「高町なのは……ですか?」
「ああ、コルテットの病院に運ばれて来ているはずだ」
通信機の向こうで爺が問いかける
やはり……知らないか、まぁいい、調べさせたら直ぐに出る
「その者がどうか?」
「………はやてに泣き付かれてな、コルテットの最高技術でお迎えしてやれ、それで管理局に対しても恩を作れるからな」
「了解しました……その件は私共が全力を尽くして事に当たりますので……」
「……助かる」
通信機を切る
目の前には俺の胸に顔を埋めるはやて………ったく、美人が台無しじゃねーか………
「……行くか?」
「うん………」
周りの人間に指示を出す
指揮を上げる為に……行きますか……
あの事件から早二年
俺や原作キャラ達は十一歳になり、カリムはStヒルデ魔法学院を卒業後、今では立派な教会騎士に、クロノは将来を提督と期待される管理局のエリートとなった
当然、俺の周りもこの二年で変わってくる
まずは俺の立場……『世界を塗り替える大魔法』と『全ての物を粉砕する特典』が管理局から直々に歩くロストロギア認定された
『世界を塗り替える大魔法』についてはもう使えないのだが……もう一つについては闇の書さえも可愛く見えてしまうほどのチートぶり
簡単だ、ユーリ戦では『ユーリ本体』を破壊しない様に加減していたのだが……全力で使った場合とんでもない事になる
確かに『触れた物しか』破壊出来ないのは厄介だがそんな物『空間』ごと破壊してしまえばどうにでもなる
更に空間を破壊すると言う事は破壊した部分を『無』の状態にしてしまう。
まあ、そうは言っても『空間』、かなりの力を出さない限りは完全破壊などにはならないのだが……
だが、空間を『無』にされた事を当然『世界』が黙って見ているはずがない………
『無』の部分はその場にあった空間に再び侵食され……当然の如く元に戻る……
では……その一瞬の間に『無』の空間内に何かがあった場合どうなるのか?
『無』から再び世界が作られるのは約二秒のタイムラグが発生する、その間に人形を『無』に置いて見たのだが……消えた
そう、完全に、跡形もなく、魔力痕跡さえも見つからずに消えた
コルテットと管理局は『無』の空間は一種の『虚数空間』だと考えているのだが……正直なところわからない
ただ言える事は……人間には一生理解出来ないだろう………
そんでもって、俺は歩くロストロギア認定、いくらコルテットの力があるといえど監視は必須
稀少過ぎるレアスキルの為に誘拐の危険度も大幅にアップ、前と比べれば比較にならないほどのSPが同伴している
そして、みんなの記憶
GODでは皆、タイムパラドックスを防ぐ為に『時間移動があった』という部分だけに蓋をした筈なのだ……
つまり、時間移動をしていない俺は皆の記憶に残っている
はやてに聞いて見ても『助けてくれてありがとう』と返って来ただけだ、これは……どうでもいいか……
次に学校、こっちはもっと酷くなった
『稀少レアスキル』を持ち、魔力は今の時点でAAA………剣の才能に溢れ家は名家……周りから見れば絵に描いた様な人間なんだろう
そのせいで近寄ってくる人間は丸っ切りいなくなった、そして………
担任が、死んだ……
理由はわかっていない、だが、闘って死んだと言う事はわかっている
何故現役を退いた彼が闘い、エースである彼が負けたのかはわからない
ミッドの森で起こった大地震、原因調査の為に局の人間が出向いた頃には息を引き取っていた……体は血に濡れ、森には幾つものクレーターがあったという
犯人は不明、どれだけの実力の持ち主なのか……狙われた理由はなんなのか………
ただそのせいで、俺の学校での『拠り所』という物は無くなってしまった
生徒も教師も、俺を『コルテット』としか見ていない
俺に近づいてくる大人も、ガキ……全て金目当て……虫酸が走る……
そんな生活が二年、雪の降る冬のこの日……
学校が終わり、家に車で帰る所を目の前に人が現れた
見ると見慣れたバリアジャケット、可愛い筈のその顔は涙でグシャグシャになりはっきり言ってだらしない
SP達は直ぐに彼女を取り押さえようとしたが彼女は俺に懇願する様に頼んで来た
曰く、『親友を救ってくれ』と………
………ここまでされて無視するほど俺も非道じゃない
見れば彼女、この雪の中なりふり構わず飛んで来た様で手足が凍えている……いくらバリアジャケットでも万能ではない………
さて、彼女……いや、はやても落ち着いた所で……行きますか……