リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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最後の方駆け足気味



女子寮にて

 

「えっ、ちょっ、これ凄い、まさに私たちデバイスマスターを根本から否定する出来……てか素人にこんなの出来る筈ないじゃないですか!?」

 

「出来たもんはしゃーない、それのプログラムとか欲しいデータはやるから最終調整だけ頼むわ、そこは俺では出来ないし」

 

夕食を頬張りながら正面にいるメガネの相手をする

キラッーンと光った、なんか怖い

 

「いいんですね、ホントにいいんですね、隅から隅へと舐める様に調査させてもらいますがいいんですね」

 

「まぁコルテットと言っても市販のデータ使っただけだし後に加えたプログラムは完全に俺が作った物だからな、製作者がいいって言ってるんだから大丈夫じゃね?」

 

てか大丈夫と言っておかないと今直ぐに食ってかかりそうな勢い

隣のフェイトにヘルプを目で入れてみる。ニッコリと笑われた。可愛い

 

「期限は明日の朝になるがいけるか?徹夜になるかもしれないけど」

 

「こんなプログラム見せられて徹夜しないデバイスマスターなんていませんよ!!」

 

お、おぅ

凄い剣幕なので引き下がる。データをいくら見るのは構わないけどちゃんと頼んだ仕事もしてくれよ?

 

あの後無事に局に帰ってきた俺たち、かと言ってネリアからの遣いがないと着替える事も出来ないのでそれまで正直暇、てかいつも暇なのだが

そんなわけで当初の目的の一つであった作りかけのデバイス×3をフェイトの紹介で副官のシャーリーに見てもらう事に

 

なんでも仕事が終わっていないらしくフラフラした状態で食堂に現れたのだが渡したデバイスのデータを解析し始めると……あら不思議、目の下にあった隈などどこかに消えました

 

彼女に頼んだのはデバイスの最終調整、こればかりは素人の俺では何が良くて何が悪いかなど検討もつかないからやってもらう。報酬としては中にあるデータや技術の提供

コルテットの研究施設を使ったと言っても結局は設備だけ、独自の技術やら何やらは全く使っていない

完全に俺オリジナル、市販やら何やらシャーリーには言ったがそれはもし俺が『一から作りました』なんて言ったら後々大変になりそうだから、素人が始めてでここまで作ったなんて……ねぇ?

 

「それよりも急ぎ足の仕事っていうのは大丈夫なの?まだかなりあるって言ってたけど」

 

「大丈夫です!!フェイトさんには関係ない仕事なので差し支えはありません!!」

 

遅れる事前提かよ

まぁそれで違う人に怒られるんだろうな、もう彼女の目線はアレにしか向かってないし

 

夕食……であるラーメンをズルズルと啜る

…………普通だ

 

「夕食まだなら奢るぞ?ちなみにラーメンは普通だった」

 

「いえ、時間が惜しいのでこれで失礼させてもらいます!!」

 

元気いいね~

てかフェイト、シャーリーってこんなキャラなの?

 

「デバイスマスターの人って大体こんな感じだったりするかな?」

 

なるほど、つまり変人の集まりと

あと隣のフェイトはパスタ、ホワイトソースである

………口の周りが凄い事になってる気がするが……まぁいいや

そういやフェイトの好きな食べ物って何なんだ?

基本家でも口にしないからわからん

質問してみたら顔を赤くした後プイッとそっぽを向いてしまった……ホントなにこの可愛い生物

 

「逆に聞くけどケントの好きな食べ物ってどんなの?」

 

「俺か?」

 

………………ん?

 

「肉類も魚も野菜も甘いも辛いも……基本何でも好きだぞ?よくあるダークマターじゃない限り」

 

「へぇ、じゃあ嫌いな食べ物ってある?」

 

嫌いな食べ物?

ん~、元がセイバースペックだからな、嫌いな食べ物って

 

「ない……かな?あぁでも……強いて言うなら『タコ』」

 

「タコ?」

 

うん、何故か知らないけどさ、あれ見ると体がブルっとなるんだよね、理由はわからないけど

嫌いというより苦手意識か?

 

「ふぅん、確かにたこ焼きはした事ないよね……弱点克服の為に一度してみる?」

 

「なぜそうなる」

 

ドSか

 

「でもなんか意外だな~、変な弱点だね」

 

「誰にだってそういうのはあるよ」

 

知らないだけでさ

案外身近にいる人間程、知らない事だって一杯あると思うし

 

「ご馳走様でした。取り敢えず腹は満たされた」

 

昼から何も食ってないダメージは大きい、通常の人間関係よりも

 

「私もご馳走様でした。ケントの荷物もそろそろ届いてるかな?」

 

「まあ届いてるにしても届いてないにしても先にシャワールーム使ってくれ、俺は外に出ておくから」

 

「…………あ、えっと」

 

フェイトの目が泳ぐ……どうした?

 

「あ、えっと、シャワーはケントが先に使ってくれると嬉しいかな~て……駄目かな?」

 

「まぁ、いいけど」

 

あ、言い忘れていたが個室には一応シャワールームがある

シャワールームというより……ホテルにある感じのトイレと一緒の奴、あれである

局内は広い、シャワールームは勿論あるが訓練場の近くにあるだけで満遍なく作るなどしてない、行こうと思えば行けるが結構遠い

 

……恐らくだが脅迫されていた時はわざわざ訓練場の近くまで行ってたんだろう

 

「私ちょっと寄りたい所があるから……」

 

「じゃあ先に戻ってシャワー使っておくな、終わったら通信で呼ぶよ」

 

「うん」

 

フェイトがそういうのであらばお言葉に甘えさせてもらう

荷物を受け取らないと話が始まらないので局の玄関に

……メイドである、俺は見慣れているので何ともないがせめて黒スーツの方にしてほしかった。メイドなんて局内にいる事なんてないから周りからの目線が……

 

局内を暫く歩いて女子寮に辿り着く、何故かすれ違う女の人から変な目を向けられなかった……普通疑問に思うだろ、男が歩いてるんだから

それともなにか?俺を男と認識してないとかないよな?

 

フェイトから渡された合鍵を使って中に入る。

………なんと言うか、恥ずかしい

家にもそれぞれの部屋はあるがそれとこれとは話が別、ここはフェイトだけがいる部屋であって………煩悩退散煩悩退散

 

一度腰を下ろしてもらったショルダーバックの中を覗く

明日の為の軽い私服に下着にジャージに浴衣、後は洗面用具

まぁ普通だ、洗面用具の中に入っていた手鏡にダイヤが埋め込まれている以外は普通だ

 

こんな物かと思い浴衣と下着だけ取り出す。デュランダルも一応持っていく

浴衣は黒、なんだ、赤じゃ……なくていい、なんだ今の思考、赤い浴衣とか血に塗れてるだけじゃねーか

てか少し小さい、大人モードの設定いじれば丁度になるかしれないが今のままでは……まぁいいか

 

リュックを閉める……そういや前のチャックの部分には何か入ってるのか?

興味本位で開けてみる……白い箱?

 

中を取り出してみる……うん

 

「予想はしてたけど……ガチで入れて来るとは……」

 

精力剤とゴ………うん

変な誤解をされるのも嫌なので鞄の中にリターンしておく、油断も隙もない

 

気を取り直してシャワールームへ、個室が小さいのとベッドが一人用なのを除けば本当にホテルである

服を脱ぎ、トイレとの間にあるカーテンを閉めてシャワーを浴びる

………これはこっちに来て始めてだな、いつもは家の風呂かコルテットの銭湯顔負けの風呂かどっちかだもんな

フェイトはいつもここで浸かっているのだろうか、最初にお湯を溜めて後から身体を洗うのであれば可能な筈

そうだったら俺が出た後溜めておいた方がいいかな

………そういやタオルどうしよ

 

今気づいたのだがバックの中にタオルは入っていなかった、どうすればいいだろうか

洗面台のデュランダルに手を伸ばして通信、勿論こっちの顔は見えないぞ?

 

『あ、もう出たの?早いね』

 

「あぁ、まあもう出るんだけどさ……荷物の中にタオルが無くてそれに気づけなくて、どうすりゃいいかな」

 

…………無言

 

『あっ、えっ、あ、あの、せ、洗面台の近くに、わ、私のタオルがある、でしょ?

それ使っても大丈夫、うん、大丈夫』

 

「……………えっと」

 

『はうっ!?い、嫌ならすぐに買って帰るよ、うん!!』

 

「えっと、使っても大丈夫なのか?」

 

『勿論!!』

 

元気な返答、そりゃ俺にだって抵抗はある

家でさえ俺は自分専用と女子専用で分けているのだ。恥ずかしい気持ちというか、なんというか

シャワーを止めてタオルに手を伸ばす。白くてフワフワしたバスタオル、いい匂い………って

 

「何匂いなんて嗅いでるんだよ!!ただの変態じゃねーか!!」

 

自分で自分が気持ち悪い!!

申し訳なく思いながら借りたタオルで身体を拭き、綺麗にたたんで戻しておく

 

赤い顔を何とかして抑えながらシャワールームを出る。ベッドに座らせて貰いテレビをつけ……彼女に連絡を入れる

もう少しかかるらしい、何をしているのだろうか

 

テレビではニュース番組、特に目立ったニュースはなさそうだ

ネリアのは……もう気にしたら負けだ

 

そんなニュースをボーと眺めていたらフェイトが帰ってくる。時間にしておよそ三十分、タオル買って来るとなると俺はもう完全にふやけてるな

 

「えらく長かったけど、何かあったのか?」

 

「えっと……ちょっとね」

 

言葉を濁すフェイト……?

俺が質問する前にシャワーを浴びに入ってしまう。まぁ大丈夫か

 

テレビはニュースが終わり見た事もないドラマに変わっていた。

特に何かを考える事もなくドラマをただ眺める……大丈夫、ガチで暇な時は大体こうだ

それに今回は無心になるという意味も含めている

 

「えっと、ケント?」

 

「?」

 

呼ばれたので振り返る

風呂から上がったフェイトがドアを少しだけ開けてこっちを覗いている……どうしたんだ?

 

「あのね………浴衣、余ってたりしないかな?」

 

…………what?

 

「あいにく一着しかないんだけど、どうした?」

 

「えっと……あの、私ね」

 

 

 

 

 

「パジャマここに持って来てないんだ」

 

 

 

フェイトという女性は寝る時下着にシャツ、これが基本の人間である、なんでもそっちの方が寝やすいだとかなんだとか

勿論家ではパジャマ、ただ俺がいない時はそうらしい

てかここにはパジャマさえ準備してないとは………

 

「えっと……あの、あの格好で、大丈夫かな?」

 

「ちょい待ち」

 

ドアを一度閉めさせてバックをあさる

確かジャージがあった筈だが……完全に俺用である

フェイトなら確実にブカブカ………しゃーない

自分の小さい浴衣を脱いでジャージを着る……浴衣を着てたのは三十分ちょっとだし……いける、よな?

 

ドアをもう一度開けさせて渡す。フェイトも少しだけ躊躇したが最後はおずおずと受け取ってくれた

ワイシャツと下着だけで出てこられるよりは全然マシである

 

「えっと、ごめん」

 

「いいって、何故か予備でジャージ入ってたんだし」

 

今回はプ○マではなくちゃんとしたミッドの

どこでもどんな時でも使えるのがジャージだしな

 

フェイトが俺の隣に座って同じくテレビを見つめる

………内容は未だ全然分からない

 

「で、どこ行ってたんだ?結構遅かったけど」

 

「あ、うん、ちょっと地上本部にね」

 

地上本部?

局の転送ポートから確かにすぐだが何で?

 

「今日捕まった人に、会いに行ってたんだ」

 

「………………。」

 

今回の戦闘はミッドで起こった事、となれば捕まえるのは地上本部か

それにしてもなんで……

 

「面会しようと思ったんだけど……まだ気絶してるらしくてね、結局会えなかったんだけどね」

 

「普通自分を脅迫して来た犯人に会いたいと思うか?」

 

「……………そうなんだけど」

 

それは異常である

誰だってそんな奴に会いたいとは思わない、俺なら願い下げである

 

「彼が私に告白したって……言ったよね」

 

「あぁ」

 

フェイトにとっては何人目だったかは分からないが……

 

「それを私は断った、だけどもっとちゃんと気持ちを伝えていたら……彼はあんな事にならなかったんじゃないかって」

 

「……………。」

 

「そりゃああそこで『ハイ』って答えるんじゃなくて……もっとちゃんと彼に接してあげていたら、彼の人生は壊れずにすんだかもしれないなって」

 

それはifの世界、全く分からない

ただ一つ言える事は、フェイトという女性は優しすぎる

 

ああなったのはあいつの責任者でありフェイトは被害者である

フェイトが罪を感じる必要性なんてどこにもないし感じないといけない理由もない

ただそういう風に感じてしまうのが、彼女なのだろう

 

「だからね、ちゃんと伝えようって……ホントはすぐが良かったんだけど現場にはもういなかったし今日は気絶しちゃってるし……また今度になりそうだね」

 

それでも、こういう優しさこそが彼女の魅力でもある

ホント、敵わないな

 

「やっぱり、変かな?」

 

「いや、そうしてやってくれ」

 

それで彼も少しは真っ当になれるかもしれないしな

 

ちょっと暗い雰囲気になったので何か飲み物を貰う事にする……ビールですか、あ、ノンアルコール

おつまみはここにあったクッキー、テレビは先ほどのドラマから歌番組に変えた

 

…………こんな事をいうのはなんだが、胸元がエロい

そんな事を考えていたらフェイトがこちらにもたれかかって来る……覗き込む形になるので余計にエロい

 

「……そういえばさ、今日膝枕してもらったお返ししてないね」

 

「お返しって」

 

そんな物あるのか?

してくれるのなら、その、嬉しいけど……

 

「じゃあ、お返しに添い寝してあげるね」

 

「…………え」

 

いや、ちょっと待て

添い寝って……あれ一人用ベッド、ちょっと動けば当たるぞ

 

「む、はやては良くて私は駄目なの?」

 

「いや、そんな事はないけど」

 

それにはやてに関してもあの時は俺の意思じゃなくて……うん

 

「それにケントを床に寝かせるなんて出来ないから、枕は……私はケントの腕を貸してもらおうかな?」

 

「えっと……」

 

なにそれ

 

それにもうそろそろ寝るにもいい時間帯でもある、このまま黙っていたら押し切られる

 

「それに私も徹夜ばっかでお昼寝ぐらいじゃ眠くならないし……電気消して寝たいんだけど……いいかな?」

 

「あ、うん」

 

上目遣いは反則である

 

言われるがままに歯を磨き言われるがままにベッドに横たわる

 

……ヤバいヤバいと心で言っておきながら楽しみにしている自分がいる

 

フェイトが電気を消して隣に潜り込んで来る

正直に言えば真っ暗で何も見えない、慣れれば違うと思うけれど……

 

腕を使っているので自然と彼女を抱き寄せる様な体制になってしまう………ふとネリアが入れていたアレが頭をよぎる

 

………寝よう、このままでは冗談抜きでヤバい

 

特に会話もせずに目を閉じる

というか会話する余裕がなかっただけだと思う

皇帝特権での○太並の睡眠力を主張する。てか眠るのに技術って必要なのか?

それでもどんどん意識不明が遠のいていく……EXランクスキルの無駄遣い

 

「今日は、ありがとね」

 

彼女が何かを言う……上手く聞き取れない

皇帝特権による眠気は健在だ、振り払おうとしても言う事を聞かない

 

「寝ちゃったかな………今日の御礼、しなきゃね」

 

意識が遠のいていく

………何も聞こえない、もう、駄目

 

ただ、意識が消える瞬間に

 

何か柔らかい物が、唇に当たった感じがした

 


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