何ていうか、大人の世界を甘く見てたわ、俺。
父さんの知り合いッていうか、勤務先の警察署と友好関係を結んでいるヴィジランテがいるなんて。
いや、だってさー。
個性を公共の場で自由に使っていいのはヒーローだけ。
後は私有地内での使用か、限定された条件下での許可となる業種別のライセンス持ちってのが常識でしょ?
で、個性を悪用するヴィランに対しての、個性での直接的な捕縛・制圧がヒーローのお仕事。
ヴィラン……っていうか、犯罪者に対しての捜査は基本的に警察のお仕事。
そこに適した個性を持つヒーローであれば、要請を受けて参加。
前提としてヒーローは捜査でなくパトロールが主、と。
そーゆー治安維持の大前提を覆す……は言い過ぎか、でも、ヴィジランテが町の治安を守っていたなんて、何十年も昔の話だと思うよ、普通は。
『ずっとずっと昔から町の治安を守って来られた人達なんだよ。ざっくり、300年以上かなぁ。』
へ?
300年?
それって、江戸時代だよね、父さん?
十手持ち?
はー、ほー、へー。
岡っ引きとか、目明かしとか?あ、その二つは同じか。
そうすると個性とか関係ない時代からかー。
でも、そうするとそもそもヴィジランテって訳じゃなくて……ん?何やってた人達なんだ?
『ははは。わかりやすく言うぞ。いわゆるヤクザ屋さんだな。』
……ヤクザ屋さん?!
へ?それって、あれか。指定
あれ?違うの?
はぁ、元々指定暴力団って呼ばれてた連中が超常黎明期にヴィラン組織になった、と。
で、ヴィジランテが抗って、ヒーローが台頭して……皆さんご存知オールマイトが大活躍して、そのほとんどが摘発・解体されたわけか。
摘発を逃れた連中がヴィラン予備軍って扱いを受けて、監視を受けながらもどーにかこーにか生き延びてる、と。
えーと、つまり父さんの知り合いの人達は……。
ヴィラン組織扱いを受けることなくずっとやってこれたって事かー。
『地元をずっと守ってきた方達だからね。だから地元住民の信頼も厚いし、所轄である私たちの署もうまく付き合ってるわけさ。』
へー、いるんだねー、そんな人達。
え?芸能プロダクションに警備会社?
クリーニング業に各種屋台派遣?
あぁ、きちんとした肩書きもあるんだー。ふーん。
ちょっと楽しみになってきた。
んでっ!
父さんの車でやってきました!
ヴィジランテな人達のお住まい!
その名も竜爪会!名前それっぽい!
長く続く白い塀。上に監視カメラすげーついてる!
でっかい門の向こうに、広ーい庭!
あれだ、時代劇のお屋敷みてー!
倉みたいな、たぶん倉も建ってる!
俺達を迎えてくれて、広い庭の一角でお相手してくれる人は……二人?
一人は、長い黒髪の若い女の人。
アーミーっぽいシャツにパンツ。
おお、腕が六本ある。
ま、それはそれとして。
クール系って感じの美人のお姉ぇさん。
もう一人は……牛?
年はわかりにくいけど、たぶんおっちゃん。
いや、顔がもろ牛なんだわ。
組んだ腕がぶっとくて、あ、傷だらけ。
腰に巻いたツールベルトに、ドライバーとかバールとかスパナとか差し込んでる。
『おぉーっ。藤宮のだんなぁっ!わっしの
大工流護身術ってなんだ。
っていうか、でぇくって発音されると緑谷を思い出すな。
緑谷流護身術……敵の解析は凄そうだ。
大工流護身術……奥義はでっかいハンマーで『光になれぇぇぇっ!!!!』かな。