リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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戦う相手は人外ばかり

 

「こりゃ、ひでぇ」

 

「気合が足りん!!筋肉が足りん!!萌えが足りん!!」

 

いや、気合と筋肉はあると思うけどお前から萌えの要素など一切感じられないから

 

ミッド中心部の廃墟街、そこで次々に魔導師や騎士達が屈強な筋肉によって吹っ飛ばされる光景

漫画みたいだ、どう考えても体の形可笑しいだろアレ

 

はやてからの座標と道案内で来た結果この有様

猫耳や犬耳の局員が一人の犯罪者に手も足も出ない状態

てか絶対に生態にまで響いてるよな、ここに来る途中街中で堂々と昼寝する一般市民を大量に見かけたのだが

 

「近づきたくねぇ、テカリと汗ヤバイだろ、キラキラしてるよあいつ」

 

「み~んな全然あかんねん、女性局員は気味悪がって逃げ出すし男性局員も犬ならまだしも猫はあかん」

 

「お前はどちらにも該当しないけどな、それよりなんだ?近距離戦闘のエキスパートなら俺じゃなくてヴィータやザフィーもいたはずじゃねぇか」

 

少なくともザフィーは元から犬だしヴィータは俺よりも一撃の威力は高い

 

「それはそうもいかんのよ、ヴィータは猫になってしもうて一向にお昼寝から起きる気配無し、ザフィーラは………本物の犬になってもうた」

 

「つまり?」

 

「犬と人間、両方が半々で保たれとったのにそのバランスが崩れたんよ、話しかけたら『ワンッ』て返されるし」

 

あいつ、狼としての威厳とか無いのか?

 

「助かったのはユニゾンデバイスのリインだけ、今は私とユニゾンしとるんやけどな」

 

『はいです!!』

 

デバイスには効果無し、か

それでもリイン単体での戦闘力は余り期待しない方がいいし、ユニゾンしてはやての一撃を強化した方がいいのか

それでも効かなかったと、あの筋肉ダルマには

 

「応援とかは無いの?」

 

「あんまり期待せんほうがええかな、地上本部は頑張っとるけど本局はそうもいかへん、他の世界では今でも犯罪は起きとる、管理局は人手不足よ〜」

 

「なるほどな」

 

つまり、今の主戦力は俺と

こんな事になるんだったらなのはとフェイト連れて来るんだったな、いや、やっぱり駄目だ

年頃の女の子にはやはり刺激が大き過ぎる、はやては知らん

 

「身長は……およそ2m以上、体重は軽く百キロは超えるな、魔力形態は古代ベルカでSランクの魔力は全て身体強化と肉体強化に、耳は……熊か?」

 

「近づいたら食べられそうで怖いねん、結構本気で」

 

「熊の相手をチワワにしろと?正気かはやて、口には出さないけどさっきから膝の震えが止まらん、生存本能が警報鳴らしてんだけど」

 

「なんや、ケント君はこの美少女が食べられてもいいっていうんか?」

 

「色々卑猥だ、まぁそれは……嫌だな」

 

あの筋肉ダルマ×はやてとか、想像したくない

 

「それともなんか?雑食の私に食べられてみる?」

 

「取り敢えずあれ何とかしよう、今思えば恐怖を断ち切って突っ込んでる局員って案外凄いんだな」

 

大体犬か猫なのに、熊に立ち向かう度胸は凄いと思う

 

「私の発言は無視か~、ユニゾン姿の私を見せるのは初めてやからケント君、少しはキュンッ、てくるかと思ったんやけど」

 

「ん?可愛いと思うぞ、目とか綺麗だし」

 

「卑怯者」

 

何がだよ

 

「じゃあはやては援護頼む、横入りは邪魔になる可能性があるから魔導師は一旦下がらして、騎士は様子見って事で」

 

「了解や」

 

そういやネリア以外で誰かと共闘するって初めてか?

まぁ、共闘って言ってもはやては細かな攻撃ではなく一撃必殺の大型砲撃主力だから、殆どする事は無いと思うけど

殺すつもりなんてさらさらないので『破壊』は何が何でも使わない、あれに非殺傷とかない

 

自分の周りにスフィアを五つ配置、デュランダルの刀身に魔力を集める

出来れば一撃で落としたいんだけど……行けるか!!

 

右足を蹴って一気に浮上、飛行魔法を使って一気に距離を詰める

向こうがこちらに気づく、遅い!!

 

俺の目の前には五つのスフィア、これで隙を作り、一気に決める

 

「小細工など通用せんわ!!」

 

「ちょっ、ガチで!?」

 

あいつ、スフィアを右手で軽く払っただけで全て相殺しやがった!!

いくらスフィアとはいえ小規模の爆発は確実、なのにピクリとも動いてない、目さえ閉じねぇ!!

 

「だけど!!」

 

「むぅ、煙玉」

 

払った瞬間にもうもうと奴の周りを白い煙が立ち込める

スフィアの中に軽い煙玉、世の中チートだけじゃやっていけねぇって今までの経験から知ってんだよ!!

 

その直後、黄金に輝くその剣を横凪に大きく振るう

入った、確実に

 

(偽)エクスカリバーと比べれば若干威力は劣る物の勝負はつく!!

 

バキン、という金属音……金属音?

 

そして……

 

「ガッ!?」

 

「ふんっ!!」

 

胴体をその巨大な腕で掴まれ思いっきり投げ飛ばされる

 

一回、二回、三回バウンドし……ビルに衝突して止まる

………クソ痛ぇ

 

「小さい!!弱い!!筋肉が足りん!!お前まさかその貧弱な一撃で俺の体に傷をおわせられると思っていたのか!!」

 

「筋肉とぶつかり合って金属音とか、そんなのアリかよ」

 

「スフィア?煙玉?収束?そんな小細工俺には通用せん!!収束自体は良かったがお前の身体的要因が悪かったな!!」

 

ちょっ、嘘だろ

つまりあいつは、『俺の力が弱かったから効かなかった』と言いたいのかよ

今のは非殺傷の魔力ダメージを与える攻撃だぞ、その威力はどこに逃がしたんだよ!!

 

「世の中にはエースオブエース、歩くロストロギア、無限の知能など様々な天才がいる、じゃがな、筋肉には凡人も天才もない!!

魔力の差、力の差、知能の差!!その全てを埋め、消す事が出来るのが筋肉!!至高の芸術!!神がお与えになった最強の力!!」

 

あいつが右足を大きく後ろに反らす、ヤバッ!!

 

「その府抜けた細い体、俺が直々に鍛え直してやる!!」

 

「くっ、デュランダル!!」

 

瞬時にデュランダルを地面に突き刺し、それを軸にして大きく飛翔

眼前には筋肉ダルマの肩、一瞬でも遅ければ、危なかった

筋肉があるということはそれだけ踏み込みが強いという事、瞬間の最高速度はフェイトを越えてたぞ!!

………っ!?

 

「グワッ!!」

 

「まだまだぁ!!」

 

風圧、それによって大きく飛ばされる

おい、こいつ本当に俺らと同じ人間か!?

 

「シールド!!」

 

「ラリアットォォォォォ!!」

 

カードリッジを三発つぎ込んだシールド……オイオイ、これって夢じゃないよな

 

「軽いわぁ!!」

 

「ガッ!?」

 

全身に激痛、上も下も右も左も分からない

ゴロゴロと超高速で転がる体、バリアジャケットが無かったら今頃ミンチだな

 

そして転がる途中、一瞬だけ見えた

 

目の前に、筋肉ダルマ

 

「先回りかよ」

 

「ふんぬ!!」

 

エルボー、地面に盛大に叩きつけられる

土煙が舞う、地面が砕ける……くそ

 

「俺は人殺しでは無いのでな、なに、死にはせん」

 

「………ゴホッ」

 

まるで胃の中身が全て無くなったかと思う感触

ここは………廃墟の中か、恐らくビル

………成る程ね

 

術式作成、右手を地面に向ける……こいつは、これくらいじゃ死なないだろ?

 

「破壊」

 

「ぬっ!?」

 

無くなった、地面が、ポッカリと

流石の筋肉ダルマでも今のには反応出来なかったらしい、大きく体制を崩す

そして

 

「転移!!」

 

「むぅ!!」

 

すかさず外へ転移、目の前には廃墟ビル

………軽く十階建てはあるか?まぁ、今の破壊で支えを失ったんだ、廃墟ビルなんて……簡単に倒壊する

 

土煙と砂嵐、それと共に一瞬で倒壊する廃墟ビル

魔力を刀身に溜める、今度は、一切の余裕も無し

 

目を瞑る、直感を最大限にまで生かす

………飛翔、場所は……倒壊したビルの一角!!

 

ふんぬっ!!という掛け声と共に瓦礫を吹っ飛ばしてはい出て来る筋肉ダルマ、今が、チャンス!!

 

「ぬ!?」

 

「エクス」

 

一気に斬る!!

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

両手で振りかぶったエクスカリバーと筋肉ダルマの右ストレートがぶつかり合う

 

………あ、こりゃ駄目だ

 

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

バキンッ、という音と共に、俺の両手は中に放り出される

完全なる無防備、なんでこう、俺が戦う奴って人外ばかりなのかな

 

 

「ぐおぉぉぉ!!」

 

 

筋肉ダルマの雄叫びと腹にかかった激痛により

 

俺の意識はプツリと途切れた

 

 




ケントのやる気が無さそうなのは相手が熱すぎるせい、
熱苦しすぎて逆にかなり冷静です
まぁそれでも、ボロボロですが(−_−;)

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