俺はこの世界で男として生まれ、男として育った。
別に肌を露出する事や、裸でいる事に別に抵抗はない。
その筈だ、だが...
「ええ...いきなりこの場で裸になれ、と言われましても...」
「いいじゃないの!冬乃くん、男の子でしょ?だったら別に男の子の裸なんだし、写しても問題ないよね?」
MCは、最後の依頼として、今、カメラの回っているこの場で、服を脱いでほしい、と言われたのだ。
流石の俺でも、普段は裸に抵抗は無いが、カメラが回っていてしかもアイドルの初仕事、となると、やはり抵抗のあるものだった。
「ちょっと、MCさん!!!いきなりそれはひどいんじゃ無いですか!!!!」
「今は冬乃くんに聞いているんだ、姉である春香ちゃんは、黙っていてもらいたい」
「うっ...そんな...」
MCは姉、春香のコメントを一切聞こうとはしなかった。
「で、どうなの???冬乃くん!」
そのMCは、俺へとどんどんと詰め寄る。
その顔は、期待と欲望で溢れていた。
俺はあまりの勢いに圧倒され、喋れずにいた。その時だった。
「MCさん、ちょっと待った!!!!!」
助けに来たような声で、MCを止める。
「プロデューサー...!」
それは、撮影風景を見ていたプロデューサーだった。
俺への最後の依頼と、それを強要させるそのMCの態度にカチンと来たのだろう、MCに対してきれていた。
「君はこの子たちのプロデューサーだったよね???」
「そうです!!!うちのアイドルにこんなことをさせるのは許しません!!!」
「まぁまぁそう言わずに、この子は男の子なんだし、別に問題はないでしょ?」
「大ありです!!!この子は男の子、男の娘という見方ではなく、俺の大切なアイドルなんです!!!そんな大事なアイドルの困っている顔を放っておくのは、プロデューサー失格です!!!」
「プロデューサー...」
俺の事を大切なアイドルとして見てくれている、そして俺の事を守ってくれようとしている。
「わかったよ、この撮影は中止だ!!!テレビの事もなかったことにする!!」
「そんなこと承知の上です!!!!」
「ちょ、ちょっとプロデューサー!そんなこと言わなくてもやりますよ!」
「ダメだ、冬乃!嫌がっている事を無理強いさせることはできない、プロデューサーのやるべきことは、大切なアイドル達を守ることでもある。この依頼を取り消さなければこの仕事は受けられない!」
「わかったよ!それじゃあお前達、解散だ!!!」
プロデューサー、MC双方共々、キレながら別れる。
「ちょ、ちょっと待ってください!!!!」
思わず俺は双方を止めた。
「確かに俺は、男です。肌を見せても問題はありません。でも、俺は今は普通の男の子では無い、「男の娘アイドル」天海冬乃です。
アイドルとして、受けた仕事は全うしなればなりません。
そうしないと、お仕事を取ってきてくれたプロデューサーにも迷惑がかかります!」
「ふ、冬乃、そこまで言わなくても無理と言えばいいんだよ!?」
「いえ、ダメです。ここで俺が折れて仕舞えば、きっとこれから、765プロへの仕事の依頼など減ってしまうかもしれません。」
そして俺はもう一度声を大にして、こう言う。
「僕はアイドルです!!!受けた仕事は最後までやり切ります!!!」
「冬乃...」
春香とプロデューサーが、顔を綻ばせる。
「MCさん、さっきの撮影の続き、お願いできますか?」
「そう言うのを待ってたんだよ!冬乃くん!!!」
「皆!撮影続行だ!!!」
そして俺のその言葉で、また撮影環境が整った。
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「冬乃、本当に良かったの?」
「そうだぞ、冬乃、あまり無理しなくてもいいんだ。仕事は全部俺がとってくるよ」
「いえ、別にいいんです。ここで俺がしっかりとアピールをしておけば、これから先のアイドル活動、いや、765プロ全体への認知度上昇につながるかもしれないので...」
「冬乃、随分とプロデューサー業みたいなこと言うな...」
「でも、冬乃がそう言うなら俺は止めない。最後まで撮影をやり切ってこい!!!」
「はい!!!!」
「春香姉ちゃん、行くよ!!!!」
「う、うん!!!」
@
「それでは最後の依頼として、冬乃くんにはその場で服を脱いでもらいましょう!あ、もちろん上半身の服だけね!」
「わかりました!!!」
そして俺は、上半身に来ているパーカー、Tシャツ、シャツと次々と脱いで行く。
家で脱ぐ時は別に普通なのに、いざカメラの前で脱ぐと緊張するな...
「はい、脱ぎました!」
そして俺は上半身裸になった。
目の前のカメラ映像が流れモニターを見ると、上半身が裸になった俺が写っていた。
「冬乃くん、が服を脱いだ!だけど、胸もないし、少し腹筋も割れてる、やっぱり男の娘だ!」
MCはそう言うが、モニターを見ると、胸の部分が髪の毛で隠れていて、女の子に見えない事もなかった。
「と言う事で、男の娘アイドル、天海冬乃と!」
「その姉である、天海春香を」
「「よろしくお願いしまぁーーーーーっす!!!!」」
「はい、天海冬乃くん、天海春香ちゃん、お疲れ様でした!いやぁ〜、最後は「さすが姉弟!」って感じの
息ぴったりだったね〜」
「そんなこの2人のアイドル人生を、これからもみんなで応援していこう!!!以上、今日の「気になるアイドル、何してる?」でしたー!また来週、お会いしましょう!」
「はい、カットー!!!いやぁ、2人とも良かったよー!撮影お疲れ様!!!」
「はい、ありがとうございます!!!」
「プロデューサー君、これからもテレビ出演を依頼するかもしれないし、よろしく!!!」
「はい、ありがとうございます!!!!!!!」
@
「2人とも、今日はお疲れ様!」
「はい、お疲れ様です。プロデューサー!」
「今日の撮影すごく良かったよ。これで君達2人の知名度アップに繋がるな!」
「とりあえず、今日の撮影はこれで終了だ。2人とも、事務所に戻るぞ!!!」
「「はい!!!!!」」
@
その後、俺たちが出演した回が放送されるや否や、SNS、ツイッターなど、色々な場所で、「【朗報】「男の娘アイドル」天海冬乃ちゃん、マジで男の子だった」と言う記事が出来上がった。
そして、俺たちの知名度は急上昇したのであったが、その一方で、「天海冬乃ちゃん、極度の貧乳の女の子じゃないか説」も、出回るのであった...