「あっ、えっと、八神はやてと言います」
「あ、うん、よろしく」
少しまだ慌てたままお辞儀をしてきたのでこちらも返す
クロノも苦笑い……と言った感じだろうか、彼女がなぜここにいるのかも知りたいのだが……それよりも、だ………
一言、たった一つだけ言わせてもらうと……可愛いのだ……
確かに、カリム達を通して原作キャラが皆可愛いと言う事はわかっていたつもりだ
だが、予想以上、相手は九歳なので『欲情』などは決してしないのだが……可愛いものは可愛い
思わず見入ってしまう、カリムとはまた少し違う『活発』と言ったイメージ………
「あの、何か顔についてますか?」
「え、いや、ケント・コルテットだ、よろしく」
俺が何も言わないのを不思議に思ったのだろう、はやてが怪訝そうに声をかけてくる
少しボーとしすぎたか?
「まあすわって座って、立ったままじゃしんどいだろ?」
「ん、ああ」
ロッサが俺の椅子を引いてくれたのでそれに腰を下ろす
目の前の菓子に手を伸ばす、うん、うまい
「はやてはこの前僕達が担当した事件に少し関わっていてね、その関係で聖王教会に来てるわけだ」
「と、なると事件には古代ベルカに関わっていたのか?物騒な話だな」
「物騒って……」
実際管理外世界で古代ベルカ関係の事件だからな、大昔の技術者のくせに他世界に迷惑かけすぎだ
「どうせなら彼女もってね、人数が多いに越した事はないだろ?」
まあ、普通はそうだな
せっかくのお茶会、人数が多いに越した事はない
ただ、正面から見れないのは事実、今頃俺の顔は真っ赤だろう
それにしても、守護騎士はいないのか……となると本局か?
と言うかはやて……何故か『初対面』と言った感じがしないのは気のせいなのだろうか……どこかで会った気がするのだが……いやない、管理外世界で一人だった彼女とコルテットの俺が会うなんて事ない、うん、多分
「ケントさんは聖王教会は初めてなのでしたね、どうでしたか?」
「普通に綺麗だと思うよ、また機会があったら礼拝堂とかも行って見たい」
シスターシャッハが話しかけてくる
彼女は三年前にStヒルデ魔法学園中等科を卒業、今の彼女はカリムの専属シスター、並びに教会騎士として活躍中している
彼女とはいつも学校で会っていた為それからは会う回数が激減、こうして話すのも久しぶりだったりする
ちなみにランクは陸戦AA、Stsでは確か陸戦AAAでシグナムと互角だった筈………
「後で行ってみますか?案内するけど……」
「道……わかる?」
「……………………。」
カリムが提案してくるが……あなた、ここに住んでるんでしょ?
なんで毎日行ってる礼拝堂がわからないの?
カリムがこの三年間で変わった事と言えば……羞恥心が芽生えて来たと言う事か……
恥ずかしい事をすると顔を赤くするしあれから毎年行っているコルテットでのプール開きでは普通のビキニを着る様になった
まあ、それでもエロい事には変わりないのだが……
それでも天然は相変わらず、中等科三年の最高学年になってもまだ学校の構造を把握していない始末、俺でも殆ど把握しているのに……今では俺がカリムに道を教える事は別段珍しい事ではない、中等科男子からの目線は半端ないのだが三年もあれば慣れる、慣れなければやっていけない
ん?
「なんかついてますか?」
「え?いや~、可愛いな~て思って」
今度ははやてがほわ~と俺の事を見ていたので聞いてみた
可愛い……ね、最近メイド達がそれで物凄くうるさい、なにかあるごとに「可愛い~」とか叫びまくってるし……俺は男だ
なんか「犬ではない、狼だ」的な感じになったな、はやてがいるってことはザフィーラもどっかにいんだろ?
一度でいいからモフモフしてぇ………
「えっと、ケント君、でいいんか?
クロノ君と同じくらい強いってホンマなん?
見たところ私達と同い年ぐらいに見えるけど」
「ん?クロノの方が強いぞ、それと八神さん、でいいのか?
貴方だって相当な魔力持ってそうですけど」
「わかるのか?」
「そりゃ……なぁ、上手く扱えてない気がするけど」
殆ど原作知識だがやはり未来のSS魔力
今の時点でもSだった筈だが……当然、魔法を使いこなしているわけじゃない
まぁ、漏れてるってわけだ、ある程度魔力持ってる奴だったら感じられる
目の前の紅茶に目を落とす、見た感じストレートティーか?
俺的にはミルクティーの方が好きなのだが……あとレモンも
子供舌?はっ、俺は子供だ
ん、それにしても目の前のはやて、純粋だな
何故かまだ『たぬき』の面影をほとんど感じさせない………A'sからStsの間に何があった………
はぁ………今は別にそんな事どうでもいいな、原作キャラに関わる……なんてのはすこし前の俺だったら嬉しくて壁に頭を打ち付けるとかしてそのうれしさを表現する様な奴だったが……今の俺にとってはどうでもいい
原作キャラも信用してない
と、その時だ
爆発音が響く
「えっ!?なんなん!?」
「これは……正面玄関の方かな」
「テロか?」
「……………」
クロノとロッサは立ち上がり迎撃体制へ、シャッハはカリムを守る様に、はやては何が起きたのかわからずオロオロしてる
………狙いは俺か?
だがどうしてここで、教会騎士だってコルテット専属のSPもウジャウジャいるこの教会で仕掛けて来てもデメリットしかないはずだが………
まあすぐに捕まるだろ、ほら、もう音やんだし
そして開かれるドア、そこにいたのは教会の騎士と思わせる人物数人とコルテットのSP数十人、そして………
ボロボロになった局員やいかにも『一般人』と思わしき人びと、よく見てみればほんとうに若い人物はいない、皆ある程度年をとった人ばかりだ
そして、そいつらの視線は俺を見ていない……成る程………
「何故……何故闇の書の主が生きている……」
こいつらの目線は皆はやて、やはり情報は隠し切れてなかった……と言うわけか
「俺の親父は前回の事件後で闇の書に殺された、俺達家族が今までどれ程の苦労をしてきたのか……わかっているのか」
「俺の人生は闇の書に狂わされた……リンカーコアが再生しねぇ………ふざけんな!!俺の人生を返しやがれ!!」
原作では闇の書の闇を破壊してハッピーエンド……の様になってるが……そんなことはまずありえない
今回の事件で死人が出ていないが……そんなものは関係ない
なのはやフェイトは若かったからよかった、だがみんながみんなリンカーコアが再生するとは限らない
襲われた局員は皆大人、もちろん子供程の回復力は持っていない
考えてみてほしい、今まで管理局の武装隊として人生を費やしてきた筈なのに、それが全て水の泡になったのだ
そしてその張本人が目の前にいる、更に局は適切なさばきを下さなかった……怒りが今の主に向くのは当然の事
それに未だに入院している魔導師もいると聞く……残された家族が受けないといけない経済的苦しみはどれ程のものか……
「殺す……殺っガホッ!!」
はやてに掴みかかろうとした男をSPの一人が乱暴に止める
ここにいる大体の人数は十人ってとこか?
大方はやてがここに来てる情報を掴んで襲撃しにきたのだろう、だが俺が来ていることは知らなかったな
はぁ……今目の前にいる女の子が背負うには重すぎる現実だろ
……………いつも通りやるか……
「爺を、よんでくれ」
「お呼びでございますか!!」
……………お前、今日は留守番してるはずじゃねーのか?
なんで天井から出てくんだ
「はぁ、まあいい、闇の書…だったか?
それで被害を受けた全ての人間と家族を洗いざらい調べ上げろ」
「出来ますが……なにを?」
「経済的に苦しい家には一生分の慰謝料を、入院してる奴にはコルテットの最先端医療を全額無料で、その他については……適当に対応してやってくれ」
「了解しました!!」
すぐに出て行く爺
はぁ、じゃあまずはこいつらの相手だな
「闇の書……だったか?
それが起こした事件についての賠償金だ………一人辺り……これぐらいでいいか?」
「ふざけんな!!俺らがして欲しいのは金なんかじゃ………っ!!!!」
威勢良く怒鳴って来たが俺が差し出した小切手の金額を見て目を見開く男達
その手はワナワナと震えている……結局は金か、闇の書に対する憎しみって言うのも対したことねぇな………まあ、それが人間か
「それもってこっから消えろ、二度と彼女を目の敵にするな」
「あ、あ、あ」
小切手に釘付けになっている男達をSPに指示して外に運ばせる
後ろではポカン……としているカリム達
さて、お茶会を続けましょうか