リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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脱走

 

「はぁ……はぁ……」

 

「捕まえろ!!小娘一人に何を手間取っている!!」

 

真っ白の廊下、少女は走る

見に纏うのは灰色の……ボロボロの服

美しい筈の金髪の髪は乱れ、素顔を見る事が出来ない

 

「くっ、どうせ失敗作、殺せ!!外部に漏れたら面倒だ!!」

 

「火力兵器を使用する事を許可する!!どんな手を使ってでも止めろ!!」

 

白い廊下に火花が散る

鉄の固まりは少女の肌を焦がし、焼き、傷つける

赤い鮮血が飛ぶ、それでも……少女は走る

生き延びる為に……自分を保つために……

 

だが………現実は残酷だ……

 

「あっ」

 

少女の足から吹き出る血

盛大に頭から転がる、身体は銃弾による傷と打ち付けた事による打撲や内出血

息は荒く、もう立つ事すら出来ないだろう

白い白衣を着た、薄ら笑いを浮かべた男達が銃口を彼女に押し付ける

だが………

 

「ぐわっ!!」

 

「なんだ!?」

 

少女から溢れ出すちからによって吹き飛ばされる男達

少女の足元には『黄金』の魔方陣

 

「逃げろ!!こいつの魔力だけはオリジナル以上だ!!」

 

「あああぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

 

轟音

 

たったそれだけで男達は吹き飛ばされる

男達と少女に出来る圧倒的な差、残酷なまでの力の暴力

そして、少女の手の中に集まる黄金の魔力

男達は恐怖に震え、少女は手を伸ばす

そして………

 

「ごめんなさい」

 

爆発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このクソリア充がぁぁぁ!!」

 

「エイミィさん!!今からでも遅くない!!」

 

「そうだそうだ!!そんな堅物じゃなくて俺と結婚してくれ!!」

 

「君達は一体何しにきたんだ?」

 

クロノが呆れながら騒いでいた男達に話しかける

その隣にはエイミィさん、腹を抱えて笑っている、そのウエディング姿は何とも美しいものか………

 

大体の日程も終わり、結婚式も終わりを告げようとする今日この頃

花の咲き誇るこの小さな世界で、結婚式を挙げた二人

リンディさんとエイミィさんのご両親は成長した我が子を見て涙を流し、なのは達原作キャラは大いにお祝いし、クロノの同僚はふざけ合い、笑ながらも祝福している

 

自分で言うのは何だが……はっきり言ってよい結婚式になったと思っている

それにしても……やっぱり指輪交換って緊張するもんなんだな……あのクロノの手が見てわかる程震えていた

落とす……なんて事はなかったがな、流石提督

あ、ちなみにブーケトスはリンディさんが取った、何故いる………

確かあれって取った人が結婚しないと他の人は結婚出来ないんだよな……リンディさんは再婚の予定は無いようだし……残り全員結婚出来ないってことか?

 

そして『原作キャラなら仕方が無い』と感じている俺もいるのが不思議だ……前世のForceは完結せずにこの世界に来てしまったのだが……結局彼女達に春は来たのだろうか?

 

来てないだろうな……主に大人の事情で……

 

「あ、ケントさん」

 

「ん?カリム……料理はもういいのか?」

 

「私はそんな食いしん坊じゃありません!!」

 

さっきまで「見たことがない料理ばっかり」とか言って食べ歩いていたのは誰だ……

そりゃ見た事がないだろうよ、何気に一流シェフ大量にレンタルしてるし

フルコース数十万するのばっかりだ、そうなると食べにくいので周りには知らせていないが……

 

「それにしても……まさか見上げられる様になるなんて……」

 

「フフフ、まだまだ伸びますよ」

 

くそぅ……カリムに見下ろされるなんて……これはもう皇帝特権を最大まで引き出して早く大人モードにならないと……男としての威厳に関わる

 

「それに……今のケントさんも十分かっこいいですよ?」

 

「何故疑問形?……でもありがと」

 

「どういたしまして」

 

なんというか……やっぱりおしとやかだな

はやてとはまた違う、なんと言うか……お嬢様って感じ

 

と、その時だ……

 

「………なんだ?」

 

「??」

 

よくわからない、上手く説明出来ないが自身の直感が何かを感じ取る

場所は……近くも無く遠くもなく……魔力か?

でも誰が、この世界は基本無人だろ?

結婚式の出席者が魔法を行使したとは考えにくいし……

 

「わるいカリム、ちょっと用事があるから行くわ」

 

「えっ、あっ」

 

カリムに詫びをいれてその場から立ち去る

もし魔力反応があったのならそれなりの人間はいまのに気付いている筈だが……見渡した感じだといないな……

みんな結婚式に夢中になってる、守護騎士の面々も気付いていない……

 

「………行くか」

 

もし結婚式中に何かがあった場合クロノに悪いからな…。コルテットの人間に行かせてもいいがここまで感じ取れた魔力だ、相手は相当の実力者の可能性もある

コルテットの人間もこの世界では『モブ』に分類されるからな……死んでしまう可能性もあるし……だから『転生者』である俺が行く

だけど……今こうしている間も見張られてるからな……俺

だったら……

 

「トイレっと」

 

流石にトイレまで覗く様な奴はいないだろう

一応これでも男の娘、覗く様な奴がいれば即刻叩き切るし……

そんでもって皇帝特権を使用し、遠距離転移を可能にする……座標は……大体この辺か?

曖昧だけど直感が『ここっ』て反応している……

さて……とぶか………

 

黄金期の魔方陣が展開され、一瞬の内に掻き消える体

不思議な浮遊感が終わった後、目を開ける

 

そこにいたのは金髪の少女、力無く倒れ、周りは廃墟と化した『何か』

 

金髪の少女の息は絶え絶え、体には幾つもの傷痕があり、放置していたらこの無人世界では死んでしまうだろう

 

だが…….俺の頭には何も入ってこなかった

 

だって……この顔は誰よりも一番俺が知っている

 

確かに、ボサボサの髪のせいで顔はよく見えない、目は閉じているので瞳の色はわからない

だが……輪郭でわかる……こいつは……

 

 

 

「俺?」

 

 

そこにいたのは……俺だった

 


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