天使の隣に・・・   作:海乃枕

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気が付けば早2か月近くが経っていた・・・

まだ読者が残ってるかわからんけど、読んでくだされば幸いです


第4話~彼女はいかにして彼の事を想うようになったか~

私、東豪寺麗華は自分で言うのもあれだけどお嬢様だ。

 

日本屈指の大財閥、東豪寺財閥の令嬢で一人娘だから周りから蝶よ花よと育てられた。

 

お母様は当然のことながら、お父様も跡取りとして息子が欲しかったそうだけど、それでも私に対して多くの愛を注いでくれた。

 

それと同時に東豪寺財閥の令嬢として相応しい女になるために厳しい教育も受けてきた。

 

一般に学校で学ぶ事だけでなく、人の上に立つ者としての立ち振る舞いも学んできた。

 

昔からお前は人の上に立つ人間だと言われて育ってきた。また、人に対して簡単に頭を下げるものじゃないとも言われてきた。

 

簡単に頭を下げると見下される、足許を見られると。それは許されないと思った。

 

だって私は、東豪寺麗華は、東豪寺財閥の令嬢なのだから。私が見下されるのは東豪寺財閥が見下されるのと同じことだと思ったから。

 

学校はお父様がいろんな人と接することで人を見る目が育つとの事で、普通の子と同じように近所の公立校に通うことになった。

 

周りの子たちの家は私の家と比べて家が小さい子しかいなかった。当然といえば当然。東豪寺財閥は日本屈指の大財閥なのだから。

 

私の家と同じくらいの家なんて、時折お父様に連れられて行くか、自宅で行われるパーティーで会う水瀬家くらいのものだった。

 

それでも年に数度会うか会わないかだし、普段接するのは学校の自分より言い方が悪いけど格下の家の子だった。

 

さっきも言ったけど簡単に頭を下げるなと言われてきた私は、周りに対して素直に謝ることができなかった。

 

謝れば、頭を下げてしまえば、それは東豪寺家を貶めることになると思ってたから。

 

そんなことを続けてれば私が学校で一人ぼっちになるのも当然の事だと思う。

 

でも私はプライドを捨てきれなかった。今思えばそんなものプライドとすら呼べない小さな自尊心なのかもしれないけど。

 

数年前の私はその自尊心が何よりも大事だった。私は東豪寺家の娘だと思ってたから。東豪寺家の娘でしかなかったから。それがなくなってしまえば当時の私には何もないと幼いながらにわかってたから。

 

みんな私の事を『東豪寺』としてしか見てないことをわかっていたから。

 

そんな私を初めて『東豪寺』としてじゃなくて『麗華』として見てくれる人ができた。

 

それがりんだった。りんの持ち前の人懐っこさと天然なのか計算なのかわからない言動で私は『(東豪寺)』じゃなくて『(麗華)』でいることができるようになった。

 

りんと過ごすうちにりんの友達だったともみとも仲良くなれた。

 

三人で過ごすようになってからしばらくすると一人の男子が転校してきた。

 

アイツの名前は天野翔。

 

りんは私の時と同じように、あっという間にアイツと仲良くなってしまった。ともみもなんだかんだですぐにアイツと打ち解けた。

 

私はというと、なかなか打ち解けることが、心を許すことができなかった。

 

私自身で普通に接してくれて構わない。むしろそうしてくれと言ったけども、やっぱりどこか壁を感じていた。

 

違う。自分から壁を作ってた。りんやともみとは違う。コイツも結局のところ東豪寺としてしか見てないんだろうと思い込んでた。

 

そう思ってたのに。アイツは、翔は違った。私に他の人と何も違わない言葉を投げてきた。

 

翔の言葉はまっすぐだった。私はそれが気に食わなかった。私は東豪寺なんだぞって。自分でそう見られるのが嫌だったはずなのに、アイツには、翔にはなぜか負けたくなかった。

 

りんとともみを盗られた様な気がしてたのかもしれない。

 

アイツとはいつも口ゲンカばっかりするようになった。もしかしたら嫌われるかもしれない。でも負けたくない。そのうちに段々と私の事を『(麗華)』として見るようになった人が増えてきた。

 

確かに東豪寺の娘だとしか見てなかった人たちも、翔がまっすぐにぶつかってきたから、じゃあ自分もというように私に壁を作らずに接してくれる人が増えた。

 

私はその時に臆病になってただけなんだって気づいた。相手に嫌われたらどうしよう、相手を傷つけたらどうしよう、同じ立場で話したいのに壁を作られたら、気安い態度をとって東豪寺が下に見られたらどうしようって。

 

りんが相手との懸け橋になってくれた。ともみがフォローしてくれた。間違えた時には翔が一緒に謝ってくれた。

 

私は、りん、ともみ、翔の3人のおかげで変わることができたんだ。

 

だから私は、3人には感謝してもしきれない。でもそれとは別に翔に対してどこかもやもやする気持ちを抱え始めてた。

 

そばから見てて翔と一番仲がいいのはりんだ。一番最初に話しかけたのがりんだし、そうなるのも当然だと思う。

 

私の大事な友達同士が仲がいいのは嬉しい。嬉しい事のはずなのにどうしてか、あの2人が仲良くしてると胸の奥でもやもやして気持ち悪くなる。

 

そんな自分が嫌になってきてた頃、中学の入学式があった。翔とは同じクラスになれたけど、りんとともみは違うクラスになってしまった。

 

クラスが違ったって同じ学校の同じ学年なんだからいつでも会えるし、それにクラス決めの結果にとやかく言っても仕方がないのも分かってた。

 

でも自分の中のどこかに翔とりんのクラスが違うことにホッとしてる自分と、翔と同じクラスなのは私だけだというよくわからない優越感を感じてた。

 

少し自己嫌悪が入ってた時だったからだろうか。翔と本気のケンカをしたのは。

 

翔は私にもう少し素直になれって、もう少し発言をオブラートに包めって言ってきた。私だってそうした方が良いなんてことはわかってる。

 

でも素直になって嫌われるのはやっぱり怖い。でも思ったことは、感じたことは包み隠さず相手に伝えた方が相手のためにもなるって思ってた。

 

そのせいでいつも翔とかともみに負担をかけてたのも分かってた。でもどうしてだろうか、あんなに近くに感じてた翔が一瞬遠くに感じてしまった。

 

そのせいなのか私もつい、かっとなってそんなことしなくていいって言ってしまった。

 

違うのに。本当はありがとうって、迷惑かけてごめんって伝えたかったのに。

 

家に帰って、やっちゃったって思った。どうして私はいつもうまく自分の気持ちを伝えられないんだろうって、そんな自分がいつも嫌になる。でもいつもの口ゲンカの延長線みたいなもんだと思ってた。

 

次の日、翔は私と口を利いてくれなかった。きっと明日になれば機嫌を直してくれるだろうって。

 

そんな事を思いながら1週間が過ぎた頃には、謝らなきゃって思い始めた。でも謝れなかった。翔と話すのが怖かった。またかっとなって言いたくないことを言っちゃうんじゃないかって。

 

翔と話さなくなって2週間が過ぎたあたりで私は翔の事が好きなんだって気づいた。でもその気持ちを自覚してしまったら、どんな顔して、どんな話をすればいいかますますわからなくなった。

 

このままじゃ翔がどんどん遠くなっていくのは頭ではわかってた。でも、心と体が動いてくれなかった。ついてきてくれなかった。

 

その夜私は自分の情けなさで枕を濡らした。

 

そんな時ゴールデンウィーク中に東が急病で、代わりの執事が来ることを聞いた。

 

誰が来ても変わらない、誰でも一緒だって思ってた。

 

だけど違った。代わりの執事はアイツだった。翔だった。

 

アイツの顔を見ただけで嬉しくて心が跳ねるようだった。アイツの顔を見ただけで苦しくて逃げ出したくなった。

 

アイツがかしこまった挨拶を私にした瞬間、私はとても言い表せない寂しさを覚えた。

 

嫌だ、やめろ、そんな風な喋り方をするな。なんで、なんで、なんでアンタがそんな風に壁を作った話し方をするんだ。

 

辛くて、苦しくて、何も言えなくなりそうで、やっとの思いで、絞り出した、久しぶりに彼に放った言葉は、

 

 

「なんで、なんで、アンタがここに、しかもそんな恰好でいるのよ・・・っ!」

 

 

彼に対する謝罪の言葉でも、感謝の言葉でもなく、私の力になろうとした彼を突き放す言葉だった




読み返してて、描写が足りなかったように感じたので麗華の心理描写回を挟んでみる試み。

心理描写は書いててなんだか筆が乗って、過去最高文字数に。

これからもちょくちょく挟んでいこうと思いましたまる。

次回投稿日はいつものごとく未定です。気長に待ってもらえると幸いです。
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