61
タッタッタ
一人の少女が廊下をかける
後ろからはそれを止めようとして走るメイド達、しかしその差はジリジリと広がり、誰にも彼女を止める事は出来ないだろう
やがて少女は一つのドアの前で止まる
ドアノブに手をかけ、部屋に入ってから開口一番
「朝ですよーーーー、起きて下さいお兄様ーーーーー」
コルテット家長女ネリアは、今日も相変わらず元気である
「耳がキンキンする、それにネリア、毎回お前を見るたびに食欲を無くすんだけと」
「腹が減っては戦は出来ぬ、今日ははやてさんの部隊の視察に行くんでしょ?」
「戦じゃねーし」
近くにあったトーストを手に取りかぶりつく、ネリアの方は相変わらず、どうやったら朝から肉料理食えるんだよ………
それに……
「ネリア、一つ質問していいか?」
「なんですかお兄様?」
「何故太らない」
これだけ食べて締まるところはキチンと締まり出る所は原作のセイバーが怒り狂うぐらい出ているのだ………十五歳で……
「う~ん……お兄様の血が流れてるから……でしょうか?」
「サッパリわからん」
俺はちゃんと運動してんだぞ、室内プールでの水泳やらなんやら
ネリア、本名『ネリア・コルテット』
俺が彼女を保護し、義妹にしてから早三年
精神が周りと比べれば少し幼かった彼女も大分成長し、今では俺の身長をゆうに超える程になってしまっている
それにさっきも言ったように出る所は出て締まるところはキチンと締まる、もし俺が義兄でなかったら本気で惚れてしまうような美声と体つき、そして………性格
そう、ネリアは俺の思いとは裏腹に絵に描いたような『いい子』だった
素直で健気、今の時間をとことん大切にし人を元気付ける、危惧していた『オリジナルへの復讐』なんてものも全く見せず、思い返してみるとこの三年、俺の隣にはいつもネリアがいたかもしれない
だからかもしれない、あれだけ他人が怖かった俺がこいつにだけは素直に戻れるのは……恐らく最大の理由としては『自分と同じ立場』というのが大きいのだが………
「プハー、美味しかった~」
「ご飯粒ついてるぞ」
「えっ?キャッ」
頬についていたご飯粒を拭う
と、いうより俺が回想している間にどれだけ食べた?白い皿の山が見えるのはもう日常化しているが………
「あっ、とれた」
「ったく、今日はどっか行くのか?」
「学校休みだから特に予定はな~し、だからついて行こうと思って」
「つまらないぞ?」
「いいのいいの」
軽く鼻歌を歌いながらその場から離れるネリア
……食欲無くなったな
まぁそんな事を言ったが朝飯を抜くのは体に悪い、目の前にあるトーストをもう一度口に運ぶ
俺が今日向かうのは出来たばかりの新部隊、『機動六課』の視察
いかせん俺は後見人の一人、自分が支援した部隊なのだから一度ぐらい見にいかないとな………
え?俺がなんで後見人の一人になったのかって?
……率直に言うと『俺から提案した』
原作で、スカリエッティを捕まえる上で一番大切な部隊、それが機動六課
俺も最初は大丈夫だと思っていた、原作でも色々な反発はあったもののはやては部隊を立ち上げ、事件解決後には『奇跡の部隊』とまで言わせるようになった
しかし……だ……
コルテットの参入によるアインへリアルの『完全な』完成により、地上本部内でのレジアス派が大きく力を伸ばし、はやての前に立ちふさがった
はやても何とかしようと思ったのだが余りにも巨大すぎる派閥、『機動六課』という部隊の完成はもう不可能の状態………元を辿れば俺が悪いのだ
アインへリアルへの参入に同意したのは俺だしそれをレジアス相手に同意したのも俺
簡単に言えば『俺』という存在がいたせいで原作に必要不可欠な部隊が作られる前から壊滅寸前だったのだ
流石にそれだけはマズイ、という訳で形だけだが『少将』の位を持ち、バックに『コルテット』という組織を持つ俺がはやてに自分から相談し、殆ど強引に後見人として立った
レジアス派の人間達が力を強めたのはコルテットが参入した事によるアインへリアルの完成、ここでコルテットという組織を敵に回すのは不利だと考えたのか……機動六課に対する反発は激減、今こうして六課が設立された
はやては最後まで渋っていたがな……俺が後見人になることに
彼女曰く『自分は何も返せてないのにいつもケント君に助けてもらってる』だったか?
別に助けた覚えはないしお礼を目的に行動しているのではない、ただ単純に『無かったら困る』ので自分から動いただけだ
ぶっちゃけあまり原作と関わりのない部隊なら興味はない、はやてが自分から言ってこない限り協力は無かっただろう
まぁ、そんな訳で今日はその視察
まだ出来たてホヤホヤの部隊だ、新人達も取り入れて何とか稼働中って感じの
一波乱無ければいいんだけどな……俺の周り、いつも通り護衛が囲むからフェイトやはやてみたいに耐性がある奴じゃないと対応出来ないし……
それにしてもネリアも行くのか……多分目的はフェイトだろうな……
ネリアは自身の正体を知っている彼女の事を『フェイトお姉様』って呼ぶぐらいだしな……いつもいつも彼女に会いに行くので理由を聞いて見たら「恋愛のアドバイスしてるの」だからな………
フェイトって好きな人いたんだな、まぁ学校にも行ってたし仕事場にもイケメンの一人や二人はいるだろうし当然か……
だけど……前世でフェイ党だっただけあって複雑な気分だ、まぁ相手がいい奴だったら素直にお祝いするけど
「お兄様~、ボーとしてないで準備したらどうですか~」
「うぉっ、悪い」
気がつくと目の前にネリア
その服装はさっきのパジャマとは変わり現代風の、今時のファッション
ネリア、覗き込んで来るのはやめろ、その、なんだ、胸が強調されて……谷間とか……その……
一度注意した事はあるんだが、その時の返答が「大丈夫大丈夫、お兄様だったら」だからな………素直過ぎるのも問題か?
取り合えず、早く食べて着替えよ……