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「おっ、あった………」
画面を見つめながら声をあげる、う~ん、まさかとは思っていたけど……
「アグスタ……コルテットか~」
ホテル・アグスタ、あの『頭冷やそうか事件』の原因となる出来事が起こった場所
ロストロギアのオークションだったか?まあそんな事はどうでもいい
しいて言うならば……
「アグスタがコルテットが経営しているホテルだったとは……高級ホテルだから『まさか』とは思っ調べてみたけど……」
それにオークションをするのもコルテットのサポーターがあってこそ………原作ではどんなのだったんだ?
「まぁ、コルテットが経営してるんだったら介入も比較的楽……なのか?」
う~ん、普通考えたらそうなのだが今回は低級とはいえ『ロストロギアの』オークション、何が起こるかわからない
それに六課でも『ガジェット出現の可能性』を考えて出撃してたんだ……周りの奴らがそらを知らないわけがない
そして、ガジェットへの対策
はっきり言って俺も自信は無い、AMFに機械独自の動き、よくあんな物を入りたての新人達は相手に出来る……油断すれば俺でも落とされる可能性は十分にあると言うのに……
まぁ、これについてはこちらで対策をするのだが……
「ケント様、よろしいでしょうか?」
「ん、ああ、入ってくれ」
部屋の外から聞こえて来たのは爺の声、出来たって事だな
「ガジェットの複製、完了しました」
「りょ~かい」
さて、六課が実現出来なかった『完璧な』複製も出来上がった事だし……いきますか……
「へぇ~、コルテットでお兄様が訓練だなんて……よく通ったね」
「それだけ切羽詰まっているって事だ、この前まともに戦えた奴は少ないからな、俺と一部の人間関係だけだ」
歩きながら隣に来たネリアが話しかけてくる
……ガラディーンを持ってやる気そうだがお前はあくまでも見学だぞ?周りに守ってくれている人間がいて初めて戦えるスタイルなんだから……
………さて
「爺、始めてくれ」
「くれぐれも……くれぐれも危なくなりましたら止めて下さいませ、ケント様にこの様な試練を与えてしまう事を爺は……爺は…」
「はいはい」
丸いドームに入りながら上のコントロール室にいる爺が騒いでいる
俺がするのは簡単、『ガジェットとの戦闘』
高濃度のAMF空間内での魔法戦闘、護衛の奴らも訓練に励んでいるがそれでも成果はあまりよくない、こう見てるとやはり主人公自らの指導とはいかに凄い事なのかが分かる
まぁ、そんな訳で『万が一の防衛手段』として俺がガジェットを完璧にコピー、いや、
逆に強化しての訓練を提案、最初は断られたがこの前の襲撃で俺頼りだった事を出したら苦い顔で渋々了解してくれた。
さて、いくら非殺傷設定で攻めてくるとしても相手の数は100、その中には透過する奴や防御型、巨大な奴だっている……油断は……出来ない
そして今回、俺自身に定めたルールとしては第一に『破壊』を使わない事、あれを使うと半分程度の魔力でほぼ全てのガジェットを殲滅してしまう。万が一を踏まえた環境ではそんな訓練クソ程役に立たない
そして次、皇帝特権によって自身が使う力を『魔力以外に変換しない事』
皇帝特権で自身が使うチカラを『魔力では無い』と主張する事によって一時的に俺が使う力は魔力とはまた別物になってしまう。
そうなればAMFだって関係ない、そんな訓練も役に立たない
以上、この二つを踏まえた上で訓練に望み、アグスタでの万が一に備える
まだ介入する方法を思いついたわけではないが俺がこの世界に『異物』としている以上何が起こるかわからない、最終決戦などどれほどのガジェットを送り込んでくるのか分からないのだ、今から訓練しても遅くはない……はず……
『では……ケント・コルテット様によるガジェット100抜きを開始します』
ドームに流れる声、それとともに目の前に現れ出すガジェットの群れ
右手にデュランダルを……左にステルスデバイスを構える
二刀流なんて始めてだな、たまにはこういうのもいい
じゃあ……
「いくぞ、ダンゴムシ」
剣撃、舞う
「………………」
目の前のドームを見ながらネリア・コルテットは一人思案する
目の前で舞っているのは大好きな兄、自分を助けてくれた、自分を受け入れてくれた大切な家族
兄がまたその剣で一つ、鉄の塊を粉砕する。その剣撃は見とれてしまう程綺麗だ
だが……なぜいきなり兄はこんな訓練をするなどと言い出したのだろうか?
ガジェットに対する対策は必要だとは自分だって思う、実際にコルテットの警備が相手のアレに突破されたのは事実だし現実だ
しかし……なぜ今になって兄がここまで積極的にこの事件に介入する?
自分が狙われていると言うのも一理ある、しかしそれならばコルテットの護衛を強化すればいいだけの事
普通、『お坊っちゃま』と呼ばれる類の人間は大抵そうだ、自分が努力するなんてあり得ない
だが……ケントは違う、いつもは何に対しても関心を示さない兄がこの事件だけは非常に強い関心を示し、それでもって自分から動いている
わからない、なんでなのか……
言われてみれば最初に兄を意識し始めてから兄はおかしい事だらけだ、自分より下の人間に対しても優しいし……何より自分が自身の『クローン』だと知っても別段驚いた顔もせず、簡単に受け入れてくれた
ありえないのだ、これだけの地位につく人間ならば他人を少しぐらい下に見るしそんな違法実験に対する抵抗などあるはずもないので直ぐに舌を滑らせて秘密裏に処分されたっておかしくなかったのだ
コルテットという選ばれし人間にでありながらあの才能、あの整った容姿……ここまで揃えて生まれてくる人間なんていないのではないだろうか?
『70体!!』
……長々と考えてしまったが自分は大好きな兄の妹、その事には変わりない
兄は元からこんな人、目の前で困っている人がいたら助けるし、みんなを笑顔にする優しい人
だから幸せになってほしいとも思う、この『コルテット』という鎖を断ち切り、幸せになってもらいたい
『90!』
だから………私は……
『100!!』
大好きな兄に幸せになってもらうために、もっともっと頑張ろう
そのために先ずは、あの唐変木を何とかしないとね!!
お兄様!!目標は幸せな結婚ですね!!
その後お姉様とあんな事やこんな事を(以下略)