圧倒的な力の差
止められるのは彼女達と彼等
「この学園内だと?どういう事だ!?束!!」
「実はね・・・!?」
束が話そうとした瞬間、爆発音が響いた。どうやら浜辺の方面らしく旅館には被害が出ていない。
「なんだ!?」
「遅かった・・・!奴が大悪魔を目覚めさせたんだ!!」
◇
[推奨戦闘BGM 【DO OR DIE】 グレイン戦]
二人が話している頃、将矢がグレインを纏い一人と多人数で戦い、圧倒的な力を見せつけていた。無論、挑んできたのは無謀な考えを持つ女尊男卑に染まりきった生徒達である。
「このおおお!!」
「最初に打ち込んだスタティックと、一回目のメダチェンジ時に打ち込んだタイムアタックが効いているようだな?動きが遅すぎる。次はドローンを使わせてもらう」
取り囲んでいる四機のラファールの動きが極端に鈍い、これは将矢が左腕の攻撃であるスタティックという特殊な弾丸によって装甲を減らし、爆発音があったのはメダチェンジによって打ち込んだタイムアタック攻撃であったのだ。ライフル射撃の攻撃を回避し、右腕の砲口を向かってきたラファールの脇腹に近い場所へ打ち込み、プログラムを流し込んだ。
「?何も起こっていないじゃない!これで!!」
「きゃあ!?」
「わあああ!?何すんのよ!?」
「ちゃ、ちゃんと狙いなさいよね!」
「ち、違う!私はちゃんとアイツを狙ったわよ!!?」
どうやら同士打ちをしている様子だ。グレインの右腕を使って将矢が打ち込んだのはバグプログラムで行動誘発をさせるものである。
これを打ち込まれたラファールは、ライフル射撃以外の行動を制限されてしまっている。移動も格闘も封じられ、出来るのはライフルによる弾幕の展開だ。
「そろそろ頃合だな。メダチェーーーンジ!!」
グレインは再び変形すると人の身でありながら、上下の大きさがまるで違っている姿になっていた。先程までは上半身が大きく下半身が小さくなっていたが、変形した姿はその逆で下半身が誇大化し、上半身が縮小している。
「終わりだ」
背を向けていた相手にはデストロイを、装甲がスタティックによって減らされたラファールはアサッシンの餌食となって戦闘不能となってしまった。
「ひ、酷い・・・何もあそこまでしなくても」
「そこのお前」
「っひ!?」
「一方的に嬲ろうとする者が許せるのか?己が大切に思うものを破壊され、己は異端者として蔑まされる。そのような事に耐えられるのか?」
「そ、それは・・・」
生徒は答えられなかった。報復を恐れて何もしないのも一つの防衛手段であろう、だが彼は報復の手段をとっている。
「文句があるのなら力を示すがいい!ISは女としての最高の力なのだろう?まとめて掛かってくるがいい」
グレインから発せられた圧倒的な覇者の威圧が、生徒達に吹き付けるその影響を受けた気が弱い生徒は気を失い、気が強い生徒も膝を笑わせてしまっている。
◇
その頃、代表候補生達は海上で静止状態にあった銀の福音を回収し、旅館へと向かっていた。
「戦闘にはならなかったのは助かったけど、どうしてかしら?」
「さぁ、篠ノ之博士がなにかしたんじゃないかな?」
鈴とシャルロットの言葉を耳にした箒は、奥歯を噛み締めた。悔しさと怒りがあったが、自分の不甲斐なさが入り混じった怒りであった。
『甘ったれんな!!機体を貰えるだけ感謝しろよ!』
「甘えていたのか、違う!私は・・・わた・・しは」
自分の中で束の言葉を思い返し、冷静な自分と一夏を優先する自分の声が交互に響き渡る。
「姉さんの言う通りだ。機体をもらっただけありがたいのだ」
「違う!こんな弱い力では一夏を守れん!」
「バカめが、その弱い力は己の結果が現れたに過ぎん。現に一夏も」
「黙れ!!」
声に出しそうになった箒はそれを必死に抑え込み、堪えた。その様子をラウラは見逃さなかったが、あえて声はかけなかった。
「・・・葛藤しているようだな。かつての私のように」
「・・・通信?はい、え?本当ですの!?分かりましたわ!すぐに!!」
セシリアが機密通信を受信し、慌てた様子になり現状を報告した。
「皆さん、大変ですわ!将矢さんが残った生徒相手に大立ち回りをしていると山田先生から通信が来ましたわ!!」
「なんだって!?アイツ、性懲りもなく!俺は先に行くから!」
「あ、ちょっと!」
鈴が引きとめようとしたが、一夏は真っ先に旅館のある方角へと向かってしまった。
「全く!勝手に行動して!!」
「とにかく、私達も急いで戻ろう。何やら嫌な予感がするからな」
「うん」
「・・・・」
ラウラの一言で全員が旅館のある方角へと向かう。そんな中、セシリアだけが不安を払拭できずにいた。
「得体の知れない不安が旅館へ近づくたびに大きくなりますわ。これは一体?」
その一言は風に流れ、消えていった。不安を胸の中に残したまま。
◇
「う・・・・あ・・・」
「うう・・・」
「ふん、所詮はISという力すら持っても弱者は弱者のままか」
代表候補生達が帰還するまでの間、将矢は覇王の名に恥じない実力で挑んできた相手を片っ端から返り討ちにしていた。
それはまさに倒れた敗残兵達の中心にたった一人の指揮官が居るような光景であり、挑まなかった生徒達は腰を抜かしている。
「もう終わりか?」
「やめろ!もういい、もういいだろう!!これ以上は!」
「つーくんを返せ!覇王!!」
千冬と束が同時に将矢に声をかけたが、覇王は聞く耳を持たず逆に言葉を返した。
「俺を止めたければ力を示せ!この俺に敗北を刻んでみるがいい!」
会話が成立しない、彼はそれほどまでに心の奥底まで自分を隠してしまったのだろう。
「っ?これって・・・」
小型端末に違和感を感じた束は生徒達の中に紛れ込み、端末を操作する。そこには見覚えのあるメッセージが受信されていた。
『ようやく・・・目がさめた・・・ぞ・・束・・・メタビーだ』
「っ!!メタビーからの」
『手短に話す、ロクショウとブラックビートル達がなんとか本当の将矢を取り戻そうとしてる。誰でもいい、グレインを・・・倒し』
そこから先のメッセージが途絶えてしまった。メタビーとロクショウはグレインが復活した余波で目覚めたのだろう。今も、あの内部で戦っているのだ。
「・・・・・」
「他にいないのか!?他に挑戦する強者は!」
その言葉と同時に代表候補生達が到着する。エネルギーの補給を山田先生から受けた為に完全回復している。
「将矢!お前、またこんな酷い事を!」
「水面の白鳥が面下の沈泥に気づくはずもないか・・・偽りの守人」
一夏の声を聞いて生徒達は王子やヒーローを見るような目で、千冬と束は何も表情を変えずに見ている。
「なんだと?」
「俺の主人格は俺を生み出すほどに心の闇を増大させた。そして、奴は俺を受け入れた。力で全てを支配するという事を」
「何が言いたいんだよ!はっきりいえ!」
「ならば言ってやろう。偽りの守人、主人格は貴様が受けるべき傷を身代わりとして一身に受けていたのだ」
「っ!」
覇王の一言は一夏にとって信じがたいものであった。将矢は自分の代わりに全てを引き受けていたという言葉を。
「う、嘘だ!だったらなんで俺に言ってくれなかった!?」
「貴様に傷を払拭できる力があると思っているのか?」
「ある!俺には千冬姉から受け継いだ力が」
「偽りの力を奮い、奢り昂ぶるのが楽しいか?織斑一夏」
「なんだと!?千冬姉の力は偽りじゃねえ!!」
覇王は表情を変えずに言葉だけで真実を口にしていく、それはまるでお前に力を語る資格はないと言うかのように。
「否、偽りだ。貴様は借り受けた力を、己自身の力と勘違いしている愚か者に過ぎん」
「違う!」
「何故、違う?貴様は姉から受け継いだといった。だが、受け継ぐのは己だけしか許さない」
「それのどこが悪いんだよ!」
「力とはただ力・・・そこに善も悪もない。形を変え、あらゆる人間に伝えられていく。織斑千冬も力を得るために何かしらを受け継いだ。だが、それを誰にも受け継がせないとしたら消滅するしかない」
「消滅・・・?」
「そう、受け継がれないものや記録がないものは消滅していく。零落白夜といったか?貴様だけしか使わせないというのなら貴様が居なくなればどうなる?」
「そ、それは」
一夏は途端に言い返せなくなってしまった。自分が学んだ剣道も流派が伝えられて来たからこそ、生き延びた。覇王は姉から受け継いだ力を、他ならぬ自分自身が消滅させてしまうと言っている。
「やはり貴様は偽りの守人、いや・・・門番にすらなれん」
「なんだよ!さっきから偽りの守人とか!」
一夏の勢いに任せた言葉を肩掴んで止めたのはシャルロットとセシリアであった。二人は真剣な顔で首を横に振っている。
「残念ですけど、将矢さん・・・いえ、覇王の言うとおりですわ」
「うん、僕もそれには同意するよ」
「セシリア、シャル!?なんで・・・!」
「一夏さん、いえ・・・織斑さん。貴方がわたくし達以前にISを動かし、訓練や勉学を怠っていないと言い切れるのであれば止めませんわ」
「もしくは同じ時期に動かしていたとかね。ねぇ・・・守ると言って織斑先生に相談するまであの件を先延ばしにしてたよね?それで守ってるって言えるの?」
「う・・・それは」
守ると言って一夏は普通の高校生活と何ら変わりのない事しかしていなかった。一夏からすれば代表候補生達もただのクラスメート位にしか思っていなかったのだろう。
だが、彼は忘れていたのだ。彼女達が、それぞれの国を背負うかもしれない代表候補生である事を。
彼からすれば実力は拮抗していると考えていたのだろう。しかし、現実は甘くない、今戦えば間違いなく全員に敗北する可能性が高いだろう。
偶然の勝利をもぎ取っても、すぐに勝利されれば帳消しとなってしまうのだから。
ISは長く乗っていれば乗っているほど強いとされる。僅か三日動かした程度では年単位で動かしている代表候補生に叶うわけがない。
「でも、俺は!」
「もう黙っていろ、織斑一夏。ここからは力がある者だけが上がれる舞台だ」
会話を切ったのはラウラだった。自分の実力と目の前の相手との差が分からない一夏に、イラついていたのだろう。
「ラウラ!?」
「今の土谷将矢はお前の叶う相手ではない・・・去れ」
「いや、ここで逃げたら男がすたる!」
「何を言っているんだ?貴様は」
一夏は周りのアドバイスよりも自分のプライドを優先していた。ラウラにとってこれほどまでに効率の悪いことがあるだろうか?
「グレインと戦う前に・・・この姿を前に冷静でいられるか?パーツ換装!」
将矢の言葉にグレインからある姿へと変わっていく。シャルロットとラウラは知らない、絶対破壊兵器の姿を。
[推奨BGM 【悲しいデュエル】 遊戯王GXより]
「あ・・・ああああ・・・・あああっ!」
「これこそが最強無敵の力、ゴッドエンペラー!この姿を前に立っていられる者などいない!」
「あ、あれが!」
「教官が仰っていたスラフティンが持つ、最強形態の一つ、ゴッドエンペラー!なんという威圧感なのだ・・・」
それはグレインからゴッドエンペラーのパーツに換装した姿であった。覇王の意思が制御しているため、暴走の危険性はない。
だが、その威圧感を知っているセシリア、鈴は耐えられているがシャルロットとラウラは圧倒されていた。
「こ、これがゴッドエンペラー・・・!こんなISのパーツは危険すぎるよ・・・」
束もゴッドエンペラーの危険性に気づいたが、足が震えていた。機械が人間を圧倒するほどの威圧感をもっているなど初めての経験だからだ。
「あ・・・・・あああああああっ!うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!零落白夜ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「一夏!?」
「いっくん!?」
一夏は再び発作を引き起こし、白式を展開すると瞬間加速を使って、零落白夜を全開状態で開放し、ゴッドエンペラーを纏った将矢へ斬りかかった。
「っ!」
防御しようとした瞬間、鈴が甲龍を展開、衝撃砲を放って白式に命中させ注意を逸らした。
「うぐっ!?」
「少しは落ち着きなさいよ!」
「邪魔するなよ!俺は、俺はゴッドエンペラーを倒さなきゃならないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
だが、冷静にさせようと行動した鈴を邪魔だと思ったのか、今度は標的を鈴に変え斬りかかってきたが、その動きは一瞬にして止められた。
「な・・・!これは」
「友軍を攻撃するなど・・・貴様は一体何をやっている!」
白式を纏った一夏の動きを止めたのはラウラであった。AICを使って完全に動きを束縛している。
「離せええええ!!ゴッドエンペラーは、ゴッドエンペラーは俺が倒すんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!みんなを、みんなを守るためにいいいいいいいいいいい!!」
「どうやら、織斑一夏は・・・あのゴッドエンペラーという機体に相当な恐怖があるようだな」
「やはりな、戦うに値しない」
将矢はゴッドエンペラーから再びグレインの姿に戻り、再び挑戦を促した。
「さぁ、この俺に挑戦する奴は誰だ!」
「わたくしが行きます!」
「セシリア・オルコットか、良いだろう・・・!」
セシリアは将矢に対し、恩返しができると考えた。人間不信と女尊男卑、この二つの思想に染まっていた自分を助けてくれた。今度は自分が助ける番であると。
「将矢さん!!戻ってきてくださいませ!!わたくし達のもとへ!!」
あ・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「俺はヒロインを未定のまま進めていると思ったら、いつのまにかセシリアがヒロインっぽくなっていた」
な・・・何を言っているのか、わからねーと思うが
俺も何を書いたのか、わからなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・。催眠術だとか速筆だとか
そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ
もっと恐ろしい無意識の断片を、味わったぜ・・・
このままセシリアヒロインにしようかな、って思うけど・・・束さんも捨てがたいんだよなぁ