山は去って熱は下がったんですが今週中は外出禁止なのです
最高体温が39度になって病院行ったら鼻の中に細い綿棒みたいなの突っ込まれて鼻水取り出されて、さらにリトマス紙?みたいなのにつけて暫くしたら赤と青の綺麗な線が
先生曰く「なり始めはうっすらとしか反応しないんですがね~、ここまでくっきりと線が出たら体の中ウイルスだらけですよ、こりゃ~多分無茶苦茶しんどいと思いますよ」
いや、思いますよじゃなくてしんどいんです、ハイ!!
ま、先ほど言ったように熱は下がったんでもう何ともないんですがね
前書き使って書いたのがそれだけです
この世界に生きて来て、恐怖やら人間不信やらなんやらあったが、ここまで緊張した場面というのもあまりないのでなないかも思う
待ち合わせした時間まであと少し、腕に巻かれた時計を自分でも呆れるくらい何度も見てしまう
というか待ち合わせ時間の二時間前に来てしまうのもどうなのだ、待たせたらいけないという強迫観念は確かにあるのだが今更ながらそれは『異常』と分類されるのではないか
いやいや、この二時間で尾行していた護衛は全て追っ払ったし万が一の為の迎撃術式も作成できた
……迎撃術式はやり過ぎたか、もしもフェイトをナンパする人間でもいようものならミッド辺境地にあるスラム街のど真ん中に転送させるという術式なんだが……
フェイトを無事に誘えたその後、色々と自分でプランを練りどう動こうかなども考えたのだが……正直どうすればいいのか分からない
というか一度でも恋愛経験があればまた違ったのだろうが俺にはサッパリ、でもって調べてみようとしたのだがクサイのしか出てこない
なんだよ夕日が見えるベンチやらあのドラマ見過ぎたおばちゃんが考えそうなストーリー、絶対に破局させようとしてるだろ、コメント欄が『末長く爆発しろ』で埋めつくされてたぞ
そんな感じで今日を迎えたのだが何でも、フェイト自身が昨日泊まりで仕事をしていたらしくこうして待ち合わせ的な感じになってしまった
無理させてないよな、俺のせいで徹夜……とかってわけじゃないよな
余計な事してくれやがってとか面倒だとか思われてないよな、思ってないと誰か言ってくれよ
いちいちこんな思考に走ってしまう自分自身をどうしよもないチキン野郎だと再実感しながらも負の連鎖が止まる事なんてない
こんな時ポジティブに考えられる人間はどうかしてるのではないのか、頭のネジが逆に何本か外れているのではないか
いや、実際に外れていると思われるのは俺であってうわあああ
「お~い、ケント~」
「…………はぅっ」
思考の海から目覚める
目の前には至近距離で顔を覗き込んで来るフェイト……え、あ
「どうしたの?すごくうなされてる感じだったけど……」
「どうもない、どうもないよハハ~」
二時間前に来ておいて何してんだ俺
「うわ~、懐かしいな、ここ」
「ん、フェイトは来た事あるのか?」
「子供の時母さんやクロノ達と一緒にね、テレビで見た事しか無かったから嬉しかったな~」
入り口でチケットを提示し、園内へと入場する
ミッドでも有数の娯楽施設だけあり園内はかなり広い、入り口すぐにあるこの広場では耳が大きい猫(ネズミっぽいが違う)やその仲間達、詳しく言うならばリスっぽいハムスター兄弟やアヒルっぽい白鳥♂、さらには犬っぽい狼などがそろって観客と記念撮影をしている
あとこれは余談なのだがこのキャラクター達、異常なほどに著作権にはうるさいと評判でもあったりするがネコである、耳が大きいネコである、そこだけは忘れてはいけない、ネコである!!
あれからここに来るまで一緒にいるうちにだいぶ慣れ、思考もしっかりとしてきた
いかせん今が特別だと思うからいけないのだ、実際同居しているから二人きりという場面は何度もあったわけだし今回もその延長線だと思えば気が楽になる
いや、まぁそれでも緊張している事はしているのだが……何度手の平に『人』の字を書いて気づかれないように飲み込んだ事か……
あとこれも余談だが入り口で人がごった返している中、俺達を見つけた一人の係員(スーツ)が行列完全無視して俺達を中に入れてくれた、しかも全てのアトラクションのエクスプレスパス付きで
ネリアとこの遊園地とでどんな話があったのかは知らないが深く考えるのはよそう、フェイトももうすでに俺達との十年以上に渡る付き合いの中で気にしていなかったらしいし
「さ、取り敢えずどのアトラクションから行こっか、せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だしね」
「ん~、そうだな」
入り口で貰ったパンフレットを開ける
館内の地図、アトラクションの紹介、お土産屋さんなど様々、中にはオススメの記念撮影スポットなども載っている
エクスプレスパスがある為にどのアトラクションでも待ち時間は心配しなくて大丈夫そうだし、ここは近いところから順番や遠いところから順番などでもいいだろう
ま、一番近いところというのは……
「じゃああれ行こうよ」
目をキラキラさせながら指を指すアトラクション
その直後に『ゴー』という音が聞こえたと思うと乗客達の悲鳴
遊園地の定番、『ジェットコースター』である
ジェットコースター、俺の中の認識では『空戦魔導師では見慣れた景色』
実際シートベルトも安全装置だってあるジェットコースターは『魔力』という燃料が尽きると墜落……なんという飛行魔法などより安全かつ快適
それにいくらスピードを上げようがたかが知れている、上位魔導師の中には目にも見えない早さで動き回る人もいるのに目で追え、さらにはそこまで高くない場所からの急降下で怖がるなどどうにかしている
こっちの世界に来てから『危険』などと言われて乗っていなかったが全く心配ない、むしろフェイトもそんなに怖がらないのだろう
そんな事を思っていた時期が、俺にもありました
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」
『きゃあぁぁぁぁぁぁ!!』
俺の声と乗客達の声が狭い空間でこだまする
いや、無理だろ、おかしいだろ
なんで固定されてんの?
なんで早さ調節出来ないの?
なんで地面に向かってLet's flyingしちゃってんの?
当たり前だがあり得ない、先ほどの言葉を修正しよう
これは『対空戦魔導師に作られたアトラクションである』と
誰かが空は自由だと言った、馬鹿言え、空が自由だと感じるのは拘束されていないから
拘束されて振り回されるだけのこれでは自由なんてありゃしない
目が回る、自分の意思とは関係なく動く体
てか俺の騎乗スキルBはどうした!!
チラリと隣を見る、声を上げて楽しんでいる彼女の横顔
凄く、たくましいと思います
「ん~、久々に乗ったから興奮しちゃった、ケントは初めてだったんだよね?どうだった?」
「あ、うん、やっぱりいつも飛んでる感覚とはまた違うな」
ジェットコースターから降りてフェイトが大きく伸びをする
内心グロッキー状態になっている事など表に出さない、男がこれくらいでへばるなど情けない
逆にフェイトはかなり爽快だったらしい、顔はまだまだ明るく尻尾があれば千切れんばかりに振っていそうだ、いや、これは俺の希望的観測であって本当に喜んでいるかどうかは本人しかわからないわけなんだけれど
少し休憩したい気分でもあるのだがそんな気持ちもグッと堪える、おくびにも出さない
「というかバリアジャケット無しだとGってあれだけかかってるんだ……よく途中でバンザイとか出来たな」
「……え?」
俺の言葉に対して驚いた様子を見せるフェイト、え、何か問題があったか?
どこかで俺という人間は致命的なミスをおかしたとか……
「もしかして……ケントはこういうところ自体来るの初めて?」
「恥ずかしい話だけど」
というか遊園地自体が狙撃にもってこいの場所だからな
「え、え、大丈夫だった?
ご、ごめんね、怖かったりその」
「そこら辺は心配しなくていいよ、というか初めてと言っても知識だけなら分かるんだし」
先ほどのジェットコースターは死ぬかと思ったが絶対に表に出さない
「じゃ、じゃあどこがいいかな、ケントに合いそうな所ってえっと、えっと」
パンフレットを見ながら必死に考えてくれている彼女を見て思わず苦笑してしまう
それでもこのままでは今日一日彼女に気を使わせてしまう、そういうのは避けたい
どうしようか軽く悩む、俺としては怖いが怖くなかろうがフェイトといれたらそれでいいんだし何よりも楽しんでもらうのが一番だ
かといってここで「大丈夫」やら「心配ない」という先ほどの言葉をいくら言ってもずっと引きずってしまうだろうし……ま、ここは無難に一度この周辺を見て回る……とかか?
なんなら写真スポットだってあるだろうし売店やらここでしか食べられない物なんかも売っている筈だ、金は腐る程にあるんだし心配ない
それをフェイトに伝えようとして……
なんかいた
いや、『なんか』などという例え方は酷いだろう。正式には『知り合いがいた』
小さな子供の手を取り歩く一人の女性と、その前でもう一人の子供を肩車して歩く男性
確かに家族サービスぐらいしろとは言ったが何もこんな日じゃなくてもいい気がする、てか提督って結構暇なんじゃね?
向こうはこちらにまだ気づいていない様子、まぁ自分の言うところではないが容姿伝々で結構目立っているのは事実なのだ
フェイトも気づいていない、ならばここは上手く彼らと別の方向へ移動して鉢合わせしないというのが最優先
それが分かれば早速実行、モタモタしている暇はない
「と、取り敢えず園内見て回ろうぜ、食べ歩きとかしながら目に付いたアトラクション乗って行くとかさ」
「え、うん、ケントがそれでいいならそれでいいけど」
了承も得たのでフェイトの手を取って彼らと反対方向へ歩き出し、どこか入れるアトラクションを探す
……あった、アトラクションというか行列だが
アトラクション内容はどんなのかは知らないが大人やカップルが多く並んでいるという事は子供用の物ではないのだろう。そして恐らくだがフェイトは大概の物はいける
反対方向へ進んだからと行って直ぐに安全と言うわけでもなく少しでも後ろを振り向かれたら即アウトの距離なのだ、だったらこの行列の人混みに紛れて姿をくらました方がより安全
というより俺らは並ばなくていいんだからアトラクションの中に入れる、そっちの方がより安全
「じゃあアレ行ってみようよ、結構人いるから面白いんじゃないのか?」
「え、あ、うん、私は大丈夫だけど……ケントはいいの?」
「全然、問題なんかないって」
後ろを振り向いてフェイトを説得しようとしたのだが案外簡単だったようだ
と、いうより話しかける寸前は顔を赤くしてうつむいていたのだが俺がアトラクションを指示した瞬間にこっちを心配する顔になっているようにも見えたのだが……遊園地で怖いなんて物はさっき見たいな絶叫系以外思いつかないし、そもそもさっき乗ったジェットコースターがこの遊園地の中で一番大きそうだったのだ、あれを超えるのなどもう無いだろう
余裕余裕と正面を向けば入り口、受付にいたお姉さんは……何故か不気味な格好をしていた
少したじろいでしまったがチケットを取り出す為に持ち物を探る……というより結局ここは何なんだ?
確認する為に顔を上げてみる……あ~、なにこの廃墟、というよりビルとかホテルっぽいの、流石魔法世界スケールが違う
「あ~、うん、皇帝特権全開」
一つだけ言える事、俺ホラー系大嫌いです
マスコットキャラクターはにゃ○ちゅうを想像して下さい、決して他のキャラクターは想像しないで下さい、絶対に
あとこれも最後に、恐怖を消せる技術?
そんな物ありませんしあったとしてもケントは『知りません』