リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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金の閃光

 

「グッ、うがっ!!」

 

「っ!?」

 

振り下ろされた金の大刀が当たる事は……無かった

やはり戦闘経験が多い、『避けれない』と思ったチンクは一瞬の内に自分と相手の間にクナイを投影し……爆発させた

 

その爆風に乗って後方へ飛ぶ、相手の攻撃も当たらず、尚且つダメージを与える事が出来る

 

しかし、それはチンクにも例外ではない、至近距離で放たれた爆発により彼女のボディスーツは所々が破け、焼けてしまっている

綺麗な銀髪はボロボロになっておりその代価がうかがえる

 

「時空管理局機動六課、フェイト・T・ハラオウン、武器を捨てて投降して下さい」

 

「Fの遺産……と、なると他の皆は……」

 

失敗、ということになる

もし彼女達の作戦が上手くいっていたのならばここにフェイトが来ることはない、ガジェットによる足止め、ヘリの墜落、聖王の誘拐……これだけの事が一度に起こるのだ、すぐに気持ちを切り替えて出動……など出来ない

一番先にフェイトが来たのは……速いから……か?

なんだかんだ言って俺達がガジェット来てるのを知った時には六課の方で戦闘始まってたしな、あそこにいたガジェットの一分隊がこっちに送りこまれて来たんだし

原作では前編後編分けてたけど体感時間ではそんなだよな、現場だし

無事にヘリを守り切った所でコルテットからの要請、フェイトは六課の中でもスピードナンバー1だからな、数分すれば他の隊長陣も来るのだろう

 

「ケント、無事?」

 

「見りゃわかるだろ?無事に見える?」

 

「…………すぐに助けるからね、少し待ってて」

 

俺を守るように背を向けてカチャ、とバルディッシュを構えるフェイト

ネリアもこっちに駆け寄って来る……前衛がいる状態でのネリアは無双だからな、形勢逆転だ

ん?普通ってピンチの女の子を男が助けてフラグ立たせるんじゃないのか?

何この真逆のシチュエーション、恥ずかしすぎんだろ

 

「なるほど……これは……流石にマズイな……」

 

「もう一度言います、武器を捨てて投降しなさい」

 

ドスの効いた声でフェイトが忠告する

なんだかんだ言っても時間さえ稼げば六課無双陣が到着するのだ、いくら地の利があるとしても抵抗さえ出来ないだろう

うーん、てか忠告する前に攻撃ってアリなのかね、思いっきりぶった斬ってたけど、あのままだったら

 

「だが私も、捕まる気はさらさらない!!」

 

「くっ、バルデイッシュ!!」

 

飛んで来たクナイをバルデイッシュでぶった斬るフェイト

うん、ぶった斬る、俺にはあんな離れ技無理だな

バルデイッシュの長い刀身のお陰、俺があれを真似したら爆風で振っとん仕舞う

 

「ネリア!!支援お願い!!」

 

「任せて!!」

 

再び展開される暴力スフィア

フェイトはその移動をもってチンクの懐に入ろうとするがガジェットが邪魔をする

チンクは俺の事を諦めているらしくフェイト達と戦闘はしないつもりだ、自身を守る様にガジェットを配置して距離を開けていく

しかし、ネリアの支援によってガジェットはどんどんその形を変え、スクラップと化す

今は距離を開けているのでよいが全てのガジェットが殲滅し終わった時……チンクは終わりだろう

 

「はぁ!!」

 

「くっ!!」

 

投影し、投げつけたクナイを全て無力化するフェイト

ガジェットに乗っての移動であるチンクとフェイトの機動力の差は歴然……チッ!!

 

「ネリア、収束急げ!!」

 

「怪我人が大声出さない!!てか収束!?」

 

直感で分かる、数キロ離れた場所で大規模な魔力反応!!

ヘリを攻撃した奴、って事は三番の機動力で下手な規則や連絡がある局員よりも早くここに着いたって事になる

アレを撃たれて……まだ六課隊長陣が来ていない状態での戦闘はマズイ

 

「よく分からないけど収束するよ!!どこに撃てばいい!?」

 

「俺が指示をする、動物達に被害が及ばないように!!」

 

くそったれ、体が軋む……あーもう、いつ気を失ってもおかしくない状態なんだぞ!!

 

方向は……南西、魔力レベルは推定S……これぐらいなら……楽勝じゃね?

 

念話でフェイトに引くように伝える、ネリアの砲撃じゃあ被害を及ぼしかねん

 

「それじゃ~、いっくよ~」

 

「やべぇ、意識朦朧としてきた」

 

あ~しんどい

 

最後に聞いたのはネリアの生き生きとした叫び声、それだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、見慣れない天井、ここどこ?」

 

「コルテット直属病院だよ、なんであの怪我で治るの?」

 

はぁ、と溜息をついて目の下には隈をつくったネリア、なんかごめん

それはそうと病院か……どこぞのホテルのスイートルームに見えるのは気のせいだと思いたい

 

「少なくとも肋骨が折れて腕にヒビが入ってる筈なんだけど……なんで?」

 

「意識失う直前に『自己回復能力』を主張してみた、効き目がヤバくてびっくり」

 

「わたしの方がビックリだよ」

 

あれだよ、この前入院した時に余りにも暇だったから考えたんだよな、今度入院したらこれ主張してみようって

てか骨まで治すとは……治療もしたとはいえ何と言う回復力

型月の世界だったらAぐらいいくんじゃないか?

 

「で、どれくらい寝てた?」

 

「丸々二日だね、いっぱいお見舞い来たよ、六課のみんなとかよく分からないお偉いさんとか、後者は玄関で帰したけどね」

 

「よく分かってるじゃないか」

 

ネリアもいちいち相手にするのが怠くなってきたな

 

「じゃあ……相手は?」

 

「それは……ごめん」

 

頭を下げられる、別に謝られる必要はないんだけど

 

「逃がしちゃった、砲撃がぶつかり合ってる時に……一応相手が使っていたと思う大砲はボロボロな形で発見されたんだけど……」

 

「そうか……」

 

て事はやっぱりネリアが押し勝ったんだな、当然か

それにしても………

 

「暗いな、ネリア」

 

「…………ごめんね」

 

また謝られた、いつもハイテンションなネリアらしくない

 

「私が我儘言ったせいで……こんな事になって」

 

「あ~、運が悪かっただけだよ、それに楽しかったしな、ネリアは何も悪くない」

 

「で、でも!!」

 

原作知識があるのに忘れていた俺にも非はあるわけだし、妹さんの我儘ぐらい聞きたいしな

 

チンクに負けたのも俺の判断ミスだし、はぁ

この頃全然な感じが凄い

 

「今回の事でネリアが思い悩む必要はないよ、すぐに退院できそうだし……また動物園行こうな……」

 

「………うん」

 

あ~、ネリアもやっぱり抱え込むタイプなのかなぁ……

こりゃ当分この調子っぽいわ

 


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