ええ、自宅での話だから間違いない。
……どちらかは秘す。
よし!六本腕のお姉さんと、牛のおじさんにご挨拶!
『藤宮続行です!この度は無理をきいていただき、ありがとうございました!どうかよろしくお願いいたします!』
『礼儀正しい坊やねぇ。私は
『わっしは
あすはら・あむさんに、もりのく・まごろくさんか。
……牛なのに森のクマゴローさんなのか。
いや、失礼だな、俺。
父さんの話によると、この竜爪会の人達はほとんどが異形型の個性持ちで、近接戦闘が得意な人が多いんだとか。
で、森野久さんを中心として、戦闘訓練を俺につけてくれるとの事。
冷静に考えるとスゲーな。
警察職員の息子が、父親公認で現役のヤクザ屋さんから戦闘訓練の指導をしてもらってヒーロー科の入学を目指すって。
思わず口にしたら、森野久さんに笑われた。
天下の雄英に入ってプロヒーローになる逸材なら、それくらいの豪快エピソードが有ってもいいだろうってさ。
ま、まぁ、入学前の豪快エピソードなら、もはやそれどころじゃないしな。
豪快エピソード:中学在籍時に二度死亡。
……誰も憧れねぇよっ!!!
『じゃあ、まずは
そう言って明日原さんが構える。
真っ直ぐに立って、6本の腕は複雑に位置を取る。
何かどっかで見たな。
お寺か何かで……。
よ、よし行くぞ。
俺はど素人だけど、二度の死と復活を通して身体能力がガッツリ上がっている。
自分でざっくりと確認した限りでは、ちょっとした肉体増強型個性って言っても通じそうな位だ。
おまけに、素手の攻防なら何となーく体が自然と動くようにもなっているし。
ペコリと一礼して、ダッーシュッ!
今の俺は、だいたい50メートルをざっくり4秒切るぜっ!
正直、殴るのは躊躇う。
でも、相手はきれいなお姉さんでも、武闘派のヴィジランテ!
俺は一から教えてもらう立場だ!
よし、右手を突き込んで……おろっ?
俺は、宙を舞っていた。
空が、空が見える。
うぉぉっ?!体、ひねって、何とかちゃ、着地!
投げられたタイミング、わかんなかったぞ?!
『勢いスゴいのねー?いっぱい跳んだじゃない。』
……なんだろう?
このお姉さんに言われると妙に恥ずかしいぞ。
いやいや、まだまだ行くぞーっ!
はっはっはっ。いやー、6本腕半端無ぇー。
なーんもできんわ、マジで。
捌かれる、掴まれる、極められる、投げられる。
こちらからは触れることもできませんでした!
でも、明日原お姉さんは、スピードもパワーも(個性無しの)トップアスリート級じゃなくって?って誉めてくれた。
で、森野久さん。
えーと、竹に、巻き藁?
居合いの試し切りに使う様なヤツをいくつも並べて、距離をおく。
『いきやすよぉっ!!!』
両の手がゆっくりと腰のツールベルトからドライバーとスパナを抜き出し、振りかぶることすらなく、肘から先のわずかな動作で投擲する。
ズドンと突き刺さるドライバー、ドボッとめり込むスパナ。
マジかー。
『んでっ、と!』
ずざざざっと蒔き藁に近づく森野久さん。
その右手にはいつ抜いたのか1メートルは有るバール。
平たくなっている方の端を無造作に突き入れ、両の手で握りなおすと、素早く、力強く捻り込んでいく!
バキバキバキバキ。
おお、蒔き藁が……。
『……っとこんなもんですなぁ、基本ちゅうとこは。』
森野久さんが笑う。
『坊っちゃん。こいつのいいところは……わっしはココで
ふむふむ。
『だから、おっかねぇヴィランに襲われたりした時に、たまたま持ってた道具で身を守るってーのは何もおかしいこたぁありやせんし、たまったま当たり処が悪くても、あっちはヴィラン、こっちは善良な一般市民でありやすから……。』
……ふむ、ふむ?
『サツの旦那方も法律って奴も、けっこう味方についてくれるんですわ。』
嗤う森野久さん。
怖い。
……何か、怖い。
うん、父さんも笑ってないでよ。
でも、こうして俺は竜爪会の人達に、雄英受験の為の実技試験対策の一環として、戦闘訓練をつけてもらうこととなった。
週末1日~2日。
それ以外の日は自宅&近隣での自主訓練や筋トレがメインだ。
さぁ、問題は……ヴィジランテな方達のところに通っている間に、俺のそばに『死の運命』が近づいて来なければいいんだけど。
さて、次のお話でトレーニングは終わってファーストステージ(受験)になるはずです。
……3回目のゲームオーバーが無ければ、ですが。