『フェイト達はアイドルだ』そう言われると、俺は否定する気など全くない
否定する要素が無いからだ、言っちゃなんだが顔良し性格良しスタイル良し仕事も出来るエリート、あげていけばまだまだある
欠点なんて欠片もない、それほどまでに文句のつけようがない、完璧なのだ
フェイトを好いている人間なんて俺だけではない、絶対と断言出来る
なのはも、はやても……もっと言えば守護騎士達だって
もし数える事ができるとすればどれだけの数がいるのだろうか……考えただけでも寒気がする
なのにどうして、彼女達には男が出来ないのか……単純にお断りしているのもあるだろうが一番の要因は『周り』かもしれない
フェイトは親に元提督を持ち実の兄が元提督、本人自身も執務官
はやてはSSランクの魔力にレアスキル、出世街道間違いなしのエリートであり後見人は権力者であるグレアム(生きているかは知らん)
守護騎士達はそういった話題には興味はないだろう。彼女達にとってははやてを守り、側にいることが務めであり幸せ、主を置いて男について行くなど想像も出来ない
なのはについては……管理外世界出身で他とは違いバックがいない彼女なのだが噂によると『自分より弱い男には興味がない』などと酔った勢いで言ったらしく男達の間では攻略不可能となっている
そんな風に、彼女達という存在はまさに高嶺の花ともいえるだろう……競争率は高く、攻略は難しい
だからこそ大抵の者は諦める、勇気を出したとしても撃沈する
だが、万が一だ、『歪んだ愛』を持つ者がいたとすればどうなるだろう
自分だけの物とするために、他の誰にも取られないようにするために
一番なのが……『脅迫』
手口は昔からある物と同じである
カメラに盗聴器、それらで得たプライべートを使った脅迫
旅行から帰って来た後、この部屋のポストに入れられていたのだとか……中身は写真やら映像やら
要求をのまないとばら撒く、ただそれだけならフェイトは動くだろう……だからこそ『娘』『友』
彼女の同僚、友人、関係のある物に同じく機械を仕掛ける。ばら撒く
そうなると彼女は動けない、自分の事はどうだっていい、だけど他人には迷惑はかけられない
だから彼女は要求をのんだ、大まかに言うとこう
『本局から出るな』
決まった時間までに部屋に戻り、本局からは絶対に出るな
脅迫である、いくら本局といえどもどこから見られているか分からない、相手の正体も分からない
少しでもおかしな行動をすると周りを巻き込みかねない
決められた仕事をして、決められた時間にここに戻る
ずっと見られているという恐怖、着替える事すらままならない
これを三日、己をずっと見られている状態で三日
もしここに来ていなければもっと続いたのかもしれない
「ごめんね、心配、かけちゃって」
「何言ってんだよ、ホント、よく我慢した」
ふぅ、と息をはく
俺も小さい時はずっと見られていたが、それとこれとは話が違う
「それで、お兄様がここに来てお姉様が喋ったって事は……もう流されてる可能性もあるって事?」
「いや、それは不可能だよ」
部屋に設置されていたのを全ての機械を外し終える
……素人が見ても盗聴器だなんて思わないな、こりゃ
「その相手が言っている通り、これはいちいち録画して見るタイプじゃなくてリアルタイムで向こうに映像が流れるタイプ、普通ならもうさっきの会話も俺らが来た事もバレてるよ」
「なんで大丈夫なの?」
そうだな、俺以外には無理だとは言える
「『無線』っていうのは確かに便利だ、だけどな、『線』はあるんだぜ?」
「………電波?」
その通り
「来た時、これらが発していた電波に微量の魔力を乗せた……小型のスフィアみたいなもんだ、今頃向こうの電子機器は揃いも揃ってフリーズしてるかもな」
かなり高度な技術だ、俺以外に真似なんて出来ない
誰かに襲われる可能性があった、誰かに監視されている可能性もあった、どこかから情報が漏れてしまうかもしれなかった……そんなコルテットの長男として身につけた技術
ジュッと、何が溶ける音
今外した物体が全て溶けて行く……恐らくは外した瞬間に発動する隠蔽魔法か何かだろう
……まぁ当たり前か、ここは魔法世界、いくらでも隠蔽する方法はあるし逆に言えばいくらでも逆探知する方法だってある
ただ物体が無くなってしまうのは……ちょっとばかしキツイかもしれない
「本当に電波に乗せるだけの一種のバグ的な症状みたいなもんだ、普通だったら二時間、早ければ一時間で再起動かもな、それまでにどうにかしないといけない」
「で、お兄様一人でやれそうなの?」
「………見つける」
強がりを言う……正直に言えば不可能に近い
ここは本局、張り巡らされているネットワークは尋常ではない、手がかりも何もない状態の中一時間で相手を見つける?
不可能だ、いくら皇帝特権でも俺一人で出来る筈がない
「……うん、一時間か……お兄様が駄目なら数で勝負するだけだね」
「ネリア?」
ネリアがデバイスを手にとってどこかと繋げる
「お兄様はさ……お姉様の側にいてあげて?」
「えっ」
ネリアがフェイトの側を離れる
ふぅ、と一息
彼女は、いつもの様に笑っている
「取り合えずその溶けたのは借りて行くね、ここでは無理だけどちゃんとした施設なら何かわかるかもしれないから」
「えっと、ネリア?」
ポンポンと頭を撫でられる
……妹だからな?
「側にいてあげて、隣にいてあげて、声をかけてあげて、目を見てあげて」
フフ~とまた、いつもの様にはにかむ
いつも通りの妹
「我慢出来なくなったら押し倒しちゃえば?暫く帰って来ないしここなら誰にも見られない、二人は何も心配しなくていい、笑っていてくれればいい」
「………お前」
彼女の発言に何かを言い返す事は出来なかった
顔は今でも笑っている。いつも通り、変わらないまま
それでも……
「大丈夫だよ、私が全部……始末してくるから」
声はこんなにも、冷たい
相手が局員だという事は何かを確認せずにも分かる
局内に閉じ込めるくらいなのだ、局員でなかったら何も得するものがない
指示を飛ばす。圧倒的な数による人海戦術、先ほどの盗聴器やカメラは本家の施設で解析中である
洗いざらい、徹底的に、全てを探る
絞り込むのは補助系の魔導師、フェイト自身も一流の魔導師だ。その彼女自身が気づかなかったのだからかなり高位の魔導師と捉えてもいい
局内での捜索行為については上を脅せばどうにでもなった
大型の取引相手に対して失礼だの何だの批判は受けたがそんな事はどうでもいい、知った事ではない
「………目星くらいはついたかな?」
まぁそうは言っても、魔導師の中には補助系の者が少ないというのがある意味幸いした
まぁ少ないと言っても調べさせている数が数だけに少ないと言えるのだが
ちなみに補助系の魔導師が少ないのは極めて簡単、『派手でないから』
魔法だ、誰だって憧れるし誰だって使いたいとも思う。
砲撃魔法にカードリッジシステム、そんな活躍出来そうな、もっと言えばカッコいい事が出来るのに誰が治癒やら結界やらをしたがるだろうか
そのせいで補助系は数が少ない、している人間の殆どが『適性が無かった』や『前線に行くのは反対された』ぐらいだ
その中でも高位の魔導師、補助系を極めた人間などどれだけいるだろうか
せいぜい自分としては八神家のシャマルぐらいだろう。治癒魔法、結界、転移、その全てが一流である
送られて来たデータ、映し出されるのは一人の男
自分としてはデブのキモオタを想像していたのだが案外外れる者だ、映っていたのは明らかに好青年と思わせる男性
年は三十前、魔力はAAで位は三佐、エリート街道真っしぐらと言うわけだ
「…………普通に見たらイケメンだよねぇ、どうしてこうなっちゃったんだか」
大体の予想くらいはつく、やはり兄を置いて来たのは良かったかもしれない
本当にそうなら相手を余計興奮させるだけだ
「今日は非番で住居はミッド市街地……むしろそっちの方がやりやすいかな?」
自分のデバイス、『ガラディーン』を握りしめる
許す気はない、エリートだろうがイケメンだろうが許す気はないのでどうなったっていい、どうせなのだ、新しくなった『コレ』の実験相手くらいにはなるだろう
「手は出しちゃ駄目だよ?今は監視だけでいい、それじゃ」
案内よろしく、とだけ言い残して、彼女自らがそこに赴く
「………………」
「………………」
ずっと赤面、俺も赤面
二人きりである、それも自宅ではなくこうして個室に
最後のネリアの台詞に言い返せなかったのが災いした。何が「我慢出来なくなったら押し倒しちゃえば?」だ。そんな事すりゃ俺が最低野郎じゃねーか
「えっと……何か飲む?折角来てくれたのにごめんね?」
「ん?あ~、じゃあ貰おうかな」
そう言えば昼飯をまだ食べていない事を思い出す……まぁいいか
それにしてもなぁ、こんなにも俺が何も出来ないなんて事中々ないよな、いくらチートを持っていたとしても腕は二本で俺は一人、どこまでいっても限界はあるということか
この個室には台所などないので冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注いでくれる
……だからと言って話題が進むわけではない
「ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって」
「何言ってんだよ、謝られる筋合いはないしむしろ見つけられて良かった」
もしこれが一週間、二週間と続けばメンタル面で大変だったと思うし……俺自身も気づいてやれなかった自分を許せなくなる
「ネリアが動いたって事はコルテットのSPやらなんやらを呼んだんだろうよ、基本的で一番手っ取り早い人海戦術。
戦闘ではそんなにだけど数だけはいるんだ、きっと何とかなる」
「そんなにって……それが言えるのはケントだけだと思うよ?」
そうか?
まぁ、一般人と比べたら天地の差があるとは思うが
トンッ、と、肩にちょっとした重り
フェイトが隣に座ってもたれかかった
「ごめんね、こんな時なのに……目が……」
妥当だろう
この三日間どこかしらで誰かもわからない人間に脅迫されていたのだ。個室だからと言って安易に眠れる筈がない
それに部屋に設置されていたという事はこの部屋に入れるという事、目が覚めたら捕まっている……なんて可能性もある、殆ど徹夜みたいな状態でいたのだろう。
安心したからこそその疲れがドッと出た
「ベッドまで行けるか?」
「…………あのね」
フェイトが膝に頭を乗せる……関係ないが髪が綺麗だ
「えへへ、ホントは逆なんだけど……いいかな?」
「………おやすみ」
よっぽど疲れていたのだろう、軽く撫でるとスヤスヤと寝息をたてはじめる
ネリアからは相手を見つけたとのメールが入った、もう安心だろう。だから……
「あんまりやり過ぎるなよ、ネリア」
それだけが一番心配だ
本編とは全く関係ないですが……EXTRA CCCでカルナとかどんだけ……ギル様でも勝てないかもしんねぇじゃん(−_−;)