リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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手紙の遺言

 

夢を見た

 

一人の少女が……剣を地面に突き刺したまま某然と丘を見下ろしている

 

その目は儚く……力はない

 

体は重傷であり力は入らない、ただずっと、これまで共に戦って来た仲間を見る

 

………後悔しているのだろうか?

 

その目には生気がなく、髪だけが風によって揺れている

 

そして一言

 

 

 

 

 

 

「お兄様ーーーーーーーー」

 

「……………おはよう、ネリア」

 

どうやら朝のようだ

 

 

 

 

「こんなに早く起こさなくてもいいのに……学校ないんだぞ?俺は」

 

「食事はキチンと家族でとりましょ~、一人だと淋しいしね、あ、そこのバターとって」

 

「はいよ」

 

メイドが取ろうとした物を俺が渡す

起こされたのは朝の六時、学校に行ってた時はこれぐらいの時間に起きてたんだけど今ではやっぱり眠い、昨日が休日だったのと六課に行った事で余計にだ

ネリアは毎回起こしに来るんだよな、俺を

九時ぐらいまでは寝かさしてくれてもいいのにな………

ネリアの隣にはトーストが数十枚置かれている事にはあえて突っ込まない

 

「ふぅ、あっ、忘れてたけどフェイトお姉様のパンチラ写真いる?シマパンだけど」

 

「いつ撮ったんだよ」

 

「昨日」

 

そりゃ昨日だろうけど……あの後の話をしよう

まぁ、話と言ってもなのはが行なう訓練を見ただけだ、一言で言わせてもらうと鬼だな、うん

なのはは皆を巨人軍のエースにでもさせたいのだろうか、いつか強制ギプスを持って来そうで怖い

ネリアはガラディーンで遊んでたな、一撃でビル何個破壊出来るかっていうの

途中からはやても参戦したのだが……あれはダメだ、例えるなら怪獣大決戦

あ、ちなみにネリアのデバイスは杖型ストレージデバイスの『ガラディーン』

どこぞの騎士が持っているもう一振りの星の聖剣ではない、杖だし

そしてネリア、得意な事は『収束』と『放射』

スタイルは完璧にはやてと同じ、自分を守る周りがいれば無敵の移動砲台

見た事はないがはやてが使う『ラグナロク』ぐらいの魔法ならバンバか連射出来るのではないだろうか?

近距離特化の俺と遠距離特化のネリアが組めばもう怖い事なしの感じがする

それでもネリアには『レアスキル』が存在しない、本当に魔力特化の魔導師

なんというか……学校で力の加減間違えないか不安だな

この前のテストでは自分に付きまとっていた男子と模擬戦になったので訓練場ごとぶっ飛ばしたとか聞いたし……これ以上魔力値が上がる事がないのが救いか?

それにしても……どうして俺の遺伝子から生まれた人間が俺以上の魔力を持つんだ?

手を加えたならまだしもネリアを作った目的はあくまでも『レアスキル』のコピーの為……魔力そのものはそこまで重要視していなかった筈なのに……

俺のクローンを作ったなら俺と同等か……俺より少ない筈なのだが……考えても仕方が無い……か……

 

「お兄様は今日……聖王教会に行くんでしたっけ?」

 

「ああ、ちょっと大事な話らしいからネリアは連れていけないぞ?学校があるから当然だけど」

 

「終わってからは?」

 

「家で留守番」

 

なんでも昨日にロッサから連絡が来て「少し大事な話があるんだ、少し時間があるかい?」と

俺的には基本暇人なので時間はあるのだが……いかせん周りを説得させるのに苦労する……

なんとか許可はもらったのだが……ついてくるだろうな……

で、大事な話、俺の予想ではあの『予言』

カリムが出した『管理システムの崩壊』だったか?

その為に伝説の三提督やらが後見人として参加し、六課が設立されたのが本当の理由……俺は後見人だけど唯一その話を聞いていないからな、確実にそれだ

よく二次創作であるお決まりの「実はこの前新たな予言が~」とかがない事を祈ろう、そうなってくると後々面倒だ

原作知識もろくに機能しなくなってしまう可能性が高い、逆に原作知識に囚われてしまう可能性だって出てくるからな……

そんでもってネリア、その『行きたい』って顔をどうにかしろ、お前は学校があるんだからそっちに集中しろ

それに放課後になるまでいるつもりないから、多分お前が帰ってくる頃にはもう帰って来てるから

 

「う~、残念」

 

「それより時間大丈夫か?遅刻するぞ?」

 

「えっ?………ああっ、もうこんな時間!!」

 

そう叫ぶと最後のトーストを口に咥えながら走って部屋に戻る、専属のメイドも大変だな、ずっと走らされている感じがするし

俺は別段急ぐ必要もないしな、ゆっくりとさせてもらおう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果からするとなにも変わっていなかった

ただ原作者通り厨二乙という文章を聞いただけ、内容も全くもって同じ

新たな予言なんて巫山戯た物が出て来なくて本当に良かった、めんどくさいしな色々と

 

「むぅ、もっと真剣になったらどうですか?」

 

「ん、ごめんカリム、なにもふざけてるわけじゃないんだけど」

 

俺がホッとした態度を感じたのか、カリムがムスーとしながら話しかけて来る

 

こうしてカリムに会うのも久しぶりだ、縛りがないフリーなロッサとは時たま会う時があるがカリムは別、学校を卒業してからは聖王教会で保護されている箱入り娘

そしてそれは俺も例外ではない、外出する時は大勢の護衛を引き連れ、最低限しか外に出ない箱入り息子、そんな人間が簡単に会う事なんてまず出来ない

 

で、久しぶりに会ったカリムに対する感想だが……やっぱりフェイトやはやてが持っていたオーラとはまた違うな、もっと堂々とした『大人』としてのオーラ

よく忘れがちだがカリムと俺らではかなりの年の差がある人生の先輩、忘れがちだが、大切な事なので二回言った

 

それに落ち着いているし、家に元気なネリアがいるからなんか新鮮

 

「意外と驚かないんだね、はやてにこれを話した時は目を見開いて驚いていたのに」

 

「まぁ、俺は直接的管理局と関わりがあるわけじゃないからね、そうなのか~程度だよ」

 

「ケントさんらしい」

 

俺らしいってなんだよ

 

「で、俺を呼んだ理由はそれ?」

 

「まぁ、今のもあるんだけどね、もう一つケントに教えたい、いや、渡したい物があるんだ」

 

「渡したい?」

 

一体何をだろうか、別に今の季節が俺の誕生日ってわけでもないし何かの記念日があったわけでもないのだが……

 

「ケントさんは覚えてますか?騎士サンドロスを」

 

「勿論覚えているけど、俺の担任だったし」

 

騎士サンドロス、これが俺の担任だった奴の名前

原作では『イスカンダル』で名乗っていたけど有名なのは『アレクサンダー大王』又の名を『アレクサンドロス3世』

そこから『アレク』の名前をとったのが俺の担任であったサンドロス、名前を言ったのは初めてかもしれない、今までは全部『担任』だったし

まぁ俺をネリア以外なら唯一真っ正面から見てくれた彼も、数年前に何者かに殺されてこの世にはいないんだけどな

だけど、今更あいつがどうしたんだ?

 

「それが、教会で改めて彼の遺品を整理している時に、こんな物を見つけたのです」

 

「……………手紙?」

 

いや、手紙と言うより紙切れと言った方が正しいか?

一枚の紙切れを二つ折りにし、止めただけ

しかしそこにはちゃんと『ケント・コルテット』宛になっている……どういうことだ?

 

「最初は僕達も不思議に思ったんだけどね、やっぱり君宛の手紙だからちゃんと誰かに見られる前に君に渡す事にした、僕たちも中身を見てないよ」

 

「騎士のエースの彼が最後に残した手紙です、そんな真似はできません」

 

俺はロッサから手渡された手紙をマジマジと見る

至って普通の紙だ、特になんの仕掛けもない

 

だが………何だこの感覚……何かが……俺の中の何かがこの手紙を読むなと叫んでいる

直感……なのだろうか?

無意識の内に発動してしまうそれが警報を鳴らす

セイバーの直感は未来予知にも匹敵する……だけど……それほどまでに警報を鳴らすと言う事は逆にそれほどまで大切な事が書かれていると言う事

 

恐る恐るのりを剥がし、中を見る

 

そこに書かれていたのは一言だけ、手紙によくありがちな表現など一切入っていない一言

 

ただ、それを見た瞬間俺は手紙を持つ手を力強く握り締める、これなら、これなら何故あの強い担任が負けてしまったのかが納得が出来る

そう、勝てる筈がないのだ、こんな奴に

 

「クソッタレが」

 

歯に力が入る

もう、俺だけの問題じゃない、動かなければ一番危ないのはネリア

そう、担任は知ってしまったんだ、俺達の事を……

なんだ、全部、俺のせいじゃないか

あいつはこいつから俺を守ろうとして………

 

「ケントさん?」

 

頭を抱える俺にカリムが心配そうに寄って来る

手紙をポケットにしまう、これは俺の問題、こいつらに迷惑をかける気はさらさらない

 

あれに対抗出来るのは、俺しかいない

 

「いや、なんでもない、ただ俺の学校態度に対する文句をグダグダと書いていたからな、死んでまで何言ってんだって感じだよ」

 

「そう……ですか」

 

カリムに弁解する、出来るだけ明るい態度で

 

担任が残した手紙、これによって、俺とネリアは本当の意味で『安全』とは言えなくなった

 

 

 

 

『転生者と言う者に、気をつけろ』

 

 

 

それが担任が残した遺言でもあり、警告でもあった

 


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