたい。守って、お前とずっと一緒に居たい。
英雄になんてなれなくていいし、なる必要も無い。誰の力でも無い、俺自身の力でお前を守り続ける。隣に居続ける。」
だから、とデルタが続けてポケットから何かを取り出したのが見え、それが何かが分かった瞬間に、言おうとした言葉がどこかに行ってしまい、今度こそ完全に固まってしまった。
だって、それは。
「え・・・・・・?」
「その誓いの証としてこれを受け取って欲しい」
小箱に収められた、指輪、だった。
「俺と結婚してくれ、キャス」
「さーて、アイツは上手くやってるかしらねー?」
自分の向かいの椅子に座り、あたしにあれだけ手伝わさせたんだから、上手くやらないと許さないわよ?と冗談めかして言うネイを見て、その家の主ことサーリは、小さく溜め息を吐く。
「?何よ、溜め息なんてついちゃって」
「いや、ネイさんは何時でもネイさんだな、と改めて実感しただけさ」
「それよりも、酷いっすよサーリちゃんにネイちゃん!少年がプロポーズをする為の手伝いをしてるなら、俺にも教えて欲しかったっス!」
酷い目に遭ったっス、と指輪のサイズをネイとデルタが調整していた際、その様子を偶然見てしまって勘違いし、PLASMA本部に突撃した結果、いつもの事として警備員に丁重につまみ出された白鷹が頭を軽く掻きながらぼやいたのを見て、プランク家に来ている最後の一人――イオンが、少し申し訳なさそうに謝る。
「えっと、ごめんなさい白鷹さん。デルタが、気恥ずかしいからあんまり知られたくない、って言っていたので・・・・・・」
「いやいやいやいや、イオンちゃんに謝ってもらうような事では無いんスよ。でも、何というか、こう、仲間はずれ感があると言うか・・・・・・」
「まぁ、僕だってキャスとは仲が良いから、話を聞いて感づいてポロッと指輪の話が出たりしないように、って理由であえて教えて貰っただけだし、あまり気にする事でも無いと思うけどね」
「ま、本当ならアタシとイオンにしか教える気は無かったらしいしねー」
一応理解は出来ているけれど、と言うような何とも言えない表情の白鷹を脇に、そういえばさ、とネイが声を上げる。
「デルタが作ってたあの指輪に彫ってあったあの文字?って、イオンはどういう意味だか知ってる?イオンの所で彫ったんでしょ?」
「あの文字・・・・・・あ、あのヒュムノスの事?」
「んー、多分それ。知ってる?」
「うーん・・・・・・知ってはいるんだけど、言ってもいいのかなぁ・・・・・・」
「だーいじょうぶよー、その位。指輪の裏に彫るようなこっぱずかしい事は、デルタが成功したらどうせみんなの前で同じような事を直接言う事になるんだし」
結婚式で、さー♪と面白がって言うネイの言葉に、確かにそんなものな気もするけど、と悩むイオン。
「んー、じゃあ意味は言わないけど、読み方だけなら・・・・・・サーリちゃん、何か紙とペンを借りてもいい?」
「あぁ、これでいいかい?簡単なメモ用に使ってる物だけど」
「うん、ありがとう。あのヒュムノスは――」
――――Was yea ra melenas biron yor.
指輪に彫ってあるものに気付いたキャスに、慣れない言葉という事もあって若干片言になりながらもそう答えると、それって、とキャスは小さく呟いた。
キャスは、アル=シエルでシュレリアにヒュムノスについて教えて貰っていた。少なくとも俺よりもヒュムノスについては詳しいし、意味はすぐ通じたのだろう。
「受け取って、くれるか?」
改めてそう訊くと、キャスは小箱を包み込むように手に取り、胸に重ねるようにして持ちながら、
「――――ええ。私もよ、デルタ」
花が咲いたかのような優しい笑顔を浮かべ、そう、答えてくれた。
Was yea ra melenas biron yor.
それは、これと言って特別という訳では無い、ありふれた言葉。
しかし、これ以上なく強固で、熱く、甘い、特別な思いが込められた誓いの言葉。
その、意味は。
――――私はあなたを愛し続ける。
デルキャスとラシェーラ組でのんびりしたものが書きたいって理由で書き始めて、そのまま書き終わったみたいな感じですな。
書き始めた切っ掛けの元々のネタの関係もあって、個人的に某ボイスドラマに影響されてる感じです。気持ち的に。
このヒュムノスは一応オリジナルだけど、ここまでの短文なんだから流石に合ってると思いたい(
まぁ、デルタが慣れない言語を使って頑張って作ったヒュムノスだと思っていただければ・・・・・・(
何はともあれこれを読んで少しでも楽しんで頂けていればうれしいデスネー
ではではこれにて。