リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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勝てる筈がない

 

「はぁはぁ……くっ」

 

「……………」

 

腰の位置にデュランダルを構える

体には大量の切り傷に打撲、内出血も所々に出来ている

体力はもう殆どない、こうしてみると今まで自分がどれ程手加減されていたのかがわかる

 

「なんで……あんたは確かに……っ!!」

 

重い一撃を何とか受け流す、だが……

 

「くっ!!あっ!!」

 

首にかかる圧力、無防備になる体

左手をかざすために動かす、これさえ決まれば……

 

「ガッ……ハッ」

 

吐血、腹に凄まじい程の衝撃

首を抑えたままでの膝蹴り……後ろに吹っ飛んで威力を殺す事もできない……口の中に鉄の味が広がる

 

「ぐぞっ……たれっ!!」

 

体を捻らせ、腕力を強化した左腕で顔面を盛大に殴る

よろける巨体、首の拘束は解け、重力のままに下に落ちる

息切れをしながらその場から引く……くそっ……

 

「はぁ……はぁ……くそったれ」

 

両手が地面につく

酸欠……体が上手く動かない、あれ以上首絞められていたら……危なかったな……

 

「なんでだよ」

 

思わず呟く、目の前には見慣れた巨体

あの腕で俺の頭をかき、あのデバイスで俺を鍛え、あの心で俺を救ってくれた

その一つ一つが今度は狂気となって俺に襲いかかる……勝てるわけがない、俺が、あいつに………

 

 

 

「なんでだよ!!サンドロス先生!!」

 

 

 

その瞳には色はなく

 

ただ眼前の敵を打ち倒すのみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可能性を考えていなかったわけではない

第一級ロストロギア、『レリック』

どういう趣旨で作られたのか、またどういう趣旨で使われるのかは俺は知らない

ただ……原作では死亡した騎士『ゼスト』を一定期間だけこの世に呼び戻していたりもした

それだけの力を持つロストロギア、そしてそれを集めるマッドサイエンティスト

そして……ゼスト以上の騎士……これを使わずに何を使うのだろうか

 

ガリューを追って転移したのは森の中

アグスタともそう離れていない場所、ガリュー達の姿はすでに無かったがレリックの魔力残骸を辿った

そして……見つけた三人

フードを被ったおっさんとロングヘアの女の子

最後に……二人をゆうに超える身長のゴツ男、その目にハッキリとした生気はなく、ただ二人を守る『人形』の様な存在

そしてその瞬間に感じとった

 

 

 

『勝てる筈がない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、おぉぉぉぉぉ!!」

 

両手にデュランダルを構えて疾走する

もうとっくにルーテシア達はここを去ってしまっている、恐らくもう間に合わないだろう……だけど…こいつだけでも!!

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

左手をかざして叫ぶ、抉られる地面、消えてゆく木々

しかしそれは相手に当たる事はなく、ただ中をきる

走る激痛、あのゴツイ右手で弾かれたらしい……たったそれだけ、たったそれだけでこの威力……そしてこの反射神経

くそっ、ライダーにセイバーが近距離戦闘で負けるなんて……アリかよそんなの……

 

「うっ!!グオォッ!!」

 

大刀をデュランダルで何とか防ぐ

そして、吹っ飛ぶ……二回、三回とバウンドしてようやく止まる体……

腕に力が入らない、どれだけ……力の差があんだよ……

 

「なんとか……喋ったらどうだよ……生徒をこんだけ痛みつけて楽しいか?」

 

「………………」

 

ノーコメントか……スカ野郎はこういった『理性がない存在』に関してはそこまで興味が無かったと記憶してんだけど……転生者関連か……

 

「………風よ」

 

上段にデュランダルを構える

刀身に集まるのは風、そして黄金の魔力……生前には一度も当てる事ができなかった……だけど……これしかもう望みがない……

 

「エクス……」

 

足に集まる魔力……いける!!

 

 

ズドンッ、そう地面を蹴る音と同時に風の加護を受けて前に飛び出す

一瞬の出来事、俺を返り討ちにしようと刀を振り上げるサンドロス……このままいくと絶対に押し負ける……だけど……まだだ!!

 

「グワッ!!」

 

「カリバァァァァァァァァァ!!」

 

サンドロスが見えない力によって前乗りに揺らぐ

ガリューと同じ作戦上が上手くいった……今なら!!

 

 

 

 

 

 

「えっ………」

 

「アアアァァァ」

 

身体が倒れる、目の前にはサンドロスが振り下ろした大刀

俺には届いていない、大刀が抉っているのは『地面』

 

地面がその巨大な力によってめくれ上がり……俺に飛来する

エクスカリバーは止められない、巨大な岩は破壊するが……その直後に見えたのは……

 

巨大な拳だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいコルテット!!しっかりしろよ!!」

 

「…………ここは」

 

目を開けると……赤の少女

身体中が痛い、ここは……

 

「シグナム!!こいつ目覚ましたぞ!!」

 

「大声を出すなヴィータ……お前だってキツイだろう」

 

「ま、まあな」

 

よくよく見てみると木の影にもう一人、俺がいる場所も影の中で見下ろしている彼女もバリアジャケットがボロボロだ

それより……ヴィータ?

 

「局の者を呼びました、数分でここに到着するでしょう」

 

「……………あんたらは?」

 

「少し離れた所で爆発があって、見に来たらこのザマだ、お前もう少しで誘拐されるところだったんだぜ?」

 

「無事で何よりです、何とか撃退には成功したのですが……二人掛かりでこれとは……」

 

もう一人を見ても身体中に傷、胸の部分がエロい

二人掛かりでも凄い、俺なんてチート使っても倒せなかったのに……

 

「シグナム!!ヴィータ!!」

 

「ケント様!!」

 

こちらに飛んでくる大群、見たところ殆どがコルテットの奴だな

てか爺、お前飛べたんだな、魔力あったんだ

 

はぁ、これじゃあ暫くの間ロクに動けないな……説教とか怖そうだ

 


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