あー、びっくりした。
何がビックリしたって、気がついたら全裸で腰抜かしてて、目の前にはでっかいコンクリの塊。
……で、その下からひび割れたアスファルトに流れる赤い染み。
その近くには俺のカバンが落っこちてて。
パニックになってる緑谷。
『え?藤宮……くん?無事?あれ、でも、今、潰されてて、ええっ?!』
うん、緑谷、落ち着こうか。
俺は潰されてないから。
ここにいる、俺は。
じゃあ、この瓦礫の下にいるであろう、潰された奴は……誰だ?
その後も大変だった。
ヒーローのシンリンカムイがやって来て、警察やって来て、救急車やって来て、救急車乗る直前に巨大なお姉さんが覆面越しにもわかる青ざめた顔で瓦礫持ち上げて。
うん、俺は救急車に乗せられたから見てないけど。
巨体のお姉さんの悲鳴が響いてた。
んで、病院に運ばれて、父さんや母さんが駆けつけて。
何かいろいろ検査して。
警察もやって来て。
落ち着いた頃にはすっかり夜になってた。
で、だ。要するに……。
俺の個性が発現したということだ。そうでなければこんな風にベッドで飯を食っていられるわけがない。
うん、少ない。
入院食ってのは育ち盛りの俺には物足りないね。
最初は父さんの個性のような、高速回復が発動したんだと思っていた。
しかも、父さんより強力な、致命傷からも即座に回復するような個性、たとえば、超再生って奴じゃねーの?
みたいに呑気に考えていた。
でも、違った。
検査の為に採血した針を刺した痕はそのまま残っているし。
なにより、……瓦礫の下には
現場にいた人達の話によると、瓦礫の下に広がる血溜まりから赤い靄のような物が立ち上ぼり、それが瞬く間に俺を……全裸で腰を抜かしている俺を形作った、らしいよ?
DNA照合の結果も、間違いなく同一人物。
つまり、俺は生き返った事になる。
父さんの高速回復、母さんの不老。
どうやら俺に遺伝したのは、二つの個性から新たに派生した俺だけの個性。
個性:復活。
なんていうのか、普通科に進学して将来は一般職につくつもりだったんだぜ?
なんでこんなレアな個性が発現するかな。
翌日。以前に検査を受けた病院に移されて再検査。
うん、俺の個性因子は以前と変わりないそうな。
つまり、もう一回死んでも生き返れるはず、だとか。
先生、もう少し言葉選ぼーよ。
父さんと母さんが睨んでるぜ?
……ってもなー、試す訳にもいかないし?
もし、一回こっきりの個性だったらアウトだし?
なにか発動条件が有るんだったら再現が確実じゃないし?
うん、すっごくラッキーで一命をとりとめたって考えるか!この個性に頼っちゃダメだよ、ダメ。
あれ、あれ?でもそうすると……無個性と変わんなくないか、俺。
ちなみに巨体のお姉さん、Mt.レディが謝りに来たり、ヒーロー協会の人と弁護士さんが両親に会いに来たり。
あれやこれやが続いて、俺が学校に行けるようになったのは、結局3日後だった。
教室に入ると、クラスの皆が一斉にどよめいた。
『よっ!不死身の男!』
『スゲー個性じゃん!マジ羨ましー!』
『な、な、今度俺の個性の練習台になってくれよ!』
おい、人をサンドバッグかモルモット扱いにした奴だれだ。
っていうか、なんで俺の個性の事が知れ渡ってるんだ?
あ、緑谷!
お前か、お前が言いふらしたのか!
『藤宮くん!良かったよ、元気そうで。ところで君の個性についてなんだけど。』
『待て緑谷。俺の身に起きた事を皆が知ってるのは何でだ?』
『え?だって……動画投稿サイトで凄い再生回数だよ。』
な、何ぃーっ!!!
俺は慌てて携帯端末を取り出す。
『不死身の少年ってタイトルでね……』
緑谷の説明の後半を聞き流しながら、音声入力で検索する。
Hero-Tubeにてヒット。
こ、これは……。
誰かが瓦礫の落ちた後を撮影していたのだろう。
流れ出す赤い液体。う、この下に、俺が、俺がいるのか。
そして、キラキラと輝く赤い靄が沸き上がる。
瓦礫の下に側で渦巻き、それは数秒とかからず人の姿になる。
俺だ。
……っていうか、顔にモザイクぐらいかけろーっ!!
もろ見えじゃねーかっ!
幸い、股間は角度的に映ってねーけど!
あ、緑谷も映ってる。
再生回数……30万以上、だと?
ヴおおっ!削除要請だっ!削除要請!
ん?盛り上がるクラスメイト。
1人心配そうな緑谷。
そして、なんかスゲー目付きで俺を睨む、爆発ヘヤーの少年。
爆豪、何だ?どーしてそんな目で俺を見る?
『おい、爆豪。俺に何か用か?』
『はっ!ザコが個性を手に入れたからってのぼせてるんじゃねーぞっ!』
うお、喧嘩腰。
緑谷の幼馴染らしいこいつは、爆破っていう戦闘向きの個性持ちだ。目付きはひどい、態度はデカイ、口は悪いと最悪なのだが、成績は優秀で、雄英高校に入学してトップヒーローになると公言している。
今まであまり関わっていないやつなんだが……。
『いや、九死に一生を得たクラスメイトにいう言葉か、それ。』
『そうだよ、かっちゃん。それに藤宮くんと僕たちは同じ雄英を受験する、云わば仲間じゃないか。それを……。』
え?緑谷、お前も雄英を受験するのか?
でもお前、無個性……あ、俺と同じ普通科か。
『うるせーぞクソナード!てめーは無個性のザコじゃねーかっ!それがヒーローになりたいだぁっ?』
まじ?緑谷、ヒーロー科受けるのか。凄いな。
ん?それに……何か俺の記憶では爆豪にいつも押しきられて、だまって俯いてたイメージなんだが。
おお、強く爆豪に視線を返して。
強くなってる?何か意識の変わることが?
ま、いいや。それよりも、と。
『俺は普通科を受けてヒーロー事務所の一般職を目指すんだよ。プロヒーローとの関わりが深い雄英ならいろいろ有利だからな。』
『そーだよな、お前ら一般人と俺は違うんだよ!』
ったく、つくづく天狗だよな。ガキ大将まんまだぜ。
『あのよー、バクゴーカツキ君?ヒーローだけでヒーロー活動できると思ってんの、お前。』
『あぁっ?!』
『警察各位との調整、自治体からの報償金の財務管理、スポンサーとの渉外、各メディアへの露出と副業のスケジュール対応。どんなに優秀なヒーローでも、1人でやっていける訳じゃねーぞ。で、高い給料払えば有能なスタッフが揃うわけでも、居着いてくれるわけでもない。』
『てめぇ……。』
反論しないってことは、わかってはいるんだよな、こいつも。
でも、無駄にプライドが高い、と。
競い合うとぶつかり合うと、潰し合うは別物だっつーのに。
『少なくとも、一流のヒーローになろうっていうなら、経営科や普通科をバカにすんじゃねーよ。……俺は、雄英を卒業しても、同じ雄英出身だとしても、
『……だと?このクソモブがぁっ!ぶっ殺すぞ!』
『か、かっちゃん!』
あ、今なんつった?この野郎。
……言っていーことと、悪いことがあるだろうが?
『……バクゴー君よぉ、てめぇのザコ個性で、誰を殺すって?無理だね。てめぇに俺は殺せねぇよ。手がバチバチいうだけの宴会芸じゃなっ!』
あ、やべぇ。なんか、口が盛大にウルトラスリップしたぞっ!
俺、何かおかしくなってる?
『てめぇっ!だったら、試してみるかぁっ?!』
おぉっ!右手がバチバチいってる、バチバチっ!
いや、こう見えて爆豪はみみっちい。内申に響くような暴力沙汰はしないはず、あれだ、俺をビビらせるだけの脅しの……はずっ。
あれ?なんで、俺の、足、踏み出して、腕、前に?
『が、があっ?!』
右手を大きく振り下ろそうとしていた爆豪。
俺は、気がついたら両の手で爆豪の手首と肘を掴んでいた。
え?何これ?関節技?
『藤宮くん!それ以上いけない!』
えっと、何でこうなった?
コンティニューボーナス……格闘スキルアップ←New