偽物の英雄王〜inオバロ〜   作:蒼天伍号

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かなりギルの好き勝手にギルド弄ってますが基本的にかつてのギルメンは拠点に興味がなく己の目標に真っしぐらだったので防衛、運営は全てマスターであるギルに一任されていました。
だからこそ己の趣味と性能を考慮してギルはウルクと守護者の作成に四苦八苦したどうでもいい設定があります。


冥界の守護者・一

「ではアナよ、そこの小娘と遊んでくるといい」

 

「……なぜですか?」

 

 一人残したアナを玉座の間に連れて行き、そこに待たせていた巫女姫と会わせてみた。

 俺としては同じような外見年齢の二人ならば仲良くなれるだろうし未だ緊張気味の巫女姫のメンタルケアにもなると思っての行動だったのだが。

 

 アナはひどく面倒臭そうな顔で問い返してきた。

 

「なぜ、か。……そこの小娘はな、つい先刻まで一部の人間どもの操り人形にされていたのだ」

 

 なのでここは一つ小芝居をすることにする。

 

「それと何か関係が?」

 

「あるとも。小娘に付けられた魔導具は付けたら最後、外した途端に正気を失うものだ」

 

「……」

 

 事実である。叡者の額冠は外した者に永続的発狂を付与する。そして使い物にならなくなったソレは暗部によって始末される。

 

「つまり延々に操り人形になるしかない運命だった。……だがそんなものはつまらなかろう?故に攫って来たのだが、どうしたものか。特に使い道がない故、こうして放っているのだが俺は別に幼子が好きというわけではないからな」

 

 嘘である。本当はすごく大好きだしアナもペロペロしたいがそんなこと英雄王がする筈もない。故にしない。……たぶん。

 

「……最後に嘘をついたのはバレバレですが、まあ、そういうことなら私が遊んであげないこともありません」

 

 こいつ、意外にチョロかった。フードの端を掴んで必死に顔を隠しているが頬がほんのり赤いのはバレバレである。ついでに俺のロリコン癖もバレバレである。

 

「何のことか分からんがそういうことなら貴様に任せよう」

 

 そう言ってさっさとこの場を去る。

 まさかアナにバレていたとは。これはもっと自重せねば英雄王の名に傷を付けることになりそうだ。

 

「……ホント、バカな人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に巫女姫のお守役も見つかった俺は、今更ながら各階層の守護者の元へと向かうことにした。

 

 先の会議で判明した『俺、あんまり敬われてない説』を検証するためだ。杞憂であってほしいが望みは薄い。

 

 とりあえず、一階層から訪ねていこう。

 

 

 

 第一の門:隠密領域

 

 ゲートで一層の深部まで来てみた。そこは鬱蒼とした木々が敷き詰められた薄暗いただの森だ。

 しかしながら彼ら忍の能力を活かすならばこのような場所こそ最適である。

 

 そんなことを考えながら一層を回ってみたが、モブの忍がポップしているくらいで小太郎も千代女も段蔵も居なかった。

 

「皆出払ってるのか……いや、一層丸々守護者不在ってどうなのだ」

 

 

 まあ、問題はあまりなさそうだが。

 

「三層のアイツさえいればなんとかなるとは思うが」

 

 思いつつ今度は二層の『鬼の御殿』まで転移する。

 

 

 

 

 

 

 第二の門:鬼の御殿

 

「おや、旦那はん。うちらのとこまで来るなんて珍しい」

 

「酒呑か。なに、ちょっとした視察のようなものだ、気にするな」

 

 転移して御殿に入って早々に畳で酒を呑む酒呑童子と出会った。彼女もこの階層の守護者として設置されたNPCだ。

 随分と寛いでいるように見えるが仕様だ。

 

「ところで巴と茨木はどこだ?」

 

「ああ、茨木なら手下の鍛錬で、巴はんは……分からんなぁ」

 

「そうか」

 

 茨木は根が真面目だから鍛錬しているのには納得。というか鬼どもは基本自由な気質を設定しているので特に問題はない。

 だが巴は比較的生真面目に設定している。

 

「探すか」

 

 思い立つや御殿内の捜索を開始した。

 

 回廊を歩いているとこの御殿もなかなか凝った作りをしたものだと自画自賛してしまっていた。

 

 基本は日本の城と同じ作りながら妖しい輝きを御殿全体が放ち所々に鬼の絵が描かれていたり、卑猥なことに使いそうな部屋があったりする。吉原とかにあるあの桃色っぽい部屋だ。

 

 うわぁ、こりゃ巴ちゃんも気が滅入るはずだ。

 

 真面目な彼女とは根本的に合わない作りである。加えて同僚全て鬼というまさに鬼畜仕様。我ながら巴ちゃんに何か恨みがあったのかと問いかけたくなる。

 

「これは人事異動も考えねば」

 

 そうこうしていると天守閣まで辿り着いてしまった。奥には次の階層に続く『第二の門』通称ゲートがある。和風の背景に石造りの無骨な門が鎮座する様はなかなかシュールだがそんなのはどうでもいい。

 

 ふと、頬を撫でる風を感じ目を向けてみると

 

「なるほど、上か」

 

 窓の一つが開け放たれそこから酒気を纏った甘ったるくて生温い風が流れ込んでいた。この風を浴びればもれなくバッドステータス付与である。

 しかしながらここを守護する鬼どもには寧ろバフを乗せてくれるありがたい風でもある。

 無論、俺は宝物庫内の宝具でシャットアウトだ。

 

 とにかく巴に会うべく窓から外へと乗り出し、屋根の上へと登る。

 

「探したぞ」

 

 そこには、ぼんやりと外を眺めながら座り込む巴の姿。

 

「マスター? 珍しいですね、何か御用でも?」

 

 俺に気付いた巴は不思議そうに首を傾げる。

 

「なに、大したことではない。単なる視察だ」

 

 よっこいしょ、と心の中で呟きながら巴の隣に座る。

 

「時にトモエよ、貴様、外に出てみる気はあるか?」

 

「はい?」

 

 唐突な問いに巴は素っ頓狂な声を出した。

 

「今、外の様子を忍とハサンどもに偵察させているが、俺の推測が正しければまず間違いなく人の住む街を見つけることだろう。街があるということは九割方国が存在する。それも一つとは限らん。

 ならばそれらを調べ“見定める”のも俺の役目よ」

 

「何が、仰りたいのでしょう?」

 

「つまりな、その時に調査に出向くメンバーに貴様を加えようという話だ」

 

「巴を、でございますか?」

 

 驚いたような顔をしているが、実際、ウルクNPCの中でも比較的常識人寄りな彼女だからこそ付いてきてもらいたいのだ。

 

「ここの鬼どもの中では貴様が一番良識的だ。加えて乱戦の心得もある。臨機応変に対応できるからこその選抜だ」

 

 彼女は戦闘能力においてもバランスがいい。遠近どちらとも対応でき、かつ『乱戦の心得』というスキルのおかげで彼女は乱戦においてこそ真価を発揮する。

 

「なるほど、承りましてございます」

 

 得心がいったと頷きこちらに平伏する巴を見て、彼女は比較的忠誠に厚いと判断する。というか原作からして特に裏切ったりとか心配いらなかった。

 

「ふ、期待しているぞ」

 

「はい! 巴にお任せください!」

 

 とびっきりの笑顔で答える巴に俺も満足しながら頷く。

 ……さっきは少し暗い雰囲気を纏っていたから咄嗟に言ってみたが、楽しみにしてくれているようで安心だ。

 

「それと、連絡さえ取れるなら別にこの階に留まることもないのだぞ?息抜きに他の階層にも出向いてみるといい。有事に動ければ問題ない」

 

 最悪『メッセージ』で事足りる。

 

 俺としては気を遣ったつもりだったのだが巴は少し困った顔で首を横に振った。

 

「お心遣い感謝します。ですがここの守りを任されている以上、責務を疎かにするわけにはいきません。お気持ちだけ受け取っておきますよ」

 

 そう優しく微笑みながら言う彼女に、俺は「なんていい子なんだ」と感激した。

 

「そうか。では任せた」

 

 そして改めて巴に階層守護を任せた俺は『第二の門』を潜り次の階層の視察へ。

 『第三の門:鮮血神殿』へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 第三の門:鮮血神殿

 

 門を潜った先に広がるのは古代ギリシャを思わせる白亜の神殿……ではなく石造りの壁の至る所に紅い線が這っている少々グロテスクな神殿である。

 神殿内の随所に『原初の母』より生まれ出でたとされる古代バビロニアの魔獣たちが巣食っている。

 中でもウリディンムがよく見かける個体だ。

 こいつは戦闘時においては二つ名のごとくまさしく『狂犬』として侵入者に牙をむく頼もしい存在だが、非戦闘時の今のような平時にはどうやら大人しいらしく今も目の前で毛玉を転がして遊んでいる個体や丸まって昼寝している個体、果てはじゃれ合う個体までいる。

 

「こいつら意外に可愛いな」

 

 曲がりなりにも中級モンスターのくせになんとも可愛げのある奴らである。

 

 他にもこいつの親玉みたいな見た目をしたウガル、毒蛇の二つ名を持ちながら完全に竜にしか見えないバシュム、龍の二つ名を持ちながらも四足歩行の猛獣(炎上)にしか見えないウシュムガル、某青髭の旦那の海魔の色違いみたいなムシュマッヘ、イッカクみたいに鋭いツノが生えたムシュフシュ。

 ここまではfgoでも出てきた魔獣たちだが、グリフォンみたいな鳥人間みたいな姿で神殿内をチョロチョロしているのはウム・ダブルチュという『原初の母』の子どもの一種。他にも『牛人間』と呼ばれるミノタウロスみたいなクサリク、人魚まんまなクルルがいる。

 

「おや、偉大なる王。我らのような卑しき魔獣の住処まで足を運ばれるなど珍しい。何用ですかな?」

 

 そして目の前で膝を折りながら胡散臭い口調で流暢に喋るのがギルタブリル。

 この鮮血神殿において前線指揮官を担う魔獣の頭脳と呼ぶべき存在だ。

 

 ギルタブリルは原作においても姿形の詳しい記述が無かったので好き勝手に作らせてもらった結果、見事に褐色美女になってしまった。

 中東の踊り子のような服装ながらその身体は程よく筋肉が付いていて引き締まった、有り体にいい身体をしている。

 

「ギルタブリルか、久しいな。なに、単なる視察よ」

 

「それはそれは、ならば我らが“母”にもお会いしていかれるか?」

 

「ふむ、それは()()()のことを言っている?」

 

 俺の問いにギルタブリルは嬉しそうに笑みながら答える。

 

「無論、我らが()()()()にございます」

 

 

 

 

 

 

 ギルタブリルの案内により鮮血神殿最奥までやってきた。

 神殿内で最も巨大で荘厳な大扉を抜けた先にあるのは、闘技場にも似た巨大な円形のホール。天井から放射線状に広がる赤い線はこの階層の守護者たる“彼女”の能力だ。

 

 その奥、『第三の門』と呼ばれるゲートの前にて鎮座するのが第三階層を守護する魔獣の女王。今は巨大な黄金の翼で身体を覆っているために蛇身しか見えない。

 

 ふと俺らの存在に気付いたのか翼がピクリと反応する。俺たちの歩みに応じて両翼がゆっくりと開かれ中から妖艶とも神々しいとも『デカァァァイ!!』とも言える女体が現れた。

 

「貴様か、何の用だ?」

 

 出会って早々辛辣な物言いである。しかしこいつには忠誠心とか別に設定してないので仕方ない。

 

「息災であったか()()()()()

 

 俺の挨拶に彼女は「フン」と鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。おまけに彼女の髪の先にある蛇たちもシャーシャー言ってる。

 いやぁこれは見事に懐かれてませんね。

 

「地上を治める至高の王が地の底にある獣の園まで赴くとは、我の手を借りねばならん事態でも起きたのか?」

 

 皮肉にも聞こえる物言いは不敬を通り越して敵意すら感じるが、他ならぬ彼女の言うことなので気にならない。寧ろ彼女が言うと愛しく思えて仕方ない。

 

 俺は彼女に多大な借りがあるのだ。

 というのも彼女がウルク防衛ラインにおける第一関門としてユグ時代に数多のプレイヤーを血祭りに上げてきたことに由来する。

 

 ここウルクもギルドホームである以上、少なからず侵攻に晒されることもあった。その際はまず第一階層の忍たちのいやらしいゲリラ戦法によって情報分析を行い、第二階層の個性的な鬼たちとまさしく鬼神のごとき強さの守護者たちによって消耗させ、その上で鮮血神殿の上位モンスター群・通称『十一の魔獣』の猛攻を与え最後の掃討戦としてウルク100LvNPCの一人、ゴルゴーンが立ちはだかるのだ。

 これまでの侵攻の大半は大した脅威でも無かったので大体、第二階層かゴルゴーンの圧倒的個体性能で追い払っていた。

 

 故に彼女はこのウルクで最も階層を守護した実績のある、ある意味、功労者であると言える。そんな彼女に対して俺は多大な感謝を抱いている。

 まあ、キャラ的にもゴルゴーンは大好きなわけだが。

 

「何を言う、俺はいつもお前の働きには感謝しているのだぞ。度重なる侵攻においてお前が屠った雑種の数はどの守護者よりも上だろうよ」

 

「……褒めても何も出んぞ」

 

 素っ気ない物言いに反して頬がほんのりと赤い。加えて尻尾の先がパタパタと激しく揺れている。犬かこいつは。

 分かりやす過ぎる反応に少し虐めたくなる。

 

「いや、俺は事実を述べたまでよ。その功績、俺も鼻が高い。これからも俺に力を貸してくれると嬉しい」

 

「……考えておこう」

 

 満更でもないような顔してる彼女を見て安堵に胸を撫でおろす。あり得ない話ではあるが、一切の忠誠を設定していない彼女が万が一にも叛逆を企てたなら少なくない犠牲が出たことも事実だ。

 加えてこの鮮血神殿内は彼女のフィールド故に、俺とて気を抜けば生命力を吸い取られた挙句に溶かされていた可能性を思うと素直に嬉しい。

 

「感謝する。ではこれからもギルタブリル共々活躍を期待しているぞ」

 

 言って側のギルタブリルの頭を不意打ち気味に撫でてやると、一瞬驚いたような仕草をしたあとだらしなく頬を緩ませる褐色美女が出来上がった。こいつも可愛いな。

 

「さて、残りの階層の視察に向かうとするか」

 

「あ……もう、行くのか?」

 

 残り四階層の視察も終わらせてしまうべくゲートを潜ろうとすると、後ろでゴルゴーンが妙に寂しそうな声をあげた。……一瞬、信じ難いその現象に固まってしまったのは内緒だ。

 

「いや、別に名残惜しい訳ではないが……随分と呆気なかったのでな、そ、その、ほら! 細部までしっかり見ていかんと反乱、とか、考えているかもしれんぞ? ふ、ふふふ……」

 

 軽くキャラ崩壊を起こしている彼女をしばし冷静に観察する。

 

「な、なんだその目は? よもや忘れたわけではあるまい、私は魔獣を統べる女王。人間に対して恨みも一入な邪悪な復讐者なのだぞ?」

 

 そうだな、そういう設定だったはずだ。確かにお前の言い分は正しいよ。というかこいつ単に寂しかっただけみたいだ。

 

「だから、ほら……ええい! その見透かしたような薄ら笑いを止めろ!!」

 

 えー、でもゴルゴーン、君、可愛過ぎない? 一連の動作を動画に収めて見返した方がいいよ絶対。

 

「き、貴様ぁ……!!」

 

 顔を真っ赤にしながら髪を逆立て始めた彼女に、俺もいよいよからかい過ぎたと先を急ぐ。

 

「よい、よきにはからえ」

 

 最後に生暖かい視線を送りながら静かにゲートをくぐった。

 

「おい待て! ギルガメッシューーー!!!!」

 

 うわ、ゲート内にも響く咆哮とか、神殿の魔獣もさぞ怯えているに違いない。

 そう思いつつ俺は四階層へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第四の門:平安京

 

 降り立つのは巨大にして幻想的な都の外郭、外壁の外だ。この地は演出上、夜空が一日中覆うフィールド。あとは酔っ払いの民間人風雑魚モンスターがたまに現れる他は特にギミックのない……いや、一つだけ特大のギミックがあった。

 この都を覆う強力な魔除けの結界、五芒星を描く原始的だからこそ強力な結界ともう一つ。裏と呼ばれる二重三重の結界だ。

 

 まあ、細かいところは省くがそれら結界に加えてこの階層の本懐。対魔性に特化した精鋭部隊。

 

主人(あるじ)どの!」

 

 噂をすれば外壁の上からこちらに手を振る我が忠犬・牛若が現れた。

 なんであんなところにいるのかは不明だがフットワークの軽い彼女のことだ、考えるだけ無駄である。それよりもその痴女ファッションのまま駆けずり回るのは如何なものだろう。

 まあ、俺の設定の所為だがな。眼福眼福。

 

 壁から飛び降り嬉しそうな顔でこちらに突撃してくる牛若丸をしっかりと腰を据えて受け止める。

 うっ、結構勢い強いな。

 

「主人どの〜」

 

「おー、よしよし。相変わらず元気がいいなお前は」

 

 胸板にスリスリしてくる彼女の頭を優しく撫でてやると更に甘えた声で抱きついてきた。

 

 こいつは問題なさそうだ。

 

「おお、殿が急に走り出されたので何事かと思えばマスターではありませぬか」

 

「さっきぶりだな弁慶」

 

 遅れてやってきたのは僧衣に身を包んだ巨漢の薙刀使い、しかしてその本懐は仙人という武蔵坊弁慶。

 

「マスター自ら出向かれるとは珍しい、何かありましたかな?」

 

 用がないと来ちゃいけないのかよ、どいつこいつも冷たい。

 などとは思わずさっきまでと同じように用向きを伝える。

 

「視察だ。と言っても簡易的なもの故、そう畏まらずとも良いぞ」

 

 お前の主人なんか王の胸板に頬ずりしてるからな。

 

「ははは、我が主人は元より、ライコウ殿もさぞお喜びになられるでしょうな」

 

「あ、ああ」

 

 ライコウ、この階層の実質的な守護者筆頭であり優れた武勇を誇る怪異殺しのスペシャリストだ。対魔性性能はトップレベルで、彼女に匹敵する対魔性NPCは同じく四層の守護者である()()()くらいだ。

 

 だが、原作よろしく『子煩悩』な彼女に会うのは少々勇気がいる。

 

「まあ、何れにしても会わねば意味がないのだが……」

 

 懐く牛若を撫でて心を落ち着けていると、視界の端で『ウルク・オブ・ゲート』が起動した。

 

「王よ、周辺地域の把握、及び人里、都市の幾つかを発見いたしました故に帰還いたしました」

 

 現れたのは黒に身を包んだ髑髏仮面の女性、百貌のハサンことハサ子だ。

 

「うむ、ご苦労。続けよ」

 

「はっ、我ら“百貌”の中でも偵察に優れた数名と気配遮断に優れた他ハサン数名、第一階層の守護者並びに配下の忍と共に四方に散って調査を行なった結果、この大地が『カッツェ平野』と呼ばれる荒廃した土地であり滅多に人の立ち入らぬ場所であること。その情報を得たここから最も近い都市の他に幾つかの町や村、それらを統べる二国家の存在を把握致しました」

 

 ペラペラと報告を続ける百貌に俺は呆気にとられていた。

 すげぇなこいつら、この短時間でもうそんなに調べたのかよ。

 

「う、うむ。続きは玉座で聞こう。シドゥリを交えての報告会を開く故、忍共にも声をかけてきてくれるか」

 

「はっ!」

 

 跪きながら一度頭を下げた彼女は再びゲートで去っていった。

 

 俺も玉座の間に向かうべくゲートを起動する。

 とーー

 

「主人どの、行ってしまわれるのですか?」

 

 名残惜しそうにこちらを見上げる牛若がいた。その上目遣いやめろ、なでなでしていたくなる。

 

「すまんな、今度、ハサンの言っていた街にでも出掛けよう」

 

 そう、この次は巴に語ったように都市潜入作戦が控えている。メンバーはすでに俺の中で決まっているので後は詳細を詰めるのみだ。

 この作戦は一見してお忍びで遊びに出かけるみたいだが、ちゃんと“原作に相違ないかの確認、都市及び国家の内情を探る”という意味があっての行動である。まあ、ちょっぴり冒険者してみたいという願望も含まれていたりするが本分は調査だ。

 

 俺は意気消沈しつつも手を振る牛若に手を振り返し玉座へと続くゲートをくぐった。

 

 

 

 




ラハムについては意図的に除外しております。

あと、各階層の詳しいギミックとか守護者間の関係について詳しい記述は希望がございましたら記載します。
たぶん書き始めるとダラダラと長文になってしまい本編の進行を阻害してしまいますので……。

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