「どういう……意味だよ……この世界が……自分の物だなんて……」
掠れる声で目の前の男に問うケント
その手の先は未だにネリアに向けられ、目は髪で隠れて見る事が出来ない
「あなたは疑問に思った事はありませんか?この世界は『高町なのは』とヒロイン達を『軸』として回っている。なぜ?
確かに彼女達は主人公、そしてヒロインだ、だが彼女達がいる限り私たち『転生者』はただの登場人物、モブ同然なのですよ、私は『主人公』になりたい、一生をモブとして終える気なんてさらさらありません!!」
勝ち誇ったように、高らかに宣言する鮫島
だからなんだ、その為だけに……
「その為だけに、ネリアをこんな目に!!」
デュランダルを真っ直ぐ、鮫島に向ける
殺傷設定、透明な剣、そんな物を見せられても奴はニヤニヤと、ただ笑う
………こいつ
「デュランダルは誰が作ったのか覚えていますよね?いくら剣を透過させたところで刀身は嫌というほどわかっているのですが」
「じゃあぶっ殺される準備はできてるって事だよな」
バッ、と剣を振るう
早くこいつを斬り倒したいという衝動に駆られるが……先ほどから感じる嫌な予感……なんだ、これは
「ぶっ殺される……ですか、成る程ね、まぁ私の目的が達成されればこの体は用済みとなるのですが………」
「何を言ってる」
「こっちの話です。ですが……ケント様は知っていた方がいいですかね」
ポケットからカード型のデバイスを取り出す鮫島……なんだ……
「ケント様もそのご自慢のハッキング能力で知っていると思うのですが……こんな言葉聞いた事がありませんか?
『魂の移転』」
自分の目が細まるのが分かる
ああ、知っている、コルテット中でも最大の闇の研究、自身の魂を他者に移すという非人道的な開発
自身の皇帝特権よって作り出されたハッキング能力を持ってしても研究の全貌は明らかになっていない……分かるのは……あれだけが俺が生まれる前から進められているプロジェクトだという事
「ここで戦う前にケント様にいい事を教えてあげましよう、私の特典の一つは『魂の改竄』です」
「なんだよ……それは……」
また出てきた『魂』という単語、特典の効果は分からないが……ここまでくれば分かる事もある
「あの研究の第一人者は……お前って事か」
「そうですね、当主様の目を欺くのにも苦労しましたよ、絵に描いたような正義論には飽き飽きしてたんですけどねぇ」
ハハハと笑う鮫島……当主、ってことは…
「俺の、親か……」
「まぁそんな感じですね、もうあなたの親ではありませんが」
まぁ意味不可解な事を言い出す鮫島
俺の親が俺の親ではない?どういうことだ
それに……絵に描いたような正義論?
「私の特典、『魂の改竄』には大きく分けて二つの能力があります、一つは『魂の変更』まぁこっちは後々説明するとしてもう一つは……『魂の移転』です」
「……研究と同じ?」
どういう事だ?
「同じ性質を持つ相手に対し自分の魂を飛ばし、そのまま移植する、移植先に元からいた魂はそのままマナとなって消滅、まぁこんな感じです。
まぁ、この能力の問題点を上げるとするならば『私しか出来ない』という点でしたね、それに私の魂は他とは違う、そこらのモブに移転しようとしても相手の体が耐えきれずに即死ですからね、話が逸れました、それは置いといてです、その時の私にとってコルテットで真っ当な正義を振るうご両親は邪魔でしかありませんでした、コルテットという組織はこの世界では大きな位置を占める、この組織を私の思い通りにさせるには奴らをどうにかするしかなかった」
淡々と話す鮫島……こいつ……
「それでも不正を一切しない彼らを相手取るには中々しんどかったですよ、そのせいで指示は多く彼ら自体も魔導師でしたからね、魂の移転研究も『彼ら』の資金提供と助けがなければする事は出来なかった」
「………彼ら?」
「最高評議会ですよ」
サラッと発せられたその言葉、原作で最もダークゾーンにいた存在、自らを正義と名乗り、多くの人間を犠牲にする生に執着した者達………
「彼らの願いは簡単でした、本局、地上本部と並ぶ力を持つ民間団体を恐れたのでしょうね、たった一つだけ、『コルテットを管理下に置きたい』、それだけでした」
「無茶だ、会社にはトップがいる、それに地上本部とコルテットの力は実質的に並んでいる、強迫も効かない」
「だからこそ『魂の移転』」
ニヤリと笑みを浮かべるあいつ……どういう事だ……
「簡単です、ご両親をそのままトップにしたまま、最高評議会で操ればいい、そうする事で私の権威も上がり、目的の達成までにも近づく」
「まさか、幻術か」
「いえ、それならば直ぐにバレてしまう、私たちが欲しいのは『彼らの体』、中身には興味ありません」
ごくっと息を飲む、まさか………
「魂の移転研究の目的は私の能力を使い他者の魂を他者移転させるため、そして………
ご両親には退場いただきました、今の彼らの中身は腐りきった評議会の人間ですよ」
全てのピースが、埋まる
あの優しそうな両親が、なぜ顔を見せないのか
コルテットが行ってきた非人道的な研究が、なぜ管理局に掴まれないのか
そう、なぜなら……両親の中にいるのは別の人物だから
あの笑顔は、俺が生まれてきた時に見せた涙は……間違いでは……なかった……
「さて、十九年も前にもなりますか、ここまでくれば分かるでしょう?私が言いたい事は、私の魂を誰かに移植しようとすれば『転生者』という事で魂の質が違ってしまう、ならば私が他者に魂を移すとなれば『転生者』という規格外の物を内包していた体にしか不可能なのです。
昔、これもまた十九年、あの時は失敗してしまいましたが私の崩れていた魂が戻ったのがStsの時期だったのもまた運命、あなた風に言えば『Fate』でしょうか?」
「我が才を見よ」
黄金の魔法陣が俺を輝かせる
「許せませんか?許せないでしょうね、ですが私にとってはその程度、物語はここからです、私が主人公に、私がこの世界の主となる」
「万雷の喝采を聞け」
少しづつ、少しづつ世界が塗り替えられていく
ネリアを見る、必死に戦ってくれたのだろう、最後まで諦めなかったのだろう
もう大丈夫、後はお兄ちゃんに任せてくれ
「ヒロイン?ハーレム?そんな物にはもう興味はない、この世界の主人公は私となる、そのためには全てが邪魔だ!!」
「インペリウムの誉をここに」
相手の実力は未知数、こちらは筒抜け、だがそんな物は関係ない、俺は……ただ……
「咲き誇る花の如く」
「その為の第一歩、ケント様
あなたの体、もらいます」
「咲き狂え!!黄金の劇場よ!!」
こいつをぶっ殺すだけだ!!