リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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プールのご予約

 

「ふっ、はっ!!」

 

「ほう……随分と太刀筋がよくなったのぅ………」

 

Stヒルデ魔法学院の訓練場でいつも通り担任と手合わせする

やはり……強い、まずスタミナが違うな、こっちは汗水流して剣を振るっているのに向こうは涼しい顔してそれを受け流す……いや、楽しんでるな……こいつ………

 

「っ、はぁ!!」

 

「むっ!?くっ!!」

 

皇帝特権を使ってのいつも通りの剣撃……それまでは涼しい顔をしていた担任の顔が一気に険しくなる

いける……押してる!!

 

「うぉ!!はぁぁぁぁ!!」

 

両手で力強く剣を横薙ぎに振るう

魔力は込めていないが渾身の一撃……獲った!!

 

「ほぅ、なかなかのものだ……だがっ!!」

 

その声とともに『ガンッ』と硬い音をたてて動かなくなるデュランダル……おいおい、マジかよ………

 

「腕一本で止めるとか………」

 

「惜しかったの……小僧!!」

 

俺が全身の力を込めて放った一撃は担任の『腕一本』で止められていた

いや、確かにお前の体格は征服王その人となんら変わりませんよ?

でも……ねぇ?腕一本で剣を止めるとか……漫画かよ………

 

当然、一度大きくチカラを込めた剣を戻す時に絶対スキは出来るわけで……

 

「うおぉら!!」

 

「ガハッ!!」

 

非殺傷にしてある担任の剣が俺を数十メートル先に吹っ飛ばす

ちょっ!?この先には!!

 

「え?きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「カリム退いてぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ガッハッハ、これの事をなんと言うのだったかな?

………ラッキースケベか?」

 

「戯言がすぎるぞ征服王……わざと狙いましたよね………」

 

「そんな事はないぞ、ただちょっと手元が狂ってしまっただけであって……」

 

おい、目を反らしながら言っても全く信用ないぞ

そんな俺の頬には真っ赤な手形が……うう、まだヒリヒリする………

 

「ダハハ!!まあいいじゃないか!!

それでどうじゃった?大きかったか?」

 

「全く反省してませんよね?」

 

うう……ケントです

季節は夏休み真っ盛り、外では蝉の大合唱

 

来る時に爺に渡されたスポーツ飲料を飲みながらカリムへの謝罪を考える………流石にダメだろう……

事故とはいえ女の子の胸を鷲掴みにしてしまうなんて…………うう………

 

「それにしてもどうしたのだ?急に動きが良くなった気がするのだが」

 

「どうしてでしょうか……普通はなまるんですが……」

 

このところ担任と模擬戦はしていない、今日も久しぶりに手合わせした

 

理由は一学期の最後にあったテスト……その勉強の為に必死だったのだ

確かに……初等科一年生の国語やら算数ならは前世の記憶があるから簡単だ

しかしだ、この世界に来てから学んだ『魔法学』についてはどうしよもない……それに殆どの奴が入学する前から予習をしているのだ……それに比べ俺はつい最近『魔法』と言うものに触れたばかり……油断は出来ない

 

皇帝特権を使えばいい……なんて思うと思うがやはり『自分じゃない自分』が出来てしまうのは嫌だ、なんかこう……違和感が……

 

なのでテストまで家庭教師がつきっきりで勉強、結果どうにか平均よりも大分上を取る事が出来た

あとよくある『実技』についてはまだ先だ、確か……二学期の中間ぐらいにあったんじゃないのか?

 

さて、話を戻そう

 

今説明した様に俺はここ最近魔法の練習は殆どしていなかった……なのに剣の腕が上達しているのだ……何故?

 

う~ん、思い当たるとすれば前世でやっていた『なのはGOD』の夢を見たぐらいか?

 

内容は……俺がもし介入したら……あり得ないんだけどな、コルテットの俺が管理外の、それにPT事件、闇の書事件と二つもの事件が起きた星に行くなんて……保留だ保留、原作介入が出来ないせいでついに妄想をしだしたか……

 

「ふむ、まあ剣の腕が上達するのはよい事だ、わしを超える日もそう遠くもないかもしれんな」

 

「はぁ、努力します」

 

ドーピングと同じなんだけどな……俺の腕じゃないわけだし…………

ん?

 

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

「む?………中等科三年のシャッハ生徒か、どうしたのだ?」

 

「ケントさんを少しお借りしてもよろしいでしょうか?カリムが………」

 

「ほぅ……行ってやれケント生徒!!」

 

バンッと背中を叩く担任

てか痛えよ!!背中むっちゃヒリヒリすんだけど!?

てか……………

 

「カリムが?」

 

「はい」

 

え?八つ裂きにされるビジョンしか思い浮かばないんだけど………

そりゃあ……な……好きでもない人間にあんな事されたんだしな……どうしよう……

え、大きさ?柔らかかったか?

そんなもん知らねぇよ!!目が回って気がついたらこのざまだよ!!

 

「では、行きましょう」

 

「う、わかりました………」

 

非があるのはこっちだけど……誠心誠意謝れば許してくれる………はず

 

 

 

 

 

 

 

「プール?」

 

「はい、貸していただけたらと思いまして………」

 

夏休み中で誰もいない中等科教室でカリムが顔を赤くしながら尋ねてくる

あ、シャッハはいるよ

教室に入った瞬間に大声で謝まったのだが……カリムは顔を伏せたままブツブツ言ってるだけだった………

てかシャッハさん、なにニヤニヤしてるんですか?

不気味ですよ貴方

まあ、話を戻そう、カリムが俺に会う為にわざわざ学校に来た理由が『プールを貸して欲しい』というお願い

聖王教会では孤児や捨て子などを保護して育てていて、その中にはまだ幼稚園ぐらいの子供や小学生ぐらいの子まで様々

そんでもって夏に泳げる為に幼児プールと何処にでもある25メートルプールがあるらしいのだが……どうやら今年の春に壊れてしまったらしい

そんでもってカリムはそれをどうにかしようと考えたのだと、まあ彼女は優しいから……どうにかして力になりたいと思ったのだろう………

だがいくら将来が約束されているカリムと言ってもまだ子供、更には貴重な古代ベルカのレアスキルのせいでろくに外に出れないのだ、どうにか出来る手段などない……

 

そんでもって彼女が出した結論が……護衛であり監視対象の俺の家にあるプールを借りる事

彼女自身本当はしたくなかったのだがこれしか方法がない、勿論嫌なら断ってもいいらしいのだが…………う~ん………

 

(プールはあるが……一般開放エリア以外だと……難しいか?)

 

ぶっちゃけプールはある、特大のが

ただ………それは一般開放エリアじゃない、コルテットの完全なる私有地

俺でも警備システムを知らないのだ、それぐらいコルテットには敵が多い

外部の信用出来ない人間を、私有地に入れてもいいのかどうか………

それなら一般開放エリアに行けばいいと思うが……あいにく聖王教会とコルテットの一般開放エリアの距離はむちゃくちゃ遠い、それに一般の客もお金を払って来てるし……夏だから人も多いし……う~ん………

 

「ちょっと爺に相談してみるから、待ってて」

 

「あ、はい」

 

いまだに顔を赤くしたままカリムが小さく頷く

やべ、むっちゃ可愛いんだが………

 

まあそれは置いといて……携帯端末から爺に通信をかける

 

『どうしましたか坊っちゃま、何か問題でも?

迎えの車は正門前に止まっておりますが……』

 

「ああ爺、そうじゃなくて……」

 

 

 

 

〜事情説明中〜

 

 

 

 

 

 

『プールを……ですか……難しいですね、いくら聖王教会の方達とはいえ信用は出来ませぬ』

 

「だよな……だけどそこをなんとか出来ないか?」

 

『いくらケント様のお願いでもそれがケント様に危険が及ぶようでしたら爺も頷けませぬ、子供達には申し訳ありませんがここはお引き取りもらってもよろしいでしょうか?』

 

「うっ………」

 

まあ大体わかってはいたさ……

だけどな~、それは俺の良心が痛むというか……しょうがないけど………

 

小さくため息をついてカリムの方に振り向くのだが………カリムが『上目遣い』&『涙目』で何かを訴えてくる……何この可愛い生き物?

お持ち帰りって有りですか?

 

「お胸………」

 

「爺!!これは命令だ!!今すぐコルテット私有地内のプールの整備!!

急げ!!」

 

『ケ、ケント様!?』

 

爺が何かを言ってくるが無視だ!!

これぐらいでさっきの事がチャラになるんだったらむしろ安い!!

通信をブッチしてカリムの方を再度振り向く、うわぁ~、いい笑顔

 

 

「ありがとうございました、ではまた、連絡して下さいな」

 

「えっと……はい……」

 

 

 

女って怖ぇ………

 


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