リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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我儘な皇帝

 

「痛ぇ………」

 

「大丈夫でございますか?」

 

爺が心配そうに俺を覗き込んでくるが……大丈夫……医者を呼ぶ程じゃない

頭を抱えながらメイド達を落ち着かせる、俺が痛いと言ってるのは………頭……

俗に言う頭痛、どうにかしてほしい

 

ぶっちゃけ今まで話していなかっただけで数年前から俺は頭痛持ちとなった

爺達が必死に原因を探ろうと数多の世界の高名な医者を呼び寄せたのだが……原因はまだ分かっていない

まあそう言っても頭痛がくるのは一ヶ月に約一回程度、そう頻繁に起こっている訳ではないので別に問題視はしてないのだが……

 

「ふぅ、収まって来た」

 

「今日は一日、お休みになった方が良いのでは?

学校もお休みですし………」

 

「分かった、んじゃ、魔法学の授業以外(家庭教師)はキャンセルしてくれ」

 

「わかりました」

 

デバイスを製作中という大ニュースを聞いてから一日

今日は休日、学校も休み、家庭教師があったのだが今の頭痛を言い訳にサボれそうだ

 

あの後俺は『魔法』についての学習をする為に早速行動に出た

まあ『魔法学』専用の家庭教師をつけるというだけなのだが………

つまり予習だ、魔法以外の範囲ならまだしも……全く新しい範囲を全くの無知の状態で望むのは流石にキツイ、それこそ、大量の魔力が無駄になってしまう

宝の持ち腐れと言うやつだ

 

確か授業は午後からだった筈なので……ぶっちゃけ友達のいない俺は暇だ

ヴィヴィオが羨ましい……

 

「さて、今からどうするか……」

 

家の中で出来る事など限られてくる、そうだな……

 

「爺、ちょっと来てくれ」

 

携帯端末を使って爺を呼ぶ、何かしたい場合は大体爺に知らせないといけないからな

 

「訓練場借りるぞ」

 

「はい?」

 

さて、この体のスペックがどんな物か……拝見しましょうかね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹刀を持って構える

目の前には黒スーツの男たち……

 

「いくら何でも許しませぬ!!

もしケント様がお怪我をされましたら爺は……爺はどうすれば悔やんでも悔やみ切れませぬ!!」

 

「軽くやるだけだって、んな大袈裟な」

 

俺がいるのは『コルテット家』専属のSPを鍛える為の訓練場

広さは……東京ドームぐらいだと考えてくれたらいい

 

もうお分かりだろうか?俺がしたいのはこの体の『スペックの確認』

爺はやめろやめろと叫んでいるが、もし学校で『模擬戦』などとなった場合これはしておかなければいけない

この体はセイバーの直感や身体能力は受け継いでいるが、それが戦闘で満足に発揮出来るとは限らない

なので『確認』、戦闘素人の俺がこの体でどれだけ食らいついて行けるのかの……

 

だが相手を頼んだSP達は俺に対して本気になるなど出来ない、なので彼らには『一太刀でも浴びたら減給』という特別ルールを作らせてもらった

そうする事で彼らに《わざと負ける》という選択肢はなくなる

俺の攻撃に当たらない様に、なおかつ、俺に攻撃を当てない様に調整してくれる

本気では打ちに来てくれないだろうが……学校みたいにわざと負けられるよりは数倍役に立つだろう

 

さて、向こうは三人、最初は一体一にしようと思ったのだが………本気で無い分数でカバー……と言う事にした

 

さて………

 

「行きます」

 

「よろしくお願いします」

 

俺の声と共にあちらも構える、そして

 

「ハッ!!」

 

ただ単に竹刀を突き出す

 

だが………やはりど素人の俺が放った突きは軽々と打ち返され、また元の位置に後退してしまう

 

………いい気になりすぎたか?

 

いくらこの体がセイバースペックを誇っているからといって……中にいるのは彼女では無く俺なのだ

 

いくら底なしの強さを持つこの体でも使いこなさなければ意味がない、と言うよりかは俺は前世でも剣道をしてた訳ではないのだ。

スペックは同じだが彼女にあって俺にない決定的な差、それは経験

 

幾たびの戦場を越え、幾たびの決闘を繰り返し、手に入れたその経験こそが俺にないもの

今の俺がしているのは努力しないで結果を望んでいるのと同じ、二次創作に出てくるオリ主がチートを完璧に使いこなしているので俺も……なんて考えは甘い

 

(でも望んじまうよな……剣の才能)

 

ただ憧れる事は憧れるのだ

特に何の努力もせず、超人的な身体能力と何故かしている『場慣れ』、俗に言うテンプレに………

 

人間楽をしたいなどと言う発想は当たり前だ、また違う趣旨の二次創作のオリ主の様に、体をボロボロにしてまで強くなろうなどとも俺は思わない

あれから~年経った……とか気軽に言ってるけどマジでしようとすると多分死ぬ、俺にそんな根性はない

 

(どうにかならないかな~、圧倒的な剣の才能……)

 

そんな事を考えてみるがこれが現実

ないものは無いのだ、地道に練習するしかない

 

「よろしいですか?」

 

「ん?ああ!こい……」

 

相手の言葉で我に返る

少し考え過ぎてしまった

どうこう言ったが今は相手との試合中、失礼だろ俺……

もう一度竹刀を構える、今日からコツコツと練習しないといけないんだ、とにかく今は真面目に取り組む

 

「では、次はこちらから」

 

軽い口調で相手が一歩まえに踏み出す

そして竹刀を振り下ろす、特に早くも遅くもない、だが絶対に防げる程の早さ

さっきまでの俺ならギリギリ除けれると言ったところだろう……だが……

 

 

 

ズバンッ!!!!

 

 

「…………え?」

 

「なっ!?」

 

気付けば竹刀に確かな手応え

そして俺の前にいた筈の相手は真後ろに

ギャラリーも騒然としている、当たり前だ、決して本気などでは無いとはいえ、プロのSPが六歳児に一本取られたのだ

 

自分でも理解出来ない、ただ言えるのは……

 

『見えた』と言う事

 

見えた瞬間体が勝手に動いた、まるで『その身に染み付いた様に』

いや……違う……

確かに『その身に染み付いた様に』感じられた、だが……何かが違う……

 

まるで……『即席で使いこなした様な』

 

…………まさか!?

 

 

 

 

 

「爺!!、家の何処かに弓道場があった筈だ!!案内してくれ!!」

 

「は、はい!!」

 

俺の一声で静まり返っていたギャラリーが覚醒する

俺の読みがただしかったら……これは……

 

 

 

車で数分移動した場所に弓道場があった

 

初めて弓に触れ、ちょっとした説明を受けてから弓を構える

俺の体はセイバースペック、弓を扱うアーチャーには適用していない……

的に狙いを定める……それと同時に……《自分は一流の弓兵》だと決めつける

素人の弓が放たれる、普通は的に当たらずに全く違う方向に進む筈なのだが……弓は的の『ど真ん中』に一切の狂いも無く命中してしまう

 

これで確信した………隠されたセイバー特典の能力

これまで続く頭痛………そして初めての事を『一流』にやりこなす不可解な現象

ここから導き出されるスキル……それは……

 

 

 

「『皇帝特権』………だと……」

 

 

 

セイバーなら何でも有り……って事かよ……

 


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