リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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入院

 

「全治三週間……まぁ、妥当だよな~」

 

ベッドの上で深くため息をつく、手には包帯、身体は傷だらけ……当然といっちゃあ当然か……

 

「ましてや骨折をしていなかったのが不幸中の幸いでした、所々にヒビは入っていましたが大事ではないかと」

 

「ありがと」

 

いえいえと言って病室を出る医師、はぁ、なんだかんだ言って暇

 

「ちょっとええか~、ケント君」

 

………ではなさそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグスタから一番近い大型病院に運ばれ治癒を受けた俺

なんというか……散々だった

身体はボロボロ、意識もあまりない、骨折していなかっただけまだましだったのかもしれないが内出血や打撲、骨のヒビなどが凄まじかったらしい

そしてそれを見たメイド達が何人か気を喪ったらしいのだが……よく分からん

そうして今では丸一日、治療をあらかた終えた俺はコルテット直属の医療施設に移動、爺からのねちっこい説教を受けた後医師の説明を受け、いまここ

なんだか……ねぇ

 

「一番最初に来るのはネリアだとばかり思っていたんだけど」

 

「なんや~、私やったら不満なんか~」

 

そんな事はない、

入院して美女がお見舞いに来てくれるなんてどこのエロゲ?

いや、まあ世の中そんなに甘くないんだけどね、はやてだって俺のせいで大変だっただろうし……

 

「おーおー、顔に出とるで顔に、そんなに『しまった~』っていう顔せんでええで~」

 

「いや、でも……」

 

後見人でありコルテットの俺、そんな俺がこれだけの怪我をして運ばれたら管理局の矛先は六課に向く

なんで守れなかったんだ、なんで気づけなかったんだ……直には言われないだろうが影口は多くなるだろう……

 

「大丈夫やて、そんな事より私はケント君が無事でいてくれた事がなりより嬉しい」

 

「えっ、あ、うん」

 

柔らかい笑顔……なのだろうか……

そんな顔をされて思わず硬くなってしまう……顔が熱い

 

「まっ、それでも大変な事には変わりないな~、六課のみんなお仕事自体は成功やのに妙に暗いし」

 

「………俺のせい……だよな」

 

「うーん、まぁ他にもあるけどな、それでもケント君は多少なりとも関与してるねんな~」

 

俺だけではない……やはりティアナの『アレ』はあったらしいな

まぁ、この頃の隊長陣は彼女の苦悩に気づいていないのだが……はぁ、今の俺にこれは関係ないか……

 

「私の仕事もドカーと増えたし……肩もほんま疲れたわ~」

 

「…………揉もうか?」

 

「胸を?」

 

「ちぇすと」

 

「はうっ」

 

普通に言ったのに……怪我人が肩を揉む方がおかしいか?

はぁ……それで……

 

「俺に何させたいの?」

 

「おっ、察しが早いやんか」

 

ニヤリと狸顏を披露するはやて……お前が考えてる事ぐらい分かる

何をさせたいのかまではわからないが……

 

「簡単や、ケント君の護衛が出来るようにコルテットと交渉してくれへん?」

 

「俺の護衛?何でまた……」

 

それなら足りてるぞ?今回の事だって護衛が悪いのではなくて俺が勝手にしゃしゃり出ただけだし……

 

「相手は確実にケント君を狙ってる……確実にケント君と接触をとってくる……でも、裏を返せばケント君といれば確実に相手を誘き寄せる事が出来る」

 

「要するに囮?」

 

「それもある、ただ個人的な意見ではケント君を護りたいっていうのが一番や、ケント君が傷つく姿は見たくない、ケント君が苦しむ姿は見たくない、ケント君が……どこかに連れていかれるなんて考えたくない」

 

「はやて……」

 

彼女は……真剣だ……

元から許可などおりる筈がない、それほどの無茶を彼女は俺に頼んでいる

そんな事、わかっている筈なのに……

 

「私はな……ケント君の隣におりたい、ケント君とずっと一緒におりたい」

 

「は、はやて?」

 

いやいやいやいや、誤解を招く言い方はやめろ!!

てか何でそんなに息が荒い!?

 

不意に手を握られる、心臓の音が激しくなる

目の前には息が荒いはやて、彼女が身を乗り出す、こちらは動けない

顔が近づく、身体が硬直する、彼女の匂いがする

 

「だって……私はな……ずっと昔から」

 

「えっ、あっ」

 

顔が近い、吐息が当たる

手を強く握られる……柔らかい、女の子の手が小さく、ここまで柔らかい物だと改めて実感させられる

そして………

 

 

 

「お兄様~!!大丈夫ですか~!!」

 

 

 

光の早さで俺らは離れた

 

 

 

 

 

「ひ、久しぶりやな~ネリアちゃん、元気にしとったか~」

 

「お久しぶりですはやてさん!!仕事はいいのですか~」

 

「ちゃんと一段落させてから来たからな~、それよりネリアちゃん、学校はどないしたん?今日は平日なはずやけど」

 

「お兄様と面会室出来るって聞いて早退しました~、学校はなんて二の次です。それより……」

 

ジト目でこっちを見てくるネリア……なんだよ……

 

「お兄様の顔が妙に赤いのが気になるな~、なにかした?」

 

「いや~、なにも無かったよ~、なっ、ケント君?」

 

「えっ、あ、ああ、何も無かった」

 

うん、何も無かった……はず

 

「……まっ、何も無かったならいいか!!それよりお兄様!!なんでよくわからない無茶をしたんですか!?」

 

「えっと……え~」

 

うん、何も無かった……今だって心臓がバクバクいってるが何もなかった

………フラグ?

 

……いや、はやてだって何も無かったって言ってるし……原作キャラだからあんな誤解される言い方が出来たんだ、うん、きっとそうだ

 

「話す気あるんですか!?お兄様!!」

 

「えっと……あ~、そうだな」

 

さっきの事は置いておいてまずはこの妹の相手をしないと……爺並にグダグダ言われると面倒だ

 

 

 

 

 


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