久々の投稿、遅れてすみません
理由としては……小説って楽しい
いや、たまたま『なろう』覗いてたら夢中になっちゃって、ランキング上位の人たちが書く小説は次元が違う……
最後まで読み終わり我に返ってこの有様、今度はキチンと頑張ります
『ん、久しぶり~、そっちから連絡くれるなんて天変地異の前触れか何かですか?それとも間違え電話の類だったり?』
「いや、私だよ」
誰もいないだだっ広い部屋、デスクがあり、電話があり、後ろには巨大なガラスと背景
コルテット本家にある当主室、兼社長室
電話越しに聞こえてくるのは自分にとっては吐き気がしそうなほど通った女の声
『あら、改めましてお久しぶりですね『当主様』、えらく暗いですけど何かありましたか~、前までは連絡も通信も一切くれるなとか言ってたくせに』
「言ったね」
『お見合いの話を出せばお兄様に近づくな~とか関わるな~とかも言ってましたよね~』
「言ったね」
『それを踏まえた上でどんなご要ですか~』
相手もこちらも双方にいい感情は抱いていないだろう、いや、抱いてないと断言出来る
ただ、それでも……
「貴方の力を貸してほしい、本家のピンチに力を使うのが『分家』の役目でしょ」
『大切なのは本家の血だけどね~、で~、今回の問題に関与する気はさらさらないよと言ってみる』
「なっ!?」
発せられた言葉に思わず声が裏返る
まだこちらの要件は話していない、ということは
「なら、もうそっちでは」
『うん、理解してるよ、ケント君とケント君が戦ってモノホンケント君が負けちゃったっていうのでしょ?』
あっさりした声、どんな方法で入手したのかは分からないが向こうはこっちの状況を知っている。ならなおさら
『でもさっき言ったよね、大切なのは血だって』
「っ、あれは偽物であって!!」
『いや、あれは正真正銘のモノホンの血が流れてるよ?ちゃんと確認したし』
「っ!?」
意味がわからない
『私にとってはどっちでもいいんだよ、それに私に貴方の言うことを理解して従う気もさらさらないし、所詮は培養器で作られた模造品だもんね~』
「…………。」
『それに私もあんな化け物性能の人と戦って勝てるなんて思ってないよ、せいぜい足止め程度だって、無理な物は無理なんだよ』
「……でも、貴方以外は」
『うんうん、いないよね~、私も分かるよ、でも私も怠いし~、めんどいし~』
「……もういい!!」
バンッ、という音とともに受話器を押し付ける
力が入り過ぎて壊れてしまったが関係ない……私としては賭けに負けたのだから
「糞っ!!」
頭を掻き毟る、唯一兄と戦える人間、それがあの様
一体、奴は何がしたいのだろうか
ゴウッ!!
そんな音が聞こえたと同時に、襲いかかってきていた黒は全て焼き消される
空間自体が変わるのを感じる、そこから一気に離脱する
彼の表情は変わらない、部屋が炎に包まれていく中で、彼の周りに鋼の柱が乱立し逃げ場を消す
壁を破壊、脱出、瞬間
「轟天爆砕!!」
衝撃
爆発点を中心に巻き上がる砂嵐、襲う衝撃波
その衝撃だけで道路が崩壊、軽い地震が起こったのではないか?
ただそれでも、油断はしない
自分を中心に固まる騎士達、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン、アギト
大切な、私の家族
「ヴィータ、どうだ?」
「わかんねぇよ、ただ手応えはあった」
アイゼンが元の大きさに戻る、砂埃はまだ俟っている
結界の中だったから良いものの実物の家でやられたら失神物である
「あ~、うん、流石はヴォルケンズ、咄嗟の連携にしては凄い」
「ふむ、無傷か」
関心した声を上げるのはシグナム、瓦礫を退かして現れた彼は砂によって汚れた事を除けば全くの無傷であった
「てかヴォルケンズ大集合って……こりゃ骨が折れそうだ」
「そうだな、私達はお前の骨を全て折ってでも助け出すと決めている」
「うえっ」
思わず声を上げる
結界の中でヴォルケンズ勢ぞろい、普通の犯罪者集団とかならその時点で詰、いくら足掻こうが関係なく潰される
そんな状況であっても彼の顔は……涼しそうだった
「まぁ色々とこっちからも聞きたい事はあるけどな、途中で介入してこなかった理由とか俺をそこまでして助けたいと思う理由とか、何だかんだ言って俺ってそんなに特別な存在だったか?」
「ふむ、それがただ記憶だけでしか知らない限界というところだ」
「ん~、なんか難しい」
シグナムの言葉をそう言って割り切る
言ってしまえば彼が持っている守護騎士達に関する記憶など取り込んだケントの記憶でしかない、自分が直接的に関係していたわけではない
「で、俺のここでの目的は終わったわけなんだが……帰っていい?」
「ぶっ潰すぞテメェ」
ドスの聞いた声、ヴィータが今にも掴みかかりそうな気迫で魔力をぶつける
「あなたは、何がしたいん?」
透き通るような声
声の主は夜天の主
それは素直な疑問
ケントを取り込み
自分を利用しようとし
皆を悲しませてまでしたいこと
それは何なのか
「……そ~だな、強いていうなら世界平和」
あっさりと口を開いて放ったのは、この世全ての人類の悲願であろう
望んでいるのに叶えられない、そんな理想
「みんなを平等に、公平に、人は人の上に人を作らず、その言葉通りの世界、誰かが特別なわけでもない、誰かだけが笑う事のない、悲しむ事がない、生まれつき、人として生まれた時点で平等、そんな世界を俺は作りたい」
「平等?」
それは素晴らしいことだ
今の話を聞く限りでは、そこに住む人間の全てが何も心配しなくてもいい理想郷
「俺はさ、ずっと疑問を抱いてた……生まれた時から金持ち貧乏が決まってる、平和な国と争いの国」
「言葉の価値だって違う、パンの欠片を家族全員で分け合った後の笑顔と駄々をこねて親に買ってもらった宝石を見てもれた笑顔、同じ『幸せ』なのにこうも違う、少なくとも後者にパンの欠片をやっても悪態をつくだけだろうな」
軽くこちらに笑って来る
……違和感
「俺はさ、許せないんだよな、上目っ面だけの平等なんて、誰かが笑っている中で泣いている人間、悲しんでいる中で喜んでいる人間、こんなのは腐ってるんだよ、生物としてさ」
だから……と、彼は拳を握る
「俺が変えるんだよ、この力でさ、世界を……それが、願いだから」
目を閉じる、それか彼の願い
理想郷
それを、彼は本気で作ろうとしている
だけど……それは
「なるほど、話はわかった」
違和感を探っている中でシグナムが口を開く
「なら先程お前は『言葉の価値が違う』と言ったな、なら聞くが」
「お前の中での『平和』とはなんだ?」
ピクリと、彼の身体が動く
「少なくとも私達はいくつもの世界を回ってきた、何百年もかけてな……お前は全ての人間を平等にすると言ったな?」
「そうだが?」
「人は無限の欲望の塊、喜びを与えるとそれ以上の喜びを欲する、楽しみを与えるとそれ以上の楽しみを欲する。その中で平等など出来ると思うか?
平等の世界の中で人は思うだろう、『もっと欲しい』と、誰かと同じ、全員同じ、これを納得出来る人間ばかりではない、スカリエッティの事ではないが、お前の世界に人が作り出す『無限の欲望』は収まりきらん、もし、それでも平等を目指すとするならば……恐らく、お前が目指す世界の形というのは……」
人の欲望は無限
最初は与えられた物だけでいいかもしれない
みんな一緒でいいかもしれない
ただ、最初だけだ
与えられた物以上を欲する
それが人間だ、平等な世界などいつかは破綻する
なら人にとって平等とは何を指す?
どこぞの漫画では人類全員に幻術をかけてやら何やら言っていた気もするがそんな虚無を望んでいるわけではない
現実の中での平等
「オカルトとか無しにしてさ、この世界に生きる全ての生命の果て、底なしの幸福の真逆の感情、生物としての存在意義」
そして彼は、会話の中で一言も『幸せにする』などの言葉は使っていない、ただ平等と言っただけだ
「人って凄いよな、最初は生きるために戦ってたのに、何時の間にか権力争いになり、土地争いになり、はたまた金だよ……どんな生物なんだか……」
「幸福には底がない、だが絶望は心が壊れればみんな同じ、貧富の差、権力の差、殺し合えば平等だ、自らが生きるために戦って平等な『死』を迎える。誰かが得をするのではない、みんな平等で、みんな絶望する。」
「俺が起こすのは戦争だ」
「別に悪の組織やら世界征服やらじゃない、そもそも悪か善かなんて作者が決める事だ、俺にとってはこれが善であり平和、今の世界が悪であり腐敗」
「それこそが本来ある姿、生物としての姿、不平等なんて何もない、みんな泣いてみんな一人、誰も得なんてしない」
「いつしかどうしてこんな事になっているのか分からなくなる、これが当たり前だと感じ始める」
淡々と語る理想、それは狂気
絶望、心が壊れれば平等、確かにそうだ
死、みな平等、確かにそうだ
その世界には救いはない、ただそんな世界で人はそれが当たり前だと感じ始める
その世界が
「俺の平和だよ」