もう一つ
「よっ」
軽く打ち込み
うわっ!!と叫んで転倒する子供……うん
「はっ」
足をかける
振り下ろしてきた斧が空を切る
「よっと」
放たれた槍を軽く受け流し……叩き落とす
「ていっ」
横凪にはらわれた剣撃、遅いし鈍いし実力不足
下から弾く……オイオイ
「好い加減バリアジャケットと……デバイスを使わせるくらいにはなれよ!!」
それぞれに一発づつ
後ろに弾け飛んでいく子供……手加減はしてんだ、感謝しろよ
ふう、と息を吐いて周りを見渡す……疲れてくたばっている者、なんとかして再び立ち上がろうとする者など様々だ
でも、今回はこれで終わりだな
「将来騎士になんだから、しっかりしろよ?今のままじゃろくに戦えねぇし」
場所は体育館、時間は夕方の四時頃
はい……と力の無い声が響く、ま、だんだんレベルが上がっているのは認めるよ
体育館の出口に歩く、苦笑いの教師達の姿
そして……なぜか目をキラキラさせるカリムと呆れたような顔をするシャッハ
まぁ、いつも通りの日常だ
JS事件が終わって早二年、俺も二十一という年齢になり精神年齢を考えたら軽くオッサンだな~と思い始めたこの頃
暮らしは実に平和、全く問題無しと言えるだろう
あった事と言えばヴィヴィオが晴れてこの学校、Stヒルデ魔法学院に入学した事だろうか?
写真撮ってパーティーして……ワイワイしていたのを覚えている
目の前に出された紅茶を飲む、今回はちゃんとミルクティー、紅茶で一番好きなのはこれだね、うん
甘党?子供舌?何とでも言え、甘党の何が悪い
「相変わらず容赦の無い人ですね、まぁ、未来の騎士達があれでは困るので丁度よいのかもしれませんが」
「まぁな、手加減とかも結構してるし……妹の身がかかってるから負けるつもりもねーけどな、その前に俺にバリアジャケットとデバイス、使わさせてくれないか?格闘技で全部ぶっ倒してんぞ」
シャッハに対しての愚痴、今のままじゃ将来が心配
先ほどしていたのは恒例の『ネリアの婿に来たけりゃ俺を倒してみやがれバトル』
大体月に一度来ては暇つぶし程度に戦っている、今回は五十人程度だったか?
ちなみにデュランダルを使わなかったのは今回が始めて、まさかここまでとは思ってなかった
そんなわけで八極拳(笑)にて完全殲滅、今はこうして時間潰しの為に個室でくつろいでいる
目の前で紅茶をフーフーと冷ましているカリムが可愛らしい
「学校の教師に強く言い聞かせないといけませんね、このところ緩くなりつつありますから」
「俺の時もサンドロスぐらいだったからな、まともだったの……いっそのこと全面的に入れ替えてもいいんじゃねぇか?」
まぁそんなに人材がいないのが騎士なんだろうけど
「はむ、おいしいですね、このお菓子」
「ん~、美味いなこれ」
自分で持って来た手土産であるクッキー、美味い……食べ慣れてるけど
「いっその事ケントさんが聖王教会に来て来れたらいいのに、騎士サンドロスの後継者として」
「ん~、カリム、俺は魔導師であって騎士じゃないんだよな~、それに家柄とか局から貰っている役職上無理」
俺が聖王教会に属したらかなり大変になるぞ?
今のところカリムが事実上トップにいるけど彼女も少将、俺も少将、つまりは局での位は同じ
さらにはカリムが名家の生まれ柄で俺も名家の生まれ柄、カリムは聖王教会直系の子孫で聖王教会内での力は大きいが俺はまさに現代の経済を担う存在、比べてしまうとどうしても今の利益を考えるならばコルテットを支持する人間も出てくる
そうなれば聖王教会が一枚岩では無くなる、俺やカリムに争う意思が無くても周りが勝手に俺達を持ち上げて争いになるだろう……断じて無理、絶対駄目
「分かってますよ、冗談です冗談」
「そうだよなー」
カリムも人の上に立つ以上、ずっとのほほんとしているわけでも無いからな
人を見る目とか探り合いなども昔からは考えも出来ないくらい成長してるし……性格は全然変わらないんだけどさ
「はむ、このお菓子、どこで売っているか教えてくれませんか?」
「ん?分かった、また家に帰ってから連絡する」
俺が買ったわけじゃないから何処のかは知らん
「それにしても今日はあの人は同伴ではないんですね、てっきりまたシャッハと戦いに来るのかと思ってたのに」
「ヴラドの事か?今日のあいつはコルテットの屋敷で護衛達を鍛えてるよ、何でも今日はテストだかどうだか言ってたし」
「シャッハとは気が合ってるようにも思えますしね、生徒にもいい勉強になるのだとか」
「だからと言って生徒達が筋肉ダルマになるのは嫌だぞ、あれは特別な例であって見習わせるのは駄目だ」
俺に挑んでくる奴らが全員筋肉ムキムキになって襲いかかって来たらもう絶対この学校には来ない、あんなのは一人で充分だ
あ、紹介が遅れた、今日はさっき話した通り今はここにいないのだが『ヴラド・ガルダ』、今ではコルテット護衛隊の隊長でもあり陸戦AAA−の実力者
ご存知の通り、一年ちょっと前に起こった『獣耳事件』の主犯である
彼自身、凶悪犯罪をするつもりでは無かったのと自身の強化中、災害にあった人間を多く救っていたなどの事からあまり大きな罪に問われず、わずか半年ちょっとで釈放となった
まぁ局員が獣耳になったぐらいで実質的な被害は出てないので当然と言えるが
で、釈放されたヴラドをうち、即ちコルテットで雇用したのだ
元からある筋肉にロストロギアを体に埋め込んだ時の『後遺症』によって魔力量がAA+にまで引き上げられた彼、今でも昔ほどではないのだが肉体強化+身体強化のコンボは強力でよく府抜けた護衛達を滅多打ちにしている
そんでもってシスターシャッハはよい好敵手であるらしく会うたびに模擬戦を繰り返している………今のところ五分五分だという
ま、色々と難ありだがちゃんとした正義感は持ってるし悪い奴じゃない、実力も充分と言う事で
てかやっぱ、筋肉男と暴力シスター、まさに気が合う二人だ
「ロッサはどうしてるんだ?この頃は会わないんだけど」
「ロッサは色々と世界を飛び回ってるとか……何だか凄く忙しい……というか、詳しくは教えてもらってないんだけど凄く厄介な事だとかで……確か名前は……エ、エ……?」
「そっか」
あのロッサが厄介と言うんだから相当な物なんだろう
危ない事に巻き込まれてなければいいんだが
「ロッサならそのうちひょっこり帰って来ますよ、あ、このクッキーホントに美味しい」
「あんまりガッツくとまた太るわよ?シャッハ、最近二キロ太ったんだから」
「なんで知ってるんですか!!」
予言じゃねーの?
解読する前にそれがどう言った予言なのかは分からないからな、解読してみないとそれがしょうもない物なのか重要な物なのかが全くわからない
「あ、ケントさん、予言の事なのですが……数年前に管理局システムの崩壊が書かれた文と……解読出来ていない予言があったの、覚えてますか?」
「ん?そういえばあったな」
今の今まで全く触れられていなかったから忘れてた
て、あれはなんだったんだ?
「あれなのですが……かなり高度な文章で、解読にはまだ時間がかかります、ですが……あの予言がこれから起きるものなのと……ケントさん、貴方について記されていると言う事が、ハッキリしました」
「俺?」
はて、シャッハの事については半分冗談だったが予言が『個人』の事について語るのか?
俺自身がそこまで大層な存在では無い気がするのだが
「解析は忙しているのですが、何分古代ベルカの言葉とはまた違う字体で書かれた文章もあって……時間はかなりかかるかと」
「ん~、まぁ、またわかったら教えて」
それが重大な事について書かれているのかは分からないわけだし
「古代ベルカ以外の文字で書かれた事なんか一度も無かった事なんですが、明らかに異例です」
「だよな、まぁ前向きに行こ、うん、それがいい」
未来の事なんて元から分からないわけだしな
何かがあるかもしれない……程度に考えておこ
「おっ、もう最終下校時間かよ、今日はこの辺で帰るわ、お茶、ありがとな」
「あ、いえ、こちらこそお菓子ありがとうございました」
残ったクッキーはシャッハに渡す、帰ってがっつくなよ?
部屋を出て別れを告げる、時期は夏、まだ太陽は登っている
それにしても予言か、何なんだろうな、大きな事件としては後Forceを残すのみだし……あまり考えても答えは出ないよな
溜息をついて住宅街を歩く、今日はなのはが早いんだったか?
現役を退いたから比較的帰るの早くなったんだよな、フェイトは相変わらずだけど
俺としてはずっといて欲しいぐらいなのだが、それは我儘だろう
ネリアは結構忙しいらしいし、絶賛ニートなのは俺だけかよ
ふと立ち止まる、今いる場所は帰路にある小さな公園
………彼女って今は初等科なんだね、その制服にはなぜか新鮮さがあるよ
「あ、あの」
「?」
目の前で直立不動、真っ直ぐにそのオッドアイで見つめてくるその瞳
あ~、うん、この頃からストリートファイターはしてないと思うけど……うん
「St.ヒルデ魔法学院初等科五年、アインハルト・ストラトスです!!」
「…………」
「今日の戦い、見てました!!あの、一度だけ……お手合わせお願いします!!」
あ~、なんでこうなんだろ
St.ヒルデ魔法学院が初等科は五年まで、中等科は三年までと『夜の魔王』さんから教えていただきました
修正しました、ありがとうございましたm(_ _)m