リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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泳げない

 

「ああ……眼福………」

 

プールサイドで体育座りをしながらつぶやいてみる

季節は前回と変わらず夏まっさかり、蝉が相変わらずうるさいこの時期

 

目の前にはキャッキャッキャキャッと無邪気に遊んでいる子供達……とカリム

 

カリムからのあの相談があって三日、渋る爺になんとか頼み込んでプールの開放を許可してもらった

なんでもこのプール、コルテット家の長男、つまり俺の為に作られたプールだというのに俺も一回も使ったことがない………

そんな事しても金の無駄だと爺をなんとか説得させた

 

そっからはプールの整備やらなんやらで三日、数少ない連絡先であるカリムに整備がおわった事を伝えてお昼頃、教会の子供達を連れたバスがやってきた

 

あ、ちなみに警備の方は相変わらず

今俺もこうしてプールサイドに座っているが何人の人間に見られているかなんで数えたくない

今日一日監視されるんだろうな……いつもの事だけど…………

 

「泳がないのですか?ケントさん」

 

「あ、えっと………もう少ししてから」

 

カリムが問いかけて来たので顔を伏せながら返答する

誰だ!!カリムに白のビキニ着せたのは!?

水に濡れてエロいですカリムさん!?

貴方中一でしょ!?色気ヤバイんですが!!

 

水着の説明をするとカリムが白のビキニ、シスターシャッハが黒のセパレート水着

シャッハさんはいいとして……カリムさん……貴方自分の体型理解してます?

この人天然だから自覚ないんだろうな……ほら、教会暮らしの中等科の方々が鼻の下伸ばしてますよ

 

「気分が悪いんですか?それとも………」

 

「いえ、大丈夫です。すぐ行きます」

 

そう言うとカリムは「そうですか」と言ってチラチラとこちらを見ながらシスターシャッハの所へ歩いて行く

 

今このプールに来ているのは……だいたい五十人ぐらいか?

年齢はまだ小学生にもなっていない子から中等科の方々まで、流石に高等科の人になると騎士になる為に必死なのだろう

 

そしてここ、コルテット私有地のプールは……デカイ

超巨大ウォータースライダーから流れるプール、室内プールや風呂?の様な場所まで……

一般開放したらたちまち人が来るだろうな、使わないんだったら有効活用したらいいのに………

 

あ、あと俺の水着は下が黒の短パンで上にはよくわからんマークが入ったTシャツの様な水着を着ている

最初は下だけにしようと思っていたのだが……なんだか凄く抵抗が………

二次創作で今流行りの『男の娘』という事があって……なんか……上をさらけ出すのが何故か恥ずかしい

 

「喉……乾いたな……」

 

「スポーツ飲料でございます!!」

 

「どこから出てきた爺」

 

座っていても流石に暑いので何となくつぶやいて見たら爺登場

今コンクリートの地面が開かなかったか?ずっと下で待機してたのか!?

 

「この鮫島!!どこからでもケント様を見守っています!!」

 

「このストーカー野郎が」

 

そしてこの爺、この頃知ったのだが『鮫島』というらしい

試しに兄弟がいるかどうか聞いて見たら弟がいると……もう連絡は取り合っていないが遠い世界で爺をしていると…………何という裏設定………

 

「まあ、ありがと……」

 

「はっ!!」

 

そう返事をして忍者みたいに地面に消える爺

怖いよコルテット………

 

スポーツ飲料を飲みながらまたボーと目の前の風景を見る

俺が泳がない理由?

う~……そうだな、泳げないとかじゃないんだ、前世でも水泳は得意な方だったし

はっきり言うと……目の前の子供達の為

 

このプールではコルテット専属のSPやら何やらが少し離れた場所から俺を観察している

学校とは違うのだ、もし同じプールで泳いでいた子供が不注意で俺を殴ってしまったり蹴ってしまったら……考えたくもない

 

それはカリムだって同じ、声をかけてくれるのは嬉しいのだがもし何か周りで癇の触る事をしてしまうと……どうなるかわからない

カリムは天然だから自覚はないんだろうけど

 

てかカリムって俺の『監視と護衛』っていう件覚えてるのかな?

シャッハは間違いなく覚えてるだろうけど………どうなんだろうか?

 

まあその前にカリムが近づいて来たら俺の理性を抑えるのが大変だからって言うのが一番の理由

俺だって女の子を水着姿を見て何も思わない程枯れてないんです

どこぞの『世界で始めての男性操縦者』ほど人間出来てません、小物なのでその中学生とは思えぬ胸を見せて来るのやめてくれません?男なので下を抑えるので必死です

水着でなったら……恥ずかしいことこの上ないし……

 

「さて、どうするか………」

 

だがいくらプールで泳げないと言っても一日中ただ座っとく……というのもな~

 

「風呂でも行くか……」

 

昼間っから風呂に行く子供はいないだろ

みんなほぼ貸し切りのプールに夢中だし

 

確か屋内にあったよな、水着で入れる風呂

 

……行くか

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

「ん?」

 

立って歩こうとすると三人ぐらいの幼稚園児が………この子達は俺の事知らないからこうやって声かけてくれるんだろうな……

あっ、やべ、涙が………

 

「これね、おじさんがお兄ちゃんに渡してくれって」

 

「ん?……ぬいぐるみ?」

 

手渡されたのはどこにでもある様な熊のぬいぐるみ

………ん?

 

「えっと……どうして?」

 

「ここに来る前どっかのおっちゃんに頼まれたんだ俺達!!

お兄ちゃんには昔お世話になったからお礼に……って」

 

色黒の元気そうな男の子が説明してくれる

昔お世話になった?

おっちゃん?

やべ、嫌な予感しかしねぇんだけど……

 

あとなんか……俺が持った途端『カチカチ」とか鳴り出したんだけど……

 

「お離れ下さいケント様!!」

 

突如現れた爺がぬいぐるみを思いっきり弾く

そしてそこからどこからともなく銃弾の嵐………やっぱり……

 

「爆弾?それに結界付き」

 

「お逃げ下さい!!」

 

爺が俺に逃げる様にいってくるが、そんな事をしている場合じゃない!!

確かに俺は逃げられるかもしれないが状況を飲み込めていない子供がいる!!巻き込まれたら死ぬぞ!!

 

「デュランダル!!」

 

「ヴィンデルシャフト!!」

 

俺とシャッハがデバイスを展開して躍り出る

バリアジャケットを展開している暇は無い!!

一刻も早く、あれを破壊する!!

 

「砕けろぉぉぉぉ!!」

 

俺とシャッハの渾身の一撃が爆弾に当たる……ちょっ、ビクともしないとか……

確かに魔力を貯める時間もなかったとはいえ……それはないって………

 

「ケント様!!」

 

爺が俺を助けるために走って来る

あー、これ………死んだわ

せめて、シスターシャッハだけでも……

 

「グォッウ!!」

 

「え?うわっと!?」

 

「っ!?防御魔法を!!」

 

刹那、目の前を緑色の犬が走り去る

爆弾は……犬が咥えた

何がなんだかわからんが!!とにかく防御魔法!!

 

 

爆音がなる

 

瞬時に展開した防御魔法によって俺達と子供は無事

てかとんでもない爆発……さっきまでの至近距離では防ぎ様がなかったな………

 

「はぁ、今日は査察官試験に向けて一日勉強するのではなかったのですか?」

 

「いや~、やっぱり退屈でね

やっぱり僕はこういう女の子が沢山いる所の方がいいよ」

 

頭を掻きながら現れる美少年

その隣にはさっきと同じ緑の犬………

 

 

「ヴァロッサ・アコース?」

 

タイミング良すぎじゃねーか?

 


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