「家買う?何処に?」
「まだ確定ってわけじゃないんだけどね、ほら、ヴィヴィオの学校とかあるでしょ?
だから本格的に学校付近に一戸建ての家を買おうかな~て、みんな一緒に暮らせるしね」
「なるほどな……いいんじゃないのか?フェイト達ってお金使うイメージないから溜まってるんじゃないか?」
ワーカーホリックだからな、二人とも
それにしても一戸建てか、十中八九vividに出てくるあの家だよな、結構大きい
それじゃあ今までどこに住んでたんだ?海鳴?
助手席に俺、ドライバーがフェイト
こうやって横から見てると相変わらず綺麗だな、と無意識に思う
その、何と言うか、綺麗だし可愛いし優しいし……今まで大丈夫だったのに今になって妙に緊張する
あ~もう、フェイトが思い寄せてる相手って誰なんだよ……まあ人の恋路を邪魔する気はないけど
「ん?顔に何かついてる?」
「え、いや、えっと、その……何と言うか……フェ、フェイトは何の用事があるんだ?
六課も大変だろうに」
「ん~、戦闘機人のみんなが調査に協力的かどうか……とかかな?
私としても無理矢理やらされた子達については出来るだけ助けてあげたいからね、みんな協力してくれるといいんだけど……」
あ~、協力的かどうかで待遇違うんだよな
人殺してるチンクでさえ三年後には釈放されてるくらいだからな、単に管理局が優秀な人材を欲しているだけかもしれんが
それでも戦闘機人は親であるスカリエッティに逆らえないわけだから不本意での犯罪も有り得る、元々ちゃんとした教育も受けれてないしな
命令されて嫌々と自ら進んでだと全く違う、四番なんてごもっともだ
「主犯はあくまでもスカリエッティ、他のみんなは巻き込まれた被害者、それをちゃんと立証して、キチンとした対応をとらなきゃいけないからね」
「ホント、どこまでも優しいな、フェイトは……ってオイ!?大丈夫か!?」
いきなりハンドルに頭を打ち付けたフェイトを元に戻す
道が一直線だったからよかったけど……どした?
「いきなりは……卑怯だよ……」
「なんか言ったか?」
「な、何も!!」
妙にオドオドしながら運転するフェイト、本当に大丈夫か?
俺としては事故りそうで不安なんだが
「えっと、そ、そういえばケントは大丈夫なの?こんな大変な時にのんびりしてて」
「まあ、今のところは幹部の奴らが全部やってるから、暫くは大丈夫だよ」
「そうなんだ……」
……………The 沈黙
え、なに?俺なんかした?
ずっとフェイトの方を見ていたら不自然なので目を背け前を向く
……こういう時はどうすればいいのだろうか、そもそも二人きりなど転生して以来なかったので余計わからん
前世の歳+今の歳=彼女いない歴の俺を舐めんなよ
沈黙の時間が続く、拘置所まではそこまでの距離はないのですぐにつくが……このまま気まずい状況なのは嫌だ
チラリと目を向ける
目が合う
お互い視線を反らす
え?フェイトもこっち見てたの?
何?俺の事変に思われてないよな、気持ち悪いとか思われていないよな?
あわあわと頭が混乱する、今までこんな事なかったのに!!
フェイトの方を向けなくなる、てか向くタイミングがなくなる
「え、えっと、ケント?」
「どうした?」
お互い妙にギクシャクしながら口を開く
反射的にフェイトを見る
なぜか赤面しているフェイトがいた
はっきりと言おう、『萌えた』
小動物の様に必死に抱きつきたい衝動を抑える、落ち着け俺、どう考えても十九の男子が同い年の、ましてや付き合ってもいない相手にいきなり抱きつくなどアウトだろ!!
それにフェイトにはお泊りの時やらなんやらで自制心はついている筈……
それにフェイトには好きな人がいるんだろ?俺はただの友達ケントだろ?
頭の中でよく分からん葛藤をする、なんだ?これが『本気で好きになる』って事か?
必死に自分を落ち着かせる、相手が話してるんだ、ちゃんと最後まで聞かないと……
「ケントってさ……家燃えちゃって、今は聖王教会にいるんだよね?
それで、ネリアの怪我が治ったら別世界の別荘に行っちゃうんだよね?」
「えっと、どこから仕入れた情報かはわからないけど合ってるよ?」
「情報っていうか、ネリアが教えてくれたんだ
そ、それでね、あの……今は実質ケントがコルテットのトップで前みたいな縛りがなくて……今までいた護衛さん達もいなくなって……えっと、その……もしね、もしケントが迷惑じゃなかったら」
「私達の所で暮らさない?なのはと、ヴィヴィオと、ネリアと………私と……」
へ?
「へ、返事はまた今度でいいからね!無理して考えなくてもいいからね!!」
「う、うん」
拘置所の入り口で俺とフェイトは別れた
フェイトはまずスカリエッティに会いに軌道上の拘置所まで行かないといけないらしい
局員に先導されながらフェイトに手を振り、一番最初の曲がり角を……曲が………
ゴンッ
「……大丈夫ですか?」
壁に頭をぶつける、漫画やアニメなら俺と壁の間から煙が立ち上っていると思う
顔は……真っ赤
住む?フェイトと?
いや、実際にはミッド高町家だが……もうなのはの許可はもらってるらしいし……
実感がわかない、てかまだ決めたわけじゃないのに言いようがない嬉しさやら恥ずかしさが立ち込めてくる
頭がボーとする、まさかあんな事を言われるとは思っていなかった
局員が声をかけてくれるので「大丈夫」と答えてまた歩きだす
時々不審な目を向けられたが……しょうがない、今の俺は誰から見ても不審きわわりないだろう
ただそんな事も言ってられない、ルーテシアちゃんと会える時間は限られており、その中で本人に対する謝罪やら何やらをするのだ、時間は大切に
自分の中で区切りをつけて歩き出す……白の廊下にいくつものドア……
「こちらです、面会時間は三十分となっています」
「ああ、ありがとう」
一応少将なのだから下に見られない対応を……不審には見られたが
ドアを開けてもらい中に入る
ガラス越しの向こうには紫幼女、修正、少女
向かい合う形で座る、向こうは俺の事を覚えているのだろうか?
「えっと、初めまして、かな?ルーテシアちゃん」
「………」
無言ッスか
どうやったらこの物静かそうな子が三年後にはハイテンション魔法少女になるのやら……性格自体は変わってないので元々ハイテンションなのかもしれないが
「まずは……すみませんでした!!」
頭を下げる
こんなとこコルテットの人間やら局員に見られたら止められるだろうな、まあこれは俺のケジメ、悪い事をしたら謝る、これ当然
「……どうして謝るの?
悪い事したの……私達」
「それでもルーテシアちゃんの使い魔、ガリューの腕を斬り落としたのは事実、本当にごめん!!」
「……腕?」
ルーテシアちゃんが不審に思ってる
この子は……腕を斬り落とした相手の事を覚えていないのか?
「斬り落とした腕は大切に保管してある、そっちが了承してくれればすぐにでも手術をしてあのドリルと付け替える事が出来るんだけど……」
ガリューはここには召喚出来ないから基本的に術者に了解を得れば大丈夫
ガリューだってルーテシアちゃんだって治してもらえるんだったらそうしてもらいたいだろうし……
「………うん、大丈夫、今のままで」
「大丈夫なわけがないだろ?ドリルだと色々使いづらいだろうし」
ましてや腕じゃないんだから
「別にいいの、だってガリュー……ドリル気に入ってるから」
…………は?
「つまり、別にいいって事は……腕よりもドリルのままがいいからって事か?」
「うん、腕がなくなっちゃった時は凄く落ち込んでたけど……ドリルつけてからずっとドリルの自慢ばかりしてくるの、ドリルのここが凄いとかカッコいいとか……ロマンだとか……」
「………そ、そうか」
ガリューの以外な一面を垣間見た
「それでも、ガリューにはまた話して見る、もし取り替えたいっていう時は、お願い
多分、無いと思うけど」
「りょ、了解」
結果オーライってか?
色々とマズい気もするが……無理に治す必要がないのなら現状維持で大丈夫か?
「ここに来たの、それだけ?」
「う~ん、時間もあるし……何かお話するか?」
ネタないけど
「一つ……聞いていい?」
「ん?どうした?」
向こうから話しかけてくるとは
「なんで、おでこそんなに赤いの?」
「……さっきそこで頭打ったんだよ」
思い出させんな恥ずかしい
思わず頭をかかえる
「どうして?」
「いや、それがな……ちょっと恥ずかしいっていうか、嬉しいっていうか……そんな感じの事があって、何だかこう、モヤモヤしてたっていうか」
「恋心?」
「……だと思う、一緒に暮らそうって……赤面して言うの反則だろ、フェイト……可愛いし綺麗だし優しいし……ハッ!?」
思わず顔を上げる
ニヤリと笑われてサムズアップしてきた
性格は根っからvividの時と同じ、え?弱味握られた?
「頑張れ、応援してる、クスッ」
「今笑ったよな、笑いましたよね」
「フェイト……可愛いし綺麗だし優しいし……」
「やめろぉぉぉぉ!!」
自分で言ったセリフなのに恥ずかしい!!さっきの事があったといえ何口走ってんだよ俺!!
ガチャッとドアが開く音
入ってくるのは先程の局員
「面会終了です……どうしました?」
「いや、大丈夫、と思いたい」
「応援してる」
ルーテシアが真っ黒だと実感した
どこまでもチキンハートなケントです