リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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心 フェイト

 

「なのはは……助かりますよね……」

 

始めての出会いは忘れられない

なのはが病院に運び込まれた………信じられない事だった

私を救い出してくれた存在、この世で一番大切な人の一人……なのは

執務官試験なんて考えてられなかった……ひたすら急いだ、なのはの元に

 

だけど、現実は残酷で………一生歩く事すら出来ないほどの大怪我……目の前が真っ暗になるってこういう事だと思った

 

私はただ祈るしかなかった、ただただ……ユーノ、なのはのお父さんとお母さん……ヴィータやシグナムやシャマルさんも……みんな何も出来なかった

途方もない時間に感じた、ずっと手を組んで、なのはが助かるのを待った

 

だけど……そんな、祈るしか出来ない無力な私の目の前に現れたのはとても……顔の整った男の子

周りには黒スーツの人達が沢山囲んでいる、そして、男の子の隣には顔を埋めるはやて

 

………ケント・コルテット……砕け得ぬ闇事件を見事解決に導き、財閥『コルテット』の一人息子……

 

私にできる事なんて無い、だから……伝えないといけない

 

「なのはを……助けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはまた……近くで見ると物凄いな……」

 

「うわぁ……」

 

思わず見惚れてしまう程大きいお屋敷、あれからなのはは凄い早さで回復していってる、今では手すりに捕まって歩くぐらいは出来るようにまでになっている

ケント・コルテット……全ては彼のおかげ……彼がなのはを助けてくれた……いくら感謝祭してもしきれない

だけど……お礼を言いたくても会えないのが彼……この数ヶ月間ずっとお礼が言いたかった……

今思えば彼にたすけてもらいっぱなし、砕け得ぬ闇事件だってケントがいなきゃ解決しなかっただろうし……

出来れば……友だちになりたいな、クロノは『親友』だって言ってるし……

それで今日はクロノが同伴してやっと彼と会える日……それもコルテットのお屋敷で

クロノも中に入った事がない見たいでずっとお屋敷に見惚れてる……私もそうなんだけど……

それはそうと中を案内板してもらう私達……ケントの部屋で会うらしいから……うう、緊張する……

ケントってイケメンだし……よけいかな?

 

「ああ、久しぶりクロノ」

 

「ああ、久しぶり」

 

部屋……なんだろうね

広すぎてよくわからないよ……ベッドもつくえも全部高級品……うわぁ、このお菓子って一個数千円するんじゃなかったっけ?

 

「えっと……フェイトさん……でいいのかな?」

 

「ひゃうっ!?」

 

い、いきなり声かけないでよ~

それに今お菓子を見てた事……バレた?

卑しい子だと思われてないよね?

うう、ずっと見てるし~……恥ずかしい……

 

「えっと……」

 

「えっ、あっ、ゴメン、ちょっとね」

 

アハハって笑うケント

でも……なんでかな……笑ってるのに、笑ってない?

 

「取り敢えず適当に座って下さい、そのお菓子が欲しいならいくらでも取ってもいいですよ」

 

「えっ!?じゃあ……一個だけ……」

 

だって私も食べたいんだもん!!

 

「で、わざわざ来たのならなんか要件があんだろ?」

 

「ああ、フェイト」

 

「あ、うん」

 

椅子に座ってからケントが切り出す

大丈夫……うっ、かっこいい……

でも、ちゃんと伝えなきゃ

 

「なのはを助けてくれて……救ってくれて有難うございました」

 

「………………うん、どういたしたまして」

 

お辞儀をしてケントにちゃんと言えなかった『ありがとう』を伝える

ケントもちゃんと返してくれた、けど……

 

「あれは俺の単なる気の迷いだからね、お礼をいわれるほどの事はしてないよ」

 

「でもっ……親友を助けてくれた……本当にありがとう」

 

「親友……ね……」

 

どこか暗い顔をするケント……どうかしたのかな?

それに……『親友』って言葉に凄く反応してたけど……

 

「ケント……」

 

「どうしたクロノ?」

 

「お手洗いって何処かな、貸してほしいんだが……」

 

「ああ、それなら」

 

黒スーツの人達に連れていかれるクロノ

えっ!?二人きり!?

 

「えっ、え~と……」

 

「…………………」

 

無言のケント……どうしよう、何か話題は……

 

「……ねぇ」

 

「ひゃうっ!?なんですか!?」

 

いきなり話しかけられたのでまたビックリして声を出してしまう

うう、はずかしい

 

「君にとって……なのはってどんな存在?」

 

「なのは?」

 

どうしてそんな事聞くのだろう………

私のとってのなのは……それは……

 

「私にとっての……大切な人、だいじな親友」

 

「そう……」

 

そう、なのははわたしを救い出してくれた、私の名前を呼んでくれた人……

大切な友だち、私にとってかけがえの無い親友……なのはがいない世界なんて考えられない

 

でも……それを聞いているケントの眼はどこか虚ろで……だから聞いて見た、最初は興味本位だったんだけど……

 

「どうしてケントさんは………そんなに淋しそうな目をしているんですか?」

 

それを聞いたケントの目が見開いたのを……私は鮮明に覚えている

この時私は感じた、だって私と同じだったから……

 

 

ケントに、友達はいない……

 

 

 

 

 

何度か会って彼の事が少しずつわかってきたと思う………

一つだけ言える事は……今のケントの隣には誰もいないって事……

ネットワークでの誹謗中傷、彼への評価はとてつも無く悪い

私も目を疑った、彼は凄くいい人なんだけど……なんで見た事も、話した事もないのにこんな事が言えるのかが分からなかった

そして、ケントは誰一人として信じていない

私には分かる、誰かと話す時に見せるあの目……とても淋しそうな目……だけど……本心からじゃない

 

………彼は権力者だ、私だって執務官、彼がどういう立場なのかもよく知ってる

だからこそ、自分の隣に誰かを立たせる事が出来ない、本心では認めたいけど、実際は遠ざけてる

裏切られるのが、失うのが怖い、今の彼はそんな存在

友達だと認めたいのに、人と一緒にいたいのにその本心を認められない

 

孤独

 

その言葉が1番良く響く

だからこそ、クロノの前で見せたあの言葉は忘れない

 

「幸せに、なれたらいいのにな」

 

どんな話をしていたか分からない、クロノも気づいていなかったしケントも次には直ぐにまた淋しそうな目でクロノと話していた

 

そう、ケントは幸せになれてない、誰にも心を開けず、ずっと一人のまま……

 

だから……救いたいと思った、いつかの白い少女が、1人の少女を救った時の様に……

 

だから、待っててね、ケント

 

私が、貴方の隣で支えるから

貴方は、一人じゃないんだって……

 


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