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「いや、だからさ、ちょっと力貸してほしいな~て、いや、お願い、割りとガチで」
「すまないが今回ばかりは主の頼みであっても承諾出来ん。すまないな」
「ワンッ!!」
「zzzzzzz」
苦笑いのはやてと俺からの誘いを断固として拒否するシグナム
はやてに餌をねだる犬と相変わらず寝るヴィータ、何と言うか……なぁ?
「どうせ暇なんだろ?この前『強い相手がいないー』とか言って嫌がる俺を無理矢理連れ出してたじゃん?
絶好のチャンス到来だよ?無茶苦茶強い相手だよ?」
「それでもだ、断固として拒否する」
そこまで言わなくても………
場所は八神家、外はもう夕暮れ
かれこれ交渉し始めて三十分、シグナムの意思は相変わらず固い
耳から生えているのは猫耳、どうやら俺の勝手な推測だが男は犬化、女は猫化が多いようにも感じられる
あの筋肉ダルマは知らん
あとここに来る途中、チーター、いや、虎か?そんな耳を生やしたオッドアイの少女がいたとかも知らん、よくこの状況で鍛錬が出来るよな
にしても、折れてくれないかな
「そこまでして嫌な理由があるのか?ベルカの騎士にとってそんな戦いを拒否するような恐怖でもあるわけ?」
「いや、そんな物はないが……違う違う、単に今は調子が悪いというか、その、何というか」
シグナムに調子が悪いとかあるのかよ
熱出しても剣振ってるイメージしかないぞ
………少し挑発するか
「なんだ?もしかして自分の炎が怖いのか?烈火の将ともあろう方が」
「そ、そんな事はない!!烈火の将シグナム、恐怖も無ければまして自身の炎に恐れるなどは決してない!!断じてない!!」
そこまで否定しなくても
そんなに言ったら逆に肯してるもんだぞ、見栄っ張りというか、プライドが高いというか
「ほう、じゃあ何がお前を拒絶させるんだ?なに、心配ない、お前とは何度か模擬戦してる。息もピッタリだと思うしお互い信頼出来る。不要な心配は大丈夫だが?」
「そんな事ではない、ただ……その」
「それとも……あの筋肉ダルマには勝てないと思ったのか?戦う前に逃亡か?」
「違う!!断じて違う!!」
相手がどんな奴だろうと強ければいいっていう感じだからな、普段なら喜んで前線で戦ってるだろう
さっさと首を縦に振ればいいのに
「じゃあ何がそんなに不満なんだよ、いつものシグナムなら期待に胸を踊らせている筈だろ?」
「いや、だから、今回は」
顔を伏せてしまう
頑固だよなぁ
「じゃあこうしよう、俺とお前が戦って俺が勝てば明日の戦いに、お前が勝てばこの話は一切無かった事に、どうだ?」
「……………」
黙り込むシグナム
なんというか、なぁ?
「ああ、大丈夫、俺は今日筋肉ダルマと戦って魔力を消耗してる。シグナムが圧倒的に有利だぞ?もしかしてハンデまでつけられて逃げるのか?」
「うっ」
少なくとも今までシグナムは俺に全勝してる。ここで逃げる事など出来ない、というさそんな汚い事をシグナムはしない
それにハンデ付きだ、ベルカの騎士として誘われた勝負は受けるよ……な?
「……………了解した、三十分後に、前の浜辺だ」
「うし、んじゃ先に行ってる」
シグナムの気が変わらない内に八神家を出る
いじめ過ぎたか?だけどなぁ、この方法以外だと本気でオルタ(笑)使わないといけない可能性だってあるし
後は……他力本願だとキャロ?
ヴォルテールなら何とか……その前に真竜クラスをミッドのど真ん中に召喚するのでアウトだな、前はJS事件だったから特例だっただけだし
それにキャロ自体ミッドにいない、来るには最低一日かかるだろう
それにあの筋肉ダルマはヴォルテールだろうが何だろうが鉄拳一発で沈める可能性も否定出来ない……大地の神様が右ストレートで飛んで行く光景……シュールだ
そういや俺、六課メンバーの中では強さ的にどれくらいなんだろうな、隊長クラスにはなれるけど……ん?
相性とかもあるからな、関係ないか
いや、原作ではなのはとシグナムは昔、局の模擬戦で死闘を繰り広げたんだっけ?
遠距離主体のなのはに近距離主体のシグナムが戦えるのか、俺の場合直感があるからバインドはほぼ無意味だけど他はそうもいかないからな
それでもシグナムには中距離攻撃があるからカバー出来るんだと思うけど、俺は本当の意味で『近づいて斬れ』しか言えない身だからな
一つあくび、そんなくだらない事を考えている内に着いたらしい、目の前には夕日に照らされた海
……綺麗だよな、ホント
小学生くらいの子達が下校している。この辺だとどこになるんだろうな
手に持っているのはサッカーボール、ミッドにはサッカーは無いって原作でユーノが言って無かったか?
………細かい事は気にしちゃ負けか、ユーノ、普通の学校に行っているとは思えなかったし、あんな年から発掘作業してるんだもんな
どこであんな知識を身につけたんだか、てかその前に俺、ユーノと会った事ねぇ
衝撃の新事実、無限書庫や何やらの為に一度くらい接触しておいた方がいいか、これから何かがあったら使う事もあるかもしれないし
………いや、忘れてた、『G』が出た時に一瞬だけ会ったわ、影が薄いからすっかり忘れてた
もう一度サッカー少年達に目を向ける
懐かしいな、俺も中学の頃は部活に青春を燃やしてた、えっと、何部だったか?
えっと……ん、思い出せん
燃えてたんじゃ無かったのかよ、昔の記憶だからか?
ん、んー、俺って死ぬ直前まで高校で何してたっけ?
頭を捻らすが分からない、てか考え過ぎたら軽く耳鳴りがして来る
まぁ、今はいいか、別に今の世界で使う知識でもないし
そう、どうでもいいことなのだ
「お、来たか」
「…………」
無言でこちらに歩いて来るシグナム
むっちゃ睨んでる、当たり前だけど
俺が知っててやってるのも分かってるだろうしね、どうにかして恐怖を克服してもらわないと困るんだよ
俺とシグナムが向かいあう、俺もチワワである以上、火は怖い
だがそれを至近距離で見せられるシグナムはその何倍もの恐怖を感じる筈、なるべく俺はシグナムに反射的に性質変化を使わせる戦いをして……使われても極力驚かないように、逃げないようにする
「んじゃまぁ、日も暮れて来てるしさっさと始めるか、ルールはいつも通り、基本的に無制限だ」
「………分かった」
シグナムと俺が剣を構える
………一見落ち着いているようにも見えるが、汗ばんでるな、手
デバイスを構える事にも躊躇するのか……酷いな、これは
「よしじゃあ」
魔力を惑わす……よし
「始め!!」
双方一気に斬りかかる
「えっと、シグナム?」
「(ビクゥッ!!)」
目の前で砂浜に女の子座り?しているシグナムに手を伸ばす
むっちゃ怖がられた、目は半泣き、髪のリボンは取れて少し口に入っている
「……大丈夫か?その、あの」
「(フルフル)」
首を横に振られた
こうなったのも俺が原因、簡単だ、炎が出ればいいのだから無理してシグナムを待たなくてもいい、単に軽く爆発させてやれば充分なのだ
ただ、効果が絶大過ぎた、シグナムを丸々飲み込んだ爆炎が晴れる頃にはシグナム半泣き、完全なるキャラ崩壊
これ、俺が悪いんだろうな
「その、歩けるか?家までどうする?」
「………グスッ、あ、歩く」
何この小動物
「えっと、ホントに悪かった、調子に乗り過ぎた……今回の事はこっちで考えるからな?ごめんな?」
「い、いや、騎士が一度誓った約束だ、破る事は出来ん」
涙目で言われてもなぁ
今が日が暮れててよかったよ、周りから見たら絶対野次馬集まって来るもん
いや、俺が悪いんだけどさ
「それでもそれじゃあ全く戦えないだろ?」
「性質変化など無くても戦える、騎士をバカに……するな」
ん~、まぁ剣技に関しては何も問題は無いしな
カードリッジさえ使えるなら何とか、あいつは殴る蹴るだけだから爆発とかはしないだろうし
「だ、大丈夫だ、お前には頑張ってついていく」
「俺がシグナムに着いて行く形にはなると思うけど、じゃあ、明日はよろしくな」
「ああ」
この後シグナムを慕っている近所の子供達から非難を受けたのはまた別の話
この頃ニコ動内にある『耳かきボイス』にハマっている作者
声じゃなくてあのカリカリ音が堪らん、気づけば一時間くらいリピートで聞いてます(−_−;)