その赤子は死すべき運命にあった
生まれてくる前にして莫大なる力を保有し、その力は母体、胎児の二つに多大な影響を与えた
力が充満し、密度が高くなる
両親は必死に戦った、もてる技術を全て使い、自分達の子を、生まれてくる赤子を最後まで諦められなかった
希望にすがりつき、最後の最後まで諦めず……奇跡は起きる
力の収縮、密度の激減、本当の奇跡だった
ある者は歓喜し、またある者は世界で初となる存在が生まれてこない事を悔いた
両親は涙を流す、よく生まれて来てくれたと、私達の元に来てくれてありがとう……と
「ここは………」
ゆっくりと目を開ける、白い天井、最初に見えたのはそれだけ
体が上手く動かないが……自分が寝かせられているという事ぐらいは分かる、隣を見る、ネリアがスヤスヤと寝息を立てている
そんな姿を見て心の中で少し苦笑する。
そして……徐々に思い出す
俺は……負けた、絶対に負けられない戦いで、俺たちの未来をかけた戦いで
自分が情けない、結局一撃も食らわせてない、本当の大敗
そして………
腹の辺りに違和感を感じて顔を動かしてみる
……天使、とでも表そうか?
そこには彼女がいた、スヤスヤと寝息を立てて、ベッドに上半身の体重を預けて寝ている……素直な感想、可愛い
自然と手が伸び、彼女の頭を撫でる……助けてくれた記憶が残っている
ずっとここにいてくれたのだろうか……嬉しい、近くに自分を思ってくれている存在がいて
「ん、ふぁ?」
「あっ」
彼女の頭に手が置いてある状態で彼女が目覚める
気まずい雰囲気、我に返りバッと手を引く
彼女の顔がドンドンと赤くなっていくのが見て分かる……
「お、おはよう」
「う、うん」
本当に気まずい
「まずおはようさん、案外起きんの早かったな~」
「ずっと寝てろと、結構鬼畜だったりする?」
「そんな事ないで~」
ほんわかとはやてが笑う
後ろには未だ赤面しているフェイトと苦笑しているなのは……
俺が起きてからおよそ三十分
シャマルによる検査やら何やらがあったがここで忙しい筈のはやてと対面……で、ここはどこかと言うともうアースラらしい……どうりで揺れがあると思った
まあそんなわけで今の現状確認、ここがアースラって事は原作通りに六課は焼けてるな……となればヴィヴィオは………大丈夫、原作でも悪用されただけであって命に支障はない……はず……
そしてここで本題
「コルテットの方は……どうなってる?」
「………うん、それな」
ポツポツと話し始めるはやて
やはり俺が住んでいた場所はほぼ全焼らしい、あの場所に誰もいなかったのは全員非難していたから……そして…
「俺が……指名手配?」
「ケント君だけじゃない、ネリアちゃんもや、罪状、というより根拠はスカリエッティと手を組んでのテロ行為、コルテット家に向けての破壊活動……実質的に今の六課はケント君達をかくまってる形や」
はやてがギュッと自身の制服を握り締める
……まぁ、大体そんな感じだろうとは思っていた、鮫島も未だ健在だし両親の正体も割れた、あいつらならコルテットで俺達を悪役に仕立て上げつつ管理局でも広域手配が出来る……ったく
今から管理局システムにハッキングを仕掛けて行動を起こしたいところなのだが……今の俺にはそんな力はない
リンカーコアの存在は感じられるがいつもとは感じが違う、また違った物
特典によってリンカーコアも貰っていたようなものだからな……これは特典に封印されていた……本来あるべき筈のリンカーコア……まだ起きたばかりで上手く動いてないな
今まで何でも出来たからこそ、今何も出来ないのが悔やまれる
「私も何度も確認を取ったんやけど……証拠を提出したのはコルテット当主、上からの圧力もかかっとうみたいで誰も信じてくれへん、ケント君が……そんな事する筈ないのに……」
「ありがとう」
出来る限りの笑顔でお礼を言う
はやては俺が寝てた間頑張ってくれたのだろう、彼女は二等陸佐、一人の意見では組織は動かせないしコルテットには逆らえない
それに圧力、と言っているがそれがコルテットの当主なのだ、俺の両親の中にいるのならスカリエッティに殺されていないし引き続き権力を握り続ける事が出来る
敵は……想像以上にデカイ
「よい、しょっと」
「ま、まだ寝とかんかったら駄目や、今起きたばっかりなんやろ!?」
はやてやフェイトがオロオロするが実際俺は魔力切れや特典の封印で気絶していただけ、あいつはこの体を欲しがっていたのだから外傷は殆ど無いと言ってもいいだろう
それに比べ、見つけた時に重傷だったネリアが今すぐ起きる事はない、命に別状はないと思うがかかった負担は大き過ぎる
隣に置いてあったスーツを着る、うん
「ちょっと待ちや」
「……どうした?」
はやてが服の裾を掴んでくる……ったく
「どこ行くつもりなん?」
「………ちょっと風に当たりに「嘘つき」」
今度はフェイトがこちらを睨んでくる……ちょっと怖い
「そんな真剣そうな顔で言われても誤魔化せないよ、今のままだったらケント、凄く……危ない」
「もう十年の付き合いやで、そう簡単に誤魔化せると思う?」
言葉が出ない
……正直、今の俺があいつに勝てるなんて思っていない
ここは現実だ、少年漫画の世界でも何でもない
力を失った少年が泥臭く、それでも王道の『諦めない』などという心を持って巨大な悪を打ち倒す?
馬鹿らしい……そんな事で上手くいくならとっくにしている、世の中そんなに甘くない
今の俺と鮫島がぶつかれば確実に俺は負ける、それ程までに底が見えない
だからこそ………ネリア
彼女だけは、助けたい、この世界で俺に出来た家族、かけがえのない宝物
鮫島にとってはどうでもいい存在かもしれない、だが……どうにかして、どうにかして彼女だけは救わなければいけない
そのためなら喜んで自分からこの体を差し出す、それでも駄目なら……自分の身を斬る
鮫島も年だ、みんなも、ネリアも、最後まで逃げ切れば生き残れる
最初から身を斬らないのは自分の中の可愛さ、俺は英雄でも何でもない、どこかで『まだ生き残れる』などという考えを持ってしまっている……自分で自分が恥ずかしい
と、その時だ
「う……あっ……」
「ケント!?」
「ケント君!!」
突如襲った身が焼ける様な痛みによりその場に崩れ落ちる
周りの皆が必死に俺の名前を呼ぶがよく聞こえない、そればかりか目の前が、空間が歪んで見える
何かが暴走する、体が弾ける
ただただ叫ぶ、痛みによる絶叫
そして…………
両親は嬉しかった、我が子が無事に生まれて来た事が
彼らにはしなければいけない事が山ほどあったがそんなものはどうでもいい、出来るだけ時間を作り、我が子の元にいた
彼等は我が子に『ケント』と名付けた
だが、その幸せは一瞬で崩れ去る
彼等は戦った、我が子を守る為に、最後の最後まで、血を流しながら
そして、負けた
最後まで我が子をその胸に抱きしめ、最後まで敵の足を離さずに
力が、魂が移動する
敵も血を流した、それ程までに戦った末、夢が実現した
普段の彼なら侵さないべきであろうミス、『体』という殻がない魔力の塊、魂は生まれてすぐの赤ん坊に移動し、破壊された
『特典』として貰い受けた未完全の『対魔力』と魂を移転させる特典
敵はその魂をそのバラバラにされ、赤ん坊はあらゆるスキルと、その時の記憶を失った
元の魂に変化させておけばよかっただけのミス、そして今回、万が一を考え彼は保険をかけた、特典を使えないように
しかし、もし、もしもだ
その赤ん坊が、生まれついての『主人公』だったならば
未来は、どう変わるのだろうか?
次回からは本格的に『にじファン』の続きを書いて行きます
まぁ、二日に一回くらいのペースを目指します(=´∀`)人(´∀`=)