リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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黄金の剣

掛け声と共にデュランダルに引っ張られる形で一気に加速する

激突寸前のところで鮫島がバインドを解除し防御魔法を張る……抜ける!!

 

 

突風、前が見えなくなるほどの風を前に目を見開く

散る火花、黄金の剣の先にはひび割れ始めたシールドの姿……いける!!

 

魔力を注ぎ込む、攻撃自体をズラされ始めている、このままでは魔力を使ったただの不発弾

完全にズレ切る前に、シールドを……抜く!!

 

デュランダルに自身の身を全て預ける、ひびが徐々に大きくなる

 

抜ける……直前………

 

「う……あっ……」

 

真横からの魔力弾、攻撃の重心が曲がるのがわかる

ガキィンと音がなる、攻撃が、弾かれたのが肌で分かる

シールドの奥で鮫島がニヤリと笑う、体が完全に無防備となる

馬鹿

 

 

笑いたいのはこっちだよ

 

 

今の攻撃を防ぐ為に鮫島は全力だった、かくいう俺はそうでない

抜こうと思えば抜けた、ただししなかっただけ、あれで倒れなかった場合、俺に勝機は完璧に無くなる

俺がしたかったのは、仕込み

 

「っ!?」

 

さっきとは比べ物にならない数のバインドが鮫島の身体にへばりつく

それに反応した鮫島が一気にスフィアを作り出し、俺に向けて放射する

ここからは時間勝負、スフィアを振り切る様に一気に雲まで飛ぶ

さっきので自分の魔力は確かに減った、ただそれだけがそれが問題じゃない

使い慣れないレアスキルのぶっつけ本番使用でクラクラする、体が怠い、それでも……飛ぶ

 

デュランダルを振り上げる、展開されるのは巨大すぎる魔法陣

 

一度拡散された魔力を呼び戻し、集め、収縮する

あらゆる場所から黄金の粒が刀身に集まる、半壊した劇場が光に照らされて輝く

刀身だけでない、俺自身の目の前にも現れる巨大な球

カードリッジがあるだけ排出される、体が軋みをあげる、自分の魔力を全てつぎ込む

俺と鮫島が撒き散らした魔力が全て集まり終える、そこにあるのは一つの『太陽』

 

鮫島は動かない、ただ天を埋め尽くす黄金の光の前に動けない

 

当然だ、今の彼に一体何が出来る?

逃げる?何処に?

一枚上手となる?どうやって?

 

今の鮫島に出来ることは、ただ終焉の時を待つのみ

 

「原作ではこうか?『受けてみて、これが私の全力全開』、ディバインバスターのバリエーションでもデュランダルと考えた技でもないただのパクリだがよぉ、こうやって一つの事を終わらすには丁度いいとは思わねぇか!!」

 

軋む身体に鞭を打ちながらニヤリと笑う

 

一歩、前に踏み出す

 

デュランダルを両手で掴む、鮫島が絶叫を上げて何十にもなった防御魔法を展開する

 

「エクス」

 

これで……

 

「カリバァァァァァァァ!!」

 

 

終わりだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

無、そう表すのが一番正しいのかもしれない

 

魔力SSSに二人が使い、撒き散らした魔力を再利用し、尚且つカードリッジをあらんばかりに使った収束砲撃

 

黄金に光り輝き続ける世界を眺めながら、鮫島を救出する為に改めて体に鞭を打つ

あれだけの爆発をしときながら非殺傷設定、気絶はしていると思うが身体的な問題はないだろう

鮫島の魔力が尽き、封印が解除され始めているのか慣れ親しんだ力が返ってくるのが分かる、使い果たしてしまった魔力もその影響で回復し始めている

 

一先ずは……終わった

 

若干オーバーキルな感じもするが無印なのはも同じ様な事をしてたしと割り切る、そもそもこれくらいしないとあの鮫島だ、気絶しない

 

光が徐々に収まってくる

地面は……自分でしといてなんだが悲惨だな、煙がヤバイ

劇場も瓦礫すらなくなってるだろうなと考えながら鮫島がいた場所に目を向ける、落ちたとしても直感付きの今ならすぐに見つかるだろう……あいつの処遇とかについてはまた考えよう、人殺すのとかは勘弁

ただ……なんだろうか、さっきから違和感が凄い

 

煙が晴れ始める、ゆっくりと降下し、鮫島らしき姿を見つける

 

……まだ飛べるのか?気絶はしてるようだが、てかなんだ、飛んでるというよりは

 

 

『何かに、支えられている感じがする』

 

 

目を見開く、あれは……腕?

鮫島の胸からあり得ないものが突き出ている、隠れてよく見えないがその後ろにはフードをかぶった誰か……なっ!?

 

「てめっ、何を!!」

 

ブーストをかけて何者かに斬りかかる、手を鮫島から抜き、すかさず回避する相手

 

血が……出ていない?

 

支える物がなくなり、ゆっくりと落ちて行く鮫島をしっかりと抱きかかえる

傷口からは相変わらず血が出ていないがそんなことは無視する、心臓がやられている、このままだと問答無用で死ぬ!!

 

キッ、とフードの相手を睨みつける、身長は高くない、せいぜい俺と同じくらい

身に纏う雰囲気から少年、だろうか?

今こいつの相手をしている時間はない、何とかここから離脱して鮫島の手当を

 

ふと背すじに冷たい物が流れる、何も考えずにデュランダルを使い後ろを薙ぎ払う

ガキンという金属音、デュランダルと少年の『腕』が競り合っていた

わけがわからない、少年の腕はどこまでも細く、純白、なのになぜ、デュランダルと均衡し合える!?

 

バッとその場から飛び退く、嫌な汗が流れる

本能が告げる、こいつと対峙してはいけない

 

少年は動かない、反射的に唱える

 

「破壊(クラッシュ)」

 

放ったのは俺の真後ろ、首元すれすれにあったのはその細い腕

 

心拍音が凄い、空中でその場に座り込む

熱くなった頭を何とかして冷やす、直感を頼りに周囲を確認する、嫌な汗は流れない、どうやら撃退はできたらしい

ゆっくりと、自分自身を落ち着かせながら、安全をある程度確認してから地上に降りる

今は終わった事をいちいち振り返っている場合じゃない

 

鮫島を寝かせ容体を見る、胸には穴、血は流れていない

そして、穴から広がる……ひび

 

「なんだよ……これ」

 

ひびは大きくなり、鮫島の手、足、顔へと広がっていく

わけがわからない、鮫島の体が崩れ始める、顔から精気がどんどん失われていく

必死に呼びかける、返事がない

皇帝特権で主張した治癒魔法をかける、崩壊は止まらない

そして………

 

「……え?」

 

パンッと、軽い音を立て、鮫島がポリゴンとなって消える

光の粒が弾け、消える

手から消える人の温もり

それはつまり、俺の手の中で一人の人間が『死んだ』という事実で

体が動かない、何が起こった、なんで、こんなこと……

 

 

震える手を見つめながら俺はただ、絶叫した

 

 




死にました、鮫島、ハイ
最高評議会の脳味噌(ケントの両親)は全て先生に丸投げです
鮫島の死に方としてはSAOの様にパリーンと、って感じですかね?
あっ、もちろんここは現実、機械で作られた世界うんぬんではないですよ

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