Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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シャルルの正体がブラックビートルに判明

悪魔型の蹂躙

男性操縦者同士のいざこざ


第十話 秘密の発覚と男性二人の確執

転校生の自己紹介が終わると同時に、授業が実務だと伝えられ、着替えるために移動を開始する。

 

女生徒達はイケメンであるシャルルと一夏にのみ興味があり、フツメンの将矢に興味は無かった。

 

それはそれで悲しいのだが、授業に遅れることを鑑みればありがたい事であった。

 

授業に遅れたシャルルと一夏は千冬にお仕置きの出席簿を頭にくらっていた。

 

「では、これより授業を始める。その前に模擬戦闘を行う。凰、オルコット前にでろ」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

二人は模擬戦とはいえ油断のない目をしていた。あれから傲慢な態度を改め、各下であっても油断は大敵だと思い知ったからだ。

 

「それで、相手は誰ですか?」

 

「そうですわ」

 

「心配するな。もうすぐ現れる」

 

その声と同時に何かが高速で墜落してくる。見兼ねた将矢がすぐに行動を起こした。

 

「きゃあああ!ど、退いて下さいーー!」

 

「スラフティン、起動!モード・クワガタ!トラップスパイダ!アクティブ!」

 

本来ならば対格闘用トラップの糸を救助用のネット代わりに、蜘蛛の糸のように右腕から射出し、左腕からも後から発射することで糸にかかる負担を軽くした。

 

「大丈夫ですか?山田先生」

 

「あ、大丈夫です・・・それよりもこの糸を何とかして下さい~」

 

「おっと、いけないいけない」

 

真耶は今の所、糸によってあられもない姿になっていた。将矢は急いでスラフティンを解除すると同時に糸が消え、真耶の四肢が自由になる。

 

「助かりました、将矢くん」

 

「いえいえ」

 

身体が動く事を確認した真耶はすぐに千冬の隣に立つ。

 

「お前達二人の相手は山田先生だ」

 

「え?」

 

「大丈夫なんですの?」

 

「安心しろ、少なくとも今のお前達では負ける。今のお前達では、な」

 

千冬の言葉に鈴とセシリアは挑発されたように捉えたようだが、将矢だけは違っていた。

 

入学試験の時、人生で初のISによる試合の相手をしてくれたのは真耶だ。手加減されていても油断のない戦闘テクニックに舌を巻いた。

 

無意識に発動した、あの力がなければ完封試合になっていただろう。生徒達からは友達感覚で接しられているが、戦ったことのある将矢は一人の教師として接していた。

 

本来の実力は試合などの場面にならなければわからない。例えば、普段はいじめに合いやすそうな言動をしていても、そういった人間が吹っ切れ、感情に任せた時の行動は計り知れないものとなる。強気な者が弱気になってしまう事もありうるのが人間だ。

 

 

「ぐ!?」

 

「ちょっと!何やっているのよ!」

 

将矢が思考を巡らしていると既に模擬戦は始まっていたようだ。二対一に関わらず鈴とセシリアの二人が劣勢に追い込まれている。

 

コンビネーションは即興であるためにある程度補えないのは仕方ない。だが、それ以上に驚愕なのが真耶の誘導であった。

 

セシリアはまだ動かない的前提の射撃から抜けきっていないため、照準合わせの段階で鈴がいる方向へ誘導されライフルを撃つことが出来ない。逆に鈴は中距離が主なため間合いを取ろうとすれば迎撃され、衝撃砲を使おうとすればセシリアのビットの的になるよう誘導されてしまう。

 

「すげえ・・・・あれが山田先生なのか?」

 

一夏は何気ない一言ではあったが、本物の実力というものを間近で見て感じるものがあったのだろう。それでも、皆を守りたいという思いだけは変わっていない様子だ。

 

しばらくは粘っていた二人だが、衝突を起こすよう誘導されてしまい。グレードを投げつけられ、それをマシンガンで撃ち抜き爆発させる事で勝負がついた。

 

「これで分かっただろう?あえて言わないでおかなかったが、山田先生は元・代表候補生だ」

 

「候補生どまりでしたけどね」

 

千冬の一言で生徒全員が驚く。将矢も驚きを隠せていない様子で口を開けてしまった。

 

『なるほどな、どうりで動きが良かったわけだ』

 

『己を鍛え、学んだ事を次世代に伝える為に教師になったという事か、感服した』

 

メタビーとロクショウも真耶の実力に関して引っかかっていた事があった様子だ。千冬の言葉によって二人の疑問は氷解し、一種の敬意を抱いた。

 

それからの授業は事通りなく終了し、将矢は外の空気でも吸おうと外を歩いていた。

 

「すか!?」

 

「ん?」

 

大きな声が聞こえ、その方向へ向かってみると、ラウラと織斑先生が何やら言い争っている様子だ。

 

「何度も言ったはずだ。私には私のやるべきことがある」

 

「このような極東で何をやるべき事があるのですか!?ここでは貴女の能力も半分も生かされません!」

 

話の内容からすると、ドイツに戻ってきて欲しいってことか?どうやらラウラは織斑先生の指導を受けていたようだな。

 

「ぜひ、今一度我がドイツでご指導を!この学園の者達はISをファッションか何かと勘違いしている!その様な者達に・・!」

 

その先を言おうとした瞬間、千冬の怒気が一気に上がった。千冬にとってラウラの発言の中に許せないものがあったのだろう。

 

「調子に乗るなよ?小娘」

 

「な・・・・ぁ」

 

「お前は選ばれた者だと思っているのか?たかが16歳の娘が・・・」

 

「わ、私は・・・」

 

「お前は一度、土谷と戦ってみるがいい」

 

「土谷?土谷将矢の事ですか?何故!?」

 

「あいつは獣王と神帝を内側に潜ませている。力を信じるというのなら本物の力を味わってみるといい」

 

「獣王と神帝・・・?」

 

「話はそれだけだ」

 

「・・・っ」

 

ラウラはその場を走り去り、居なくなった事を確認すると一本の木に向かって声をかけた。

 

「出てきていいぞ」

 

「織斑先生、会話に出した機体は使うのを拒否しますよ?俺」

 

「む、済まんな・・・圧倒的な力の象徴というものが浮かばなくてな」

 

「先生も知っているでしょう?あの機体が暴走したら学園は崩壊するって」

 

「・・・・ああ」

 

「ビーストマスターの時は明確な相手が、ゴッドエンペラーの時は無人機乱入という緊急だった。また暴走したら俺は責任が取れませんよ?未だにあの二機は制御出来ていないんです」

 

「う・・・」

 

「もしも、あのラウラって子に力というものを教えるために戦わせようとするのなら、止めてください。ビーストマスターもゴッドエンペラーも強すぎる力を持っているから、兵器型にならざるを得なかったんです」

 

「なに?兵器型だと!?」

 

「ええ、兵器型として作られたと古い文献にありました。悪用しようとする者に・・・。でも、俺は自分が制御できるまで使いません、それだけは覚えておいてください。それと他言無用ですよ?もし、バラしたらデスレーザーを貴女に撃ちますから」

 

「っ!」

 

「それじゃ」

 

千冬は一瞬だけ、デスレーザーを撃つと言った将矢にゴッドエンペラーが重なって見えていた。無人機事件の時に見たゴッドエンペラーは右手に盾を装備していたため完全な姿ではなかった。右腕を犠牲に無人機へと放ったゴッドエンペラーの光の矢たるデスレーザー。

 

映像で見た限り、あれは武器ではない兵器だと。それも完全な破壊だけに特化した兵器、それを使わせないという意志はゴッドエンペラー自身の意志でもあったのだろう。

 

ビーストマスターだけではなくゴッドエンペラーまでをも使えば、否応なしに将矢は実験体として狙われる。後ろ盾が目に見える一夏とは違い、将矢は後ろ盾が知られていなく一般人

 

主を守るのがゴッドエンペラーの忠義なのだ。

 

今はまだ味方ではあるが、将矢が危険に晒されれば、獣王と神帝は障害を排除しようと破壊し尽くすだろう。

 

 

「・・・・恐ろしいな」

 

千冬は自分の腕を掴み、ビーストマスターとゴッドエンペラーの恐ろしさを改めて噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、将矢は珍しくスラフティンを置いて食事に行っていた。何の警戒もなく出ていき、その隙を狙ってシャルルは将矢の部屋に侵入し、置いてあった待機状態のセラフティンにUSBを刺し、パソコンを開いた。

 

「このデータを本社に送れれば・・・!ごめんね・・・」

 

データのコピーを開始しようとした瞬間、持ってきたパソコンがフリーズし画面が落ちてしまう。

 

「な!?こんな時にどうして!?」

 

『申し訳ありませんがアナタのパソコンのプログラムはクラッシュさせていただきました』

 

「だ、誰!?」

 

謎の声にシャルルは慌てたように周りを見渡すが誰もいない。

 

『アナタのパソコンをお開き下さい』

 

「!?」

 

そこに映ったのは眼帯をしているかのような装甲、真っ黒な色彩、カブトムシをモチーフにしたような姿のロボットのような姿が映し出されている。

 

『このコンピュータプログラムを利用して視覚情報を得やすいようにしました。これで話し合いができますね』

 

「き、君は一体!?」

 

『申し遅れました、私はブラックビートル・・・アナタがデータを盗もうとした機体の意志です』

 

「!!!」

 

シャルルは驚きを隠せなかった。ISには意志が宿っているという噂があったが、目の前の現実に信じる他なかった。

 

『さて、アナタがデータを盗もうとした理由をお聞かせ願いますでしょうか?』

 

「そ、それは・・・」

 

『予想ですが様々な組み換えができるこの機体の方が価値があった、これでしょう』

 

「うう・・・」

 

『まだ寸前でしたからね・・・でも、盗んだ事には変わりはない。そこでアナタにチャンスを差し上げましょう』

 

「チャンス?」

 

『ええ、至極簡単です。このパソコンを壊してください、完全に。それと外部の保存端末も』

 

「!!」

 

ブラックビートルからの要求は簡単であると同時に、シャルルにとっては大問題であった。このパソコンには白式のデータがあり、USBメモリに保存して本国へ送る予定だったのだ。

 

『どうしました?出来なければ警報装置にハッキングして周りに、知らせるだけですが』

 

「脅しのつもりかな?」

 

『まさか、これは警告ですよ?パソコンを壊せばこの問題は私とアナタだけが知る事になる。壊さなければアナタは罪人となり、同時に私が証言してしまえば、アナタは二度と日の目を見ることはないでしょう』

 

「わかったよ。壊せばいいんだね?」

 

『ええ』

 

シャルルはパソコンを外へ持っていき誰もいない場所で叩きつけて完全に破壊し、USBメモリを処分した。

 

『後は正体だけですね』

 

ブラックビートルはシャルルの本当の性別を見抜いていた。音声情報から理解がついたのだろう。

 

『どうなりますか、わかりませんね』

 

 

 

 

 

 

 

ブラックビートルとシャルルが話していた日にちからの翌日、午前中の授業を終えると緊急の会議ということで午後の授業は自習となり、将矢はISの訓練をしようとアリーナへ向かっていた。

 

自習とはいえ授業である。だが、実務授業と名目の訓練をすることはできる。将矢は早朝に束から届いたデビルメダルと悪魔型のパーツのテストをしようと足を運んだのだ。

 

どうやら一足先に誰かが訓練している様子だが、なにか様子がおかしかった。将矢は気になり飛び込むとそこには鈴とセシリアが一触即発の状態でラウラとにらみ合っていた。

 

「!」

 

将矢に視線に気付いたラウラが不敵な笑みを浮かべて、将矢に声をかける。

 

「土谷将矢だな?ちょうどいい、私と戦え!」

 

「いいけど、ルールは?」

 

「そんなもの無くていい!早く戦え!」

 

「良いんだね?俺は構わないけど・・・コイツがギブアップを許すかわからないよ」

 

指で上に弾いたのはデビルのファーストメダル。将矢は一度、メダルに意志を委ねるとどうなるか知りたくなっていた。

 

将矢はアリーナへ入ると準備を開始した。

 

「スラフティン、転送!モード・デビル!ブラックメイル、アクティブ!!ベルゼルガ、ブロッソメイル!オートチェンジ、オン!オートバトル、オン!」

 

将矢が展開したのはヤギの頭部パーツを持つブラックメイル。悪魔型の機体であり凄まじい攻撃力を持っている。

 

「ふん、大層な姿だな」

 

「GUUUUUUUU・・・・!」

 

『合意と見てよろしいですね!?ブラックメイル、ベルゼルガ、ブロッソメイルVSシュヴァルツェア・レーゲン!それでは、ロボトルゥゥゥ!ファイトォォーー!』

 

「GAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「なっ!?」

 

少しだけ機動力のある走りで驚き、迫られたラウラは急いで横へと回避する。その勢いのままデビルアームをアリーナの壁へ叩き込んだ瞬間、アリーナの壁に大穴が空いていた。

 

「ば、馬鹿な・・・なんだ、あんなものに直撃を食らったら」

 

「GRUUUUUUUUUUUUUU・・・・」

 

唸り声のような声に怯むがラウラも負けじとワイヤーブレードで反撃する。だが、傷つく事を厭わずにブラックメイルは突撃してきたのだ。

 

「な、何!?」

 

「GAAAAAAAAAAAAA!!」

 

デビルハンドで殴りつけられたラウラは、衝撃の強さで脳を揺らされてしまった。身体は無傷だが目の前に広がる景色は歪んで見えている。

 

「ぐ・・・うううう」

 

『タイムアップ、チェンジ・ベルゼルガ』

 

今回の戦闘はメダルの意志に任せるオートモードを使用している。これも将矢の好奇心によるものだった、だが、次に出てきてしまった人格が良くなかったのだ。

 

「はぁ・・・なんだぁ?こんなちっこいのが俺の相手かぁ?ウサギみてーだな」

 

「っ!貴様・・・」

 

「怒ったか?イイねえ・・・その目。自分が絶対って信じてる目・・・そういうの好きだぜ?」

 

「何を言っている!?」

 

「戦いでしか昇れない者同士・・ぶつかり合おうぜ?なぁ!?ウサギちゃんよぉ!?」

 

「いいだろう、私を侮った事を後悔させてやる!来い!!」

 

「Let’s Rock’n Roll!!」

 

ブラックメイルが知性のない野獣だとすれば、ベルゼルガの姿になった今は狂人そのものであった。

 

人間でいえば喧嘩や痛みでしか自分の生を感じられないのだから。

 

「ウラアアアアアアア!」

 

右腕のヘルマイトによる一撃はラウラが立っていた場所の地面を抉りとっていた。回避していたラウラはそれを見て冷や汗をかく。

 

「動きを止めれば!」

 

AIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーと呼ばれる特殊兵装を使用し、ラウラはベルゼルガの動きを止めた。

 

「ああん!?停止の症状に似たようなものかよ!?」

 

「これで貴様は何も・・・!?」

 

「悪いなぁ・・・ウサギちゃん?俺様はよ・・・腕一本失おうが知ったこっちゃねえのさあああ!!」

 

ベルゼルガは右腕を強引に押し込め、ラウラへと近づいていく。これが破壊系の恐ろしいところだ、これがデストロイであるならばラウラのAICは的確だと言えるだろう。

 

しかし、ベルゼルガはパーツを犠牲に攻撃を行うサクリファイス攻撃。パーツを犠牲に攻撃力の高い一撃を繰り出すのだ。

 

「キエエエエエエ!!」

 

奇声と共にベルゼルガは壊れた右腕パーツでラウラを殴り飛ばした。だが、同時にベルゼルガは悲鳴をあげている。

 

「ギャアアアアア!いてええええ!!」

 

『右腕パーツ、ダメージポイント100。機能停止、機能停止』

 

「ふ、無謀な攻撃をして・・・く!?」

 

「ハハハ!痛え、痛えよ!これだよ、これが生きてるってやつだろうぉ?」

 

ベルゼルガは痛みを喜んでいるような言葉で、残った左腕のヘルシングで攻撃を仕掛けてくる。

 

それを回避し、ラウラはワイヤーブレードで残った左腕を断ち切った。

 

「アガアアアアアア!?お、俺様の腕があああ!?」

 

『左腕パーツ、ダメージポイント100。機能停止、機能停止』

 

「これで貴様も終わりだ!」

 

「なんてな、お楽しみが早く終わっちゃつまらねえだろ?」

 

「何!?」

 

ベルゼルガの表情は分からない。だが、声のトーンからして笑っているのは確かだ。

 

「ヘェェェルメェェェッット!!」

 

胸部に繋がれていたパイプのような部分が脈動し、両腕に何かを送り込み始める。その時、全員が目を疑うような事が起こった。

 

自ら破壊した右腕とラウラに断ち切られた左腕のパーツが復元されていくのだ。しかも復活に20秒もかかっていない。

 

すぐに両腕は復活し、ベルゼルガは確かめるように腕を振った後、喜々として叫んだ。

 

「俺様ふっかぁぁぁぁつ!!どんな気持ちだ?必死こいて機能不全にしたはずの箇所を復元された気持ちはよぉ?」

 

ベルゼルガの頭部パーツ、ヘルメットの能力は機能停止したパーツを復活させる力があったのだ。無論、回数制限はあるがISにとって自力での回復能力は脅威でしかない。

 

「さぁ、おっと・・・どうやらフィナーレも近いみたいだぜえ?」

 

『タイムアップ、チェンジ・ブロッソメイル』

 

ベルゼルガから変わって現れたのは全身がマゼンタのような赤に塗装された機体だ。

 

「・・・ベルゼルガにやられたようだな。痛ましい姿だ」

 

「貴様・・・哀れんでいるのか」

 

「いえ、せめて全力で終わりにして差し上げる。メダチェンジ!」

 

ブロッソメイルの姿が四足の獣ような姿に変わっていく。搭乗者でも適応できる姿であるために問題はないが、まるでそれはワーウルフそのものであった。

 

変形が終わると同時にブロッソメイルは姿を消した。その姿を捉えられたものはいなかった。

 

「ど、どこだ!?」

 

Kein Wert für den Feind(敵に値しない)・・・」

 

「なっ・・・」

 

背後を取られたラウラはブロッソメイルの変形した顎に首筋を噛み付かれ、強制停止プログラムであるデストロイ攻撃を仕掛けられた。

 

「ば・・バカな?」

 

シュヴァルツェア・レーゲンは機能を停止し、ラウラはそのまま倒れ込んだ。ダメージの影響かすぐには立てる状態ではない。

 

『機能停止、勝者!悪魔型チーム!』

 

「マスターに感謝するがいい・・・私達は痛めつけろとは言われたが破壊しろとは言われてなかったのだから」

 

「ぐ・・・・はぁ・・・はぁ・・・全身が痛い」

 

スラフティンが待機状態に戻り、将矢は自意識を取り戻す。だが、疲労の色が濃い。やはり、自分が一体化し動かすマニュアルとメダルの意志に任せるオートではあまりに負担が違いすぎている。

 

「土谷・・・将矢・・・私は必ず貴様を・・・倒してやる!必ずだ!!」

 

「俺はいつでも挑戦を受けるよ。オートで戦った事を許してくれ」

 

頭を下げると将矢はアリーナを出て行った。だが、ラウラ以上に震えていたのは鈴とセシリアであった。

 

「い、一撃で解除まで追い込むなんて・・・それに」

 

「ええ、機体の回復なんて・・・どこにもない装備ですわ」

 

「・・・警戒しておきましょう?」

 

「そうですわね」

 

悪魔型の攻撃力以上に復活や回復の手段がある、それだけでもISの常識を覆していた。一体、将矢のスラフティンにはどれだけの手段があるのか?その謎が二人の警戒を強めていた。

 

 

 

 

 

その帰り道、寮に戻ると一夏が声をかけてきた。その後ろにはシャルルもいる。疲労した身体でトラブルに付き合うのはすこしキツイが、それを押し隠して普通に接する。

 

「将矢!」

 

「一夏、なにか用かい?」

 

「ああ!聞いてくれ、シャルルの事なんだけどよ」

 

一夏から聞いた話では風呂でシャワーを浴び終えたシャルルと鉢合わせして彼が女性であった事を知ったらしい。

 

同時に彼女はが男装してIS学園に来たのは一夏の白式、そしてスラフティンのデータを盗み出し、そのデータを実家であるデュノア社に渡すつもりであったらしい。

 

それを聞いて最初に出た言葉が。

 

「それで?どうしたいのさ」

 

という一言であった。

 

「将矢、お前!シャルルを助けたくないのかよ!?」

 

「助ける?助けるってどうやってさ?」

 

「特記事項だよ!【第二一、本学園における生徒はその在学中ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする】これでなんとか」

 

「それって具体的な案になってないよ?ただの先延ばしじゃないか、それに帰属というのは特定の団体に所属して従う事だよ。本国命令で機体のデータが欲しいって言われたら?シャルルはフランスの代表候補生でしょうに」

 

「国家に所属してない事になるんだから大丈夫なはずじゃ」

 

「あのね、代表候補生って時点で本国からの帰還命令が来たら帰らないといけないんだよ。機体のデータ収集、改修、メンテナンス、機体の不備報告、その他色々あるんだよ?それに」

 

「なんだよ?」

 

「ただ、物珍しい高校生の俺達が大企業相手に何が出来るのさ?」

 

一夏にとってそれは聞きたくない一言であった。IS学園は守られているはずだ、その考えを根底からくつがえす一言だった。

 

「物珍しいだって!?」

 

「そうでしょ?女性しか動かせるはずのないISを動かした世界初の男性操縦者、確かに珍しいけど・・・それだけだよ」

 

「お前!!」

 

「止めてよ!一夏!!」

 

一夏は将矢の襟元を掴んで壁に叩きつける、シャルルが止めるが叩きつけられた拍子で肺が圧迫され、ほんの少し息苦しくなる。

 

「世界初の男性操縦者・・・その肩書きが権力か何かと勘違いしてたのか?」

 

普段は穏やかな将矢の言葉から一転して、声に力強さが入っていた。

 

「な・・・っ」

 

「大企業からすればそんなの『だから何?』程度の認識だぞ。俺達は実績があるのか?織斑先生や束さんのように世界的な偉業を成し遂げたか?出来てないだろう?」

 

「う・・・」

 

「それを振りかざした所で、子供の戯言だって返される。それが嫌なら織斑先生とかに相談したほうがいい」

 

「そ、それは!」

 

「出来ないなんて言うなよ?本気で助けたいなら相談するべきだ、冷静に考えて俺達の手に負える事じゃない。大企業に喧嘩を売るようなもの、これは学生同士の喧嘩じゃなく、国家レベルの大企業との争いになるんだ」

 

「っうう・・・」

 

一夏がシャルルを助けたいという気持ちは本物なのだろう。将矢はあえてデビルメダルやロクショウからの知恵を借りて、現実をぶつけたのだ。

 

真実を知れば卑怯だと罵られるかもしれない。だが、スパイをしに来た相手を助ける事もできない。後ろ盾がない一介の特別な高校生が、国家クラスの大企業に勝てるわけがないのだ。

 

だからこそ、将矢は織斑先生に相談すべきだと提案したのだ。彼女は引退した身ではあるが世界的な偉業を成し遂げている。知り合いの中にシャルルを助け出す案を出してくれる人が居るかも知れないと考えたからだ。

 

「分かったよ、お前に聞いた俺がバカだった」

 

襟を離すと一夏は歩いて行ってしまった。一瞬、将矢をシャルルが見たがすぐに一夏を追いかけていった。

 

「はぁ・・・報告しておくかな」

 

こんな話を聞いて黙っている方がおかしい。スパイをしに来たということは何かあるはずだとロクショウは言っていた。

 

将矢は寮長室を訪れ、ドアをノックした。返事が返ってきた所をみると千冬は居るようだ。

 

「すみません、お話があるのですが」

 

「構わん入れ」

 

「失礼します」

 

部屋の中に入ると将矢は少しだけ顔をしかめた。何故なら部屋の中には洗濯されていない私服、ビールの空き缶やゴミの詰まった袋、流し台に置きっぱなしの食器など片付けがされていなかったのだ。

 

これを見た将矢は思わず大声を上げていた。

 

「織斑先生!話をする前に片付けをしますよ!これじゃ落ち着いて話せません!!」

 

「あ、いや・・・今は時間が」

 

「問答無用!!」

 

将矢は先ず始めに放置されていた私服の片付けを始めた。流石に織斑先生が使う女性の下着などは織斑先生に回収してもらい、仕分けた後に洗濯し乾燥機の中へと入れた。スーツなどはハンガーにかけて立てかけた。

 

次に食器を洗い始め、全てを水切り台の上に置いた後にシンクを磨きキレイにした。空き缶とゴミは仕分けて出せるうちに出してしまおうと、詰めた数は五個に及んだが全てを捨ててきた。

 

窓を全開に掃除機をかけ、ホウキでホコリをかき出し、20分の空気の入れ替えを行った後に小さなテーブルを片付けて部屋の掃除は完了した。

 

「はぁ・・はぁ・・さらに疲労した」

 

「部屋の床など久々に見たぞ」

 

「片付けられない人なんですね?織斑先生」

 

「す、すまない」

 

発掘で周りをキレイにしておかないと道具や発掘品が傷つくのを知っているため、将矢は片付けが癖になっていたのだ。

 

「さて、お話があります」

 

「そうだったな」

 

将矢は一夏とシャルルに関する事を包み隠さず話した。千冬は呆れていたが将矢の話と自分が話をした事は内密にして欲しいとお願いし、女である反応を必ず示す方法を教えて部屋に戻った。

 

「今日は一日・・・疲れた・・・」

 

将矢は早めの目覚ましセットをすると、そのまま泥のように眠りこけてしまった




はい、悪魔型の蹂躙回でした。

メダチェンジを導入しましたが、四足方向などは狼男やミノタウロスなどの人の身体を持った獣形態にアレンジしています。

ベルゼルガが狂人なのはただの趣味です。

ブロッソメイルはクールタイプです。

国家、組織、団体に帰属しないと言われても、代表候補生の機体の状態やデータを直接見たいので帰還命令を出したいと交渉するか、拉致するとかの方法でいくらでも抜け道はあるんですよね。個人的な考えですが。

次回はタッグマッチ戦

鈴とセシリアは機体不備で出場出来ず、将矢はラウラとタッグ?

暴走したレーゲンにロクショウの魂の一閃が炸裂する。(メダフォース・フラグ)
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