天使の隣に・・・   作:海乃枕

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第1話~いかにして彼は彼女たちに救われたか~

 麗華の家で行われた新年会からの帰り道を一人で歩いていると、ふとアイツらとの出会った頃を思い出していた

 

 ちなみにともみとりんの二人は夜も遅いために麗華の家に泊まるらしい。俺もどうかと言われたが、さすがに女三人と男一人はまずいだろと言って家を出た。決して麗華のお父上の眼力に屈したわけではない。決して

 

話が逸れてしまった。彼女たちとの出会った頃の話に戻すとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 実を言うと俺に両親と呼べる存在はもうこの世に存在していない。今は母方の伯父夫婦の家にお世話になっている。

 

 というのも俺の母親は体が弱く、俺の小学校の入学式の日に病気でこの世を去った。

早すぎた母親の死というものは俺の心に深い影を落とした。

 

 それまで家事をしてくれていた母親の代わりに俺はできうる限りの家事をしていた。学校が終わったらすぐに家に帰って家事をしていた。

 そんなだから友人なんてものはほとんどなく、近所に住んでいた天ケ瀬(あまがせ)冬馬(とうま)くらいなもんだった。

天ケ瀬の家には随分とお世話になった。料理から洗濯、掃除のやり方まで俺の家事スキルの基礎はすべて天ケ瀬のお母さんから教わったものと言っても過言じゃない。

 

 母親がいない生活もさみしいものではあったが、周りに優しい人は多かったし何より父親と助け合って生活していくことが、必要とされているんだという実感もありなんだかんだ楽しいものだった。

 しかしそんな生活も終わりを告げる日が来る

 

 

父親が交通事故であっさり逝ってしまった。小学五年の年だった。

 

 

 幸いにも両親が亡くなった後も親戚の仲は良好で、子宝に恵まれなかった伯父夫婦が俺を養子としてもらってくれたため、今の天野姓を名乗っている。

 

 何も弊害がなかったかといえばそんなこともなく、さすがに両親と住んでいた家にそのままというわけにはいかず、引っ越しと転校を余儀なくされた。

 

 それ以降冬馬には会えていないが、元気にしているだろうか。まぁぶっきらぼうでも根はやさしいアイツの事だから心配はいらないと思うが。

 

 生活に困ることはなかった。しかし自分で言うのもどうかと思うが、両親の死による心の傷は非常に深かった。

 元々少なかった友人はいなくなり、新しい小学校なんてものにも行く気はさらさらなかったが、天涯孤独の身になった俺を迎えてくれた伯父夫婦に必要以上に迷惑をかけたくなかったこともあり重い体を引きずりながら行った教室で出会ったんだ。俺の人生をいとも簡単に、ガラッと変えやがったあの三人に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 転校初日、新しい教室で指定された窓際の席に座って外を眺めながら休み時間を過ごしていた時だった

 

「そんな怖い顔してて楽しいの?」

 

りんが急にそんな言葉を掛けてきた。それに対し当時の俺は

 

「余計なお世話だ」

 

とか言って突っぱねた。そんな風に冷たくあしらったというのにしつこく話しかけて

 

「笑った方が楽しいよ?ほら笑う顔には福来るっていうじゃん?」

 

「それ初めて聞いたことわざだな」

 

テキトーに返していたらともみまで会話に入ってきた。

 

「顔じゃなくて門だよりん」

 

「え~?顔の方がわかりやすいじゃん!」

 

「わかりやすいとかそういうことじゃないよ。テストとかの問題で出たとき間違えちゃうよ?」

 

「ま、まぁ笑った方が楽しいし幸せになれるんだよ!ほら笑って笑って!」

 

「笑ってる方が良いっていうのは間違ってないし私も同意見かな」

 

「というか誰だよお前ら。なんで初対面の相手にそんなに馴れ馴れしいんだよ」

 

「名前教えたら笑ってくれる?」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

「あっでも人に名前を訊くときは、自分からってよく言うよね!」

 

「めんどくせぇ・・・じゃあ誰でもいいからとっとと自分の席に戻ってくれよ」

 

「じゃ、戻ろっかともみ」

 

「そうだね」

 

そう言ってりんは自分の席に戻り、ともみはそれについていった。

 

「・・・なんで俺の前の席にいるんだよ」

 

「アタシの席ここだもん。気づいてなかったんだぁ?いひひっ」

 

 俺は不思議で仕方なかった。どうして冷たく当たったというのにこいつらは俺に怒りや不満ではなく笑顔を向けてくるのか

 

 その答えが知りたくて、ついつい訊いてしまった。

 

「なぁ、なんで俺なんかにそんな笑顔で話ができるんだよ。普通話しかけられたのに冷たくされたら怒るとかするだろ」

 

「なになにぃ?そんなに気になるのぉ?」

 

「質問に答えろよ」

 

「さっきも言ったけどさ、笑ってる方が絶対楽しいもん!アタシはみんなに笑ってほしい!それが理由じゃダメ?」

 

 好奇心猫を殺すという。なるほど確かに両親の死から生まれた笑うことのない俺は、こいつの、りんのまぶしすぎる笑顔に殺されてしまったらしい

 

「はぁぁぁ、お前ら、すごいわ。天野翔。飛翔のしょうでかけるだ。好きに呼んでくれ。お前は?」

 

「ん~じゃあしょーくんって呼ぶね!」

 

「結局お前の名前はなんて言うんだよ・・・」

 

「あっ、アタシは朝比奈りんだよ!ひらがなでりん!りんでいいよ!こっちは「三条ともみ。私もひらがなでともみ。ともみでいいよ。よろしく」話遮らないでよぉ~ともみぃ!」

 

「りんに紹介されたら何言われるかわからないからね。仕方がないよ」

 

「むぅぅぅぅぅ!」

 

「くくっ、あははっ、お前らといると退屈しなさそうだわ、こちらこそ、これからよろしくな」

 

「あっやっと笑ってくれたぁ!」

 

「なんだよ、人が笑うのがそんなにおかしいのかよ?」

 

「ぜぇ~ぜん!笑ってる方がやっぱいいよ!うん!ねっ、ともみ!」

 

「うん、笑ってる方がずっといい」

 

「アンタら私を抜きに何盛り上がってるのよぉ」

 

「あっ、麗華!今日転校してきたしょーくんがね、やっと笑ったんだよ!あっ紹介するね、隣のクラスの「東豪寺麗華よ。まぁよろしく」なんで遮るのさぁ!」

 

「アンタに紹介させたら何言われるかわかったもんじゃないもの。仕方ないわね」

 

「天野翔だ。よろしく東豪寺。・・・ん?東豪寺ってあの大財閥の東豪寺か?」

 

「・・・えぇ、そうよ」

 

「ほぉ、じゃあお前は大財閥のお嬢様ってわけだ。こいつは失礼いたしましたお嬢様?」

 

「なんで同じ学校のやつにそんな扱いされなきゃなんないのよ。やめてもらえる?」

 

「ん?こいつはすまん。じゃあ俺はなんて呼べばいい?」

 

「東豪寺でも麗華でも好きに呼べばいいわよ」

 

「ん。そうかよろしく、麗華」

 

「えぇ、こちらこそよろしく、翔」

 

 

  

 気が付けば一人だった俺の周りには麗華、ともみ、りんの三人を架け橋にいろんな奴が集まってきていた。

 

こうしてアイツらは絶望のどん底にいた俺をいともたやすく救いあげてみせた訳だ。

 

 だから俺はそんなアイツらの笑顔が何よりも好きだし、アイツらの笑顔を曇らせる存在が許せないし、笑顔でいてくれるならなんだってやってみせる。

 

 絶対アイツらには恥ずかしくて口が裂けても言えないようなことを思いながら、玄関をくぐった。




話をどう閉めていいかがいまいちしっくりこないんだよなぁ・・・

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