色々な出来事や苦難もあったが、プロデューサーの対処により、事は順調に進み、無事に撮影は終了した。
「よし、無事に撮影は終了した、今日は帰っていいぞ!!」
一同「はーい!!!」
「はぁ、もう、宣材写真なんか疲れたわよ〜...超絶可愛い伊織ちゃんがなんでこんなものを?水瀬財閥の娘だって言ったら、だいたい通用すると思うのにね...」
「伊織ちゃん、だめだよー!ちゃんと仲良くなる人には、挨拶しておかないと!」
「や、やよい、そうわよね...」
「あらあら〜、みんな若いのに、疲れた顔しちゃダメよ〜。みんなこれからなんだから、私みたいな歳の人に負けないように、してね〜」
「あずささん、貴方はそこまでの歳でもないでしょう?あずささんも、これからですよ!」
「そうかしらねぇ〜、律子さん、ありがとね〜」
「お安い御用です!なんだって、プロデューサーですから!」
プロデューサーが、その一言を告げると、皆、緊張が解れたようで、会話が始まった。
「こらー!みんな、気を抜いてるかと思うけど、来週は雑誌の取材が入ってるぞー!」
「雑誌の取材…!?」
その言葉を聞いた途端、皆会話をやめ、プロデューサーに注目した。
「そうだ。設立したてのアイドル事務所として、俺、そして社長の親友である取材の人が、取材にしにくる!その取材の内容は、後日雑誌で掲載予定だ。しかも、丸々10ページを使うらしい。これは、みんなのアイドル人生の第1歩だ。心してかかるように!」
一同「はい!!!!!!」
皆、かなり力が入っているようだ。
そりゃ、初めてのアイドルらしい活動だ。
これで、初めてみんなが世間に知られるんだ。
だが、力の奥には、緊張と心配が見え隠れしている。
そうか、俺も取材、受けるんだな…果たして、どういう風に掲載されるのか、楽しみだな…
「最初は、冬乃が受ける。そこから順次連絡してくから、心するように」
「え、ちょっ、また俺が最初なんですか??」
いや、また俺が最初?幾ら何でもおかしすぎる。
「ああ、やっぱり「男の娘」という今人気のジャンルのアイドルがデビューとなると、新しいアイドルジャンルの先駆け的人物になるだろうから、みんな優先的に取材などをしたいんだろうな」
「なるほど...」
やっぱり、男の娘アイドルってこの世界でもまだいないんだな...俺の世界でも男の娘という概念はあったけどアイドルはいなかったしなぁ...まぁ、業界は初物にすぐ飛びつくから、仕方ないっちゃ仕方ないか。
「とりあえず、来週の土曜あたりに冬乃の取材がある。冬乃以外は連絡を待っていてほしい!」
「わかりました、俺、頑張ります!」
「ああ、緊張すると思うけど、頑張って!」
「私たちは、家で待機ね...」
「うっう〜!楽しみですー!!!」
みんなは緊張はしているものの、楽しさの方が勝っているようだった。
「じゃあ、みんな解散!!!」
一同「はい!!!」
@
解散の言葉と同時に、皆が一斉に行動を開始する。
勿論、俺もだ。
「冬乃〜!!!」
「あ、春香姉ちゃん、何ー?」
春香が俺を見つけ、名前を呼びながら走ってくる。
どうせ、また一緒に帰ろうとかだろ?
「冬乃、一緒に帰らない??」
ほれみろ、やっぱりそうじゃないか。やっぱり春香はブラコンだな...
かくいう俺も春香が好きだから、今の立場で考えるとシスコンになってしまうのか...
「まぁ、別にお互いの見た目的に同性に見えるから、別に構わないけど...」
「やったー!ありがと!」
「お、おう...」
ゲーム内やアニメ内では笑顔を見たことはあるが、現実での笑顔は100%あり得ない。
その春香の笑顔は余計にリアルで、一瞬ドキッとしてしまった。
「あれ?冬乃、顔、赤いよ?」
「そ、そんなわけないだろ!!!」
どうやら赤面してしまっていたらしい。言葉遣いも少しおかしくなっている。
「あ、そりゃ冬乃も年頃の男の子だもんね、私の笑顔が可愛いからドキッとしちゃったんだよね〜!」
「そんなわけないだろ!!!」
春香が、自慢するかのように発言する。まぁ、その通りなんだけど...
「またまたぁ〜!」
「うるさい!!!」
春香に揶揄われてしまった。だが今は弟の立場だ。素直に喜べねぇのがしんどい所だ。
@
家に着いた俺は、すぐさま自分の部屋へと戻る。
「あれ、冬乃?ご飯は〜?」
「今日は食べないでいいよ!!」
春香にはそう告げ、自分の部屋へと戻った。
@
「はぁ〜!!!ようやく帰ってきた!!」
部屋のベッドへとダイブする俺。
「今日は色々ありすぎたな...」
ベッドにダイブしてしまうほど、精神的と体力的な疲れが現れていた。
今思えば、春香に朝から765プロダクションに連れて行かれ、あれよあれよという間にアイドル登録させられ、そのままスタジオへ移動、宣材写真の撮影と、いきなりすぎる事だらけで、疲れまくっていた。
「しかし、本当に俺はこれからどうなるんだろうか...」
俺はなんでこの世界へきたんだろう...前世がアイマス好きだったからか?それとも、この世界で男の娘アイドルを根付かせる為...?
ひょっとしたら神様の悪戯なのか...?
「それに来週は、いきなりの雑誌取材、かぁ...」
来週はいきなりの雑誌取材。おそらく取材してくれる人は善澤記者だろう。
まだ、緊張はしないだろうが、今まではアニメなどで取材されているアイドル達を「見る」立場だった。
だが今は取材を「受ける」立場だ。
「取材を受ける立場かぁ、緊張するなぁ...」
「行かん行かん、こんなことで緊張している場合ではない!」
そうだ、これからライブを行うまでになるかもしれない。そうなれば、緊張などしていられないのだ。
「考え事をしたら、少し眠くなってきたな...」
精神的にも体力的にも疲れたんだ、眠くなるのも当然だ。
そう思い、ベッドに横になり、少し寝ようとした。
コンコン
「ごめん、春香だけど、入っていい?」
「うん、いいけど...」
寝ようとしていた矢先、春香がドアをノックした。
おそらく何かしらの話があるんだろうが、何だろうか...
「それじゃ、入るね」
ガチャッ
少し申し訳なさそうな表情で、部屋に入ってくる。
「冬乃、なんかごめんね?いきなり765プロダクションに連れて行ってそのまま所属して、宣材写真まで撮って...」
「まさか、こんな大きな話になっちゃうとは思ってなくて...」
申し訳なさそうな表情と声色で、話しかけてくる。
「まぁ、そりゃ、最初は何でだよ!ってなったよ?」
そりゃそうだろ。
いきなりアイドル事務所に案内されて、勝手に「男の娘」アイドルとして契約させられて、写真まで撮って、更には雑誌取材の予定まで入ってしまったのだ。
何で?となるのは当たり前。
「でも、もうアイドルになっちゃったからには仕方ないんだ。新しい「男の娘」アイドルというジャンルの先駆者的存在になろうじゃないか、と割り切って、頑張ろう!って決めた」
もう、アイドルとして契約をしてしまった以上、後戻りはできない。
だから、この世界で男の娘アイドルとしての一番星になろと思ったんだ。
「冬乃...」
春香は感動しているようだった。
瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。
「わかった!私も一生懸命サポートするよ!だから、お互い、トップアイドルになろうね!」
「ああ!!!当たり前だ!アイドルになったからにはトップを目指すぜ!!!」
俺は春香と固い握手を交わした。
そうだ、ここからが俺の本当のアイドル人生の始まりなんだ...
この握手にはその始まりを春香と共に頑張るという合図だという事だ。
「んじゃあ、来週、取材頑張ってねー!!!」
「ああ、できる限り頑張るよ」
お互い、トップアイドルになることを約束し、もう一度握手をした。
@
「ふう、今日は
今日は待ちに待った(?)
「春香姉ちゃん、今日は一人で事務所に行くよ」
「え?大丈夫なの?電車とかわかる?」
「わかるって!というか、一人で行けなきゃこれからやってけないでしょうに」
「わかった!今日は、一人で行ってらっしゃい!私も応援してるから!」
「ああ、ちゃんと、アイドルに恥じない答えを出してくるよ!」
「うん!頑張れ!!!!」
俺に向けてガッツポーズをする春香。家の玄関の扉を開ける。
(さぁ、アイドルの名に恥じぬような取材を受けようじゃないか!!!!)
@
1時間電車に揺られ、765プロダクションの前へとたどり着いた。
「こないだは春香に腕を引っ張られて、事務所に入ったけど、いざ自分で開けるとなると、かなりの勇気がいるな...」
アニメでは皆軽やかにドアを開けていた。だが、現実になって見ると、ドアを開けることに抵抗を感じる。
ドアを開けたその先で、一体何があるのか。
事務所に入る=アイドルの扉を開けるということになるのだから余計に勇気が必要になる。
勇気を振り絞り、ドアを開ける。
@
ドアを開けると、他のアイドル達は誰もいなかった。
「あら、冬乃君、おはよう」
「おはようございます、小鳥さん」
「おはよう、冬乃」
「おはようございます、プロデューサー」
だが、やはりプロデューサーと小鳥さんはいるようだ。
「冬乃君、もう記者の方、来てるわよ?」
「は、はい!!!」
「まぁそう緊張しなくてもいいんじゃないか?俺と同じような考えを持ってるんだったら、これくらいすぐに乗り越えられると思う」
「そ、そうですかね...?」
なんてプロデューサーは無責任だ...
それって俺と同じだからお前もできるだろみたいな感じで言ってねぇか?
「さぁさ、冬乃君、早く!!!」
「は、はいぃ...」
小鳥さんに誘導されるままに、別室へと案内された。
@
「お、君が、天海春香君の弟の「天海冬乃」君だね?」
「は、はい」
「私は、善澤だ。この765プロダクションのアイドル達の個性に惹かれてね、専属記者をやっているんだよ」
やはり、予想は的中した。担当してくれる記者は善澤記者だった。
「君は、男の子なんだってね?」
「は、はい...でも、この見た目なせいで今流行りの「男の娘」と呼ばれますが...」
「まぁ確かに、君の見た目じゃ、そう言われるのも無理ないね。その白い肌、艶やかな髪、すらっとした体型、もはや同じ男とは思えない顔立ちと体型だよ」
「あ、ありがとうございます」
吉澤さんに褒められるとちょっとむず痒いな...
「君は、新しいアイドルのジャンルの「男の娘アイドル」になるんだってね?」
「はい...なるというか正しくは「させられた」というのが正しいですが...」
「はは、あの社長だから、仕方のないことだね」
いや、あの社長だから、で決めるようなものじゃないでしょうに...
アイドルになったら人生変わっちゃうんだからさぁ...
「じゃあ、インタビューを開始するよ。ここからの内容は殆どが雑誌に掲載されるから、よろしくね」
「は、はい!!!」
「緊張しなくていいんだよ!」
「いや、でも「掲載」という言葉を聞くと、やっぱり緊張しちゃいますよ...」
「まぁまぁ、とりあえず深呼吸して、リラックス。」
「はい。」
すぅー...はぁー...
深呼吸をし、呼吸を整える。
多少リラックスすることができた。
「大丈夫です、お願いします!」
「わかった。じゃあ、4つ質問をするから、それに直感でいいから答えて。」
「はい!!!」
「まず一つ目の質問だ。アイドルになった経緯について教えて欲しい」
「経緯、ですか...」
これ、正直に話していいのかな?でも、善澤さんも直感だって行ってたし、ここは正直に話すか。
「実は、自分からなりたくてなったんじゃなくて、春香姉ちゃんにここに連れてこられて、勝手にアイドルにさせて欲しいっていう風になったんですよね。」
「それで、無理だという話になりまして、帰ろうとしたら、双海亜美、真美が、「男の娘」アイドルはどうだ?っていう提案を小鳥さんにしまして...」
「で、小鳥さん経由で社長に話が伝わって、あれよあれよという間に...」
「ははは、勝手にアイドルにさせられた、か!」
「笑い事じゃないですよー!これで生活が変わっちゃうんですから!」
「まぁ、それは災難だったな。まずあの双子が音無さんに提案したのがまずかったのかもしれない。結構音無さんは妄想癖あるから、そういう事に興味をかなり示す人だからね...」
どうやらこの世界でも小鳥さんは妄想癖が激しいようだ。
「二つ目の質問だが」
「君は、アイドルになって何をしたい?」
「そうですね...」
アイドルになって何をしたい、か...
第一俺は自分で入ったわけじゃないからなぁ、これも正直に言うか。
「先程も話した通り、俺は自分自身の意思で入ったわけじゃないので、なんとも言えません。でも、何をしたいと言うと「みんなを笑顔にしたい」ですかね」
これは、正直な意見だ。
アイドルはみんなを笑顔にできるからこそアイドルなんだと思っている。
「ふむ、なるほど」
善澤さんが手に取ったメモをカキカキしている。
恐らく今までの俺の答えを簡潔にメモっているのだろう。
「それじゃあ3つ目の質問だ」
「休みの日はどう過ごしてる?」
お、まともな質問だ。
「休みの日は、学校の友達と一緒に遊んだり、家でダラダラとお菓子食べながらゲームしたり、普通の男子中学生と何ら変わらないですよ?」
普通に一般的な中学生だと休みの過ごし方なんてこんなもんだろう。
「ふむ...」
相変わらず善澤さんはメモをカキカキしている。
それであのレベルの雑誌が完成するんだから本当にすごい記者だ。
「それじゃ、最後の質問だ。」
「“アイドル“って、何だと思う?」
「難しい質問ですねー...」
出た、哲学的な質問。
でも、前世でプロデューサー業をしていた俺にとっては、簡単な物だ。
「やっぱり“アイドル“というものは、ファンや、俺たちを支えてくれるプロデューサー達を楽しませて笑顔にして、それに至らず、老若男女問わず笑顔にできる人たちを“アイドル“と呼ぶのかなと、俺は思います。」
「ふむふむ、なるほどなぁ...」
よっし、前世のプロデューサー業が此処で活きたぞ。
決して無駄じゃなかったんだ。
「よし、これでインタビューは終了だ。」
「はい、ありがとうございます!」
「だが、まだ少し付き合って欲しい」
「はい?な、何でしょう?」
一体何に付き合うって言うんだよ、オイ...
「2枚ほど写真を撮らせてもらえないか?」
「しゃ、写真??」
頭が一瞬真っ白になった。
写真?そんなの聞いてないって!!!
「そうだ。普段に近い感じの写真と、ちょっとアイドルっぽい写真とが欲しい。」
「わ、わかりました...」
いきなりすごい厳しい要求だなぁ...
俺は、その場でできる最大限の力を引き出して撮影をしてもらった。
普段通りの写真は、いつも通りの服装で、パーカーのポケットに手を突っ込み、外の景色を眺める姿。
「お、いいねぇ、様になってるよ!」
「あ、ありがとうございます」
様になってるも何も、いつもこんな感じだから様になってるとは言わないけど...
「じゃあ、ちょっとアイドルらしいポーズをして!」
「は、はい!!!」
とは言うものの、アイドルらしいポーズ、ねぇ...
いきなり言われるとなかなか思いつかないものだな。
その時、前世でのある記憶が蘇る。
@
「あー、この写真の子、めっちゃ可愛いじゃん...」
その写真に写っていたのは、ボーイッシュな格好をしながらもロングヘアーの綺麗な髪をして、手を前に出し、最大限の笑顔で写っている写真があった。
言うなれば「おいで」の構図だった。
@
前世のその写真を思い出した俺は、最大限の笑顔で、手を前に出し
「おいで」の構図を作った。
これが俺の最大限のアイドルらしいポーズだ。
パシャッ!!!!
「うん、いい笑顔だ...」
「そ、そうですかね?」
「ああ、他の女性アイドル達にも負けない可愛さがある。」
「///」
やばい、「かわいい」に反応してしまって、思わず赤面してしまった。
パシャッ!!!!
「ちょ、善澤さん!!!!!」
「はは、すまないね、少し可愛かったものだから、つい1枚取ってしまったよ」
「うぅ...」
善澤さんはやっぱり凄腕だ。
写真を撮るのも、いい瞬間を逃さず、素早く撮る。
「じゃあ、今日は取材、お疲れ様」
「はい、お疲れ様です!!」
そう言い、765プロのドアを開ける善澤さん。
だが、途中でその動きが止まった。
何だろう?何か俺に言う事があったのか?
「そうそう、さっき撮らせてもらった写真3枚、雑誌に全部載せる予定だからね」
「はっ!?ちょ、それは勘弁してください!!!!」
「ははは、じゃ、失礼するよ」
「ちょ、ちょっと、善澤さん!!!善澤さぁぁぁぁぁん!!!!」
ガチャン
嘘だろ、あれが雑誌に...?
やばくないか...?
「冬乃、大分焦ってるけど、大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃないですよ!!!あんな写真が掲載されたら俺は...うわぁぁぁぁ!!!」
「ちょ、冬乃!!!一旦リラックス!!!」
その日は、リラックスできたものの、ずっと1日恥ずかしいままだった。
後日、発売された雑誌に、あの3枚の写真が使われ「男の娘」と言う見出しが書かれていたせいもあったが、2ちゃんねるやSNSで瞬く間に拡散され、中学校中の色々な種類の視線を向けられるのは、言うまでもない。