Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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グレイン復活

福音が束によって解決。

紅椿がスケールダウン


第十九話 目覚める大悪魔

臨海学校一日目は鋭気を養うための自由時間となっていた。生徒達はそれぞれの水着やプロポーションを自慢したり、体操して海に入ったり、浅瀬で海水をかけ合ったりして満喫している。

 

「・・・・・」

 

そんな中、覇王と名乗る人格となった将矢はスラフティンの鼓動を感じていた。女尊男卑に染まりきった輩が使ってきたISの命をたっぷりと喰わせ、パーツが復活を始めている。

 

「明日には完全復活するか、その時こそ総てを破壊する時だ」

 

岩場を後にするが、単純に浜辺へ戻っただけで周りは気にしていなかった。裏の人格の将矢はただ一人になれる場所が欲しかっただけであった。

 

「戻らねば、うるさくなるからな」

 

そんな独り言を呟いた後、将矢は浜辺に戻った。そこには水着に着替えた代表候補生達が待っており、一足先に海を堪能しているようだ。

 

「どこに行っていたんですの?将矢さん」

 

「一人になりたかっただけだ。遠くには行っていない」

 

「やはり、貴方は・・・」

 

シートに座った将矢を見て、セシリアは将矢が的にされた出来事を思い出していた。心優しかった彼が今や別人のように冷たくなってしまっている。

 

セシリアはそれが辛かった。自分が捕まなければと己を責め続けているがもはや後の祭りであり、解決策は出ていない。

 

表面上、楽しんでいるように見えるが実際は何かを達成するために目的があるような顔をしている。

 

その目的がなんであるかは誰一人として知る由もない。

 

 

 

 

 

臨海学校二日目、各国の代表候補生、男性操縦者である一夏と将矢、そして何故か箒までもが居た。

 

その理由はすぐに明らかになった、空から巨大な人参が降ってきたのだ。

 

「やっほー、みんなのアイドル束さんだよ~!ブイブイ!!」

 

いきなりの登場に呆気にとられている皆だが、将矢だけはその鋭い目つきで束を見ている。

 

「・・・・お前、誰だよ?つーくんじゃないな?」

 

笑顔だった束の表情が一変して冷酷な表情に変わる。その声や目にも動じず答える。

 

「そうだ。今、奴は心の奥底で蹲っている・・・己が犯した罪に怯えてな」

 

「っ!つーくんを返せよ!」

 

「無駄だ。それよりも用事があるのだろう?俺ではなく他の者に」

 

「・・・それもそうか」

 

束は箒の元へ行くと瞬時に笑顔となり、抱きつこうとして制裁されている。

 

「それじゃ、箒ちゃんにプレゼントー!!」

 

上空から降ってきたのはISが収められているコンテナであった。内部には紅いISが展開状態で収められている。

 

「これが最新鋭のIS、紅椿!!さぁ、箒ちゃん!乗ってみて!」

 

「は、はい!」

 

最新鋭と聞いて箒はどこか浮かれていた。自分には最強の力が手に入ると、しかし現実はそうは甘くはなかった。

 

彼女が紅椿をまとった瞬間、コンテナが箒を機体ごとスキャンし始めた。体格、身体能力、頭脳指数、あらゆる生体データをチェックしている。

 

『スキャン完了。第四世代モードから第二世代モードへと移行します。設定は変更不可能。操縦者の向上に期待』

 

「!???」

 

箒は自分に起きた事が理解出来ていない。唯一出来たのは紅椿が第四世代の性能から第二世代の性能にスケールダウンした事だけであった。

 

「姉さん、これは一体!?」

 

「予想通りって事かな?私としては」

 

「!?」

 

理解ができない、姉はこうなる事を予想していたというのか?それならば、何故このような機体を私に渡したのだ。

 

「箒ちゃん、君は第四世代を扱えるほど技量が達していない。その為に第二世代まで性能をロックされたんだよ」

 

「どうしてそんな!?今すぐロックを解除して第四世代の性能に戻してください!」

 

「甘ったれんじゃねえよ!」

 

「ひっ!?」

 

束の怒号に箒は短く悲鳴を上げたが、それは周りに居た代表候補生、一般の生徒達も同義だ。

 

「機体を開発者から受け取れるだけでもありがたいと思えよ、何もしてねえ奴にいきなり第四世代が扱えると思ってんのか!ああっ!?」

 

「ね・・姉さん。だって・・・私は!」

 

「私はな?ISの訓練や勉学をやっているなら第四世代のままで扱えるようにしといた。それがどうだ!?結果は第二世代の性能しか引き出せていないだろ!?」

 

箒の他に彼女をよく知る千冬と一夏も驚きを隠せていない。あの束が、剽軽な態度しかいつも取らないはずの束が怒号で説教しているのだから。

 

「この私も人の事は言えないんだよ。天才だと嘲笑っていた努力って言葉を目の前で体現されたからな、努力を重ねて強くなる・・・血が滲むような努力で天才の域に近づいてくる、その恐怖は恐ろしい・・・有頂天になって嘲笑っていた奴が、自分を追い抜こうと迫って来るんだから」

 

束は例え話を始めた。それは自分や周りに聞かせる為にスピーカーまで用意して。

 

「一人の男の子の話をしようか?私に努力の体現を見せてくれた。男の子の話を」

 

 

 

 

 

 

それは将矢がISメダルを発掘してから束に連れ去られて二日経った時だ。その日は基礎体力の他に筋力を付けるための訓練をしていた。

 

「90・・・91・・・92・・・」

 

内容は背筋を鍛えるための物だ。100回を5セット、インターバルは200回で1分という内容である。

 

「頑張るねー、そのストイックな姿勢。嫌いじゃないなー」

 

束はコンピューターのキーを叩きながら将矢を見ている。だが、どこか嘲りが含まれている声色で話変えてもいた。

 

「99・・・100!はぁっ!はあっ!!」

 

200目に到達したのだろう、将矢は訓練用マシンから足を離すと、そのまま衝撃吸収用のマットの上に落ちた。

 

「それじゃ、一分間の休憩ね」

 

「わかり・・ました」

 

「本当に頑張るねー?何が君をそうやって努力させるの?」

 

「努力すれば・・・天才に追いつけるんじゃないか・・って・・思って・・さ」

 

「ふーん・・・追いつく、ね」

 

束は将矢の目の輝きに一瞬だけうろたえた。迷いのない瞳、必ず実現させるという決意、それが束にとって驚異に似た不安を煽ったのだ。

 

 

 

 

「つまり、X=4の二乗であるからって、寝るなー!!」

 

「ふぁい!すみません!!」

 

「疲れてるのは分かるけど、勉強は大事だからね」

 

「わかってます」

 

「じゃ、講義を続けるよ」

 

訓練だけではなく、勉学も怠らずに続けていた。早朝に起床し軽く運動した後、シャワーを浴び、束から教わった勉強を復習する。

 

束の講義は高校一年生になりかけの将矢からすれば、高校生レベルを全て網羅するに等しい。それでも将矢は耐えて耐えて耐え抜いた。それがどんなに理不尽であっても。

 

 

 

 

「つまり、このコードを結線すれば電力を抑えられる?」

 

「その通り!つーくんは実践派だったんだね?修理の仕方やメンテナンスのやり方を教えると楽しそうなんだもん」

 

「ISはまだまだ出来ませんけどね、えっとこの線がこうだから」

 

将矢は束からISの基礎理論の講義と並行して機械修理の技能も教わっていた。その技術は披露する事はなかったが、コンピューターのプログラムだけは個人的に弄っていた。

 

それから入学までの約半年に近い、日数を訓練と勉学に費やし束の講義の成果もあって将矢は大学に合格出来るレベルの学力を身に着けることができ、身体能力と筋力も一般的な高校生よりもほんの少しだけ上になった。

 

束からすれば大した事はないと思いたかった。だが、なんの変哲もなく、ただ発掘だけが好きな少年からすれば変わりすぎたのも同義である。

 

束は改めて人の努力という名の強さの意味を目の前の青年によって教えられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳だよ。彼は天才でも何でもない、努力によって己を変えた努力の天才なんだ」

 

束の話を聞いた千冬を始めとする、IS学園のメンバー達は黙り込んでいる。話を聞いて彼がどれだけ血が滲み、血反吐を吐くかも知れないという努力をしてきたのかが目に映るようであったからだ。

 

「天才っていうのはジャンル別に産まれてくるんだ。私は機械工学、ちーちゃんは戦闘といったように、絵画、文章、スポーツ、交渉、どんな分野に適応しているかは分からない。本人の適性だからね」

 

「何が言いたい?束」

 

千冬はあえて疑問を口にする。回りくどいことをせずに本題を話せと。

 

「つーくんは器用貧乏なんだよ。悪い言い方をすればね。器用貧乏は出来るのに出来ないと思い込んで極めてしまう癖が抜けず、その技能を習得してしまうのに発揮することもない」

 

「精神的暗示による楔・・・・抑圧された環境での教育による自己愛の低さからなる、心の隙間を埋めるべく求め続ける精神疾患」

 

その言葉を心の中で呟いたのは、軍に所属しているラウラであった。自分が生まれた経緯を調べるうちに既存している人間の精神傾向が変化していく人体実験を行っていた事を調べたからだ。

 

「箒ちゃん、わかる?君の努力は認めるけど、それ以上に努力し続ける人間はいるんだよ。そう、例えば君が千本の剣道の素振りをしている間、一万の素振りをしている人間はたくさんいる」

 

「・・・っ!何を!?」

 

「君には自惚れがあるんだよ。たかが剣道の全国大会の試合で優勝できたから勝てるという自惚れがな!箒ちゃんだけじゃなく、ここにいる全員がだ!!」

 

「う・・!」

 

「同じ試合形式でも本来なら殺し合い、ルールなんてない。それを認めないで何が私は強い、何が代表候補生、何が全国大会優勝者、何がIS操縦者、何が皆を守るだよ?私は殺人道具を作ったわけじゃねえんだよ!」

 

束の辛辣で現実的な言葉が全員に突き刺さる。自分達は称号を得て自惚れているだけに過ぎないと。

 

一般生徒は特に響き、一夏も衝撃を受けている。ISはお前達が動かす限り、殺人機械になるかもしれないと言われたからだ。

 

 

 

 

 

 

そんな中、真耶が向かい側から走って来た。慌てた様子で千冬に何かを話している。緊急事態のようですぐに千冬が指示を出した。

 

「訓練中止!一般の生徒は部屋に入り、代表候補生と篠ノ之、男性二人も来い!!」

 

大広間は会議室となり、現状を報告するために千冬が声を上げた。

 

「本日、アメリカとイスラエルで共同開発したISが暴走したとの事で我々が請け負うことになった」

 

どうやらISの暴走が今回の発端のようだ。束はお構いなしにパソコンで何かを作業している。

 

「何か質問はあるか?」

 

「そのISのスペックを要求・・・」

 

「その必要はないよ?」

 

「何!?」

 

束はコンピューターのキーを叩きながらスペックの要求は必要ないと宣言してしまった。

 

「その機体はもう戦闘機能を停止させたから、パイロットを回収するだけで大丈夫」

 

「・・・なら、代表候補生全員で行け」

 

「了解ですわ」

 

セシリアの一言が全員の肯定と重なり、全員が出て行った。残ったのは教師二人と束だけである。

 

「真耶、悪いが外してくれるか?」

 

「?わかりました」

 

麻耶も出て行き、部屋には千冬と束の二人きりとなった。束もその真意に気づき、千冬に視線を送る。

 

「束、まさかとは思うが」

 

「勘が鋭いね、そうだよ・・・最大の敵はこの学園にいる」

 

 

 

 

 

 

 

その頃、無断でISを持ち出して将矢に報復を考えていたメンバー達が全員、倒されていた。

 

「これで、グレインが復活する」

 

『スラフティン、起動・・・。オートモード・・・グレイン・・・アクティブ』

 

将矢が纏ったのは最凶にして最悪の大悪魔の名を冠するパーツ一式であった。

 

『ハカイ・・・ハカイ、ミンナ・・・ハカイ』




グレイン復活。

次回は全員でグレイン討伐開始です。

箒は力の意味と自分の存在意義を。一夏は・・・まぁ、アレです。
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