いいかー。不死身と無敵は違うんだからな!   作:炬燵猫鍋氏

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チュートリアルで死んでしまうとは情けない……。


藤宮続行:ゲームオーバー

総人口の8割が何らかの特異な力を有する社会。

かつては超常・異能と呼ばれ、その存在が眉唾とされた時代は遠く過ぎ去り、誰も彼もが有する力は『個性』と称されていた。

 

その有り様は様々だ。

 

下半身が馬の様になっている個性:ケンタウロス。

電車やバスの座席に座れないで困るとか。

手にした液体を全て水に変えられる個性:浄水。

間違って発動させるとすっごく損した気になるとか。

どんなに離れていても、一瞬にして自宅に帰れる個性:瞬間帰宅。

引っ越した後、なかなか新しい家に帰れず慣れるまで電車帰宅を繰り返すことになったとか。

 

とにかくこの世にどれだけの個性が有るのかわからない程だ。

大抵は両親の持つ個性のどちらかを受け継ぐか、その両方の影響を受けた個性となるのだが、稀に二つ以上の個性を持つ複合型や、突然変異のように全く異なる個性を発現させることも有るらしい。

 

発現時期は早ければ生誕時。

記録に残っている最初の個性持ちは生まれたときに光輝いていたらしいし。

遅くとも、4~5才までには現れるのが普通だ。

 

で、問題は。

俺、明日で14才なんだけど、まだ個性が現れてないんだわ。

無個性って奴かって?

いやいや。確かに『総人口』の8割が個性持ち=2割は無個性って事だけどさ。

個性持ちが世界に現れてから、俺達の世代でざっくりと5世代目。

世代を重ねるごとに個性持ちは増えていって、俺らだと無個性なんて100人に1人もいないんじゃないかな?

 

それに、心配した両親が、精密検査受けさせたのよ。

わざわざでっかい病院連れて行ってくれて。

んで、『個性因子』っていう個性持ちの細胞とか血液内に存在してる物質は確かに俺の中にも存在してるんだと。たっぷりと。

でも、今の医学では個性の判断は発現するまでわからないんだと。

だからね、個性届けって奴にはこうなってる。

 

藤宮続行(ふじみや・つづく)個性:未覚醒』ってな。

 

父さんの個性は傷や病気の治りが速い個性:高速回復。

母さんの個性は老化が極端におそい個性:不老。

 

今んとこ怪我しても治りは普通っぽいし、ひょっとしたら母さんの個性がこれから発現するのかもしれない。

 

て、いうか、それなら逆に高校生とか大学生になるまで発現しない方がいいな。

だって、母さんの外見年齢って今の俺と同じくらいなんだぜ。

俺と並んでる時にお姉さん?とか言われていたのが、そろそろ妹さん?になりそうなんだ。

……本人は俺が生まれてから今日までに身長が2センチ伸びてる!とか、よくわかんない事を力説してるけど。

 

何というか、身長はもう少し欲しいし、将来的にも行く先々で子供扱いされる人生は送りたくない。

 

将来……そうそう、進路希望の話、今日有るんだよな。

何か知らんがクラスの皆はこぞってヒーロー科なんだと。

ヒーローって職業はかなり特殊だ。

往来で無闇に使うことを法律で禁じられてる個性を、自己の判断で自由に使うことを許され、ヴィランって呼ばれてる個性を悪用した犯罪者を制圧・捕縛するお仕事。

 

大概がカッコいいコスチュームに身を包み、町をパトロールしてる。

有名になるとメディアへの顔出しも増えて、長者番付の上位に名を乗せるヒーローもたくさんいるとか。

 

でもなー、ヒーロー多すぎじゃね?

確か国内にヒーローの事務所って二万くらい有るらしいし。華やかな仕事に見えて、経営が結構いっぱいいっぱいな事務所多いらしいよ?父さんに聞いたけど。

 

父さんの仕事は警察の総務。ヒーローとのやり取りも仕事の内で、よくヒーローの舞台裏、はっきりいうと夢を見ていられないような話をしてくれる。

 

だから、俺の望む進路はヒーローじゃない。

経営のしっかりしたヒーロー事務所に就職する一般職だ。

学校の成績も、模試の結果も国立高の上位を狙う手応え充分だ。

こういう話をすると、クラスの連中は〝夢がない〟とか、〝お前、個性無いからなー〟とかいいやがる。

 

……ったく、小学生じゃ無ぇーんだから、夢物語を進路希望にしてどうすんだよ。

それに、一芸だけで務まるほど甘いもんじゃないだろ、ヒーローって。

正直、プロのヒーローになれる程の個性持ちはそんなにいないと思う。

なんかうちの担任の先生は皆ヒーロー科だよなーとか、無責任なことしか言ってこないし。

もう少し現実にそった指導って奴をさー……。

 

んなことを考えて歩いてたら、通学路に溢れる人々。

ん?何だ?

あー、あれか、ヴィランが暴れてるとか?

 

でけー。

なんだありゃ。巨体のヴィランとパッツンパッツンのコスチュームを着たヒーローな姉ちゃんがぶつかり合ってる。

うお、轟音。

 

ん?あの特徴的なモサモサ髪は……。

うちのクラスの緑谷じゃね?

マジもんの無個性。

地味目で引っ込み思案。でも勉強はトップクラスのヒーローオタク。

 

今のところ個性が発現してない俺と、緑谷の二人だけなんだよな。今の学年で個性を持ってない奴って。

 

きっと巨体のヒーローを見て〝緑谷ブツブツ〟と呼ばれる独り言で解析を始めてるに違いない。

 

 

『おーい!緑谷ぁーっ!』

 

声をかけると、即座に振り向くソバカス顔。

お、速攻で反応した。

 

『あ、藤宮君……あ、危ないっ!!』

 

ん?何が?

 

あっ?

 

 

デカイ、影。

 

瓦礫? コンクリ?

 

あ、今の、戦いで、ビル、崩れて。

 

最後に見えたものは、視界の隅でこちらに駆け寄ろうとする緑谷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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